トップが語る、「いま、伝えたいこと」

このページでは、舩井幸雄の遺志を引き継ぐ舩井勝仁と佐野浩一が、“新舩井流”をめざし、皆様に「いま、伝えたいこと」を毎週交互に語っていきます。
毎週月曜日定期更新
2023年12月11日
「自由に我慢できること」が自由? (※佐野浩一執筆)

 久しぶりに、哲学のお話です。
 「カント」という名前は、何度も目にされたことがあると思います。高校時代の当時の「倫理社会」という科目に登場した哲学者です。
 正確な名前は、イマヌエル・カントと言います。
 1724年から1804年に生き18世紀の後半に活動した人です。北ドイツのケーニヒスベルクという、現在ロシア連邦カリーニングラードがあるところで生まれ育ち、活動し、そこで天に召されました。カント自身はケーニヒスベルクから一度も外に出たことがないといわれています。
 哲学者と言っても、カントはまったく世間知らずの観念的な学者であったかというと、そうではなかったようです。ケーニヒスベルク大学で教鞭を執っていて、とても社交的な人だったそうです。ケーニヒスベルクはドイツにおいてハンザ同盟の都市の一つであり貿易都市で、カントはそこにやってくる各国の船乗りや貴婦人のような人々と交流し、いろんな知識を吸収していったといいます。とても人間味あふれる、社交的な人だったようです。めちゃくちゃ難解な本を書いた人ですから、ちょっとイメージが変わりました。
 哲学を極める一方で、自然科学の研究もしていた、まさに天才です。先述した人柄とは真逆に、やることなすこと厳格このうえない面もありました。毎日必ず決まった時刻に同じ道を散歩することから、近所の人々はその歩く姿を見て、時計の針を調整していた……なんていう話も残されています。ある意味、哲学の歴史はすべてカントに流れ込み、その後はすべてカントから流れ出たと言われるほどの偉大な人物です。カントの哲学はあまりにも画期的で、それまでの哲学を根本からひっくり返したものだから、その衝撃を「コペルニクス的転回」と呼ぶという話を聞いたことがあります。
 さて、カントと言えば、避けて通れない2冊があります。正直に言うと、私は早々に読むのを諦めてしまい、解説本しか読めていません。今回、この文章を書くにあたり、「いよいよ読んでみないとね……」と思っています。

 さて、カントは人間の認識の仕組みを『純粋理性批判』で説明しました。けれども、『純粋理性批判』によると、「神」「霊魂」などの「人間が経験できない領域」は、人間には推理できないということを明らかにしました。神や霊について考えてもわからないということです。そこで、新たにこれらを回復するために、道徳的な形而上学をうちたてようとします。その内容が『実践理性批判』です。
 カント以前の哲学は外部事象(つまり物体)について考えるものでした。しかし、カントは哲学の目的を構築し直して、「人間について考える学問」に定義し直したとされます。それまでのように「認識が対象に従う」という考えを逆転させ「対象が認識に従う」としたのです。そうであれば人間の認識が哲学の対象になります。カントは人間の認識能力について研究の対象とし、「感性」と「悟性」というカテゴリーが先験的に備わっていると考え、先述した『純粋理性批判』など三部作をとおして批判哲学を完成していったのです。
 そのカントはニュートン的科学を優れた科学のモデルだと考えており,心や魂について扱う学問は科学たりえないと考えていたのです。数学が適用できること、実験ができること、これが科学の要件でした。自然科学の世界では、ニュートンの万有引力の法則があります。カントは自然の世界と同じように、道徳の世界にも普遍的な法則があると考えたのです。
 
 少し踏み込んでみます。
 道徳とは、自然の因果法則とは違って、私たちの意志を規定する命令であって、「〜すべし」という命令の形をとります。それは幸福や快楽を得るための条件付きの命令ではありません。たとえば、「もしお金がもらえるなら、人を助けよ」というような条件付き命令ではダメなのです。これを「仮言命令」といいます。
 真に道徳的な命令は、自分の幸福を計算に入れず、行為の結果をまったく考えたりしないで、いつどんなときでも「〜せよ」と自らに命じる無条件的な命令だということです。これは「定言命令」と呼ばれます。「もしお金がもらえるなら」のところをカットして、「人を助けよ」だけの部分にしたら「定言命令」になります。
 道徳法則が命令の形をとるのは、私たち人間が理性的な存在であると同時に感性的な存在でもあって、いつも道徳法則にしたがって行動するとは限らないからです。だから私たちは、いつも「無条件に〜をするべし」と言い聞かせながら生活しなければなりません。ついつい寝過ごしてしまったり、食べすぎてしまったりするのは、本能のままに生きる感性的存在としての動物と同じだということです。でも、人間は、理性を持っているので、自分自身でその欲望をコントロールすることができるのです。
 道徳法則という人生の公式は、人間がもともともっている実践理性が自分自身に与える法則だと定義されています。自分で自分を律するわけですから、これを「自律」といいます。
 カントによると、人間が「自律」的存在であるということは、人間が「自由」であるということを意味するのです。
 ここがめちゃくちゃ面白いですよね!
 自分でルールに従うこと、つまり、「無条件に〜せよ」という命令にしたがうのはあくまで「自由」なのです。「え、それって不自由なんじゃないの?」って感じます。でも、カントはつぎのように言うのです。
 「他のいかなる権威にも他律的に拘束されることなく、実践の原理をみずから洞察し、それによってそのつどの自己の実践生活をみずから規制していくことができる」という意味なので、「自由」なんだと……。つまり、自分の欲望を、自分でコントロールできるということは、自由なんだ……というとらえ方です。カントによると、それこそが人間の「尊厳」だということになります。
 
 ところで、『純粋理性批判』では、人間の意志の自由の証明は認められなかったのですが、このように『実践理性批判』では、道徳的命令において意志の自由が確保されることになりました。でも、同じように、霊魂の不滅も神の存在も『純粋理性批判』によれば、証明することはできなかったのです。でも、『実践理性批判』によると、「最高善」の概念を介することで、これらが実践的に要請されるという展開となります。つまり、証明はできないけれど、「霊魂」も「神」もあるということです。
 最高善の実現は、人間が感性的存在者である限り、現実においては期待できません。だから、来世に向けて続いていく無限の道徳的努力が存在する以上、「霊魂の不滅」が要請されるということになります。また、最高善が実現されるべきであるとすれば、徳と幸福との完全な合致を保証する全能な「神の存在」が要請されなければならない……。
 うーーん、わかるような、わからないような……。
 このようにして、実践理性は、「自由の存在」「霊魂の不滅」「神の存在」という3つの理念に対して実在性を与えることができた……とされています。
めでたし、めでたし……ということになるのですが、こうして書きながらも、あちこちが「点」になっていて、「線」や「面」になっていないことが自覚できます。
 さらに勉強してみます。
 拙文にお付き合いいただき、ありがとうございます。
 学びはさらに未来へ続きます……。
                           感謝

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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長
1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。
2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了)
著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。
佐野 浩一(さの こういち)
株式会社本物研究所 代表取締役社長
株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長
公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事
ライフカラーカウンセラー認定協会 代表
1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。
著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。
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