トップが語る、「いま、伝えたいこと」
アメリカのベッセント財務長官が長期国債の買戻し政策を発表し、長期金利を引き下げる姿勢を鮮明にしましたが、日本時間8月21日(金)午前の時点では、その効果は1日しか持たなかったと揶揄されています。第二次トランプ政権では、イーロン・マスク氏をトップに据えて政府効率化省(DOGE)を発足させ、無駄な支出の削減に挑みましたが、目立った成果は上げられなかったというのが識者の見立てのようです。
思い出すのは、民主党政権時代の「事業仕分け」です。当時の幹部が発した「世界一になる理由は何があるんでしょうか。2位じゃだめなんでしょうか」という発言が物議を醸しました。知り合いの自然科学の研究者に聞くと、この発言がある意味トリガーとなり、日本の科学技術の発展にストップがかかったとも思えると、あくまで非公式な見解として、酒飲み話の中で聞かせてくれたことがあります。DOGEにせよ事業仕分けにせよ、財政の無駄な支出を抑えること自体は大事なことですが、成果を演出することが目的になりがちな目立ちたがり屋の政治家の手にかかると、少し変な方向に行ってしまうものなのかもしれません。トランプ大統領の鳴り物入りの政策に十分な効果が出なかったからこそ、政権を支えるベッセント長官としては、あえて禁じ手を放ったということなのでしょう。
日本からすれば、長期金利の高騰や円安傾向にブレーキをかけてくれる有難い政策です。しかしマーケットの反応は、40兆ドル(約6,360兆円)にのぼる財政赤字を前にしては、長期国債の買戻し額の上限を1回あたり40億ドルに倍増させたところで焼け石に水だと見切り、とりあえず逆らってみようというところなのかもしれません。ただ、よく記事を読むと、実施は9月9日以降に増額するとのことですから、実質的にはまだ何も始まっていないわけで、ベッセント長官側もまずは市場の反応を見ているとも考えられます。
株式相場は乱高下する材料に事欠かず、当面は落ち着かない相場が続きそうです。株に詳しい知人は、値動きと取引量の大きい銘柄を狙ったデイトレーディングに励んでいると教えてくれました。ポイントは、必ずその日のうちに手仕舞いし、翌日に持ち越さないこと。寝ている間に大きなニュースが出ると相場が大きく動いてしまい精神的に良くないので、できれば午前中にすべての取引を終えておくのだそうです。激しい投機的な取引だからこそ、メンタル面の余裕が大切だということなのでしょう。
私にはとても真似できませんし、相場の経験が浅い方には決してお勧めしませんが、お金の師匠であった故・竹田和平さんは、ルールさえ守っていればデイトレも全く問題ないと言っていました。「彼らがいるからこそ、和平さんのような長期投資家が儲けられるんだ」というのが和平さんの見方でしたが、初心者にはむしろ和平流をお勧めします。株が下がっているということは、それだけ安く仕入れられるということ。いまこそ、じっくりと良い銘柄を見極めるチャンスなのかもしれません。
長期投資を目指す方に読んでいただきたいと思い、今週紹介させていただくのは、藤野英人著『「日経平均10万円」時代に備えろ』(日経ビジネス人文庫)です。以前に書かれたものの文庫化ですが、内容はアップデートされており、逆にこの短期間で相場環境が大きく変わったことを実感させてくれます。
多少の上げ下げはありながらも、マクロに見れば伸び続けている日経平均は、一時7万円を超えました。様々な予測が飛び交う中、タイトルにある「10万円」という数字も、決して世迷言とは言えない時勢になってきました。世界的にインフレが進行し、日本もやや遅れながらその渦中にあります。ここまで大きな流れになってしまうと、ベッセント長官が試みたような国単位での介入も難しく、インフレが続くのは間違いないでしょう。
では、10万円に迫るほどインフレが加速していく根拠は何なのか。デフレ体質の改善、業績向上を妨げてきた大手企業上層部の意識変化などが挙げられています。藤野さんが解説する通り、日本企業の体質は投資家から見て大きく改善されました。藤野さんは「草食投資家」の一人として、社会の発展に寄与する投資行動をかねてから提唱されてきた方です。現在は退任されましたが、そんな姿勢は「ひふみ」投信にあふれており、多くの個人投資家から支持を集めてきました。
私もそんなファンの一人です。投信は購入していませんが、藤野さんの著書は大好きで、独自の視点で現状を教えてくれるので、とても参考にしています。海外の観光客が「安い」日本を楽しむ様子は連日報じられていますが、本書では分かりやすい実例としてコンビニの「たまごサンド」が登場します。確かに、海外との物価の差は日々実感させられますし、海外旅行に行かれた方は特に強烈に感じられるのではないでしょうか。
