中村陽子の都会にいても自給自足生活

このページは、認定NPO法人「メダカのがっこう」 理事長の中村陽子さんによるコラムページです。
舩井幸雄は生前、中村陽子さんの活動を大変応援していました。

メダカのがっこうには、以下のような3つの宣言があります。

1.私たちは、田んぼから瑞穂(みずほ)の国日本の自然再生をします。
2.私たちは、お米中心の一汁一菜の食事で日本人の心身を健康にし、食料自給力をつけます。
3.私たちは、命を大切にする農家と手をつなぎ、生きる環境と安全な食料に困らない日本を次世代に残せるような先祖になります。


このコラムでは、「メダカのがっこう」での活動内容や、様々な経緯で「メダカのがっこう」に参加された方々のご紹介や、健康のための大切な情報などをお届けしていきます。

2021.08.20(第83回)
今は亡き稲葉光國先生の功績に感謝して

 民間稲作研究所の稲葉先生がお亡くなりになってから8か月ほど経ちました。初めは日本の有機農業の巨星を失ったことのショックが大きかったですが、徐々にこれで何とか進めていくしかない、出来ることは何でもしようという覚悟に変わっています。

 民間稲作研究所もメダカのがっこうも2001年にできました。
 メダカのがっこうは農家支援の消費者として、はじめ、佐渡のトキ野生化プロジェクトを応援するため、佐渡に不耕起冬期湛水を持ち込み、佐渡トキの田んぼを守る会の農家との交流を始めました。それまで不耕起冬期湛水でお米を作れば田の草は1本も生えないという指導者の言葉を信じて進めていたのですが、佐渡の農家たちが草に困っている様子から、少しずつ、いろいろな稲作技術が必要であることがわかりました。稲葉先生の除草剤を使わない稲作を知ったのもそのころです。たくさんの感謝を5つにまとめてみます。

田の草フォーラムに協力してくださった感謝
 メダカのがっこうは、農家が本当に困っているのが田の草であることが分かり、2004年から「田の草フォーラム」を始めました。これは各地域で、様々な農法で草対策に成功している農家さんたちに発表していただく情報交換会です。この田の草フォーラムの第1回目からずっと協力して研修してくださったのが、稲葉先生です。同時に自然農法センターの岩石研究員や、冬・水・田んぼを推進し、生きもの調査指導の岩渕先生などの協力もいただきました。専門的なお話は難しいこともありましたが、日本の農業の行く末を考えている情熱に惹かれ、一生懸命理解を深め必死についていき、今年第9回田の草フォーラムまで続いています。第9回は稲葉先生の追悼会になってしまいましたが、よく何もわからない私たちをここまで育てて頂いたと、深く感謝申し上げます。

 田の草フォーラムでは、田の草対策は、田植え前までにその8割が決まっていることを学びました。稲葉先生の2回代かき、成苗2本植えは、その後、千葉県いすみ市の有機米給食を可能にし、次に木更津市の有機米給食も指導中です。稲葉先生亡き後も、民間稲作研究所の農家の方たちが引き続き指導に当たっているとのこと、次世代への責任を果たしていらっしゃるのだと感謝いっぱいです。

米・麦・大豆の2年3作体系を構築してくださった感謝
 米、麦、大豆は、日本の主要農作物である主食の米、味噌、醤油、の原料ですが、小麦と大豆の自給率が12%や6%ということは、私たちの食の安全保障上、非常に心配なことです。このことを本気で解決してくれるのが、この米・麦・大豆の輪作体系です。これも日本中の基盤整備で暗渠(あんきょ)排水が完備された状況だからできることで、自然農法の思想とは相いれないのですが、稲葉先生は、草対策にもなりながら、日本の主要農作物の生産量を上げる非常に優れた農法だといつも力説しておられました。私も、可能な田んぼは取り入れて、特に麦と大豆の自給率を上げてほしいと思っています。

オイルプロジェクトを始めてくださった感謝
 福島の原発事故により、放射能汚染されてしまった畑でヒマワリを作りながら土を浄化し、その種にはセシウムが入らないことから、搾った油を売って農業を続けられるようにしようという考えは素晴らしいです。放射能汚染しても土を背負って逃げられない農家の絶望を希望に変えるというたくましい精神を稲葉先生に感じます。
 その他に、春りん蔵というF1種のヒマワリを、毎年、姿、高さ、早生か晩生かで区別して種取りをしながら、F9まで種取りするという活動に参加させていただいた思い出は忘れられません。品種登録まで行く予定だというお話でしたが、これがまだ達成できていないのが残念です。
 また、菜種の栽培では、途中で異株抜きという初めての経験をさせていただいたことが感謝です。

