“超プロ”K氏の金融講座

このページは、舩井幸雄が当サイトの『舩井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介していた経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2026.09
食料品だけではない 物価上昇は本番へ

「ドコモ12月値上げ」「東京電力の電気代、10月は過去最高の9300円 政府支援終了と燃料高」――いよいよ食料品だけでなく、様々なサービス価格の値上げラッシュが始まってきました。NTTドコモは12月1日から、一部の料金プランを月額110〜550円引き上げます。注目すべきは値上げそのもの以上に、その理由です。ドコモは「物価や人件費の上昇など事業環境が変化する中で、安定したサービスを継続して提供するため」と説明しています。つまり人件費の上昇を料金に転嫁すると、はっきり表明したわけです。これは今までなかった大きな変化だと思います。
 これまで日本の物価高というと、円安による輸入物価上昇、原油やLNGなどエネルギー価格の上昇、そして小麦やコーヒー、チョコレートなど原材料高を背景とした食品価格の値上げが中心でした。ところが今後は、それだけではありません。「人件費が上がったからサービス価格を上げる」という動きが広がってくる可能性があります。
 すでに食品価格の値上げは猛烈です。帝国データバンクによれば、9月の飲食料品の値上げは4923品目、平均値上げ率は11%に達しました。2026年に値上げが判明した食品は11月までですでに1万9083品目に達しており、年間2万品目突破は確実とされています。
 その上に今度は電気料金が上がってきます。政府は7〜9月使用分について電気・ガス料金を補助してきましたが、この支援は9月使用分で終了します。東京電力では燃料費調整額そのものも上昇しています。家計にとって電気代は「買わなければ済む」というものではありません。通信料金も同じです。食品、電気、ガス、携帯電話――生活するだけで毎月必ず支払う費用が一斉に上がり始めるのです。
 そして、さらに重要なのは企業側です。例えば飲食店では、食材費が上がる、電気代が上がる、ガス代が上がる、そのうえ従業員の賃金も上げなければ人を確保できません。運送会社なら燃料費、人件費、車両価格が上昇します。ホテルでも清掃、食材、光熱費、人件費がすべて上がる。この状態が続けば、企業はどこかで価格転嫁せざるを得ません。こうして物価上昇は、「輸入物価の上昇」→「商品価格の上昇」→「賃金の上昇」→「サービス価格の上昇」という形で経済全体に広がっていきます。

●「粘着性のあるインフレ」・・物価上昇は本番へ
 ここで厄介なのが、サービス価格は一度上がるとなかなか下がらないということです。原油価格なら中東情勢が落ち着けば下落する可能性があります。円相場も円高になれば輸入コストを押し下げます。しかし一度引き上げた従業員の給与を、原油が下がったからといって簡単に引き下げることはできません。人件費上昇を理由に引き上げたサービス料金も簡単には元に戻りません。これが「粘着性のあるインフレ」です。
 ところが、直近8月の全国消費者物価指数(CPI)を見ると、生鮮食品を除いた指数は前年同月比わずか1.7%の上昇です。数字だけを見れば、「日本のインフレは落ち着いてきた」と感じる人もいるでしょう。朝倉は従来から一貫していってきましたが全く違う景色を見ています。CPIとは過去の価格を集計した数字です。これから12月にドコモが値上げすることも、政府の電気・ガス支援が終了する影響も、これから企業が人件費上昇を価格転嫁することも、現在の8月CPIにはまだ十分反映されていません。
 物価を見る時に大事なのは、バックミラーだけを見ないことです。足もとで川上である生産者物価は上がっています。原油価格も上がっています。このような流れを受けてスーパーではすでに大量の食品が値上がりしている。電気代も上がる。携帯料金も上がる。そして企業が「人件費が上がったので値上げします」と言い始めた。この構造的な変化を見逃してはなりません。
 いよいよ日本のインフレは終わるどころか、これから「食品中心のインフレ」から「サービスを含めた幅広いインフレ」へ移っていく可能性があります。問題はCPIが現在何%かではありません。次に誰が、何を理由に値上げするのか。今はその変化を見ていかなければならない時だと思います。

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バックナンバー
26/09

食料品だけではない 物価上昇は本番へ

26/08

新刊「勉強しなくてよかった」前書き

26/07

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インフレと二極化

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暴走する日銀相場★『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/
★(株)ASK1: http://www.ask1-jp.com/

Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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