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このページでは、舩井幸雄の遺志を引き継ぐ舩井勝仁と佐野浩一が、“新舩井流”をめざし、皆様に「いま、伝えたいこと」を毎週交互に語っていきます。
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2023年11月13日
本当の自由な生き方とは? (※佐野浩一執筆)

 いまのようなストレスフルな時代や社会において、思い悩むことがない人なんて一人もいないでしょう。そんな環境のもとで、私たちは、日々何らかのストレスを抱えて生きています。
 こんなふうに書き出してしまうと、なんだかとっても暗い感じになってしまいますよね。だからこそ、今回は、「エピクテトス」という哲学者の考え方をご紹介したいと思ったのです。
 古代ローマの5賢帝時代。
 エピクテトスは、奴隷という身分に生まれながらも人生を哲学に打ち込み、最終的にはローマ皇帝にまで影響を与えることとなります。マルクス・アウレリウスにも非常に強い影響を与えたとされる、ストア派の哲学者です。そして、いま、あらためて世界的に注目を集めていて、書物もたくさん出版されていました。
 生きづらさが増す現代において、エピクテトスが残した数々の言葉が「心がラクになる」「人生の助けになる」と支持を集めているのです。
 その要諦は、自分に起きた出来事や物事を、「自分次第でどうにかできることか否か」にわけるということにあると思います。
 私たちは自分以外の他人、物、自然を思い通りにコントロールすることはできません。これらの事で思い悩むのは時間の無駄でなるようにしかならない……と指摘しているのです。これは禅の教えにも通じるものがあると感じました。
 エピクテトスの教えでは、勉強して知識を身に着けることにゴールを置くのではなく、他人からの承認を求めなくなることが真の成熟と捉えていたようです。これはとってもユニークで、大切な視点だと思います。
 「自分が正しいと思うなら他人を恐れる必要はありません。自分の意志は不可侵のものであって、起こった出来事に善悪はないのです。結局、それをどうとらえるかは自分次第である」ということです。
 つまり、人々を不安にするものは、事柄それ自体ではなく、その事柄に関する考え方であるということです。ストア派の哲学によれば、不安に駆られること、悲しみに沈むこと、怒りに震えること、総じてこうした負の感情にさいなまれることが不幸の最大の原因であるとしています。
 私たちは、日々、様々な出来事に影響され、負の感情にさいなまれてしまいます。そんなとき、どうしても外界の事物や出来事を原因だと考えてしまいます。「自分は悪くない、あいつのせいだ」とか、「不遇な環境のせいだ」という具合に、人間関係や自分の置かれた環境を恨んでしまうのです。
 しかし、エピクテトスは、こうした見方そのものを根本からひっくり返す考え方を持っています。私たちに影響を与えていると考えられてきた外界の事物や出来事は、それ自体としては善悪どちらでもないというのです。つまり、人間を苦しめるものでは決してないと……。それをどういったものとして考えるか、その価値判断をくだすのは私たちそれぞれの考え方次第なのだということです。
 エピクテトスは、「不安」や「恐怖」は自分の考えから生まれる……と言いました。
 一般的には、「暗い場所」というのは、「怖いところ」という印象をもちますよね。
 でも、冷静になってよく考えてみると、「怖い」と感じるのは、あくまで自分の主観にすぎず、「暗い」という概念や性質に、「怖い」という性質が初めから備わっているわけではないことに気づきます。
 熱海の山の中で暮らしながらも、「虫」が怖い私などは、典型的な事例です。幼いころ、虫が大嫌いな母の影響で、触れる機会がほとんどありませんでした。違う見方をすると、単なる「不慣れ」が恐怖の感情に結びついている可能性が高いということになります。でも、いったんそうした感情に囚われてしまうと、「虫」自体はたいたいていは危険でないはずなのに、恐怖を感じてしまうのです。
 エピクテトスは、こうした感情に囚われた態度を、そもそも認識の誤りだと診断します。だから、不安や悲しみから脱却する道は、「自分がどういう考え方をしているか?」という徹底した自己反省に求められるということになります。

 ちなみに、エピクテトスは、冒頭に書いたとおり、奴隷の身分でした。両親が奴隷だったからです。おまけに彼は、足も不自由だったそうです。人びとは彼を不幸だと捉えていたようですが、哲学に没頭することで、強い心を手に入れ、不幸だなんて微塵にも思っていなかったようです。もちろん、こうした環境が彼の思想に大きな影響を与えたことは事実だと思います。

 さて、2つの人生があったとします。
 
@何かにとらわれている人生
A何にもとらわれない人生
 あなたはどちらを選びますか?

 おそらく多くの人は「@何にもとらわれない人生」を選ばれたのではないでしょうか?
そうなんです。人間は基本的に自由を求めて生きているのです。誰だって何かにとらわれた人生は窮屈に思えます。

 あなたが求めるモノは何ですか?
 富、名声、権力などを求めていませんか?
 
