ヤスのちょっとスピリチュアルな世界情勢予測
このページは、社会分析アナリストで著述家のヤス先生こと高島康司さんによるコラムページです。
アメリカ在住経験もあることから、アメリカ文化を知り、英語を自由に使いこなせるのが強みでもあるヤス先生は、世界中の情報を積極的に収集し、バランスのとれた分析、予測をされています。
スピリチュアルなことも上手く取り入れる柔軟な感性で、ヤス先生が混迷する今後の日本、そして世界の情勢を予測していきます。
5月になりました。今回はいま話題の「パナマ文書」で、日本ではほとんど報道されていないことをお伝えしましょう。重要な情報だと思います。
●「パナマ文書」の裏
「パナマ文書」とは、租税回避地への法人設立を代行するパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」の金融取引に関する1977年から2015年12月までの内部文書のことです。この文書には各国の指導者や著名人の名が記されており、彼らの脱税や不正取引を証明する重要な証拠になると見られています。
これまでに「モサック・フォンセカ」は、24万社の「オフショア企業」と呼ばれるペーパーカンパニーを「バージン諸島」や「ケイマン諸島」など、税率が低く世界の「租税回避地」となっている地域に法人登記。「オフショア企業」のオーナーとなった「モサック・フォンセカ」の顧客は、「租税回避地」のペーパーカンパニーを通して投資を行うことで、本国における租税の支払いを回避する仕組みです。
この内部文書を最初にリークしたのは、アメリカのNGO、「国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)」です。その後「パナマ文書」は、世界中の100以上に上る報道機関に流出しました。「ICIJ」のサイトでは各国の政治家や著名人の名前を公表しています。以下は代表的な人物です。
・アルゼンチンのマクリ大統領
・ブラジル、7党の政治家
・プーチン大統領の友人数名
・習近平国家主席の親族
・中国政府高官複数
・キャメロン英首相の亡父
・パキスタン、シャリフ首相の子弟
・ウクライナ、ポロシェンコ大統領
・アイスランド、グンロイグソン首相夫妻
・シリア、アサド大統領の親戚
・「バルセロナ」のメッシ選手
文書の公表の直後、アイスランドでは多くの国民が激しく抗議したため、4月5日、グンロイグソン首相は辞任しました。
これからさまざまな著名人の名前が公表され、この問題は大きなスキャンダルに拡大して行くことは間違いないでしょう。
●強い違和感
これがいまのところの事件の全容ですが、公表された名前を見るとやはり大きな違和感を感じないわけにはいかなくなります。金融取引の内部文書がリークした「モサック・フォンセカ」はパナマの法律事務所です。中南米はアメリカの実質的な裏庭と化しており、政治や経済のあらゆる領域でアメリカとの関係がもっとも深い地域です。
そうであるにもかかわらず、今回リークされたリストにはアメリカの政治家や民間人の名前はほとんど含まれていません。リークした「ICIJ」はこれから多くの米民間人の名前を公表するとしていますが、それには米政治家は含まれていないとしています。
実質的にアメリカの政治的な支配地域といってもよいパナマでリークした文書に、米政治家の名前が一切出てこないというのは実に奇妙な話です。ホワイトハウスのアーネスト報道官は、米司法省がこれから調査を開始するとしていますが、「ICIJ」が米政治家の名前は含まれていないというのだから、司法省の調査でも出てくるかどうかは分かりません。
●米政府の国策機関「ICIJ」
このように見ると、やはり今回の「パナマ文書」のリークは不自然です。報道されているような事件ではない可能性があります。見えない裏がありそうです。まずは今回の公表に至った経緯を確認してみましょう。
調べてみると、「パナマ文書」の情報が最初に報道されたのは今回が初めてではありませんでした。すでに16ヵ月前、徹底した取材で有名な独立系メディア「VICE」に、調査ジャーナリストのケン・シルベスタースタインが「モサック・フォンセカ」の怪しい業務について報じていました。
その後、ちょうど1年前、ドイツ、ミュンヘン市の日刊紙「南ドイツ新聞」に「モサック・フォンセカ」が登記にかかわった21万4000社のリストが、匿名の人物によって持ち込まれました。「南ドイツ新聞」は「ICIJ」と協力し、これらのペーパーカンパニーを所有している人物の名前を明らかにしました。そして今回、「ICIJ」の手によってこれにかかわった著名人の名前が一部公表されたのです。
当然この経緯だけからは、米政治家の名前が含まれていないという不自然な状況の説明にはなりません。もしかしたら、これを公表した「ICIJ」という団体にカギがあるかもしれません。これまでこの団体の名前を聞いたことのある人は少ないはずですが、「ICIJ」とはいったいどのような団体なのでしょうか?
