ヤスのちょっとスピリチュアルな世界情勢予測

このページは、社会分析アナリストで著述家のヤス先生こと高島康司さんによるコラムページです。
アメリカ在住経験もあることから、アメリカ文化を知り、英語を自由に使いこなせるのが強みでもあるヤス先生は、世界中の情報を積極的に収集し、バランスのとれた分析、予測をされています。
スピリチュアルなことも上手く取り入れる柔軟な感性で、ヤス先生が混迷する今後の日本、そして世界の情勢を予測していきます。

2025.11.01(第141回)
アメリカで金融危機が発生する可能性は?

 最近TikTokなどのSNSには、金融危機、ないしは深刻な経済危機を警告する投稿があふれている。それらの投稿は、へッジファンドマネージャーやエコノミストなどの専門家によるものが多い。例えば以下は、FOXニュースの経済分野のコメンテイターとして登場している人物のものだ。10月20日の投稿である。
「まもなく企業は大量解雇の発表を始めるでしょう。もしあなたが職を持ち、この波を乗り切るための少なくとも100万ドルの資産を持っていないなら、上司にこう尋ねてください。「私の職は安全ですか?」「もし会社が解雇を進め始めた場合、職を守るために何をする必要がありますか?」
 他の業務を引き受ける、労働時間を増やす、できることは何でもしてください。この経済環境下で失った職を代替する新たな仕事を見つけるのは極めて困難です。そして状況がすぐに好転する兆候はありません。刻一刻と悪化しています。手遅れになる前に、ご自身とご家族、そして職を守ってください」

 また、へッジファンドマネージャーによる次のような投稿もある。
「私は、1930年代の大恐慌が迫っていると思っています。これは深刻で、市場が50%以上暴落し、長期的なGDP崩壊と大規模な失業が発生する状態を指す。1930年代の大恐慌では、市場は90%下落し、失業率は25%に達し、GDPは30%減少しました。現時点では、我々は不況圏内にあり、大恐慌領域には至っていません。しかし、状況次第ではその境界線は極めて曖昧です」
 市場は上昇し米経済は一見好調のように見えるが、SNSでは専門家によるこのような投稿が最近特に増えているように感じる。

●地方銀行の損失計上と商業用不動産の不振
 このような不安感に拍車をかけているのは、最近発生したニューヨークの地方銀行の大きな損失だ。米地銀、ザイオンズ・バンコープと他の2行は、商業不動産の融資2件について、不正があったとして多額の損失を計上すると発表し株価が急落した。
 2023年の地銀危機以来、投資家は不確実性への耐性が低下しており、個別の不良債権問題や不正行為であっても幅広い売りの引き金になる。金融緩和と透明性の低さが何年も続いたことで、投資家はリスクが本当はどこに潜んでいるのかと疑心暗鬼になっている。小規模な悪いサプライズでさえ、大規模な相場調整を引き起こしかねない状況になっている。
 こうした不安が拡大している背景には、アメリカの商業不動産の問題がある。いまのところ、まだ限定的ではあるが、アメリカの大都市圏における商業不動産の不振が、地方銀行の経営難を引き起こし、金融システム全体を揺るがす危機に発展する可能性は存在する。2020年から始まったパンデミックや、大統領選挙の混乱、そして人種差別反対運動に拡大などで、大都市圏の企業ではリーモートワークが進み、オフィス需要は大幅に減少した。また、パンデミックの失業の拡大によるホームレスや薬物中毒者の増加、そしてそれを背景にした大都市圏での犯罪率の増加で、商業用不動産の需要は大きく落ち込んだ。

 これは、地方銀行の経営に深刻な影響を与えている。その理由は、地方銀行の商業用不動産向け融資の集中度が高いことにある。地方銀行にとって商業用不動産の融資は主要な収益源であるため、融資残高が資産の25%を超える銀行も少なくない。この結果、在宅勤務の定着やeコマースの拡大、高金利環境の影響でオフィスの空室率が上昇し、資産価値が急激に下落する。そして、ローンの支払いに耐えられない不動産会社は破綻する。
 すると、デフォルトしたローンは銀行の不良債権となり、銀行は引当金を積み増す必要がある。引当金の計上や貸倒損失の発生は、銀行の収益を圧迫し、自己資本を毀損する。銀行の経営不安が表面化すると、株価が急落し、投資家や預金者の信頼喪失につながる。
 しかし、いまのところ、商業不動産の不振がアメリカの金融システム全体を危機に陥れる可能性は低いと評価されている。商業用不動産融資のリスクは、主に中小・地方銀行に集中しており、大手銀行やグローバルな金融システム全体を直撃するほどの規模ではないからだ。連邦準備制度理事会(FRB)の健全性審査(ストレステスト)などでは、深刻なストレスシナリオでも銀行業界全体の商業用不動産関連の損失は限定的であると推定されている。

