トップが語る、「いま、伝えたいこと」

このページでは、舩井幸雄の遺志を引き継ぐ舩井勝仁と佐野浩一が、“新舩井流”をめざし、皆様に「いま、伝えたいこと」を毎週交互に語っていきます。
毎週月曜日定期更新
2026年8月17日
「光を当てる」〜舩井幸雄が見抜いたアドラー心理学の価値〜 (※佐野浩一執筆)

 舩井幸雄は、人を驚かせることが大好きでした。
 もちろん、ただ奇をてらうという意味ではありません。「世の中には、まだ多くの人が知らない本物がある」。そう信じていたからこそ、新しい情報や、埋もれてしまった真実を見つけると、自ら確かめ、自分の言葉で語り、多くの人へ届けようとしました。
 講演会でも、よくこんな場面がありました。
「舩井先生、それはまだ話してはいけないことじゃないですか。」
「そんなこと初めて聞きました。」
「そんなことが本当にあるんですか。」
 会場がどよめくたびに、舩井はどこかうれしそうな表情を浮かべていました。
 それは、人々を驚かせたいからではなく、「世の中には、まだ光が当たっていない本物がある」という確信があったからです。
 そんな舩井が、20年以上前に光を当てたものの一つが、「アドラー心理学」でした。
いまでは『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健著 ダイヤモンド社)の大ヒットによって、アドラーという名前を知らない人は少なくなりました。しかし、この本が出版されたのは2013年です。
一方、舩井はその約10年前、2004年刊行の『未来への処方箋』(ビジネス社)の中で、実に約30ページを費やし、アドラー心理学を紹介しています。当時の日本では、心理学といえばまだフロイトやユングが中心でした。アドラーは専門家の間では評価されながらも、一般にはほとんど知られていない存在だったのです。
 なぜ、舩井はそこまで早くアドラーに注目したのでしょうか。
 まず、アドラー心理学とはどのような考え方なのかをまとめてみます。
 アドラーは、オーストリアの精神科医アルフレッド・アドラー(1870〜1937)が築いた心理学で、フロイト、ユングと並び「心理学の三大巨頭」の一人とされています。しかし、その知名度は長らく2人に比べて高いとは言えませんでした。
 アドラー心理学には、いくつかの大切な柱があります。
 1つ目は、「原因論ではなく目的論」です。
 私たちはつい、「過去にこんな経験をしたから、いまの自分がある」と考えがちです。しかしアドラーは、「人は過去に支配される存在ではない。未来の目的に向かって、いまの行動を選んでいる」と考えました。
 たとえば、「人前で話せない」のは、過去に失敗したからではなく、「人前で失敗して傷つきたくない」という目的があるから、その行動を選んでいるという見方です。原因ではなく、「いま何を実現しようとしているのか」を見つめるのです。
 2つ目は、「課題の分離」という考え方です。
 他人がどう評価するか、どう思うかは、その人の課題であり、自分ではコントロールできません。だからこそ、自分が果たすべき課題に集中することが大切だと説きます。
 これは、他人の評価に振り回されず、自分の信じる道を歩むという、とても力強いメッセージでもあります。
 そして3つ目が、「共同体感覚」です。
 人は競争に勝つことで幸せになるのではなく、「自分が誰かの役に立っている」「仲間とつながっている」という実感の中でこそ、本当の幸福を感じることができるという考え方です。
 競争から協力へ。
 対立から共生へ。
 支配ではなく、対等な人間関係へ。
 この思想は、これからの時代にますます重要になっていく価値観ではないでしょうか。
 私は、舩井幸雄がアドラー心理学に惹かれた理由も、ここにあったように思います。
 舩井自身、若い頃は「喧嘩の舩井」と呼ばれるほど競争心の強い人物でした。しかし40代を境に、「非競争」、そして「脱競争」という考え方へと大きく舵を切ります。
