トップが語る、「いま、伝えたいこと」

このページでは、舩井幸雄の遺志を引き継ぐ舩井勝仁と佐野浩一が、“新舩井流”をめざし、皆様に「いま、伝えたいこと」を毎週交互に語っていきます。
毎週月曜日定期更新
2024年1月8日
ウェルビーイングと幸せ (※佐野浩一執筆)

 まずは、この度、1月1日に発生しました 「令和6年能登半島地震」により、 お亡くなられた方々にお悔やみを申し上げるとともに、 被災された皆さまならびにそのご家族の皆さまに 心よりお見舞い申し上げます。 被災地域の皆さまの安全の確保を、心よりお祈りいたします。

 近年、「ウェルビーイング」という言葉をよく目にするようになりました。
 企業も個人も、未来へ向けて、ウェルビーイングを実現していく必要性がどんどん高まってきているという証ですね。
 最近の概念かというと、実はそうではありません。はじめて「ウェルビーイング」という言葉が使われたのは、1948年、世界保健機関(WHO)設立の際に考案された憲章に盛り込まれていると言われています。
 WHO設立者の一人である施思明(スーミン・スー)氏は、病気を予防するだけでなく、積極的に健康を促進する重要性を提唱しました。そこで、「健康」を機関名や憲章に採り入れるよう提案したのです。ウェルビーイングは短期的な幸せや喜びを意味する「Happiness」や「Joy」とも異なり、人生全般にわたる長期的で持続的な幸せの実現を意味しています。
 それからもう、70年以上が経ちました。
人生100年時代と言われるなか、健康維持はもはやゴールではなくなりました。「ウェルビーイング」な状態でいるための必要条件という認識が広がってきています。
 ウェルビーイングには、5つの要素が含まれているというのが、アメリカの心理学者マーティン・セリグマンが考案した「PERMA理論」です。5つの要素の頭文字をとってPERMA理論と名付けられています。

@ポジティブな感情(Positive emotion)
ポジティブな感情を持つことは幸せの指標になるほか、身体的、知的、心理的、社会的な豊かさにつながります。ポジティブな感情とは、希望、興味、喜び、愛、思いやり、プライド、感謝の気持ちなどです。
ポジティブな感情を高める方法として、次のような行動があります。
・大切な人と過ごす
・趣味などの楽しめる活動をする
・感謝していることやうまくいっていることを振り返る

Aエンゲージメント(Engagement)
エンゲージメントとは、仕事などの活動に完全に集中している状態を指しています。この  
状態は、フロー状態とも言い表せます。
エンゲージメントを高めるために、
・好きな活動に参加する
・日常の活動や仕事に集中する練習をする
・自分の強みを知り、発揮する……などの行動があげられます。

B他者との良好な関係(Relationship)
他者とは、自分自身の周囲にいる人たち、パートナー、友人、家族、同僚、上司など、属 
しているコミュニティーも含まれます。周囲に支えられ、愛され、大切にされていると感 
じることが良好な関係だといえます。
他者との良好な関係を築く方法として、
・興味のあるグループに参加する
・相手のことに興味を持ち、もっと理解しようとする
・しばらく関わりのなかった人と連絡を取ってみる……などがあげられます。

C生きる意味や意義の自覚(Meaning)
仕事やボランティア活動、コミュニティー活動などを通じて人生に目的を持つことで幸せを感じることができます。さらには、なにかに挑戦したり逆境を乗り越えたりするときにも役に立ちます。
・目的を見つけたり、組織に入ったりしてみる
・新しくて創造的な活動をしてみる
・だれかの役に立つことに情熱を注いでみる……ことなどが、生きる意味や意義を自覚す 
る方法としてあげられます。

D達成感(Accomplishment)
達成感とは、目標に向かって取り組むことや、それを達成すること、そして努力をするこ  
とで得られた結果のことです。達成感を味わうと、自信につながり、幸福感が深まります。
達成感を得るために、
・具体的、測定可能、達成可能、現実的、期限付きの目標を設定する
・過去の成功を振り返る
・達成できたときは自分を褒める

