ヤスのちょっとスピリチュアルな世界情勢予測

このページは、社会分析アナリストで著述家のヤス先生こと高島康司さんによるコラムページです。
アメリカ在住経験もあることから、アメリカ文化を知り、英語を自由に使いこなせるのが強みでもあるヤス先生は、世界中の情報を積極的に収集し、バランスのとれた分析、予測をされています。
スピリチュアルなことも上手く取り入れる柔軟な感性で、ヤス先生が混迷する今後の日本、そして世界の情勢を予測していきます。

2023.07.01(第113回)
明らかに文明の風は東アジアから吹いてる

 コロナのパンデミックとウクライナ戦争で、アメリカの覇権は衰退し、欧米諸国は政治的、経済的な主導権を急速に失いつつある。これを底流に進む政治・経済的な日々の変化のニュースに我々は翻弄されがちだ。もちろん、そうした動きを追い、状況の変化を的確につかむことも非常に重要だ。
 しかし一方、こうした動きの深層で進む社会の大枠での変化を追うことも重要だ。意外な変化が目に入ってくる。それは、象徴的に表現するなら、文明の風が明らかに東アジアから吹き始めたという変化だ。

●TikTokのトレンドに見る変化
 筆者は年甲斐もなくTikTokを見るのが好きだ。ここ5年くらいだろうか、ほぼ毎日TikTokを見ている。すると、コロナのパンデミックとウクライナ戦争という2つの大きな出来事を挟んで、それ以前と以後では大きな変化が見られるようになったと思う。客観的なデータがあるわけでもなく、筆者の印象だが次のように変化している。

・2020年くらいまでのパンデミック以前
 パンデミック以前は明らかにエンタメのパーフォーマンスが中心だった。また、日本を訪れる外国人旅行者の投稿も多く、その中心的な内容は、アニメ、ファッション、おしゃれな小物、グルメ、風景、旅館など観光客にありがちな投稿動画だった。消費対象としての日本というイメージだ。

・2020年から2022年のパンデミック最中
 それが、コロナのパンデミックになると傾向が大きく変わった。社会の変化に苦しむ人々の声が数多く投稿されるようになった。孤独、精神崩壊、自殺願望、先の見えない不安などだ。むろんエンタメ系の動画もあるが、めっきり見なくなった。また、どの国もロックダウンしているので、外国人観光客による投稿動画は激減した。

・2022年のウクライナ戦争
 そうした中で、2022年から急速に増えたのがウクライナ戦争に関連した動画である。ウクライナ、ロシア双方が動画を投稿している。リアルな戦闘シーン、戦争の被害、平和への訴え、ロシア、ウクライナ双方の憎しみの叫びなどの動画だ。これに他のコンテンツは圧倒された感じだった。

・2023年のポストパンデミックとAIの爆発
 それが2023年のパンデミック後になると、トレンドはまた大きく変化している。ウクライナ戦争関連の映像は多いものの、AI関連の動画が爆発的に増加している。ChatGPTはもちろんだが、あらゆる種類のAI関連アプリの紹介動画だ。こうした動画は筆者がAIを学習する重要なリソースになっている。YoutubeよりもTikTokの方がAIの紹介動画は多い印象を持つ。

 そうした中、外国人観光客の動画に顕著な変化が見られる。日本の外国人観光客は1年前の100倍になっているが、彼らの投稿する動画のコンテンツも大きく変化しているのだ。欧米の旅行者の動画がとても多い。
 もちろん、これまでのようなアニメやグルメもあるが、むしろ日本の社会環境のよさに注目する動画が中心だ。どこに行っても安全で落ち着きがあり、生活しやすい環境は現在の欧米と比べると雲泥の差があるというのだ。

●日本に住みたい欧米人、荒れるアメリカ
 なにもこの傾向は日本に限られたものではない。中国や韓国についても同じような動画が見られる。TikTokの投稿者のイメージでは、豊かな中国、かっこいい韓国、安全と落ち着きの日本というところだろうか。
 そして日本に関して増えているように見えるのは、欧米人の富裕層と思われる旅行者の、日本居住願望を表明した動画だ。特にアメリカ人に多い。アメリカはあまりにも荒れてしまい、まともに生活できなくなってきている。また、日本に来てみて自分がどれほど狂った社会環境に住んでいたのか実感したというものだ。
 たしかに2020年の大統領選挙とパンデミック、そしてBLM運動の盛り上がりでアメリカの大都市圏の社会環境は荒れるに荒れている。イギリスでも似たような状況だ。

