トップが語る、「いま、伝えたいこと」
おそらく政治や選挙のことに触れるのは、はじめてではないかと思います。
実は、大学は法学部政治学科を卒業しています。専門は選挙。実はメチャクチャ興味関心の高い領域でもあります。今回はとくに思うところがあったので、書かせていただきます。少々お付き合いください。
来週8日の投開票に向け、選挙戦がスタートしました。通常国会の冒頭解散は60年ぶり戦後2回目で、1月召集となった1992年以降では初。解散から16日後の投開票は戦後最短で、「異例ずくめ」の選挙となります。
高市総理が解散を決断した理由について、危機管理や成長を後押しする積極投資などを進めていくとした上で「抜本的な政策転換の是非について堂々と審判を仰ぐ」と強調されています。日本維新の会との新たな連立に対しても信を得たいとし、首相としての進退を懸けると断言されました。
これによって、通常国会で審議する予定だった2026年度予算案は、解散によって3月末までの成立が難しくなります。その場合も行政の活動が停止しないよう、一時的な予算である「暫定予算」が組まれるとみられます。最短の選挙戦も、政治空白を少しでも少なくするというのが表向きの理由でしょうが、唐突感は否めません。野党からは「国民生活を政局の犠牲にしている」「経済後回し解散」との批判が出ています。高市総理は補正予算で物価高対策などに取り組んでいるとし、「万全の態勢を整えた上での解散だ」と反論していますが果たしてどのように受け止められましたか?
今回の選挙を前にして、高市総理に対する私の思いは、単純な賛否では割り切れないものになっています。これまで示されてきた国家観や、安全保障、経済主権に対する姿勢には共感する部分もあります。日本の進路を真剣に考えようとしている政治家であることは間違いないでしょう……。たぶん……。だからこそ、今回の選挙の争点や公約のあり方を見たとき、強い違和感と同時に、深い危惧を覚えます。
まず最大の論点として浮かび上がるのが、消費税です。今回打ち出されている「2年限定の消費税減税」という方針は、物価高への対応策として一定の評価を受けているようですが、現場の生活感覚とは大きなズレがあるように思います。たとえば、地方のスーパーでは、ここ1年で牛乳やパン、卵といった日常品が軒並み2割前後値上がりしています。ガソリン価格の高止まりは、車が必須の地域では生活費そのものを直撃しています。こうした状況は「2年で終わる」問題ではありません。
にもかかわらず、減税は期限付きで、その後は元に戻すことが前提とされています。仮に2年後、物価高が完全に収束していなかった場合、再び消費税を引き上げるのでしょうか。そのとき、国民は納得できるのでしょうか。過去を振り返れば、消費税は一度上げると下げることが極めて難しく、逆に下げたものを元に戻すことは、強い反発を生むことが分かっています。そうした現実を踏まえずに「とりあえず2年」という対応をすること自体が、あまりにも軽く感じられるのです。
一方、連立のあり方にも同様の違和感があります。「日本維新の会が自民党政権のエンジンになる」と吉村代表はしきりに主張されていますが、耳触りは良いものの、その中身が見えてきません。たとえば同党は、これまで医療費の抑制や社会保障の効率化を強く主張してきました。一方で、自民党は地方や業界団体との調整を重ねながら、制度を維持・改善してきた歴史があります。もし維新が「エンジン」になるのであれば、医療や社会保障の現場では、これまでとは異なる改革が進む可能性があります。その是非を、私たちは選挙で問われているのでしょうか。
防衛費のさらなる拡大も、今回の選挙で避けて通れない争点です。防衛費が増額されること自体を、感情的に否定するつもりはありません。現実に、周辺国の軍備拡張や国際情勢の不安定化を見れば、日本の安全保障をどう確保するのかは重要な課題です。しかし問題は、そのスピードと議論の浅さです。防衛費は恒久的に拡大される方向で進んでいる一方で、その財源については曖昧なままです。消費税減税は期限付きなのに、防衛費拡大は恒久的。この非対称性は、多くの国民にとって納得しがたいものではないでしょうか。
さらに懸念されるのが、非核三原則の扱いです。日本は被爆国として、「核を持たず、作らず、持ち込ませず」という原則を掲げてきました。これは単なる理想論ではなく、日本がどのような国でありたいのかを示す、戦後の重要な選択でした。2024年、広島、長崎の被爆者の全国組織、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)がノーベル平和賞を受賞されたことは記憶に新しいと思います。日本被団協の代表委員の田中熙巳さんは、演説で、ロシアによるウクライナ侵略やパレスチナ自治区ガザでの戦闘に触れ、核兵器が二度と使用されてはならないとする「『核のタブー』が壊されようとしていることに限りない憤りを覚える」と話されました。スピーチの終わりには、「核兵器も戦争もない世界の人間社会を求めて共に頑張りましょう」と呼び掛けられました。にもかかわらず、近年、核抑止力の議論が現実論として語られる中で、この原則が徐々に相対化されているように感じられます。たとえば「議論すること自体は否定しない」という言い回しは、一見すると冷静ですが、その積み重ねが原則の空洞化につながる可能性は否定できません。
社会保障もまた、今回の選挙で本来もっと正面から議論されるべきテーマです。年金制度の将来、医療費の負担、少子化対策。これらはすべて、国民一人ひとりの人生設計に直結します。たとえば、地方の中小企業で働く人にとって、将来の年金水準がどうなるのかは切実な問題です。しかし現状では、「持続可能性の確保」という抽象的な言葉ばかりが並び、具体的にどの世代が、どの程度の負担を負うのかが見えにくいのです。
賃金と中小企業の問題も同様です。賃上げを進めると言われても、実際には原材料費やエネルギーコストの上昇を価格に転嫁できず、賃上げどころか雇用維持に苦しんでいる中小企業は少なくありません。ある製造業の経営者は、「賃上げと言われても、まずは会社を潰さないことが先だ」と語っています。これが現実、まさに切実なんです。こうした現場の声が、政策にどこまで反映されているのか、疑問を感じざるを得ません。
最後にエネルギー政策にも触れておきたいと思います。原発の再稼働や活用が語られる一方で、地域分散型エネルギーや再生可能エネルギーへの投資が、どこまで本気で進められるのかは見えてきません。原発は脅威であるとわかっていながら、まだ原発を再稼働させるのかという怒りもあります。エネルギーは安全保障であると同時に、地域経済の基盤です。地方で小規模な再エネ事業を進めている人たちが、将来に希望を持てる政策になっているのか、その視点が欠けているように思えてなりません。
文字数の縛りもあり、総花的?にいくつかの課題についてコメントしましたが、こうして振り返ると、今回の選挙で感じる最大の違和感は、「国の方向性が静かに変わりつつあるにもかかわらず、その是非を正面から問う選挙になっていない」点にあるんじゃないかと思います。消費税、防衛費、非核三原則、連立のあり方、社会保障、エネルギー。どれも本来、国民に選択を委ねるべき重要なテーマです。
私は、政治、政治家にはこれからも問い続けたいと思いっています。
公約とは何か、選挙とは何のためにあるのか。今回の選挙は、単に政権を維持するためのものではなく、私たちがどんな国の未来を選ぶのかを決める場であるべきです。その重みを、政治も、そして有権者である私たち自身も、改めて受け止める必要があると、強く感じています。
あと一週間。
あなたはどんな未来を選ばれますか?
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役会長公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』 |











株式会社船井本社 代表取締役社長



















