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トップが語る、「いま、伝えたいこと」

このページでは、舩井幸雄が(2014年1月19日の舩井幸雄の他界後は舩井勝仁が)いま一番皆様に知ってほしい情報をタイムリーにお伝えしていきます。
毎週月曜日定期更新
2018年10月15日
ゲッペルスと私 (※舩井勝仁執筆)

 世界的な株安の波が襲っています。この原稿は10月12日(金)の東京市場が始まる前の時間に書いていますが、金曜日の日経平均も続落で始まりそうです。市場の当面の抵抗線は22,000円前後のようでこの水準を割って下げ止まらないようだと、かなりの相場の調整が起こりそうです。
 トランプ大統領にとっては中間選挙に向けて最悪の時期での相場の下落になりますし、アメリカの長期金利が節目の3%越えの状態が続いていること等、相場が調整局面に入っても仕方がない状況が揃ってきていることに苛立ちを隠そうともしていません。秋の暴落が本格的になると金融恐慌につながる可能性が高いこともあり、警戒をする必要がありそうです。
 最近の相場はVIX指数(恐怖指数)によって代表されるようなところがあり、日米ともかなり上がってきているのが気になります。私の個人的な意見ですが、今回の暴落はトランプ大統領の中間選挙後の態勢に対する試金石になるような気がします。一般的な見解では上院は共和党が過半数を取り、下院は民主党が過半数を抑えるのではないかと言われていますが、もし上院で共和党が負けるようなことがあると、トランプ降ろしの動きが加速するのではと言われています。
 マーケットが事前にトランプ大統領の適応力を試す意味での株式の暴落なのかもしれないと感じているのです。ポイントは長期金利の上げという要素にどう対応するのかが腕の見せ所になるようです。中央銀行の独立性に対してどこまで冷静な対処ができるかが問われているのかもしれません。希望的観測も含めて、今回の危機は乗り切り、中間選挙も乗り切れるのではないかと思っていますが、行方を引き続き注視していきたいと思います。

 この欄で取り上げるには少し重い内容ですが、ポムゼル・ブルンヒルデ著『ゲッベルスと私──ナチ宣伝相秘書の独白』(紀伊國屋書店)をご紹介したいと思います。この本が出る前に映画「ゲッベルスと私」は、今年6月に岩波ホール創立50周年記念作品として公開され、非常に大きい話題を呼びました。撮影当時103歳だったポムゼル・ブルンヒルデが宣伝相のゲッベルスの秘書として1942年からナチスの宣伝省で働いた当時を独白するドキュメンタリーであり、彼女の深い皺が非常に印象的な作品です。映画の反響は大きく、ほとんど口コミで毎日鑑賞券を求めて多くの人が列をなしたと聞いています。
 同じく、紀伊国屋書店から書籍として発売されたのが本書であり、映画とは違い読者のペースで非常に多くのことを考えさせてくれる内容となっています。私は新聞広告を見て、これは読まなければいけないと思ってすぐに注文したのですが、正直に言うと結構手に取るまで時間がかかりました。
 得意の速記を見込まれた凡庸なポムゼルは、ナチスの宣伝省でゲッベルスの秘書として働くようになります。ゲッベルスは、ヒトラーとともに約600万人が犠牲となったといわれるホロコーストを誘引した人物でした。ポムゼルはゲッベルスがやってきたことについて知ることができる立場にありました。彼女の証言は、私たちにも呼び掛けているように感じます。「何も知らなかった。私に罪はない」と彼女は語ります。
 ユダヤ人の友人であったエヴァがアウシュヴィッツ強制収容所に送られていたことを知ったのも、戦争が終結してから60年も経過してからでした。「そういう時代だった」と、あまりに強大な権力であるナチスという組織に対して従順になる生き方が正しかったと断言できるのか、声を上げる勇気を持つことできなかった彼女を責めることができるのか。これらは現代を生きる私たちにも投げかけられているテーマなのかもしれません。
 ポムゼルは2017年に106歳で死去しました。ポムゼルが最後に残したメッセージから私たちは何を学ぶべきでしょうか。
 ラスト「私たちは受動的な態度と無気力によって、またあの暗黒の1930年代に戻ろうとしているのではないか? 〜新しい全体主義国家の誕生を見たくないのであれば、私たちは1930年代のポムゼルの経験と彼女の矛盾に満ちた生涯が、いま起きていることといかに類似しているかを真剣に受け止めなければならない」という箇所が、いまの私達に重く響きます。

 トランプ大統領や安倍総理のような強権的な政治を志向するリーダーの登場が、やがてナチスのような政権を作ってしまうのではないかという危うさを包含しているのが民主主義というシステムの最大の欠点だと思います。私たちが現状で起こっていることに無関心であり続けることが、そんな危機を呼び起こす原因になることをこの本は教えてくれているような気がします。
 ちょうど株式相場の暴落という事態に日米のリーダーがどのような対処をするかをちゃんと見極め、もし不都合な真実を見てしまった時には勇気を持ってそれに抵抗することが大切なのだと考えさせられる本になっています。私はいまのところ、しっかりとした資本主義、民主主義のシステムを尊重する対処をしてくれるのだろうと考えていますが、見ないふりをせずにしっかりと直視していきたいと思います。
                                            =以上=

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