トップが語る、「いま、伝えたいこと」

このページでは、舩井幸雄の遺志を引き継ぐ舩井勝仁と佐野浩一が、“新舩井流”をめざし、皆様に「いま、伝えたいこと」を毎週交互に語っていきます。
毎週月曜日定期更新
2021年6月14日
脱炭素社会の実現へ向けて (※佐野浩一執筆)

 4月22日に開催されたアースデー気候変動サミットで、ジョー・バイデン大統領は米国の温暖化ガス排出量を2005年の水準から50〜52%削減すると提唱しました。気候変動対策で米国が最前線に立つことを目指す取り組みとなります。
 バラク・オバマ大統領は「2025年までに26〜28%削減」すると表明していましたが、バイデン大統領はその目標を大幅に引き上げたのです。地球の平均気温の上昇を産業革命以前の水準からセ氏1.5度までに抑えることを目指すパリ協定を巡り、米国の協定順守への道筋をつける狙いがあると考えられます。この目標を達成するためには、エネルギー・運輸・農業などの産業界では、企業が変革ペースの大幅加速を迫られることになります。
 大変興味深いのは、こうした持続可能な社会への取り組みとして、GAFAが世界最先端への大きな一歩を踏み出そうとしていることです。
 バイデン大統領が大胆な表明をする約3週間前の3月31日、米Apple社は、同社の世界中の製造パートナー110社以上が、Apple製品の製造に使用する電力を100パーセント再生可能エネルギーに振り替えていくことを発表しました。
 「これはすごいことになる!」とワクワクし、同社のホームページなどでいろいろ調べてみました。
 この計画により約8ギガワット分のクリーンエネルギーが調達可能になる予定で、これが実現した暁には、CO2換算で年間1500万トン分の温室効果ガス削減に寄与することになります。これは、道路から毎年340万台以上の自動車を排除することに匹敵するというとんでもないことです。
 さらに、再生可能エネルギープロジェクトに直接投資して原料調達などで発生する温室効果ガス排出の一部を補償している他、カリフォルニア州における大規模なエネルギー貯蔵プロジェクト「California Flats」を通じて、再生可能エネルギーの社会基盤となる数々の新しいソリューションを先導するとしています。ちなみに、California Flatsは240メガワット時のエネルギー貯蔵能力を持つそうです。
 こうして関連情報を調べていると……。
 実は、Google社が一足先に、昨年の9月14日、2030年までに自社のデータセンターやオフィスで使うエネルギーを100%カーボンフリーにすると宣言していたのです。また、過去の排出量をすべて排除し、カーボンフットプリントをゼロにしたとも発表しています。
 カーボンフリーとは、カーボン(二酸化炭素)などの温室効果ガスを排出しないエネルギーを使うという意味です。同社は2007年に「カーボンニュートラル」を目指すと宣言し、「カーボンオフセット」などによってそれを維持してきました。カーボンニュートラルとは、「排出するカーボンと吸収するカーボンをニュートラル(同量)にする」という意味です。カーボン削減が難しい場合に温室効果ガス削減活動に投資することがカーボンオフセットです。あわせて、Googleが「カーボンレガシー」全体を排除したことも発表しました。これまでデータセンターやオフィスで排出してきたすべてのカーボンを相殺するカーボンオフセットを購入したことを意味します。これは、同社のこれまでのカーボンフットプリントがゼロになったことを意味していて、まさにGoogle社がこれを実現した初の大手企業になったということです。
 この目標を達成するために、風力と太陽光の発電を組み合わせ、バッテリーストレージの使用を増やし、電力需要予測を最適化するためにAIを活用するそうです。同社はまた、50億ドル以上を投資して、2030年までに5ギガワットのカーボンフリーエネルギーを生成できるようにし、500の都市でのカーボンエミッションの削減を支援するといいます。
 こうしたなか、水素がカーボンニュートラル社会を実現するために不可欠なエネルギーであるとして脚光を浴びてきています。利用時にCO2を排出しない、化石燃料と比較して質量当たりの発熱量が多いといった特徴が評価されてのことです。
 また、水素はさまざまな資源から多様な方法で製造でき、製造過程でCO2を排出させない手法もあります。具体的には、水を電気分解して水素を取り出す過程で、再生可能エネルギー(再エネ)を電力として使う場合です。この手法で製造された水素は「グリーン水素」と呼ばれます。一方、天然ガスや石炭など化石燃料から製造し、製造時に発生したCO2を大気中に放出すると「グレー水素」、発生したCO2を回収・貯留すると「ブルー水素」と呼ばれます。現在、世界で製造されている水素の大半はグレー水素ですが、カーボンニュートラルを実現するため、グリーン水素の普及を目指す動きが欧州を中心に活発となっています。