 具体的な例を示そう。オレゴン州のポートランドという都市がある。全米でも平均取得が高く、リベラルでもっとも住みやすい都市として定評があったところだ。実は筆者も、子供のころ4年近く住んでいたことがある。いまもここに住む友人が多い。そのパンデミック前の2019年の動画を見てほしい。すばらしい環境であることが分かる。

 Portland, Oregon - City of Natural Beauty
 https://www.youtube.com/watch?v=-bx3Jibzdak&t=134s

 しかし、1年後の人種差別反対運動でトランプ派や治安部隊と衝突し、都市は荒れるに荒れた。その時の光景だ。

 Portland protests
 https://www.youtube.com/results?search_query=portland+oregon+protest

 そして、これが2023年のポートランドだ。繁栄していたメインストリートは、ホームレスとドラッグの中毒者、そして薬の売人の巣窟と化し、犯罪率も急激に上昇している。ポートランドに住む筆者の友人は、ここは人の住める場所ではなくなっていると言っている。

 Portland's Meltdown
 https://www.youtube.com/watch?v=t9478Uqe7co&t=39s

 こうした状況はポートランドだけではない。多くの大都市圏で拡大している。以下は、東部ペンシルバニア州の大都市、フィラデルフィアのダウンタウンの一角の状況だ。ここはケジントン・アベニューという地域で、30年ほど前からヤクの売人が横行し、治安が悪い地域ではあった。まずは、5年前の2018年の映像を見てほしい。こんな感じだった。

 2018年のフィラデルフィア、ケンジントン通り

 PHILADELPHIA'S KENSINGTON AVE HOOD PT 2 / RAW FOOTAGE
 https://www.youtube.com/watch?v=SBQx1EkElC0&t=15s

 次は2023年の同じケンジントン通りの状況だ。パンデミック以降、凄まじい状況になっている。5年でここまで変化するとは、驚きだ。

 THIS IS AMERICANS !
 https://www.youtube.com/watch?v=C4gD7GAdM-U&t=185s

●全米で拡大するホームレス
 こうしたホームレスや麻薬中毒者の集まる地域はアメリカのどの大都市圏にもある。特に珍しい現象ではない。しかし、やはりコロナのパンデミック以降、こうしたエリアが急速に拡大し、悪化しているのだ。
 ウォール・ストリート・ジャーナルは、都市から州全体まで幅広い地域でホームレスの数をカウントしている150の団体のデータを調査した。100以上の場所で、2023年初頭のカウントが2022年に比べて増加したと報告されており、その数字を総合すると、米国では近年より急激な上昇が見られる可能性があることが分かった。これまでのところ、シカゴ、マイアミ、ボストン、フェニックスなど、データを報告している主要都市部のほとんどが増加している。
 同紙は、昨年ホームレスの数が最も多かった100の地域のうち67の地域と、その他の多くの地域からデータを入手した。予備データでは、67のうち48が今年増加したと報告しており、合計カウント数は2022年のそれらの場所の数値から見ると9%、2020年からは13%増加している。これらの数字を総合すると、米国では近年より急激な上昇が見られる可能性があることがわかる。
 この増加は、ホームレス支援団体によると、住宅費の高騰や、立ち退きモラトリアムなど、パンデミック期の一時的な保護措置が終了したことによる圧力であることを強調している。
 連邦政府機関である米ホームレス問題省庁間協議会は、賃貸支援やその他のパンデミックプログラムの終了後、多くの地域で増加が見られると述べた。同機関によると、バイデン政権は今年の集計以降、新たなバウチャーや助成金など、5億3100万ドルを支給したという。

●犯罪率の増加
 また、ホームレスの割合が高いため、全米の主要都市で犯罪が増加している。カリフォルニアの主要都市では、生活の質が急落する中、テキサスやコロラドなど、より緑豊かな土地に住民が流出する事態も起きている。
 かつて、ニューヨーク、ワシントンD.C.、サンフランシスコ、ロサンゼルスには若者が集まっていた。
 しかし今、これらの都市を悩ませている犯罪、薬物乱用、ホームレスのために、これらの都市から純然たる流出が起きている。ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルス、ワシントンD.C.はすべて、大卒者の純然たる流出を目の当たりにしている。
 この4都市は、メディア、政治、エンターテインメント、金融、ハイテクなどの分野で仕事を求める人たちにとって、典型的なゴール地点だった。ニューヨーカーがよく言っていたように、ここで成功すれば、どこでも成功できるのである。多くの大学卒業生にとって、その4大ブランド都市のいずれかで成功することが目標だった。
 しかし、今は違う。この4都市はいずれも犯罪の危機に悩まされており、大卒者が他の都市へと流出しているのだ。ニューヨークの公共交通機関は安全とは言えない。サンフランシスコはホームレスに悩まされている。ロサンゼルスは、凶悪犯罪者やギャングを路上から排除することを積極的に拒んでいる。ワシントンは、国会議員のアパートでの安全さえ保証できない。