●連邦政府閉鎖の長期化と米国債の格下げ
 しかし、このような商業用不動産ローン破綻のリスクに加えて懸念されているのが、連邦政府閉鎖の長期化による米国債の格下げリスクである。連邦政府の一部閉鎖が短期で終了する場合は、米国債の格下げに直接的かつ即座につながる可能性は低いが、長期化するとリスクは高くなる。
 格付け会社は、政府閉鎖が債務不履行(デフォルト)に直結しない限り、直ちに格下げに動くことは通常ない。しかし、現在連邦政府が一部閉鎖している理由は、共和党と民主党の折り合いがつかず、歳出法案が成立しないためだ。予算がないのである。これが、アメリカの債務返済能力や政治システムの機能不全に対する懸念を深めるようだと、格付け引き下げの要因となり得るのだ。
 政府閉鎖が長期化し、その政治的対立の勢いが、国債の発行上限を定める債務上限の引き上げ協議にも波及した場合、米国債の格下げリスクは一気に高まる。
 政府閉鎖と債務上限問題は別物だが、両者が同じ政治的対立の根から生じるため、閉鎖が長引くほど、債務上限問題が深刻化する懸念が増すのだ。その結果、債務上限が引き上げられず、アメリカが債務不履行に陥る可能性が現実味を帯びれば、格付け会社は即座に行動に移る可能性が高い。
 米国債が格下げされた場合、その影響は世界金融市場全体に及ぶ。まず格付けが引き下げられると、米国債は最上級の「安全資産」としての地位を一部失うため、投資家はより高い金利を要求するようになる。すると、米連邦政府は国債に高い金利を支払うことが必要になり、政府の財政負担をさらに悪化させる。
 また、米国債の利回りは、住宅ローン、社債、各種ローンの金利の基準として機能しているため、国債利回りの上昇は、民間企業や家計の資金調達コストも押し上げる。これで景気は一気に悪化する。
 また、格下げは「米国の財政状況と政治的ガバナンスへの懸念」というネガティブなシグナルであり、発表直後はリスク回避の動きが強まる。2011年のS&Pによる格下げ時には、米株式市場は急落し、株価の低迷が続いた。さらに、米国の信用力低下からドル安になることが予想される。実際、2011年の格下げ時にはドル安・円高が進行した。
 金利上昇は住宅ローンや自動車ローンの金利を押し上げ、家計の消費と企業の投資を冷え込ませる。これは景気後退リスクを高める要因となる。だが、政府の利払い費が財政を圧迫することで、景気対策や社会保障など、他の政策分野に回せる資金が減少し、有効な景気後退の対策が実施できなくなる。もちろん、アメリカ経済はこのような状況になると、世界経済にも大きな影響をもたらすことは間違いない。日本を含め、世界経済全体の成長が減速することになる。

●米国債の格下げと商業用不動産ローンの破綻が同時に起こる
 しかし、米国債の格下げが金融危機の引き金になるかといえば、かならずしもそうではない。金融部門と実態経済全体がかなり冷え込むことになっても、1929年の大恐慌や2008年の金融危機のような激烈なパニックになる公算は低いと見られている。
 しかしながら、米国債の格下げと商業用不動産ローンの破綻がほぼ同時期に一緒に起こった場合、パニック型の激烈な金融危機が発生する可能性は極めて高くなる。この2つが同時に深刻化した場合、金融市場と実体経済に二重の衝撃が加わり、危機が複合的に増幅される可能性が高い。これは、「安全性」と「流動性」という米金融システムの二大柱が同時に揺らぐことを意味し、金融危機を招くのだ。
 米国債の格下げは政治的・財政的な警告であり、商業用不動産の破綻は金融システム内の構造的な病理である。これらが同時に発生した場合、単なる足し算ではなく、掛け算でリスクが増幅し、2008年のようなシステミックな金融危機を引き起こす可能性が格段に高まる。
 その理由は、この二重の危機が重なると、それぞれの問題が互いを悪化させるフィードバックループが生じるからだ。以下のようなループだ。
 米国債格下げ → 政治的ガバナンスへの不信 → 金利上昇 →商業用不動産ローン借り換えの困難 → 地方銀行の商業用不動産ローンの損失拡大 → 地方銀行の不良債権増加 → 銀行の信用収縮 → 金融危機 → 景気後退 → 政府財政の悪化 → 米国債の信認のさらなる低下