これも調べて見るとすぐに分かりますが、「ICIJ」は独立した団体ではありません。アメリカの非営利の調査報道団体、「センター・フォー・パブリック・インテグリティ(CPI)」に属するプロジェクトの名称です。
ちなみに「CPI」は、国際的なジャーナリストのチームを組織し、「越境犯罪、汚職や権力の説明責任」などの問題に焦点を当てるため、1996年に結成されたアメリカのNGOです。現在、60ヵ国以上から160人の会員ジャーナリストが在籍し、国際的な犯罪に関わる様々な調査を行っています。
「ICIJ」は、ここの「組織犯罪と汚職の報告プロジェクト」という部門に属しています。いわば「ICIJ」は、親組織である「CPI」の理念を実現する現場の調査プロジェクトです。
そして「CPI」のサイトでこの組織の資金源を調べると、興味深いことが分かります。次の組織が資金のおもな提供者であることが明確に記載されています。
・フォード・ファウンデーション
・カーネギー財団
・ロックフェラー家財団
・WKケロッグ・ファウンデーション
・オープンソサエティー
長くなるのでいちいち解説しませんが、これらの団体は米国務省や共和党とつながりが強い団体ばかりです。また「オープンソサエティー」は、ジョージ・ソロスが設立した財団です。さらに、「ICIJ」の上位組織である「組織犯罪と汚職の報告プロジェクト」は、米政府の海外援助を実施する「合衆国国際開発庁(USAID)」から直接資金の提供を受けています。
こうした事実を見ると、「パナマ文書」をリークした「ICIJ」やその親組織の「CPI」は、米政府の国策機関である可能性が非常に高いのです。もしそうであれば、公表された「パナマ文書」にアメリカの政治家の名前が一切含まれていないことの説明がつきます。
●NGOを利用するアメリカの国策
ところでアメリカは、国外の政権の転覆などの外交政策の実現のために、NGOを国策機関として活用した過去があります。たとえば2000年から2005年まで続き、セルビア、グルジア、ウクライナ、キルギスなどおもに旧ソビエト地域の親ロシア派の政権を打倒した「カラー革命」では、革命を主導した反政府青年組織の結成に関与し、資金を提供して訓練したのが米政府と関係の強いNGOでした。
それらは、米国務省系の人権団体、「フリーダムハウス」、共和党系の「国際共和党機関」、民主党系の「全国民主党機関」、米政府の「合衆国国際開発庁」、そして投資家、ジョージ・ソロスの「オープンソサエティー」などの組織です。
さらに、2010年12月に北アフリカのチュニジアで始まり、中東全域に拡大した「アラブの春」では、米国務省が2008年に立ち上げた「青年連帯運動」に結集した青年組織を、「フリーダムハウス」などの「カラー革命」に関与したのと同じNGOが支援した。
そして大規模な反政府活動の実地訓練は、革命コンサルタントの異名をもつ「CANVAS」という組織が実施したことはよく知られています。これらのことは、ニューヨークタイムスなどの主要メディアの記事でも明らかになっています。
このように、「カラー革命」や「アラブの春」には多くのアメリカの政府系のNGOがかかわっています。これらのNGOは、まさに米政府の国策機関だといってもよいでしょう。
そして、今回の「パナマ文書」をリークした「ICIJ」や「CPI」の活動資金は、「カラー革命」や「アラブの春」を主導したNGOに資金を提供した同じ団体が提供しています。たとえば「フォード・ファウンデーション」や米政府の「合衆国国際開発庁」ですが、「フリーダムハウス」の主要な資金提供者でもあります。
これを見ると、今回の「パナマ文書」のリークには「カラー革命」や「アラブの春」を画策した同じ組織や団体が深く関与しており、まさにアメリカの外交政策を実行するために引き起こされた意図的な事件であると結論して間違いないでしょう。これは、特定の国々に米政府系のNGOを派遣して反政府活動を組織し、米政府の外交政策を実現した「カラー革命」や「アラブの春」と同じ手口です。
●米政府の目的はなにか?
もし「パナマ文書」のリークが米政府による意図的なものだとするなら、その目的は何でしょうか? 実はこれには、現在の世界経済を大きく変更し、ドルの基軸通貨体制とアメリカの覇権を延命させる大きな目的があるのです。
長くなるので、これは別の機会に書きたいと思います。
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社会分析アナリスト、著述家、コンサルタント。
異言語コミュニケーションのセミナーを主宰。ビジネス書、ならびに語学書を多数発表。実践的英語力が身につく書籍として好評を得ている。現在ブログ「ヤスの備忘録 歴史と予知、哲学のあいだ」を運営。さまざまなシンクタンクの予測情報のみならず、予言などのイレギュラーな方法などにも注目し、社会変動のタイムスケジュールを解析。その分析力は他に類を見ない。
著書は、『「支配−被支配の従来型経済システム」の完全放棄で 日本はこう変わる』(2011年1月 ヒカルランド刊)、『コルマンインデックス後 私たちの運命を決める 近未来サイクル』(2012年2月 徳間書店刊)、『日本、残された方向と選択』(2013年3月 ヴォイス刊)他多数。
★ヤスの備忘録: http://ytaka2011.blog105.fc2.com/
★ヤスの英語: http://www.yasunoeigo.com/