トップが語る、「いま、伝えたいこと」
3月19日先週末の東京市場は日経平均が1866円安と急落しましたが、夜間の日経平均先物はわずかですがプラスで終えました。様々な逆風下での日米首脳会談もあった中で、これは「健闘」と呼んでいい結果だと思います。背景にあるのは、高市・トランプ首脳会談の結果が「最悪を回避した」という安堵感です。最大の懸念はホルムズ海峡への自衛隊派遣を約束させられることでしたが、この点はうまく逃げられたと言っていいでしょう。
その理由は三つ重なりました。追加の対米投資という大きな手土産、自衛隊を派遣できないという憲法(アメリカに押し付けられたものだというのが最近の日本のコンセンサスになってきています)・法律という制度的な盾、そしてトランプの訪中延期によって首脳会談の地政学的文脈がずれ、アメリカ側の要求圧力が相対的に分散したことです。手土産の質も大きかったと思います。エネルギー分野でのアメリカ産原油・LNG調達拡大が加わったことで、トランプ大統領が最も好む「ウィン・ウィン」の構図を、実体を伴って提示できました。アメリカのエネルギー産業が潤い、日本の中東依存リスクが低下し、さらに「だからこそホルムズ派遣は不要」という論理的な着地まで可能にしています。軍事問題を経済問題に変換した、巧みな設計だったと言えるでしょう。
この手土産は、高市政権が掲げる戦略17分野という国内産業政策とも方向性が一致しています。AI・半導体・核融合・フィジカルAIといった分野への重点投資は、日米のサプライチェーンに日本のピースをはめ込むという発想と表裏一体です。外交と内政が整合している政権という印象を、海外の長期投資家に与えることができたのではないでしょうか。
実際、運用資産150兆円を誇るカナダの二大公的年金が、相場の乱高下にもかかわらず日本株を中期的に買い増すと表明しました。その動機として「米国資産偏重の是正」が挙げられていますが、背景にはトランプ政権下での米国資産リスクへの警戒と、それに対する日本の相対的な安定性への評価があると思います。
加えて、岸田・石破と続いた「選挙で負ける弱い政権」から、総選挙で歴史的大勝を収めた「強い政権」への転換という政治的評価も、海外機関投資家が最も嫌う「政策の不連続性リスク」を大幅に低下させる要因として働いているでしょう。こうした海外長期資金の構造的な流入と、新NISAを通じた国内個人投資家の逆張り買いという「二重の床」が形成されつつあります。それが、“FRBの利上げ排除せず”発言、原油高、日銀のタカ派姿勢という三重の逆風の中でも、日経平均がホルムズ海峡の実質閉鎖で危惧されていた5万円台割れに陥っていない本質的な理由ではないかと思います。課題は山積していますが、設計の方向性として、久しぶりに筋の通った大きな絵が描けているのではないでしょうか。
今週は高市政権の特異な立ち位置を考える上でも参考になる石田健著『カウンターエリート』(文春新書)を紹介したいと思います。
著者は1989年生まれの起業家で、現在はニュース解説メディアの編集長を務めています。最近の世の中の動きに精通した方です。政治家や官僚は諸悪の根源、インターネット上を主流としないメディアは時代遅れのオールドメディア、こんな言説がSNSなどを中心に当たり前のように飛び交い、受け入れられている現状を、そんなエリートに対抗する軸としてカウンターエリートとして紹介してくれています。
既存のエリートと呼ばれた層が、年齢層問わず多くの人間から批判に晒され、そこに、特にオールドメディアと表されている相手と対立する位置を取った人間が多くの人気や支持を集める。この世界各国で発生している現象はどうして起こっているのか、それについて教えてくれるものとなっています。表題にもある『カウンターエリート』とは、現行システムへの問題意識を持った対抗勢力としての存在であり、エリートと付いていますが学歴や富などに左右されず、比較的保守寄りの思考を持った人である事が多いようです。目次のすぐ後、第1章が始まる前に、イーロン・マスク、トランプ大統領、バンス副大統領、ピーター・ティールとジョー・ローガンとカーティス・ヤーウィンの写真と関係図が載っており、本書の本筋はアメリカのカウンターエリートについてですが、興味がある方は本をぜひ読んでください。
個人的には、例えば、ローガンやヤーウィンのように、背景や思想がよくわからない人物が登場する箇所では、生成AIに聞きながら理解していきました。ほとんど知らなかったアメリカの現代思想の背景を暗黒啓蒙や加速主義という文脈で知ったことが個人的には最大の収穫でした。読者の皆さまの興味とは外れると思うので、以下の考察では日本のカウンターエリートについての読後感を書かせていただきます。
該当するのは兵庫県の斎藤元彦知事や元広島県安芸高田市長で前回の都知事選挙で小池都知事に次ぐ約166万票の得票を得た石丸伸二氏、現在は名誉毀損容疑で起訴されている元N国党党首の立花孝志氏などだと思われます。また高市総理も当選回数を重ねた自民党の代議士ですが、仲間を作らないというそれまでの自民党総裁や幹部になった方々とはまったく違う政治経験を経てこられたことを考えるとカウンターエリート的な存在ではないかとも考えられるのかもしれません。
本書ではどのようにしてカウンターエリートは生まれ、もてはやされる土壌ができ上がっていったのか、震源地ともいえるアメリカから世界へ広がっていった過程が説明されています。日本の現状については、上記の方々について考えていただければご理解いただけると思いますが、彼らに限らずSNSや動画サイトはウンザリするほど政治的な投稿で溢れ、対立する主義主張を持つ人間や政治団体への過剰とも言える批判に溢れています。そして、いままで政治に興味を持ってこなかった、既存の生活に不満を持っている層こそがこのトレンドにハマりやすいように感じます。
政治に関心を持つのは良いことであり、一概に何が正しいか決められるものではありませんが、自らと相対する層には非常に攻撃的になってしまう傾向が見られるので、個人的には巻き込まれないように距離を置いて敬遠している部分がある事は否めません。しかし、ここまでカウンターエリートたちが大きな勢力となったという時点で、それだけ多くの人々が現状や政治に不満を持っていたのも確かであり、抜本的な改革が求められ、その結果新しい要素を多く持ったトランプ大統領や高市総理などの政治家が躍進したのも確かでしょう。
支持者が政治を深く知るにつれて、カウンターエリートの中でも自然な選別が発生しています。例えば石丸氏は地域政党を立ち上げましたが上手くいかず、立花氏はあまりにも強引なやり方で逮捕されるまでに至ってしまい、問題のある行動を起こせば離れる理性は多くの方が持っています。現在は協調できていない部分も多いですが、新しい価値観は歓迎すべきものであり、既存の価値観と調和することで停滞した社会から脱却へ向け動くキッカケになる可能性とエネルギーを秘めているようにも感じられます。前半で論じた高市政権の成功は、カウンターエリートが既存のシステムと調和した稀有な例かもしれないという点から考えを深めていきたいテーマです。
=以上=
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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役会長公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』 |










株式会社船井本社 代表取締役社長



















