トップが語る、「いま、伝えたいこと」
日経平均株価は荒い動きを続けながら6万円台半ばの水準を固めているように感じています。先々週に書いたPER(株価収益率)20倍の適正水準の問題は、植草一秀先生のレポートが教えてくれましたが、大手企業の3月決算が発表されていい業績で増益になったことでこの水準が7万円程度に引きあがったということなので、7万円ぐらいまではバブルと言えないことになったようです。インフレになると企業の見せかけの利益は上がります。
それが預貯金を投資に変えておかなければいけない主な理由ですが、値上げが順調にできている間は企業の業績はまだまだ堅調だと考えておいていいのかもしれません。
気になるのは、長期金利が上がってきたこと。3%も視野に入ってきて、日本の財政構造を考えると利上げはできないと言われたのですが隔世の感があります。インフレで税収も上がっているので財政的にもまだ許容範囲なのかもしれませんが、この金利水準になると経営者としては完全にインフレにマインドを変えないと大変なことになります。値上げと賃上げをしっかりとやり切りながら設備投資も積極的に行っていく強気のアニマル・スピリットが要求されていることをぜひ感じていただきたいと思います。
円安傾向もなかなか是正されません。連休前の政府の為替介入で155円台ぐらいの円高になったのですが、気がつけばまた160円越えが視野に入ってきました。昨年は貿易黒字にもなり経常収支は過去最高を記録したのですが、企業が設備投資をした分の配当のほとんどは現地で再投資されるので日本に戻ってきません。IT赤字と言われているサービス収支もずっと大きな赤字の状態が続いているので円安を活かした輸出の促進に取り組まないといけないのではないかという問題意識を感じます。
大企業はサプライチェーンや人手不足の問題等で国内回帰は難しく、大きく輸出を伸ばすのは現実的ではないと思います。それよりも海外で事業をした方が利益を上げやすく円安で円に換算した利益も上がりやすいのでますます海外での事業に力を入れていくことが合理的だということになりそうです。私が期待しているのは、円安を活かして中小企業の商品やサービスを輸出することによる貿易黒字化達成で、長い目で見るとそれが円安是正にもつながっていくと思っています。
そんな私の問題意識に応えてくれている本を見つけましたので紹介させていただきたいと思います。ゾス山本、岩田温共著『昭和が9割正しい!』(ビジネス社)です。ビジネス社とは親しくさせていただいていて私が興味を持ちそうな本を何冊か時々いただいています。だから、この本も会社の机の上で積読になっていたのですが、あまり興味を持てずにそのままずっと放置していました。ところが、ザ・フナイの9月号(書店発売は8月初旬)に旧制高校の話や特攻の話を書きたいと思って調べ始めると共著者の岩田先生の『後に続くを信ず 特攻隊と日本人』(かや書房)が必読書だということで読んでみました。
それで机の上に載っている本も岩田先生のご著書であることに気がついて改めて気がついて読み始めたのです。共著者の山本社長は伝説の営業マンで、光通信で28歳の時に取締役になり1兆円の売り上げを誇るチームを率いた実績を持っていらっしゃいます。最近では、人材育成に力を入れていて、ブラック企業のどこがいけないというYouTubeがバズっていらっしゃるということです。ペンネームのゾスは光通信社内で使われている挨拶で、「お疲れ様です」を略して「オス」というのですが、さらにそれの上位概念で主に上司が部下に対して使うそうで「ゾス」と気合をいれるような状況で使われるということを教えられました。
光通信は営業が強いことで有名な会社ですが、父は実は同社の重田康光社長のことが好きでした。父自身が、営業が得意だったこともあるのですが企業経営は営業力が一番大事だという真理があり、何と言ってもその点を評価していたように思います。私は不勉強で当時の伝説の山本常務の存在は今回初めて知ったのですが、YouTubeの硬派なイメージと違って本書を読ませていただくととても利他の心を持っておられて部下に対する愛情にあふれている方だということがよくわかります。
いまの働き方改革やハラスメントを気にする文化に対して警鐘を鳴らしていてゾスという気合で何でも解決できた昭和のあり方が正しかったということをお二人で対談しているのですが、私が一番共感したのは山本さんが輸出の大切さを何度も強調されていることでした。実は、この本は昨年の夏に出版されたものなのでいつものように新刊本の紹介ではないのですが、中小企業こそ輸出に力を入れて欲しいということを私も常々思っていたのでのっからせていただこうと思ったのです。
2週間前の当欄で紹介させていただいたように昨今の船井総研では100億円の中堅企業になることのご支援を積極的にさせていただくようになりました。そして、100億円の内約3割を輸出で上げるということを積極的に提案していて出口恭平取締役専務執行役員がコラム(https://www.funaisoken.co.jp/press/28006)で具体的な施策を提案しています。コラムで紹介されている提携した会社のことを異業種交流会でご一緒している経営者の方から教えていただいたこともあってシンパシーを覚えているのですが、日本は競争力を回復するために輸出に力を入れて外貨を稼ぐという発想をもう一度取り戻す必要があると思っています。
残念ながら自動車や製造装置以外の大企業は輸出力をほとんど失ってしまったのが現状だと思います。大企業は海外で儲けて経常収支の黒字に貢献しています。しかし、その黒字は日本に還流せずに現地に再投資されてしまうので円高につながっていないのが実状です。実は、ほとんど輸出を考えていなかった中小企業が長期計画で輸出に取り組むことの方が貿易赤字を減らして黒字化する鍵を握っていると思います。
インバウンドに訪れてくれる外国人の方々から日本の製品やサービスがこれほどの評判を得ていることを考えても、うなずけるところがあるのではないでしょうか。ちょっとした工夫と努力で海外に出て外貨を稼ぐことができ、縮小していくことが確実な日本のマーケットだけではなく海外に積極的に進出することを中小企業が真剣に検討することに合理性があると思っています。そのことを実際にドバイに私財を投じてまでやっている山本さんの発言にはうなずけるところがたくさんありました。いい面で昭和を懐かしみながらも、日本の将来を考えるにはとてもいい本ですので、ぜひお読みいただければと思います。
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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役会長公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』 |











株式会社船井本社 代表取締役社長



