 「世のため、人のため」を経営の原点とし、人を育て、長所を伸ばし、共に栄えることを目指した舩井の生き方は、アドラーが説いた共同体感覚と、不思議なほど重なって見えるのです。
 だからこそ、まだ多くの人が見向きもしなかった2004年の時点で、舩井は「これからの時代に必要な心理学」としてアドラーに光を当てたのでしょう。
 いま振り返ると、それは単なる先見性ではなく、「時代の流れ」を読む舩井幸雄らしい慧眼だったのだと思います。つまり、「未来を見る力」にあったと思います。
 アドラー心理学の最大の特徴は、先述したとおり、「原因論」ではなく「目的論」にあります。人は過去の出来事によって動かされる存在ではなく、自らが持つ目的に向かって現在を選び取っている存在だと考えます。さらに、人は社会とのつながりの中で生きる存在であり、「共同体感覚」を育むことが幸福につながると説きました。
 これは、フロイトとはまったく逆の発想です。
 フロイトは、人間の行動を過去の体験や無意識の欲求から説明しようとしました。
 一方、アドラーは、「その人はいま何を実現しようとして、その行動を選んでいるのか」という未来から現在を見る視点を持ち込みました。
 舩井は、この違いを非常に高く評価していました。
 『未来への処方箋』でも、「人間のすべての行動には目的があり、相手役がいる」という考え方を紹介しています。
 これは、経営にも人生にも、そのまま当てはまります。
 会社で部下が反発するとき。
 家族とぶつかるとき。
 あるいは、自分自身が前へ進めないとき。
 「なぜこうなったのか」と原因ばかり探しても、未来は変わりません。
 しかし、「私は何を得ようとして、この行動を選んでいるのか」と問い直した瞬間、人は未来を変えることができます。
 この発想は、舩井幸雄が一貫して語ってきた「未来は自分で創る」という考え方とも深く重なります。
 もう一つ、私が興味深いと思うのは、「競争」についてです。
 舩井は若い頃、「喧嘩の舩井」と呼ばれるほど勝負に厳しい人でした。
 しかし、40歳を過ぎた頃から、その価値観は大きく変わっていきます。
 「非競争」、そして「脱競争」。
 勝ち負けではなく、共に伸びる。
 奪い合うのではなく、生かし合う。
 舩井は、自らの人生を振り返り、「あの転換は必然であり、必要であり、ベストだった」と語っています。
 私は、この歩みそのものが、アドラー心理学の「共同体感覚」と重なっているように思えてなりません。アドラーは、人間は他者との協力関係の中でこそ幸福になれると考えました。競争や優越性の追求だけではなく、「自分が共同体に貢献できている」という感覚こそが人生を豊かにすると説いています。
 舩井が経営で一貫して伝えた「世のため、人のため」という考え方も、まさに同じ方向を向いています。
 利益だけでは会社は続きません。
 人を幸せにしてこそ、本当の成長があります。
 だからこそ舩井は、「社会性」と「採算性」の両立を説き続けました。
 時代は競争から共生へ。
 その流れを、舩井はアドラー心理学の中に見ていたのではないでしょうか。
 一方、舩井には、もう一つ大きな特徴がありました。
 「常識だから」という理由で物事を判断しなかったことです。
 多くの人が賛成しているものよりも、多くの人が反対しているものに興味を持つ。
 否定されているからこそ、自分で調べる。
 そして、本物だと思えば堂々と紹介する……。
 その姿勢は、生涯変わりませんでした。
 アドラー心理学も、当時はまさにそういう存在でした。
 一般にはほとんど知られず、心理学の主流でもありませんでした。
 しかし、舩井はそこに未来を見ました。
 そして、こんな言葉を残しています。

 「本物というのは、これから新たに生まれてくるものだけでなく、すでに生まれているのに封印されてしまったものもあります。アドラー心理学やヘンプパワーなどはその典型にほかなりません。私は、このような埋もれている本物に光を当てて掘り起こし、これからも世の中に紹介していくのが使命の一つだと思っています。」