ブータンを有機農業の国にする働きに感謝
 田坂先生の関係で突然始まったブータンへの協力、2020年までに有機農業の国にすると宣言したブータン、行ってみたらさしたる政策もなく予算もなく、稲葉先生がすべて考えて指導し、最後は田んぼづくりに必要なストーンクラッシャーという石を砕く大型重機を調達して輸送する費用までクラウドファンディングで集めてしまったというお話です。なんて勝手な国!なんて人がいい稲葉先生!というのが私の印象でした。
 でも、稲葉先生がお金を集め始めた時、私は一生懸命協力しました。だって私が大切にしている教え「自未得土、先渡他」(自分はまだ悟りの境地に達していなくても、他の人を先に渡すために働く)を地で行っている行為だと思ったからです。日本を有機農業の国にしたくて頑張っているのにその道未だ遠くても、ブータンを先に有機農業の国にするために全力を尽くすという生き方に感動しました。

子どもたちの給食を有機にする活動をけん引してくれて感謝
 いすみ市の有機米給食を実現に導いたのは、稲葉先生の有機稲作技術でした。その後、全国で湧き上がっている有機給食への運動、この時、絶対に必要なのが、有機米の増産計画です。たとえば、世田谷区が全部有機米給食にするには年間500トンが必要、その生産には、何軒の農家がどれくらい作ればいいかまでを計算し、準備に入ってくれるのです。有機給食運動は、自治体がその方針を出してから、有機農産物の生産が追いつくまでのタイムラグをできるだけ短くすることが重要です。この点、稲葉先生を失ったことは大きな痛手です。

 ここ数年、種子法廃止、種苗法改正の中で、栃木県の農家や政治家の方たちの種子への意識を高めたり、理想的な条例案を考えたのに、中身が違う条例になってしまったり、常に心労が絶えなかったと思います。また民間稲作の農場の仕事もあり、身体も心も休む暇なく、寝る間もないほど働いて働いて、もう生身の身体ではやりきれないと分かって、あの世に行かれたような気がします。
 残された私たちも、すごい激動期で、現状をひっくり返さない限り、次世代には残せない世の中になっています。安らかにお休みくださいと言いたいところですが、あの世からの応援を少しでいいのでお願いします。頼りにならない後輩で申し訳ありません。


バックナンバー
21/08

今は亡き稲葉光國先生の功績に感謝して

21/07

映画「食の安全を守る人々」

21/06

OKシードマークをご紹介します。

21/05

有機給食を支える技術と政策、育てる心

21/04

野菜の栄養価をみえる化したら…有機給食が実現する

21/03

ゲノム編集トマトの苗分け始まってしまいます!

21/02

こんな町に住みたい 元気な子が育つ自治体調べてみました。

21/01

有機給食と有機農業の素晴らしい関係が始まりました

20/12

日本人の遺伝子配列が教えてくれる伝統和食

20/11

種苗法改正案の慎重審議をお願いする活動に協力してください。

20/10

種苗法改正は11月強行採決の予定。反対の声を#で届けましょう!

20/09

有機給食全国集会のご報告

20/08

食べ物を変えたいママプロジェクト 一人から始めるママたち

20/07

そうだったのか種苗法改正

20/06

私のナウシカプロジェクト 自然再生葬編

20/05

種苗法改正って何? 賛否両論の理由と、どうしてもわからない大きな矛盾

20/04

WorldShift 不安から慈愛へ 〜コロナが教えてくれたShift〜

20/03

私の安上がりシンプルライフ

20/02

こんなに元気な子が育つ有機の和食給食

20/01

みんな母親たちの味方です。敵はいません。頼りにしましょう!

19/12

自家増殖原則禁止とは(種苗法改正が次の国会で通ってしまうと大変です)

19/11

私の一番の味方でいてくれた母を偲んで

19/10

2019年12月2日〜12月12日 アメリカを変えたママがやって来る!日本のお母さんたちも、アメリカのママたちに続こう!

19/09

ゲノム編集について知っていてほしいこと

19/08

今一番の緊急課題。それは子どもの食を有機にすること!

19/07

人も自然も健康を取り戻すのはとても簡単です。

19/06

韓国の有機栽培面積が日本の18倍になっているのはなぜ?

19/05

不調の原因が一つ明らかになりました。小麦とパンを変えましょう!

19/04

やっぱり、人間の腸能力はすごい!

19/03

今年も醤油を搾って、来年のもろみを仕込みました。

19/02

種子法廃止後、最新状況をご報告します。

19/01

田の草フォーラムに来てもう一つの国を生み出す仲間になって!

18/12

第8回田の草フォーラムin東京 草と向き合う田んぼの達人が集合します!

18/11

千葉県いすみ市で全市で有機米給食が始まりました。

18/10

原発と自然エネルギーと火力発電や水力発電の関係

18/09

40年前、子どもの命を支える食に立ちあがった人たち
―高取保育園、麦っこ畑保育園のお話―

18/08

ガン細胞のエサを解明したコリン・キャンベル博士の研究

18/07

私のナウシカプロジェクト

18/06

食と農に大異変

18/05

家族の健康を守るためにできること

18/04

種子法廃止とTPPとISD条項の関係を知っていますか?

