中村陽子の都会にいても自給自足生活

このページは、認定NPO法人「メダカのがっこう」 理事長の中村陽子さんによるコラムページです。
舩井幸雄は生前、中村陽子さんの活動を大変応援していました。

2018.04.20(第43回)
種子法廃止とTPPとISD条項の関係を知っていますか?

 TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に、日本はすでに署名しています。この協定の加盟国になると、国内法は自動的に変更されるという条項が盛り込まれています。
 日本では、主要農産物種子法の廃止を皮切りに、農業競争力強化支援法、水道法の改定、官民連携指針法、カルタヘナ法の改正、農村地域工業誘導推進法、市場法の廃止など、次々と変更されています。

 これは、大変な事態です。国民の食糧を守る種子法や、国民の飲み水を守る水道法や、国土の自然と生物多様性を守るカルタヘナ法などの国内法を、TPPの基準に合わせて自動的に変更させられているということです。国民の安全や国土の環境を守る国の法律よりもTPP協定の方が上だということになります。

 でもこれはまだ序章にあたります。4月1日から種子法は廃止され、昨年の12月25日から除草剤グリホサートの残留基準は、0.1ppmから40ppmに大幅緩和されたばかり、これから、日本によほどたくさんのグリホサートが残留した遺伝子組み換え作物や収穫直前にプレハーベストした作物を輸入されてきます。いや既に日本に入ってきています。そして、日本での農薬多投の遺伝子組み換え作物の栽培を始める体制が整いました。すべてはこれから日本の環境と食の安全が壊される第1章が始まります。

 このままいくと、お豆腐や納豆や味噌の「遺伝子組み換えでない」という表示ができなくなります。現在は、タンパク質が含まれる食品は遺伝子組み換えの表示義務がありますが、その義務がなくなります。お酒以外の産地表示ができなくなります。新潟魚沼産コシヒカリと書けなくなります。無農薬・無化学肥料という表示も書けなくなります。遺伝子組み換えの鮭や小麦が日本に入ってきても表示義務がなくなると言われています。その結果、消費者は何も知らされぬうちに、安全な食を選択する判断基準が奪われます。
 この原因は、TPPに含まれるISD条項(投資家と国家間の紛争解決条項)で、実はこれが本命だと言われています。たとえば、自由貿易下で、外国企業にとって、国産とか産地表示が商売の「不当な障害」になっていると日本国を国際裁判へ訴え、日本国が訴訟に負けた場合、これらの法律の規制緩和が義務付けられ、賠償金を払わされることになるのです。

 まさか、こんなことが本当に起こるのか、にわかに信じがたいですが、油断はできません。2月末、消費者庁が、遺伝子組み換え表示の基準を、今までは5%の混入まで認めていたのに、1%未満にすると発表しました。一瞬、基準が厳しくなったことは良いことなのかと思いましたが、これにより、「遺伝子組み換えでない」と書ける商品が少なくなることに気が付きました。敵は一枚上手なのです。ISD条項を使うまでもなく、あの手この手で、消費者が判別できないように表示をなくし、知らないうちに遺伝子組み換え食品を摂取するように仕向けているのです。

 でもどんなに表示がなくなっても、消費者の意識が高いアメリカでは、スーパーのなかにNON-GMOコーナーがあり、その棚にまとまってオーガニックの食品が陳列されているそうです。消費者の消費行動に企業が反応したのです。日本の消費者にもこの強さが必要ですね。お上に頼らず自分で家族を守る人間にならなければなりません。
 ISD条項は長い歴史を持ち、初めは納得のいくものでした。たとえば、開発途上国に投資してきた企業が、その国に政変が起きて一方的に国有化されてしまうといった場合、企業救済のため、司法制度が整備されていない途上国に代わり、国際的な仲裁の道を開こうとして始まったものらしいです。ところが自由貿易至上主義が広がり始めると、途上国相手ではなく、先進国同士で相手国の規制や政策に対する異議申し立ての道具として利用するようになったのです。
 しかし相手が先進国なら、司法制度がしっかりしているのだから、本来相手の裁判所に訴えを起こすべきなのですが、そうしない訳は、ISD条項の場合、裁くのは世界銀行の内部機関である紛争解決処理センターで、たった3名の判定員が裁定していて、相手国の裁判所よりも企業家に味方する裁定をする傾向があるからだろうと推測されます。しかもISDの方は不服の結果でも控訴できません。一度決まった判決は覆せないのです。ものすごく勝手な制度だと思いませんか? この制度自体を国連憲章に照らしていただきたいです。

 この状況下、国民の安全な食と農と国土の自然環境を守ろうとしない政府を持つ私たちは、どうしたらいいのかをメダカのがっこうはずっと考えて行動してきました。私たちは、何が起きても生きていけるように、自立した人間を育てています。今年で18年目です。この間、米、麦、大豆を在来種で有機栽培もしくは自然栽培で育ててくれる農家と手を結び、米、味噌、醤油、油、梅干し、たくあんなど、命を支える基本食糧を、無農薬、無添加で手造りする道を拓いてきました。1年に最低20日ほどの時間と20万円ほどの費用を確保すれば、一家の安全な基本食料の生産ができます。ご一緒に一石を投じる先祖になりましょう。


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Profile:中村 陽子(なかむら ようこ)
中村 陽子(なかむら ようこ)
首のタオルにシュレーゲル青ガエルが
いるので、とてもうれしそうな顔を
してい ます。

1953年東京生まれ。武蔵野市在住。母、夫の3人家族。3人の子どもはすべて独立、孫は3人。 長男の不登校を機に1994年「登校拒否の子供たちの進路を考える研究会」の事務局長。母の病気を機に1996年から海のミネラル研究会主宰、随時、講演会主催。2001年、瑞穂(みずほ)の国の自然再生を可能にする、“薬を使わず生きものに配慮した田んぼ=草も虫も人もみんなが元氣に生きられる田んぼ”に魅せられて「NPO法人 メダカのがっこう」設立。理事長に就任。2007年神田神保町に、食から日本人の心身を立て直すため、原料から無農薬・無添加で、肉、卵、乳製品、砂糖を使わないお米中心のお食事が食べられる「お米ダイニング」というメダカのがっこうのショールームを開く。自給自足くらぶ実践編で、米、味噌、醤油、梅干し、たくあん、オイル」を手造りし、「都会に居ても自給自足生活」の二重生活を提案。神田神保町のお米ダイニングでは毎週水曜と土曜に自給自足くらぶの教室を開催。生きる力アップを提供。2014年、NPO法人メダカのがっこうが東京都の認定NPO法人に承認される。「いのちを大切にする農家と手を結んで、生きる環境と食糧に困らない日本を子や孫に残せるような先祖になる」というのが目標である。尊敬する人は、風の谷のナウシカ。怒りで真っ赤になったオームの目が、一つの命を群れに返すことで怒りが消え、大地との絆を取り戻すシーンを胸に秘め、焦らず迷わずに1つ1つの命が生きていける環境を取り戻していく覚悟である。
★認定NPO法人メダカのがっこうHP: http://npomedaka.net/

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