●いったい何が起こっているのか?
 こうした状況こそ、最近TikTokで多くなっているアメリカ人旅行者の日本居住願望の高まりの背景になっていることは間違いない。こうした環境に住んでいる人々で、居住の拠点を日本に移す所得の余裕のある人々の間では、日本の安全で落ち着きのある社会環境はまさに理想と感じられることだろう。TikTokでよく知られたAnimated Crabonというアカウントがある。50代のサンフランシスコで成功したITベンチャーの経営者だった人物だ。
 彼は、日本に来て初めて落ち着いて生活するということはどういうことか本当に分かったと言っている。

 2020年から2023年の3年間で、我々の社会は根源的な変化に直面した。次のような変化が一挙に社会で起こったのだ。

 ・コロナを背景にしたリモートワークの進展
 ・デジタルトランスフォーメーション
 ・格差の一層の拡大
 ・精神のバランスを崩す人々の増大
 ・自殺、犯罪、薬物中毒の急増
 ・抗議運動の急増と国民の分断
 ・ChatGTPなどのAIの発展による専門職の喪失

 こうした変化は、年の単位で徐々に起こるのだが、コロナのパンデミックが背景となり、一挙に起こったのだ。このような変化が起こったとき、社会は不安定化するので、社会の持続性が問われる状況となる。詳しく説明するとあまりに長くなるのではしょるが、長い伝統に育まれ、国民が基本的な価値観を共有している日本、中国、韓国のような東アジアの国々の方が、とことん討論することですべてを言語化し、民主主義の原則で社会のルールを決めるアメリカやイギリスのような国々よりも、社会の持続性と安定性が高いということなのかもしれない。

●アメリカの覇権凋落の象徴、SNSの主導権の変化
 これが、TikTokの投稿の大きな変化から見える社会的背景だ。以前に紹介した世界最大のヘッジファンドの創設者、レイ・ダリオの考えるアメリカの衰退をまさに象徴する変化である。
 さらにアメリカの衰退は、これだけではない。多方面の領域にはっきりと現れている。日本では報道されることはまずないが、目立っているのはIT、特にソーシャルネットワークの主導権の変化だ。一時は世界をリードしたグーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト、いわゆるGAFAMに代って、中国やインド、またロシアのIT・SNSのブランドが急拡大しているのだ。最後に、これを見てみよう。