18/03

本当に恐ろしいのは大自然の逆襲です

18/02

改めて農薬の害を知ろう!

18/01

最近感動したことと考えたこと。

17/12

ダーチャを知っていますか? 種播く土地を持つ人間は最強です。

17/11

知ることは力になる 知っている国民になろう!

17/10

衆議院選挙の当選者に5つのお願いを出しました。

17/09

もう一つの国づくりと裏の世界

17/08

8月2日種子法学習会の報告とまとめと見えてきた方向

17/07

怒涛のように崩壊する日本の食の安全

17/06

拝啓 安倍晋三内閣総理大臣殿

17/05

種子法廃止につづいて品種の多様性と種子情報が奪われる!

17/04

日本の種と自家採種の権利が大変なことになっています!

17/03

野草の季節が始まりました。なぜ野草なのか。

17/02

自家採種を守っている農家たち

17/01

お米の優位性10項目

16/12

恐るべき田んぼの生産力

16/11

「食は命」を知っている料理人

16/10

田の草フォーラムのことで頭がいっぱい

16/09

米飴を作ってみてわかったこと

16/08

知恵と技を極めているじいちゃんばあちゃん(ご先祖様)のあとに続け!

16/07

炭の研究開始に当たり、3人の炭焼き名人に会ってきました。

16/06

炭の力を体験しました。

16/05

生きものいっぱいの田んぼへ行こう!(メダカのがっこう紹介)

16/04

野草を愛する人は自然を理解してほしい。

16/03

もし逆表示でなかったら農産物はどういう表示になるのか
―遺伝子組み換えの表示が消されていく―

16/02

遺伝子組み換え作物に対するメダカのがっこうの考え

16/01

塩で本当に心配しなければならないこと

15/12

日本人の乳酸菌の宝庫、たくあん・ぬか漬けは自分で作ろう。

15/11

梅干しは日本人の食養生の基本

15/10

砂糖や甘味料が自給自足生活と相容れない理由(わけ)

15/09

これぞ現代の最強サプリメントだ!
〜米・味噌・梅干し・黒焼きという高機能食品の恩恵に浴そう〜

15/08

日本人は昔から味噌という高機能サプリを持っている

15/07

自家採種できる種を子孫に残すオイルプロジェクト

15/06

赤峰勝人は現代の食医だ!――アトピーが治らないわけ

15/05

今こそ、本物の米、味噌、梅干し、黒焼きが必要なわけ 

15/04

新潟県阿賀町に元氣な糀ばあちゃんあり(山崎京子さんの場合)

15/03

醤油造りのご先祖様

15/02

次世代のために「なんでもやるじゃん」メダカのがっこうの理事Mさん紹介

15/01

子育て介護を終えて、地球とみんなの元気のために生きる

14/12

東京から移住、田舎で子育てをするホームページビルダー

14/11

「自給自足くらぶ」でどんどん幸せに

14/10

都会にいても自給自足生活のおすすめ

Profile:中村 陽子(なかむら ようこ)
中村 陽子(なかむら ようこ)
首のタオルにシュレーゲル青ガエルが
いるので、とてもうれしそうな顔を
してい ます。

1953年東京生まれ。武蔵野市在住。母、夫の3人家族。3人の子どもはすべて独立、孫は3人。 長男の不登校を機に1994年「登校拒否の子供たちの進路を考える研究会」の事務局長。母の病気を機に1996年から海のミネラル研究会主宰、随時、講演会主催。2001年、瑞穂(みずほ)の国の自然再生を可能にする、“薬を使わず生きものに配慮した田んぼ=草も虫も人もみんなが元氣に生きられる田んぼ”に魅せられて「NPO法人 メダカのがっこう」設立。理事長に就任。2007年神田神保町に、食から日本人の心身を立て直すため、原料から無農薬・無添加で、肉、卵、乳製品、砂糖を使わないお米中心のお食事が食べられる「お米ダイニング」というメダカのがっこうのショールームを開く。自給自足くらぶ実践編で、米、味噌、醤油、梅干し、たくあん、オイル」を手造りし、「都会に居ても自給自足生活」の二重生活を提案。神田神保町のお米ダイニングでは毎週水曜と土曜に自給自足くらぶの教室を開催。生きる力アップを提供。2014年、NPO法人メダカのがっこうが東京都の認定NPO法人に承認される。「いのちを大切にする農家と手を結んで、生きる環境と食糧に困らない日本を子や孫に残せるような先祖になる」というのが目標である。尊敬する人は、風の谷のナウシカ。怒りで真っ赤になったオームの目が、一つの命を群れに返すことで怒りが消え、大地との絆を取り戻すシーンを胸に秘め、焦らず迷わずに1つ1つの命が生きていける環境を取り戻していく覚悟である。
★認定NPO法人メダカのがっこうHP: http://npomedaka.net/

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