トップが語る、「いま、伝えたいこと」
2週間前に年末には日経平均が5万円に到達すると書かせていただいたのですが、4万円を目前にして足踏みしている状態です。配信した直後に舩井メールクラブの特別対談動画の収録( ※こちらをご登録いただくと無料でご視聴いただけます→ https://payment.51dc.jp/p/r/oZcJw9ER )があり、政治経済学者の植草一秀先生とお話しさせていただく機会がありました。私は、植草先生が自信を持って予想された相場の行方が外れたことを見たことがないのですが、結論から言うと、5万円になるという意見には同意されませんでした。お気遣いいただいたのだと思いますが理論的には5万円になってもおかしくないが、なんと言っても(トランプ大統領という)不確定要素があるので、そこまでは明確に予想はできないというご意見でした。
先週の日本の株式相場も4万円を目前にしてなかなかその水準に到達しない、もやもやとした状態が続きました(この原稿は金曜日の早朝に書いているので、金曜日の相場は織り込んでいません)。海外投資家が14週連続で日本株を買い越していて、その総額は4.9兆円に達しているという報道もあるのですが、それでも足踏み状態が続いています。原因はトランプ大統領がいわば日本をメインターゲットにして相互関税をかけることを通告してきたことや、なかなか思い通りに動かないパウエルFRB議長に対抗するために、次期総裁を早々と指名して影の総裁として、その意向をマーケットに織り込ませるようにすると考えていること等が報道されていることのようですが、神経戦が展開されるようです。
トランプ大統領が本当にやりたいことはFRBの解体だという意見もありますので、もしそこまで踏み込むことが明らかになれば、やはりかなりの混乱が予想されます。相互関税が発動されれば輸出に大きく依存している中小企業は大変ですが、大きな要因で見ればやっぱり自動車産業に対する打撃が圧倒的に懸念されるのだと思います。しばらく対応は大変だと思いますが、日本はこのような危機に何度も直面してそれを乗り越えてきた歴史があるので、今回もどうにか対応できるのではないかなと希望的観測をしています。
先週末に講演でトヨタ自動車が本拠地にしている名古屋を訪れる機会があったのですが、街角の景気はとてもいいように感じます。製造業が主体の大都会ですが、決して先行きを悲観している街のようには感じられませんでした。日本経済の問題は、東京や大阪、それにインバウンドの影響が大きい地域とトヨタが強い名古屋に行くと景気の良さを感じられますが、それ以外の地域は決して景気がいい状態とは感じられないことにあるのかもしれません。ただ、スローライフを志向する藻谷浩介先生の『里山資本主義』(角川新書)のような考え方もあるので、出張で短時間だけ訪れた私の感覚ではわからない強さを秘めている地域もあるのだと思います。
スローライフと言えば『腐る経済』(講談社)という衝撃の本を出された渡邉格・麻里子さんといういまは鳥取県智頭町在住のご夫婦の『菌の声を聴け タルマーリーのクレイジーで豊かな実践と提案』(ミシマ社)という本も大変面白く読めます。いつも相場のことを当欄では書かせていただいていますが、バランスをとることが大事だとも思いますので、スローライフに興味を感じられるのなら読んでいただければと思います。
世間では参議院の選挙戦が行われていますが、SNSではかなり極端な意見を発信している人や、中には候補者の方でも他の候補者に対して一方的な誹謗中傷をぶつけている方も散見されるように感じます。法律に違反しない範囲ならばそれも選挙ですが、フィルタリングバブル(好みに合う情報ばかり表示されること)の影響をかなり受けていることをちゃんと考慮することは大事だと感じています。今週はそんなことも考えながら東京大学准教授の植原亮先生の『科学的思考入門』(講談社現代新書)をご紹介させていただきたいと思います。
専門家でもない我々は、そもそも科学に対して正しくアプローチする方法を正確に理解しきれておらず、科学に対して要らぬ不信感を抱いてしまう、そんな方も多いのではないでしょうか。本書はそんな科学に対するハードルを取り払い、『ふだん使い』できる実用性を持たせ、その上で理論的な深さも備える事ができるように書かれたものです。
そのようなテーマである為、(おそらく専門家からすれば非常に基礎的な)科学とはどのようなものであるかを解説する事に、根本的な部分から思考を改善する方法を教えてくれます。『科学とは説明するものである』という言葉が一章に登場します。我々が非科学的だと思い込んでいるものについても(多少の屁理屈と感じる要素はありますが)説明する事ができるようで、その為の方法について、一般的に想像される数字などではなく、文字による説明のみでも科学的思考は成立する事が解説されています。
必要な過程、排除すべき要素、それらについての流れが解説されているので、特に専門的な知識がなくとも理解する事が可能です。基礎から応用への発展、深さと解説された部分についても文章が理解しやすく明快である為に潜っていく事が可能になります。本書を読むだけでは、当然科学の専門家になれるわけではありませんし、専門的で高度な技術が身に付くわけでもありません。
しかし科学についての解説を受ける際にそれを理解する事、それに納得する事が可能になる。最も大きな部分は科学という言葉に対するハードルを下げてくれる、我々のようにデマや陰謀論と呼ばれかねないスレスレの情報と接する機会が多い人間には特に、情報の取捨選択を助けてくれるという意味でも、本書はその点において一読の価値があるのは間違いないものであるように感じました。
大学時代にオーストリア出身のイギリスの哲学者カール・ポパー博士の勉強をさせてもらったことがあります。科学的方法論とは徹底的に批判していくことだというのが基本的な考え方で、舩井幸雄のプラス発想の逆のものだなと感じたことを覚えています。いまなら、両者の考え方を包み込むことができますが、SNS上の極論の中には40年前の私レベルのものもあるような気がしていますので注意が必要なのかもしれないと感じています。
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2025.07.07:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】株主総会を終えて (※佐野浩一執筆)


舩井 勝仁 (ふない かつひと)
![]() 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』 |
佐野 浩一(さの こういち)![]() 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』 |