 このように問われると、ドキッとしますよね。多くの人は有名人やお金持ちを見ると、自分もそうなりたい、と思うかもしれません。
 でも、それが本当に幸せなのでしょうか?
 そう問いなさい……とエピクテトスは言うのです。

 さらに……、「彼らは自由に生きることができていない」と。
 つまり、地位や名誉や財産にとらわれた人生を過ごしていて、それが本当に豊かな人生だと言うことができるのか……と、彼は問うのです。
 「何にもとらわれず、自由に生きたい」と「富、名声、権力が欲しい」という2つの欲求は相反しています。
 そしてエピクテトスは、もし「良い生き方」「幸せな人生」を手に入れたいのであれば、自由に生きることを考え、富、名声、権力などは軽く見よ、と言います。
 この発言の裏には、やはり奴隷の出身であるという事実が見え隠れします。自分ではどうしようもない物事……。だから、大事だとは考えない……。
 自由に生きたいなら、富、名声、権力を軽視すればよいということです。なぜなら、これらは自分の力でコントロールできないからです。
 人間の身に起こる物事は大きく分けて2つに分類することができます。

@自分の力でコントロールできるもの
A自分の力ではコントロールできないもの

 なにか感情が動いてしまったとき、@かAのどちらであるかをまず考えてみましょうということです。そして、自分でコントロールできる物事は重要視し、自分ではどうしようもない物事は軽視するという考え方です。

 たとえば、自分の発言、表情、食べ物、自分の持ち物、睡眠時間……といった、自分でコントロールできるものは重要視。

 逆に、富、名声、権力、他者、天気……というような、自分がどんなに努力してもコントロールするのが難しいモノは軽く見るということです。

 世の中には、自分ではコントロールできない、どうしようもない物事がたくさんありますよね。エピクテトスは生まれつき奴隷だったので、余計にこうした感覚が強くなったのだと思います。自分がコントロールできない物事に毎回反応していると、この世の不幸が全て自分に降りかかっているような錯覚に陥ります。自分にコントロールできないことばかりに注目して、実際にコントロールできず思い通りに物事が進まないと、怒ったり悲しんだりします。それでは「良き人生」を生きることはできません。
 ちなみに、エピクテトスの哲学はストア派と呼ばれ、「ストイック」という言葉の語源にもなったと言われています。納得ですよね!!

 エピクテトスによれば、自由に生きるとは、「自分の意志を貫いて生きること」を指します。自分が正しいと思うなら、他人の意見など気にする必要がない……という考え方です。
 彼は奴隷だったので、多くのものを管理されていました。自由に働くことも動くこともできない、食べたい物もたべることができない……。でも、1つだけ自由に使えるモノがあったのです。
 それが「思想」でした。
 心の中にある判断も思想も意志も全て、自分の所有物。思想は、自由に扱うことができ、コントロールできるのです。
 しかし、多くの人は自分の意志を十分に持たず、他人の考えに引っ張られてしまうこともよくあることです。これは、自分以外の誰かに自分の意志を明け渡すことになる……。人間にとって本当に自由なのは意志だけなのです。そんな意志を他人に渡してしまうなんて、絶対にやってはいけない、とエピクテトスは言います。
 人間の意志とは、自分が何をしたいか、何を大切にしたいか、何を重視したいか、を意味しています。人間に与えられた唯一の本当の自由。他者の意見、周りの目、全て関係ありません。
 「自分のやりたいように生きればよい!」
 エピクテトスは、こう主張するのです。

 ところが、人は目の前の快楽に負け、ときに本当に大事なことを見誤ってしまいます。
驚いたのですが、目の前にある快楽の中でも厄介なのは、「承認欲求」なんだそうです。
「承認欲求」はだれにでもあります。しかし、これが大きくなりすぎるのは良くないのです。なぜなら、承認欲求が大きくなればなるほど、それが自身を奴隷にしてしまうからです。承認欲求を得るために他人の目ばかりを気にすることは、自分の行動を自分以外の誰かに握られ、支配されていることと同じなのですね。
 つまり、自由な生き方を自ら放棄していることにつながると……。だから、承認欲求はできるだけ持たないようにしようということです。
 そのために、自分がどのような人間かをしっかりと把握し、自分の強みに磨きをかけることだ、とエピクテトスは言います。常に自らを点検し、自分の中にある強みを見つけ出し、その強さに磨きをかけていくこと。このことを、エピクテトスは「内省」と呼びました。

 結局は、
「自分を知り、自分を大事にする」こと。
「他人からの評価ではなくて、主体的に生きる」こと。

 舩井幸雄の思想とも大きくかぶってくるところがあるなって感じました。
                          感謝

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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長
1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。
2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了)
著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。
佐野 浩一(さの こういち)
株式会社本物研究所 代表取締役社長
株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長
公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事
ライフカラーカウンセラー認定協会 代表
1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。
著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。
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