中村陽子の都会にいても自給自足生活

このページは、認定NPO法人「メダカのがっこう」 理事長の中村陽子さんによるコラムページです。
舩井幸雄は生前、中村陽子さんの活動を大変応援していました。

2023.10.20(第108回)
井の頭公園に大地の再生の風が吹き始めた

 前回ご紹介した三鷹・武蔵野周辺のママたちが開催した、オーガニックフェスタin井の頭は、大成功でした。
 2日目最後の講演は、「杜人」の映画を作った前田せつ子監督と、大地の再生の矢野智徳さんでしたが、草原に敷き詰めたゴザの周りに、200名以上の方たちが集まり、熱心に聞き入っていました。
 大地の再生のことをまだご存じない方は、「杜人」を検索してください。簡単に説明すると、地球の表面は、草や有機物に覆われ、森が水を貯め、木の根が水と空気を通し、循環していたのですが、コンクリートを使った近代工法が、この水と空気の脈を寸断し、大地の呼吸を止めてしまっていることが、土砂崩れなどの様々な問題を引き起こしているという見立てです。大地の再生とは、すでに施工されたコンクリートの造作を大きく壊すことなく、表層に手を入れることにより、木や草や生きものたちや気象の力を総動員して、大地の呼吸を取り戻す手法です。

 実はこの講演準備のため、10月7日に矢野さんに井の頭公園をみていただき、各地点の状況についてレクチャーをしていただきました。その案内をして下さったのが、井の頭自然の会の鈴木浩克さんですが、劇的ともいえる25年ぶりの彼との再会が今回の成功の鍵であり、フェスタの主催者 寺澤亜由美さんが繋げてくれたので、このフェスタのお陰なのです。
 とにかく、彼のお陰で、矢野さんに井の頭公園の的確な案内ができました。原生林を目指して人間の手を入れずにいる「小鳥の森」、人に踏みしめられて硬くなってしまった樹々の根元を守るために、ロープ柵で囲った森、枝が下がったり、細い枝がなくなった樹、池の倒れ込んだ苦しんでいる木々たちを、どのような作業で元気にできるかをレクチャーしていただいたので、それをパネルにまとめました。こちらからご覧ください。

 これらの作業は、表層5センチ、シャベル1本と、ノコ鎌1本でできます。藪化して風が通らなくなった森には、蛇行したけもの道のような風の道を鎌で拓く。風が通ると、草の高さがが低くなり、木々も風の剪定でちょうどよい形になる。木や草は苦しいと空気を求めて高く生い茂るようです。枝が垂れ下がり苦しそう木の周りには小梢の下くらいの位置にいくつか点穴をあけ、穴と全体に炭や枝や落ち葉などの有機物でグランドカバーする。
 点穴とは、大地が深呼吸するところです。すると、大地に細かい亀裂ができ、水と空気の脈ができ、樹々が元気になります。元気になると下がっていた枝が上がっていきます。池の周りの土手にも風の道をつける。池に泥を流れ込まさないようにと土手を完全に塞ぐとかえって泥が乗り越えていく。などなど矢野さんと一緒にいると、大地の呼吸がどんどん復活して、大地の上に立っている私たち人間も楽になるような気がします。

 さて、講演の後、参加者と一緒にワークショップをしました。70名程の方たちが矢野さんの後に続き、作業を見たり参加したりしました。森の中の道に出来る水たまりやぬかるみの改善をやりました。シャベル1本で水が集中しないように表層5センチの溝を掘っていきます。掘り方は「やたら掘り」。イノシシが右足と左足で交互に穴を掘るように、シャベルの向きを左右上下に変えながら、やたらと掘ります。掘った形は、蛇行とうねり、水が一極集中しない形です。そしてその溝に小枝と落ち葉をランダムに置いていく。これをしがらみと言います。みんなでシャベルで溝を掘り、しがらみを作る作業をやりました。

 この表層5センチの僅かな作業で、森全体に水と空気の流れが復活し、それが広がっていき、公園の外の街路樹ともつながり、東京全体に波及していくなんて、誰が信じるでしょう!ですが、人間が1の作業をすれば、木の根や草の根や土壌菌や小さな生きものたちが働いてくれ、木々は連絡を取り合ってくれるのです。自然には10倍、100倍の仕事をやってくれる力があります。それを引き出せる人間が矢野さんですが、その技をみんなで引き継いでいきましょう。

 矢野さんは、江戸時代は村に結という杜や周辺環境を守る集団があり、土と木と石で行う土木工事の技術があったと言います。その作業に村の老若男女が参加することで、技術が来継がれていました。ところが近代以降、私たちはそのような作業はすべて公共事業に任せてしまい、すっかりその技術を忘れてしまったのです。

 今回、井の頭観察会の方や、井の頭自然の会の方や、東京都の公園管理課の方たちが、市民の力で井の頭公園の整備をして下さっていることが分かりました。井の頭公園は江戸時代の結いのような市民活動が盛んなすばらしい場所なのです。
 最後に矢野語録を紹介します。
「水や空気を通す樹は、井の頭の杜の点穴に、その樹が集まった井の頭公園は武蔵野丘陵の点穴になる」
 井の頭公園は、環境改善の拠点になるようです。


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Profile:中村 陽子(なかむら ようこ)
中村 陽子(なかむら ようこ)
首のタオルにシュレーゲル青ガエルが
いるので、とてもうれしそうな顔を
してい ます。

1953年東京生まれ。武蔵野市在住。母、夫の3人家族。3人の子どもはすべて独立、孫は3人。 長男の不登校を機に1994年「登校拒否の子供たちの進路を考える研究会」の事務局長。母の病気を機に1996年から海のミネラル研究会主宰、随時、講演会主催。2001年、瑞穂(みずほ)の国の自然再生を可能にする、“薬を使わず生きものに配慮した田んぼ=草も虫も人もみんなが元氣に生きられる田んぼ”に魅せられて「NPO法人 メダカのがっこう」設立。理事長に就任。2007年神田神保町に、食から日本人の心身を立て直すため、原料から無農薬・無添加で、肉、卵、乳製品、砂糖を使わないお米中心のお食事が食べられる「お米ダイニング」というメダカのがっこうのショールームを開く。自給自足くらぶ実践編で、米、味噌、醤油、梅干し、たくあん、オイル」を手造りし、「都会に居ても自給自足生活」の二重生活を提案。神田神保町のお米ダイニングでは毎週水曜と土曜に自給自足くらぶの教室を開催。生きる力アップを提供。2014年、NPO法人メダカのがっこうが東京都の認定NPO法人に承認される。「いのちを大切にする農家と手を結んで、生きる環境と食糧に困らない日本を子や孫に残せるような先祖になる」というのが目標である。尊敬する人は、風の谷のナウシカ。怒りで真っ赤になったオームの目が、一つの命を群れに返すことで怒りが消え、大地との絆を取り戻すシーンを胸に秘め、焦らず迷わずに1つ1つの命が生きていける環境を取り戻していく覚悟である。
★認定NPO法人メダカのがっこうHP: http://npomedaka.net/

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