 このような「利用」と「製造」の面に加え、「貯蔵」や「輸送」の観点からも水素への期待が大きくなっているのです。風力や太陽光のように、気象条件や時間帯で発電量が変動する再エネは、需要に応じた安定的な供給ができないという課題があります。こうした課題に対し、蓄電池などエネルギー貯蔵技術の開発が進められていますが、再エネの余剰電力を水電解で水素へ転換することで再エネを「貯蔵」し、安定供給を実現できます。また、需要地から遠い地域に偏在する再エネを水素へ転換することで、送電網の制約を受けずに「輸送」することも可能となるのです。
 日本はいったいどうなのか……。世界の動きが活発化しているなかで、少々心配になってきました……。ところが、びっくり!
 温暖化ガス削減について、菅義偉首相は13年比46%減にするとの目標を打ち出しました。政策の「積み上げ」では届かない目標をあえて設定し、イノベーションを誘導する方向に賭けたということです。環境をテコにした各国の主導権争いがあり、対応を間違えば日本企業が国際供給網から締め出されかねないからです。
 そうしたなか、多くの国々で水素活用に向けた施策を示す「水素戦略」が策定されています。なかでも世界に先駆けて水素に関する国家戦略を掲げた国が、なんと日本なのです。
 日本は2014年6月に「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を発表し、17年12月には「水素基本戦略」を策定して水素に関する包括的な方針を示しました。30年までの目標として、国際水素サプライチェーンの構築や、国内再エネ由来の水素製造技術の確立などを掲げるとともに、ガソリンや液化天然ガス(LNG)と同程度のコストを実現する方針などを示しています。19年9月には「水素・燃料電池技術開発戦略」が策定され、技術開発促進のための重点分野が特定されました。
 とはいうものの、水素の社会実装に向けては克服すべき課題も多岐にわたります。
 第一に、製造コスト。日本の水素ステーションでの水素販売価格は政策的に1ノルマルリューベ(Nm3)当たり100円ですが、普及のためには大幅なコスト低減が必要です。   
 日本政府は、30年には輸入水素価格を30円/Nm3とする目標を掲げていますが、天然ガスやLNG価格に対するコスト競争力を水素が確保するまでの道のりは長いと囁かれています。特にグリーン水素を製造する場合には、再エネ電力のコスト低減や水電解装置の大型化・効率化などがカギとなるようです。
 第二に、輸送の問題です。パイプライン輸送の場合、水素は原子半径が小さく漏洩しやすいため、敷設や保守のコストが大きくかかります。水素を圧縮または液化する方法や、有機ハイドライド、アンモニア、メタンなどに変換して輸送する方法もあり、技術開発や実証事業が世界各地で進められていますが、いずれの手法も一長一短であり、さらなる検討が必要です。
 持続可能な社会づくりにおいて、日本はまだまだ後塵を拝する現状ですが、この水素戦略には期待したいですし、何らかのビジネスチャンスも巡ってくるものとワクワクしています。世界的には、GAFAの大胆な動きが目立っていて、大資本だからできることもたくさんあるのでしょうが、その一方で、小さくてもできること、小さいからできることもあるように思います。
 いずれにせよ、脱炭素社会の実現はもちろんのこと、持続可能な社会の実現に向けて実行しなければならないことは山積しています。美しい地球を子どもたちに残すために……。日本の企業もどんどん手を上げていかなければなりません。
                               感謝

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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長
1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。
2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けている。
著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。
佐野 浩一(さの こういち)
株式会社本物研究所 代表取締役社長
株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長
公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事
ライフカラーカウンセラー認定協会 代表
1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。
著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。
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