トップが語る、「いま、伝えたいこと」

　土光敏夫さんという方がいました。東芝の社長・経団連の会長を務め、昭和５６年頃には中曽根元首相（当時は行政管理庁長官）から請われて臨時行政調査会会長を務めていた人です。彼はまた、とても質素な生きざまでも有名でした。いつもメザシを食べていたとか、東芝を引退するときにも退職金をもらわなかったというエピソードも残っています。
　私は彼のことがとても好きだったので、時々、船井総研のセミナーの講師をお願いしていました。財界人としても有名ですし、人格もとても素晴らしい人でしたから、土光さんのセミナーにはいつも多くの人が集まりました。
　ある時、名古屋で開催されたセミナーの講師をお願いしたときのことです。「駅までお迎えに上がりましょうか」と尋ねたところ、「会場までこちらからいきますから」といわれました。それで当日、会場の外で待っていました。ふと目をやると、なんと土光さんが地下鉄の駅から１人でひょこっと現れ、こちらに歩いてこられるのです。普通でしたら一人きりで、しかも地下鉄を使って来られることなど考えられないような立場にいた方です。その姿をみてとても感激し、ますます土光さんを尊敬し、好きになりました。
　また、私がとてもお世話になった人に、難波田春夫さんという人がいます。難波田さんは明治３９年生まれで、東大を成績トップで卒業し、その春から東大の助手そして助教授、のちに東大や京大そして早稲田の教授をされていました。私とは、昭和４０年以来のお付き合いをさせていただいていました。船井総研の、夏のワンマンセミナーには必ず彼を講師にお願いしていました。東京の都下に住んでおられましたが、彼もまた、どんなに早稲田大学側が車で迎えに行くといっても、必要ないといって電車で大学へ通っておられたらしいのです。これはお弟子さん達からきいた話しです。
　また、地球村の高木善之さんは、割りばしを使わないために自分の箸を持ち歩いています。また、地球環境のために運転免許を返上し、移動には自転車と電車を使用して車には絶対に乗らないようにしています。『地球環境にマイナスな事はしない』というのは、口では簡単に言えてもなかなか実行できるものではありません。
　この三人の人たちは「良い」と思ったことはきちんと実行します。そういう彼らを尊敬していますし、彼らのようにあるべきだとも思います。しかしなかなか実行に移せないのも事実です。少しずつでも、見習っていきたいと思っています。皆さんの周りにも、自分がしたいと思ってもなかなかできずにいることを実行している人がいるのではないかと思います。少しずつでもそういう人を見習って、よりよい方向に自分自身を変えていきたいものです。
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