“超プロ”K氏の金融講座

このページは、舩井幸雄が当サイトの『舩井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介していた経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2016.07
ウーバーライゼーション

 「個人で所有する車は、96%の時間が使われていない。そして最大3割もの土地や空間が、この車という鉄の塊を収容するために使われているのだ」。
 今や飛ぶ鳥を落とす勢いで世界中の自動車メーカーを驚愕させているウーバーのカラニックCEOは豪語しています。ウーバーとは、米国をはじめ世界の各都市で展開されている配車サービスの会社で、スマホなどから今いる場所にハイヤーなど車を呼ぶことができるサービスを展開している会社で、現在急成長している世界的に話題の企業です。
 カラニックCEOの発言の通り、所有する車が96%の時間使われていない、と言われれば、家の車庫に常時車を置いてあって、たまに使う休日ドライバーの人にとっては当たり前のようなことで、何故そんなことを問題にするのか、疑問に思うかもしれません。車を置いておくには広いスペースが必要なのも当たり前のことで、それの何が問題なのか、キョトンとしそうです。

●デジタル革命による破壊、という流れ
 ところがウーバーのCEOはこの膨大な無駄に目をつけ、この無駄を改善することで、大きなビジネスチャンスを作り出そうと試みたのです。空いていて使わない時間の車を効率的に有効に利用しようということです。
 その試みは情報化のいき届いた現在の世界において圧倒的な成功をもたらしました。突如、彗星のように現れたウーバーという新しい会社が、今や世界の自動車業界やタクシー業界をもあっという間に飲み込んで、その業界をやがて破壊してしまいそうな勢いなのです。日本ではまだウーバーと言っても名前を聞いたことがあるくらいの人が大半でしょうが、いずれ誰でも知るようになるでしょう。
 現在の時代の変化は激しく、あっという間にビジネスが変わってしまいます。普通に仕事を行っていたとしても、ある日突然、その仕事がなくなってしまうかもしれないのが今の時代なのです。自分のところは関係ない、と思っていたら大間違いです。ウーバーという会社は破壊者のごとく世界を席巻しつつあります。ウーバーの急激な躍進に見られるように、世界中のビジネスを取り巻く大規模な変化は留まることなく加速していくでしょう。
 これらの動きの背景となっている情報化、デジタル化の波は津波のように世界を襲ってきています。今や安泰なものは存在し得ません。ウーバーが起こした改革の波、ウーバーライゼーションを捉えることで、現在進みつつある革命的なビジネス上の変化をみていきましょう。

 我々はひと昔前からみると、様々な面でだいぶ便利になってきていますが、それは時代の変化と発展の中で当たり前と思ってしまい、通常、その変化を深く意識することはありません。ただその変化が自分の生活を脅かしたり、自分の職が失われたり、奪われたりするような事態に遭遇すると、異様な危機感を覚えるものです。すでに一部の業界においては、昨今の急速な時代の変化で実際に職を失ったり、仕事を縮小したりすることを余儀なくされているケースもあることでしょう。
 例えば、今や誰もが保有しているスマホ。このスマホを持つ、使うことが当たり前のことで、使用することに何の疑問も持たないと思います。ただこれだけ便利なスマホという商品を誰でも持つことによって、とてつもない変化が仕事上や社会で生じていることも意識する必要があるでしょう。
 かつては写真を撮るにはカメラが必要だったのですが、今やカメラなど持っている人は少なく、またかつてはカメラにはフィルムを入れたものですが、今、フィルムはほとんどありません。デジタル化が行き届き、スマホで全てを完結させてしまいます。また誰でもスマホを持つようになって、公衆電話などは姿を消しました。雑誌の売り上げや本の売り上げが急減しているのですが、今や知りたい事は雑誌や本を買う必要もなく、スマホから自分の検索したいことを調べれば即座に知ることも可能です。メール、電話機能、カメラ、検索機能、ゲーム、今やスマホ1台あれば何でもできる時代になりました。その代わりスマホがないと何もできなくなって立ち往生してしまうということもあります。

 このスマホの爆発的な拡大によって、様々な仕事や物がその必要性がなくなることで、存在価値が失われてきたことも事実です。
 かつて、コダックという世界に冠たるカメラ及びフィルムのメーカーがありましたが、今やその存在は消え去りました。また町のカメラ屋さんも、現像をして写真を作ってくれたお店も姿を消しました。かつて写真はカメラで撮って、それを現像して何枚もの写真に作り上げる工程がありました。撮った写真のフィルムを出して写真屋さんに持っていった経験は誰でもあると思います。一昔前の写真ができるまでの工程を考えてみますと、カメラやフィルムを作るメーカー、そして販売店、そしてフィルムを現像するお店、その機械や材料を作ったり運んだりと多くの仕事が存在していたのです。その膨大な工程の中で、世界中で何百万人という人たちがこれに関連した仕事で働いていたわけです。一枚の写真ができる、そしてそれが自分の手に入るまでには多くの工程が存在していて、多くの人の手を介していたわけです。今では遠い過去のように思えるかもしれませんが、カメラで写真を撮って、それを現像して写真にするためにお店に行っていたのはつい最近の事です。まだ10年も経っていません。