本書の要点は、投資への向き合い方そのものを変えようとしている点にあります。値上がりで儲けるべきという発想よりも、インフレが進む時代の中で自らの生活を守るために投資をする、という考え方が、これまで投資を避けてきた方の重い腰を上げさせてくれます。インフレが進行している以上、貯金をするだけでは実質的な資産額は目減りしていきます。日々の生活の中でも物価の高騰は実感させられますが、現状の日本では、残念ながら給与の伸びがインフレ水準に見合っているとは言えません。
しかし株価に目を向ければ話は変わります。間違いなく値上がりを続けており、株式取引で利益を出せば物価高騰分を補うことができるという考え方は、非常に合理的だと言えるでしょう。新NISAなど投資を喚起する動きはさらに強まっており、この本の示す合理性が確かならば、投資に後ろ向きだった方も、プレイヤーとして参加すべき時代になっています。ただし、より一層のリテラシーが求められる時代であることにも本書は触れており、安易に勧められたものを買うのではなく、自ら調べ、考え、その実態を理解した上で取り組むことが大切だと説いています。
投資をする余力のある方は、何かしらの分野で成果を挙げてこられた方であるはずです。投資と向き合うことが避けられなくなってきた以上、個人としての知識や見解を生かし、長期的な視野を持ちながら、自分なりの投資との向き合い方を模索していくことが大切だと思っています。
=以上=
2026.08.17:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】「光を当てる」〜舩井幸雄が見抜いたアドラー心理学の価値〜 (※佐野浩一執筆)
2026.08.10:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】陽極まれば (※舩井勝仁執筆)
2026.08.03:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】「災害大国・日本の未来を考える」 ―恐れるのではなく、備え、創造する国へ― (※佐野浩一執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役会長ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 あたみ・パンダの森ほいくえん 学園長 株式会社ヴォイス 代表取締役会長 他 1964年8月5日、大阪生まれ。大阪府立北野高等学校、関西学院大学法学部政治学科卒業。 大学卒業後13年間、私立中高一貫教育校の英語科教員として従事。2001年4月、株式会社船井総合研究所に入社。舩井幸雄より「人づくり法」の直伝を受け、企業幹部向け研修「人財塾」として体系化、その主幹を務め、経営者向け、社内研修向けに150回以上の講演、研修を実施した。2003年4月、株式会社本物研究所を創設し、代表取締役社長(現在会長)に就任。商品の「本物」、技術の「本物」、生き方、人づくりの「本物」を研究、開発し、広く啓もう、普及活動を行う。また、2008年にライフカラーカウンセラー認定協会を、2012 年5月には株式会社51 Dreams’Companyを、2015年9月に株式会社51コラボレーションズを設立。(2023年本物研究所と合併)さらに、2015年1月、舩井幸雄の思想、哲学を世に広めるために、公益財団法人舩井幸雄記念館を設立し、代表理事となる。2021年2月には、株式会社51メディカルを創業。そして、2022年11月、小規模保育事業B型として、「あたみ・パンダの森ほいくえん」を設立。学園長に就任。 2026年6月にヴォイスグループ5社を経営統合し、代表取締役会長に就任。現在に至る。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく 幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた 船井幸雄のすべて』(成甲書房)、『本物の法則』(ビジネス社)※船井幸雄との共著、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(きれい・ねっと)※舩井勝仁との共著、『幸せになる働き方の法則』(創藝社)、『舩井幸雄の魂が今語りかけてきたこと』(ヒカルランド)※矢山利彦氏、舩井勝仁氏との共著がある。 講演は、年間講演、研修多数。会社経営、学校経営、幹部育成、健康、食育、カウンセリング、話し方など、幅広いテーマで多数の講演を行っている。 |











株式会社船井本社 代表取締役社長



















