トップが語る、「いま、伝えたいこと」
今年もご愛読を賜り、ありがとうございます。今回が2024年の最後の「いま伝えたいこと」の発信になります。激動の予感が充満している年末ですが、来年以降もタイムリーに世の中の流れを独自の視点からお伝えしていきたいと思います。
年末の金融相場は円安の流れが強くなっています。アメリカの利下げのペースが下がっていくことが打ち出され、日銀は利上げがなかなか難しい状況が続いています。少なくとも来年の賃上げの動きが確かなものとなることが実感できるまでは明確な利上げの方針は打ち出せないようにも思います。そんな中で、日米の金利差がそれほど縮まらないのではないかという思惑から円安傾向が強くなっているように感じます。ただ、一時のような投機筋による円を売り浴びせて大きな相場を作ろうという動きにまではまだ至っていないので、トランプ就任を睨んだ神経質な動きになりそうです。
株式市場は今日12月30日が大納会です。とりあえず27日の前場は4万円台に到達して終わりました。ただ、少数与党になってしまった石破政権の不確実性と、トランプ大統領との相性がどうなのか、もしくは日本の企業も含めて世界の大きな流れについて行けるかどうかの見極めが難しいということで、出遅れ感は強いものの外国人投資家が積極的に買い上がれないといった流れが根強くありそうです。ただ、日経平均が34年ぶりに最高値を更新した年でもあるということを再確認しておいてもいいと思います。
来年も参議院選挙があり、それに向けて石破政権が続いていくのかどうか、そもそも来年度予算はちゃんと組めるのか、そこで混乱する場合は石破政権が存続できるのか、など国内にも不確定要因が山積しています。また、何といってもトランプ大統領という既存秩序を崩壊させようという強力なリーダーの下、誰も何が起こるのかわからない世界情勢下で、必然的に起こる大変化にどう対処していけるかが問われる1年になりそうです。
アメリカでは、日本市場に影響が大きいナスダック総合指数が26日(木)の終値では2万の大台をキープしています。カレンダーの関係で日本の市場が1週間実質的に閉まってしまうことになるので、その間に海外勢による攪乱が起きるのではないかという心配がされる見方も強まっています。わからないときは、短期筋の方はいったん手仕舞っておくというのが鉄則のようにも思います。長期投資を指向されている方は、短期的な動きを気にしないことに尽きると感じます。年明け後も少なくてもしばらくはポジティブな方向に動くと見ていていいのではないでしょうか。
日本の抜本的な競争力を上げていくにはどうしたらいいのかをお正月に考えてみるのに最適ではないかと感じ、日本共創プラットホーム社長の冨山和彦先生の『ホワイトカラー消滅 私たちは働き方をどう変えるべきか』(NHK出版)を今回はご紹介させていただきたいと思います。
おなじみの冨山先生による現在の日本社会へ、特に雇用について必要な提言が書かれたものです。非常に明快に、分かりやすい言葉で綴られた本であり、勢いよく読み切ることができます。脱線が少なく要点を挙げて綺麗にまとめられているので、読み手にとってはありがたく、著者のメッセージを読み取りやすくもあります。
読み進めていくと、通常はあまり議題に上がらない現在の雇用システム自体の問題ですが、そこは要改善の必要があるということです。
そもそも従来の年功序列を基本とする正規雇用はもちろん、現在広まっている非正規雇用形態ですら世界的にみれば時代遅れであり、そこから変化していく必要があるのも理解できます。グローバルに戦っていかなければいけない(象徴的に)東京にいるホワイトカラー層の人余りと、地方(ローカル)でエッセンシャルワークをしていく人の圧倒的な人手不足が現実化しつつある中で、ホワイトカラー層の再教育とエッセンシャルワーカー層をしっかり稼げるアドバンス人材に変えていく試みが必要であるという見方は、冨山先生独自の視点でとても参考になると思います。
私も含めて、東京でデスクワークをしている層はAI(人工知能)にどんどん代替されていく現実を目の当たりにしています。コンサルタントで言うと、いまはAI周辺業務をBI(ビジネスインテリジェンス)と称してまだ仕事を作っていますが、それも早晩AI自らが行っていくことは確実で、できる人ほどコンサルの仕事の将来性を悲観的に見ています。
一方、地方の実業を担っている企業は慢性的な人手不足と生産性の低さに直面しています。人材のミスマッチの原因は、舵取りを間違え時代に合わない方向へ切ってしまったことと、正しい方向の政策もなかなか思い通りに進まずに結果的に失敗に終わってしまったことにあります。その連鎖と積み重ねによって、現在の日本は労働者にとってあまり良いとは言えない環境であることを認めざるを得ないようです。
また経済的な二極化が進行し、上の階層で起こる好循環と、下の階層の悪循環が発生していて、産業、教育、政治。あらゆる分野で何かしら根深い問題を抱えている状態です。
当然これらの解決は非常に難しく、それを実現するためには極端な方法を取る必要があるようです。羅列されている内容を見ると非常に絶望的な気分に襲われてしまいます。しかしただ人手不足で企業が人手を求めている時代、やり方次第では現在の雇用環境が大きく改善される可能性も秘めている状態ではあります。例えば、伝統的大企業であっても日立のようにリーダーの力で時間はかかりましたが、見事に変化できた企業もあることも紹介されています。
変化をなるべく避けようとする、現在のあり方はすでに限界を超えており、現役世代からは多くの悲鳴、政府への非難がより強く叫ばれるようになっている現状を考えても、あらゆる意味での昭和の成功体験から残ってしまっている慣習の思い切った排除の必要性を強く感じさせます。時間のあるお正月にしっかりと読み込んでいただいて、近未来のあり方を考えてみてはいかがでしょうか。
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2024.12.23:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】日本のお水は、本物研究所が守る! (※佐野浩一執筆)
2024.12.16:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】イスラエル (※舩井勝仁執筆)
2024.12.09:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】健全思考でネガティブを手放す! (※佐野浩一執筆)
2024.12.02:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】SFから考えるAIが浸透した社会 (※舩井勝仁執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |