トップが語る、「いま、伝えたいこと」

このページでは、舩井幸雄の遺志を引き継ぐ舩井勝仁と佐野浩一が、“新舩井流”をめざし、皆様に「いま、伝えたいこと」を毎週交互に語っていきます。
毎週月曜日定期更新
2022年5月16日
美意識を育む (※佐野浩一執筆)

 美意識というと、多くのビジネスパーソンは、「何か大事なもののようには思うけど、どこか抽象的で、どうしたらいいのかわからない」という印象を持たれるかと思います。
 しかし、美意識は鍛え、育てることができます。それは、自身の感性に、経験を掛け合わせることによって確実に育つのです。
 身体能力であれば、鍛えた分だけ育めるので、とてもわかりやすいと思います。しかし。ある程度まで鍛えると、肉体的な限界をむかえてしまいます。たとえ、頂点に立ったアスリートでも、歳とともに身体能力は下降線をたどってしまいます。
 でも、美意識の世界は、おそらく死ぬまで鍛えられ、育み続けることができるように思います。とにかく「これで良い」と制限をかけてしまうのではなく、美意識をアップデートしていけたらと思います。
 何事もそうですが、「これで良い」と思った瞬間に、美意識の成長は止まってしまうように思うのです。だからこそ常に新しい世界にあえて身を投じ、自身の感性に新しい経験を掛け合わせ、自分自身をアップデートし続ける必要があります。
 株式会社船井総合研究所に籍を置いていた時、よく経営者の方々から、「(社員の)感性を磨くのには、いったいどうしたらいいんだろうね?」と質問を投げかけられたことがありました。当時は、「人材育成」のコンサルティングをさせてもらっていたので、余計にこうした質問をお受けしたのだと思います。
 そうしたとき、やはり答えに窮したものでした……。
 考えたあげく、
「〜社長、やはり、仕事の感性は仕事でしか鍛えられないので、経験を積んでいただくことだと思います。そして、もう一つは、何かを観たときに、『それはなぜそうなっているのか』を考えていただく癖づけだと思います。」
 ……と、お答えしていたのですが、あらためて、いま、この美意識のアップデートという一つの結論に導かれたのです。

 物に触れたり、体験したりする。自分がやったことがないこと、新しいことに触れていくということ。そこから、美意識を育んでいく……。
 たとえば茶道なども、先人が突き詰めていった美意識を身体化することによって、自らの美意識を拡張していく営みと言えます。
 千利休が言った「守破離」の「守」の部分は、まず先人がつくった型に徹底的に従うことです。そうやって先人の美意識を自分の中に取り込みます。茶道で「畳のへりから七つ目の位置に茶入れを置いてください」というような型は、それに従うと実際に美しいのです。型に従うことで美意識を身体化させることができるのです。
 先人たちが追求した美意識を、その人が残した型を真似ることによって、自分の中に取り込むことができます。
 これは、合気道の世界でも同じでした。まずは、とにかく型です。師匠の型を徹底的に観て学び、実際に自分でやってみて、また感じて、学ぶ……。型に始まって、型に終わる……。
 その上で「守破離」の「破」や「離」のプロセスは、それを破壊して、もう一回構築し直します。茶道に限らず「道」というものには、そうした美意識を取り込む仕組みが内在しているように感じています。でも、それは、ビジネスにおいてもまったく同じなのでしょうね。
 一方、美意識を育てるもう一つの方法は、美しい物に触れたり、使ったりすることだと思います。「本物の美に触れる」ことと言ってもよいでしょう。
 良質な物に触れるときに大切なのは、物として雑に扱うのではなく、対等に物と向き合うということです。物と真摯に向き合うことで、物から得られるもの、学ばせてもらうもの、想いを馳せられるものが出てきます。物を使うことで美意識を磨くためには、この基本的な姿勢が重要だと感じています。
 たとえば、ぼくは、コーヒーが趣味の一つなんですが、豆を挽く電動ミル、手動のミル、ゴールド製のドリッパー、美しい球形のポットなど、少しばかり上質なものを使っています。書道で硯と筆を洗うことまでが「書道」であるのと同様に、コーヒーを淹れたあと、片付けまですることで、これらのツールに対する思い入れが膨らんでいきます。自分の手でやるからこそ、「より大切に扱おう」という気持ちが自然と湧いてきます。
 このように物に丁寧に向き合って、「気を遣う」という部分がすごく大事だと思います。美しい物を丁寧に使うことで、その人の所作は磨かれ、その物によって美意識は育まれていく……、このことは、建功寺の住職・庭園デザイナーである枡野俊明先生の書物から学びました。
 美意識を育むためには、物の背景も重要です。物を使うことで、つくった人の想いや美意識を感じることができるのです。これは、“ほんもの”商品の普及を続ける株式会社本物研究所の仕事においても、同様のことを感じることがあります。
 使うことで、物に対する愛着も湧きますし、人の寿命を越えて物は受け継がれていきます。そして受け継がれていくことによって、また物に新たな物語が加わって、進化していきます。美意識は、使う人と物との両者の関係によって醸成されていくものなんですね……。
 物を使うことによって、使う人は、つくった人の美意識を自分の中に取り込んでいきます。そして自らの美意識を更新していくのです。
 物に関しては、本や写真でいくら知識を深めても、実物を目の前にして「美しいなあ」という感動を得なければ、その美を理解することはできません。
 できれば、見るだけでなく、手に取って質感を確かめ、美がそこに存在している「気配」のようなものをとらえることができるといいですね。

