“超プロ”K氏の金融講座

このページは、舩井幸雄が当サイトの『舩井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介していた経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2026.07
支持率急落が示すもの―
―市場が発する「警告」を見逃してはならない

 高市政権の内閣支持率が急速に低下している。各社世論調査を見ると、日経新聞では支持率58%と前回から10ポイント低下、読売新聞では57%と12ポイント低下した。そして先週公表された毎日新聞では支持率41%に対し、不支持率は44%となり、ついに支持と不支持が逆転した。
 さらに内容を見れば、その背景はより鮮明である。日経新聞では無党派層の不支持率が51%に達し、読売新聞では物価対策を「評価しない」が71%という結果となった。政権発足当初は高い期待感があっただけに、失望もまた急速に広がっているのである。私はこれまで何度も申し上げてきたが、支持率というものは、一度下げ始めると、その流れは簡単には止まらない。
 期待が大きい政権ほど、その反動も大きいからである。もちろん、支持率は様々な要因によって変動する。しかし今回の急落を見ると、国民の最大の関心が物価に向かっていることは明らかだ。毎日の生活でスーパーへ行けば値上げ、外食でも値上げ、電気代、ガス代、通信費、家賃まで上昇している。「景気は良い」と言われても、多くの国民には生活が苦しくなっているという実感の方が強い。だからこそ、物価対策への評価が極めて低いのである。
 一方、私がさらに重要だと考えているのは、市場の反応である。市場は政治家よりも早く変化を織り込む。株式市場、為替市場、債券市場は、将来を映す鏡とも言える。今回の市場の動きを見ると、政権発足後の変化は極めて大きい。ドル円相場は146円台から164円前後まで円安が進行した。わずか数か月で約18円もの円安である。通常なら数年かけて動くような変化が、短期間で起きている。さらに長期金利は1.6%前後から2.9%近辺まで急上昇した。こちらも異例である。

●市場が発している「警告」とは?
 日本では長らく低金利が続いてきた。その日本で長期金利がここまで短期間に上昇することは、極めて珍しい。市場は何を見ているのか。それは将来の財政とインフレである。
 政府が積極的な財政政策を打ち出し、景気刺激策を次々と実施しようとすれば、市場は将来の国債増発やインフレを意識する。そうなれば国債価格は下落し、長期金利は上昇する。同時に円の価値に対する不安が高まれば、円安も進みやすくなる。もちろん、市場には海外要因もある。アメリカの金利、日本銀行の政策、世界経済の動向など様々な要素が影響する。しかし現在の日本市場を見る限り、市場参加者が日本の財政運営に対して以前より慎重な見方を強めていることは否定できない。
 私はこれまで、日本は供給制約型のインフレ局面に入ったと繰り返し指摘してきた。
 半導体不足、人手不足、建設コスト上昇、電力不足、水資源への投資不足。AI革命は膨大な設備投資を必要とし、その結果として電力、素材、物流、建設など、あらゆる分野で価格が上昇している。つまり、現在のインフレは需要不足だから起きているのではない。供給能力が追いつかないことが原因なのである。この局面で需要をさらに押し上げる政策を続ければどうなるか。答えはシンプルである。物価がさらに上昇する可能性が高まる。これが私が一貫して懸念している点である。
 リフレ政策が有効だった時代は、長く続いたデフレ局面だった。しかし今は環境が大きく変わった。供給不足の時代に入ったにもかかわらず、デフレ時代と同じ発想で需要刺激策を続ければ、結果として物価上昇を助長するリスクがある。市場はその変化を敏感に感じ取っているように見える。だからこそ円安が進み、長期金利も上昇しているのである。
 政治の世界では支持率が重要視される。しかし、経済の世界では市場の評価の方がはるかに厳しい。
 市場は感情では動かない。数字と将来予想だけで判断する。支持率が下がれば政策修正は可能だが、市場の信認を失えば、その回復には長い時間がかかる。過去にも世界では同じような例が数多くあった。財政への信認が揺らぐと、金利上昇と通貨安が同時に進み、物価上昇が加速する。そして、その負担を最も受けるのは一般の生活者である。だからこそ、今必要なのは「景気対策を増やすこと」ではなく、「市場から信頼される政策」を示すことではないだろうか。
 日本経済は大きな転換点にある。AI革命という歴史的な投資ブームの中で、日本企業の業績は伸び続ける可能性が高い。しかし、その恩恵と同時にインフレという大きな代償も背負うことになる。市場はすでに、その未来を織り込み始めている。政治が市場の発する警告に耳を傾けるのか、それとも従来の発想を続けるのか。今後数か月は、日本経済の将来を左右する極めて重要な局面になるだろう。

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暴走する日銀相場『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/
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Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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