 私は、この文章が舩井幸雄という人を最もよく表しているように思います。
 舩井は、「未来を予言する人」ではありませんでした。
 「未来に必要になるものを、誰よりも早く見つける人」だったのです。
 だからこそ、アドラー心理学が広く知られる10年も前に、その価値を見抜くことができたのだと思います。そして、その姿勢は、いま私たちにも問いかけています。
 世の中には、まだ光が当たっていない本物があるのではないか。
 まだ評価されていない人がいるのではないか。
 忘れられた知恵があるのではないか。
 情報があふれる時代だからこそ、本当に必要なのは、新しい情報を追いかけることではありません。
 埋もれている価値を見つけ出し、そこに光を当てることです。
 それが、舩井幸雄が私たちに残してくれた大切な生き方であり、これからの「本物時代」を歩む私たちへのメッセージなのだと思います。

 「本物は、新しく生まれるものだけではない。すでに存在しているのに、まだ光が当たっていないものでもある。」 

 舩井幸雄のこの言葉を思い返すと、アドラー心理学は、まさにその代表例の一つだったと言えるのではないでしょうか。
                        感謝

バックナンバー
2026.08.17:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】「光を当てる」〜舩井幸雄が見抜いたアドラー心理学の価値〜 (※佐野浩一執筆)
2026.08.10:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】陽極まれば (※舩井勝仁執筆)
2026.08.03:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】「災害大国・日本の未来を考える」 ―恐れるのではなく、備え、創造する国へ― (※佐野浩一執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長
1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。
2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了)
著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。
佐野 浩一(さの こういち)
株式会社本物研究所 代表取締役会長
ライフカラーカウンセラー認定協会 代表
公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事
あたみ・パンダの森ほいくえん 学園長
株式会社ヴォイス 代表取締役会長 他
1964年8月5日、大阪生まれ。大阪府立北野高等学校、関西学院大学法学部政治学科卒業。
大学卒業後13年間、私立中高一貫教育校の英語科教員として従事。2001年4月、株式会社船井総合研究所に入社。舩井幸雄より「人づくり法」の直伝を受け、企業幹部向け研修「人財塾」として体系化、その主幹を務め、経営者向け、社内研修向けに150回以上の講演、研修を実施した。2003年4月、株式会社本物研究所を創設し、代表取締役社長(現在会長)に就任。商品の「本物」、技術の「本物」、生き方、人づくりの「本物」を研究、開発し、広く啓もう、普及活動を行う。また、2008年にライフカラーカウンセラー認定協会を、2012 年5月には株式会社51 Dreams’Companyを、2015年9月に株式会社51コラボレーションズを設立。(2023年本物研究所と合併)さらに、2015年1月、舩井幸雄の思想、哲学を世に広めるために、公益財団法人舩井幸雄記念館を設立し、代表理事となる。2021年2月には、株式会社51メディカルを創業。そして、2022年11月、小規模保育事業B型として、「あたみ・パンダの森ほいくえん」を設立。学園長に就任。
2026年6月にヴォイスグループ5社を経営統合し、代表取締役会長に就任。現在に至る。
著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく 幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた 船井幸雄のすべて』(成甲書房)、『本物の法則』(ビジネス社)※船井幸雄との共著、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(きれい・ねっと)※舩井勝仁との共著、『幸せになる働き方の法則』(創藝社)、『舩井幸雄の魂が今語りかけてきたこと』(ヒカルランド)※矢山利彦氏、舩井勝仁氏との共著がある。
講演は、年間講演、研修多数。会社経営、学校経営、幹部育成、健康、食育、カウンセリング、話し方など、幅広いテーマで多数の講演を行っている。
健康の超プロ4名が語った「じぶんでつくる健康未来図」の動画をプレゼント 数霊REIWA公式サイト 佐野浩一 本物研究所 本物研究所Next C nano(ネクストシーナノ) 成功塾説法 舩井幸雄動画プレゼント 高島康司先生の「日本と世界の経済、金融を大予測」 メールマガジン登録 舩井メールクラブ 佐野浩一note