「目ではなく、皮膚で理解する。」
 NHK「プロフェッショナルの流儀」で紹介された、西陣織の老舗「細尾」の12代目経営者・細尾真孝氏の言葉です。
 すべての感覚器は皮膚の細胞から発展したといいますが、人間の五感の中でも根本的なのは、やはり触覚なのだと知りました。
 “ほんもの”商品では、やはり「竹布」がダントツにわかりやすいですし、その卓越した触り心地は、一度手にしたり、身に着けたりしたら、もう忘れられなくなります。実際、毎日、竹布のTシャツにそでを通すとき、何とも言えない至福の瞬間となります。
 アップルのMacbook Airも、質感は違えど、いつも撫でてあげたい感覚を覚えます。造形としては金属の塊なのですが、これまた何とも言えない質感を誇っています。最近、自宅のPCをHpのSpectre x360という2in1タイプのマシンに買い替えたのですが、これもまた同様の質感を感じて、とても満足しています。
 さて、話が少し逸れましたが、細尾氏は、「職人技が詰まったラグジュアリーブランドの製品でもいいですし、伝統の工芸品が並べてあるお店でも構いませんから、『物に触れられる場所』に行く経験を持っていただくと、美意識を育てることにつながる」と述べていらっしゃいます。
 これからは、経営も「美意識」の時代だと言われるようになりました。美意識を高める体験を、もっともっと積極的につくることが大切だと思うようになりました。先ほど触れた「竹布」のように、常に肌に触れる衣服の世界は、ある意味、いちばん美意識を高めるのに効果的だと思います。
 いずれにしても、美しいものに触れる、美しいと感じるものと向き合う経験から、美意識を常にアップデートしていけたらと思います。
 舩井幸雄は、新しい世紀は、宇宙の理に向かっていくと申しました。

複雑       ⇒ 単純
不調和      ⇒ 調和
競争・搾取    ⇒ 共生(協調) 
秘密       ⇒ 開けっ放し  
束縛       ⇒ 自由
不公平      ⇒ 公平 
分離       ⇒ 融合
デジタル     ⇒ アナログ
ムダ・ムラ・ムリ ⇒ 効率的
短所是正     ⇒ 長所伸展

 この変化といいますか、移行も、シンプルに「美の方向に向かう」ととらえたら、とっても腑に落ちる気がするのですが、皆さま、いかがでしょうか?
                            感謝

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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長
1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。
2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けている。
著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。
佐野 浩一(さの こういち)
株式会社本物研究所 代表取締役社長
株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長
公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事
ライフカラーカウンセラー認定協会 代表
1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。
著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。
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