 基軸通貨がドルであること以外、アメリカのグローバル覇権のもう一つの柱は、そのソーシャルネットワークであるGAFAMである。しかし、ドル同様、BRICSを介した多極化は、システムの根幹を崩している。
 BRICSのうち、ロシアと中国の2カ国は、アメリカ・欧米のソーシャルネットワークの支配からまったく免れているのだ。
 対ロシア制裁の下、一部の大手企業はサービスの停止を決定した(Google、Sony、Apple、Microsoft、Netflix、Spotify、Amazon、さらにはアメリカ支社のTikTok)が、ロシアもFacebook(WhatsAppを除く)、Twitter、Instagram、YouTubeなどのソーシャルネットワークへのアクセスを遮断することを決定し、ロシアのRutubeやRossgramなど独自のプラットフォームを開発しようとしている。既に独自の検索エンジンYandexも持ち、独自のインターネット構築を図っている。
 世界のインターネットユーザーの5人に1人は中国人であるが、中国はアメリカや外国のプラットフォームに対して閉鎖的だった。グレートファイアウォールの向こうで、独自のBATXネットワーク(Baidu(Googleに相当)、Alibaba(Amazonに相当)、Tencent(メッセージング、ゲーム、ビデオプラットフォームなど)、Xiaomi(携帯電話))を構築している。中国政府はこのシステムを注視しており、社会的責任を喚起することを躊躇していない。
 また、タイや台湾でも人気のある日本のメッセージングサービス、LINEや、韓国のメッセージングサービス、カカオトークなど、アジアでは他のネットワークも開発されている。これらは依然として地域性が強いものの、中国やロシアのインターネットツールでさえ、国際市場でのシェアを侵食し始めている。Baidu(中国語)とYandex(ロシア語)は、YahooとBingと肩を並べるアジアの検索エンジンのトップ5に入っており、アジアの携帯電話(Samsung、Xiaomi、Huwei、Oppo)は世界トップ5に入いる。
 Alibabaは世界市場シェア25%でAmazonより上、また皮肉にも中国よりもアメリカで最大の視聴者を抱えている。中国のメッセージサービスWeChatは世界で最も広く使われ、30億人のユーザーがいる。またTikTokは、上昇気流に乗って10億人の大台を突破している。
 GAFAMの共有インテリジェンスを、世界がこれ以上信頼する理由はないと考えられている。GAFAMは、一部の国から新植民地主義とみなされ、そのデータは、我々がよく知っているように、アメリカの手に落ちる。彼らは、ロシアや中国のように、もはや普遍的ではない自らの価値に従って検閲を行い、地理的、言語的、形式的障壁を作り出すアルゴリズムによってユーザーとアカウントを選別している。
 このように、アジアがあらゆる分野で進歩や革新の最前線にいることは、驚くことではないだろう。我々がGAFAMに閉じこもり、グローバルと考えている一方で、この別世界では、集団的、多ネットワーク的、多極的な知性が培われている。

 これが現実だ。このように見ると、いまTikTokの投稿の大きな変化からかいま見える状況は、アメリカの覇権の急速な失墜という歴史的な転換を反映した、多様な側面の現れなのである。この流れはこれから時を追うごとに拡大し、あらゆる方面での変化を呼び起こすことだろう。2023年はその一歩の年でもある。こうして見ると、やはり文明の風は東アジアから吹いているように見える。日本社会の危機に対する耐性は、我々が思っているよりも強いのかもしれない。

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●「ヤスの勉強会」第121回のご案内●

「ヤスの勉強会」の第121回を開催します。プーチンはウクライナへの大規模な兵力増強を行っています。モスクワのテロ事件以降、ロシア軍の本格的な攻勢がありそうです。またアメリカの大統領選挙は大きく混乱しそうです。トランプの躍進が止まりません。アメリカの分裂は進むのでしょうか? また、イスラエルのガザ攻撃に端を発する中東大戦争の可能性もあります。どうなるのでしょうか?徹底的に分析します。

 ※録画ビデオの配信

 コロナのパンデミックは収まっているが、やはり大人数での勉強会の開催には用心が必要だ。今月の勉強会も、ダウンロードして見ることのできる録画ビデオでの配信となる。ご了承いただきたい。

 【主な内容】
 ・トランプのアジェンダ47はどこまで本気か?
 ・中東大戦争のリスクを評価する
 ・イスラエルが引き金を引いたハルマゲドン
 ・2024年5月に日本の食料危機はあるか?
 ・中国の新たな成長モデル
 ・日本社会の根本的な変化と日本の未来
 ・トランスヒューマニズムと意識変化
 など。


 よろしかったらぜひご参加ください。

 日時:4月27日、土曜日の夜までにビデオを配信
 料金:4000円
 懇親会:リアル飲み会とZOOMで開催


 以下のメルアドから申し込んでください。

 記載必要事項
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Profile:高島 康司(たかしま やすし)
高島 康司(たかしま やすし)

社会分析アナリスト、著述家、コンサルタント。
異言語コミュニケーションのセミナーを主宰。ビジネス書、ならびに語学書を多数発表。実践的英語力が身につく書籍として好評を得ている。現在ブログ「ヤスの備忘録 歴史と予知、哲学のあいだ」を運営。さまざまなシンクタンクの予測情報のみならず、予言などのイレギュラーな方法などにも注目し、社会変動のタイムスケジュールを解析。その分析力は他に類を見ない。
著書は、『「支配−被支配の従来型経済システム」の完全放棄で 日本はこう変わる』(2011年1月 ヒカルランド刊)、『コルマンインデックス後 私たちの運命を決める 近未来サイクル』(2012年2月 徳間書店刊)、『日本、残された方向と選択』(2013年3月 ヴォイス刊)他多数。
★ヤスの備忘録: http://ytaka2011.blog105.fc2.com/
★ヤスの英語: http://www.yasunoeigo.com/

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