●危機の可能性はある、金銀の高騰
 もちろん、トランプの高関税によるインフレの悪化など、米経済の危機を深化させる要因は他にもあるだろう。しかし、TikTokなどのSNSにおける経済の専門家の投稿を見ると、この2つの危機の重なりがもっとも警戒されていることが分かる。だが、この危機が確実に起こるというわけではない。なんとかこれを回避することは可能かもしれない。
 一方、最近「1929年」という本を書き注目を集めている金融専門の記者は次のように述べている。CBSのインタビューからの抜粋だ。

司会者:
 私たちはクラッシュを迎えると思いますか? 今こそ、国内で最も影響力のある金融記者の一人であるアンドルー・ロス・ソーキンに意見を聞く良い機会だと思いました。彼は、100年前の市場クラッシュについて本を書いたばかりです。怖くないですか?

ソーキン:
 私は、現在の株価が持続可能とは思えない水準にあることを懸念しています。私たちは、ある種の驚くべきブームを経験しているか、あるいは、1929年を再び経験しているかのどちらかです」

 このように発言し、1929年の大恐慌の可能性があることを指摘した。
 このような不安な心理は、市場を覆っているように思う。そのため、リスク回避資産である金と銀の価格がこれまでにないくらいに高騰している。
 金価格は史上初の4,300ドルを、銀価格は史上初の53ドルをそれぞれ突破した。金銀価格の急騰は興奮を覚えるが、これは安全資産への逃避である。金融危機の発生を懸念する雰囲気は日増しに大きくなっている。我々も本気になって注視しなければならない。

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●「ヤスの勉強会」第140回のご案内●

「ヤスの勉強会」の第140回を開催します。日本では高市政権が誕生し、アベノミクスと同じような財政出動を実行するとしています。これはインフレを再燃させ、実質賃金を低下させる可能性もあるとされています。一方アメリカでは、トランプ政権の過激な政策の結果、国内では大変な混乱が続いています。内戦になるかのような予感さえします。その他の世界情勢も含め、これからどうなるのか全力で分析します。

 ※録画ビデオの配信

 コロナのパンデミックは収まっているが、やはり大人数での勉強会の開催には用心が必要だ。今月の勉強会も、ダウンロードして見ることのできる録画ビデオでの配信となる。ご了承いただきたい。

 【主な内容】
 ・日本のこれから、いったいどうなるのか?
 ・暴動で騒然となりつつあるアメリカ
 ・経済デジタル化のプロセスと金融危機
 ・米軍の東アジアからの撤退?
 ・変化するBRICSの国際秩序
 ・テック・ライトの最終計画とは?
 ・本当に我々の意識は進化しているのか?
 など。


 よろしかったらぜひご参加ください。

 日時:11月29日、土曜日の夜までにビデオを配信
 料金:4000円
 懇親会:リアル飲み会とZOOMで開催


 以下のメルアドから申し込んでください。

 記載必要事項
 名前(ふりがな)
 住所 〒
 メールアドレス
 参加人数
 懇親会の参加の有無
 ytakashima@gmail.com


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Profile:高島 康司(たかしま やすし)
高島 康司(たかしま やすし)

社会分析アナリスト、著述家、コンサルタント。
異言語コミュニケーションのセミナーを主宰。ビジネス書、ならびに語学書を多数発表。実践的英語力が身につく書籍として好評を得ている。現在ブログ「ヤスの備忘録 歴史と予知、哲学のあいだ」を運営。さまざまなシンクタンクの予測情報のみならず、予言などのイレギュラーな方法などにも注目し、社会変動のタイムスケジュールを解析。その分析力は他に類を見ない。
著書は、『「支配−被支配の従来型経済システム」の完全放棄で 日本はこう変わる』(2011年1月 ヒカルランド刊)、『コルマンインデックス後 私たちの運命を決める 近未来サイクル』(2012年2月 徳間書店刊)、『日本、残された方向と選択』(2013年3月 ヴォイス刊)他多数。
★ヤスの備忘録: http://ytaka2011.blog105.fc2.com/
★ヤスの英語: http://www.yasunoeigo.com/

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