 フェイスブックという会社がありますが、フェイスブックに登録して自分の取った写真や動画を瞬時に送ることができます。それも無料で、何人に対しても何百万人に対しても瞬時にデータを送ることができるようになりました。デジタル化の効果です。かつてはフィルムでしたから何枚も写真を現像して、それを手渡しや郵送で送っていた時代と比べると雲泥の差ですが、そのような変化が起こったのはつい最近のことなのです。そしてあっという間に多くの仕事が失われることとなりました。これが典型的なデジタル化の波の勢いで、デジタル化のさらなる発展によって、最近では同じようなコピーがあっという間に何枚でも瞬時で、ほぼ無料でどこにでも送れるようになったわけです。この、時代の発展とデジタル化の波が多くの工程や仕事を破壊してきました。
 フェイスブックは、わずか5万人程度の従業員で写真や動画を瞬時に無料で膨大に送るシステムを作り上げました。その陰で、コダックをはじめとするフィルムやカメラの製造や現像や販売など、旧来の工程での仕事では数百万人を超える人達の仕事が失われました。これは典型的な例で、デジタル化によって勝者一人勝ちの構図となっています。

 アマゾンという会社がありますが、アマゾンが日本に上陸してきたことで、本の流通が変わりました。それまでは本屋で購入していた本が宅配されるようになり、瞬く間に全国の本の流通ルートを破壊していったのです、そして中小の本屋の経営を不可能なものにしていきました。本来は本屋さんのライバルは他の本屋さんだったわけですが、突如現れたアマゾンという破壊者は店舗を持たず、スマホ、あるいはパソコンという誰でも保有するルートを利用することで、物流に変化を起こし、あっという間に出版業界を制覇していったのです。アマゾンは一人勝ちとなりましたが、多くの本の販売や流通にかかわっていた仕事は失われていったのです。これもつい最近のことです。

 かようにフェイスブックもアマゾンも、突如現れて、今までとは違う形態のビジネス展開を行ってその市場、写真を取り巻く市場や、本を取り巻く市場をほぼ独占するような形で市場そのものを奪い取っていきました。
 このようなデジタル化による一部の業界の極端な変化を業界では、デジタル革命による破壊、デジタルディストラクションと呼んでいます。
 そして今、そのようなデジタルディストラクションの勢いはアマゾンやフェイスブックのみならず、あらゆる意味であらゆる業界で加速しつつあるのです。さらなるダイナミックな変化で自動車業界やタクシー業界を席巻しようとしているのがウーバーです。ウーバーはデジタル化と情報化、そしてスマホの急速な進化を巧みに利用してビジネスを作り出したのです。今ではスマホを多くの人が保有していますから、スマホを持っていることで、その保有者の位置情報がリアルタイムでわかります。言わばスマホによって「私はここにいるよ!」と多くの人に瞬時に知らせることができるのです。そして車はどこでも余っているわけです。その余った車とリアルタイムの位置情報を合わせて、効率的に車の利用を図ろうというのがウーバーの狙いです。何もタクシーの運転手でなくても、自らの自動車を位置情報を利用してそばで車を必要な人をキャッチして乗せていけば効率もよく、利用しやすいというわけです。スマホを使うことで車を必要とする人と車を提供できる人を瞬時にリアルタイムで結びつけるわけです。まさにこのようなサービスが展開できるのはスマホの劇的な情報量の拡大があったからです。こうしてウーバーのサービスは消費者に受け入れられ大きく伸びていったのです。

●劇的に世界中で広がっていくウーバー
 しかし驚くべきはこの伸びのスピードです。ウーバーは2009年3月、サンフランシスコで創立されました。リーマンショックの後です。それが年々倍々以上のスピードで伸びていき、最近の統計ですとウーバーの利用者は劇的に増え、乗車回数は過去3年で250倍の63億回になったというのです。現在世界80ヶ国、450都市でビジネスを展開、その規模は日々拡大中です。この驚くべき伸びと将来性を鑑みて、現在ではウーバーの企業としての時価評価額は日本円で7兆5000億円と言われています。この額はソフトバンクやファーストリテーリングよりも大きく、自動車業界で比較しても、ホンダよりも上なのです。もちろん米国の最大の自動車会社GMも軽く凌駕しています。
 ウーバーのビジネスはライドシェアサービスと言われ、自動車の相乗りの文化を拡大させているのです。さらに近い将来には、自動車の自動運転が解禁されるようになるでしょう。そうなると自動車など持たず、自動運転された自動車をウーバーで呼ぶことで使用する頻度が爆発的に拡大することは必至でしょう。現在タクシーの運賃の7割までもが人件費と言われていますが、この人件費がなくなると劇的にタクシーの値段は安くなるわけです。ウーバーのようなライドシェアサービスはますます低価格になり、このようなサービスを利用するのが一般的になる日も近いでしょう。そうなると一家に一台というような車の保有は過去のものになっていく可能性が高いと思われます。かようにウーバーのビジネスの拡大は車の乗り方を変え、車の販売を減少させていく傾向をもたらすわけです。
 バークレイズは「今後25年間で車の販売台数は4割減少する」とレポートしています。恐ろしいほどの速度で時代が変わっていきます。デジタル化、情報化の波はさらに加速していって我々を取り巻く世界は驚くような変化を遂げるのです。

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世界経済のトレンドが変わった!『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売、最新刊に『世界経済のトレンドが変わった!』(2016年3月 幻冬舎刊)がある。

★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/
★(株)ASK1: http://www.ask1-jp.com/

Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売、最新刊に『世界経済のトレンドが変わった!』(2016年3月 幻冬舎刊)がある。

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