 このように見てみると、ウェルビーイングには人生さまざまな場面で感じる生きがいや喜び、物質的な満足から精神的な豊かさなども含んでいます。
 
 ところが、いまは“モノ余り”の時代となり、価値観の多様性も進んだことにより、かつての「幸せ」のあり方からすると、コペルニクス的転回ともいうべき変化が訪れています。
 私が生まれたのは1964年ですが、その少し前の1950年代あたりからは、家電製品の普及が急速に広がった時代でした。白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫の家電3品目が「三種の神器」と呼ばれ、世のお父さんたちは、家族にこれらの家電製品を購入するために必死に働いた……といっても過言ではないですよね。この3つが家にあるということが家族の幸せの証しであり、戦後復興の象徴でもありました。その後、カラーテレビが登場し、洗濯機は全自動となり、冷蔵庫の大型化が始まっていきます。
 また、1986年ごろから1991年ごろまで続いたバブル期では、高級住宅や高級車、高額のゴルフ会員権が飛ぶように売れ、大学生が高級ブランドのバッグを持つことも当たり前になるような、いまから考えても、モノに対する半狂乱時代でした。
このように「モノ」を手に入れることが幸せと直結するともいえる時代。つまり「所有欲」を満たすことで得られる幸福の時代が続きました。
 しかし、もう生まれたときからモノが溢れている世代、つまり「ミレニアル世代(1981〜1996年生まれで、2000年以降に成人している世代)」やその次の「Z世代(1997〜2012年生まれ)」の人たちは、明らかに「モノ」から「コト」への価値観転換を図っています。「所有欲」から「使用欲」を求めるようになり、さらに「自己実現」こそが幸せと感じる“コト”消費によって心の充足を図る傾向が強まってきたということです。
 2021年にZ世代に行ったある調査で、「あなたにとって『健康』の意味とは何ですか?」という質問がありました。実に7割以上が「病気がないこと」と回答した一方で、「心が平和で穏やかなこと」「幸せを感じること」などを選択した人も、なんと半数以上にのぼったのです。世界的にといってよいくらいに、心の課題を抱える人の数が激増している時代であることも、その原因の1つと考えられます。彼らは、カラダの健康と同じかそれ以上にココロの健康を重視する価値観を備えています。SNSの加速度的な普及もあって、刹那的な人間関係に満足する傾向も強いものの、日常生活での確かな人間関係を大切にしたいという観点も大事にしようとしているように感じます。
 その背景には、おそらく「多様性」の顕在化と受け入れがあるのではと考えます。障がいを持つ方やLGBTQに対しても、彼らのスタンスは圧倒的に、私たち以前の世代とは異なっていて、自然でスムーズで優れていると言わざるを得ません。そこには、人と比べたり、競ったりするのではなく、異なるからこそ尊重したいという感性が備わっています。もしかしたら、すでに遺伝子レベルで組み込まれているのかもしれませんね。
 そこに生まれてくるのが、「自分らしく生きる」感性です。これこそが、ウェルビーイングそのものだといえると思うのです。そこに、未来への課題として必須条件であると登場した概念、サステナビリティとのマッチングが起こります。精神的にも肉体的にも「自分らしさ」を意識すれば、自分に負荷をかけない持続性のある人生を実現できるということです。
 そう考えると、ウェルビーイングにおいて、違いや多様性を認め、受け入れることが、とても重要なポイントだといえるでしょう。幸せのあり方はみんな違っていいのですね。かつての画一的な幸せ像はもう消えてなくなり、一人ひとりの異なるウェルビーイングが あることが前提となった時代になったということです。
 WHOの健康の定義にある「身体的、精神的、社会的に満たされた状態」というのは、もういまでは少々時代錯誤ではないでしょうか?「その人なりのウェルビーイング」を求めることこそが、幸せにつながっていくはずです。病気や障がいや困難な生活環境があっても、その人その人の健やかな生き方があります。ウェルビーイングは、だから「自分らしく生きること」でないといけないはずです。そして、社会全体がそれを支えられるよう、成長していかねばなりません。

 最後に、いま一度、「幸せ」について考えてみたいと思います。
『次世代日本型組織が世界を変える 幸福学×経営学』(前野隆司氏、小森谷浩志氏、天外伺朗氏の共著)の著者のお一人、前野隆司先生は、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の教授でいらっしゃいます。幸福学の研究者である前野先生が、同書に記された「幸せの四つの因子」がとても興味深く感じます。
 
@「やってみよう」因子
A「ありがとう」因子
B「なんとかなる」因子
C「ありのままに」因子

 @の「やってみよう」因子は、「主体性」にかかわる因子で、夢や目標に向かって、どんな小さなことでもいいから「やってみよう!」と主体的に努力を続けられる人は、なにも行動を起こさない人よりも幸せになれるそうです。
 Aの「ありがとう」因子は、「つながり」にかかわる因子で、私たちは人とのつながりのなかで幸せを感じます。多様なつながりや、利他性(他人のために貢献したい気持ち)が強い人ほど、あるいはそのつながりが同質でなくより多様な方が幸せを味わえることがわかってきました。また、そんな他者とのつながりをつくるうえで欠かせないのが、「ありがとう」といえる感謝の心とのことです。
 Bの「なんとかなる」因子は、「ポジティブに考える」ことで、つねに「なんとかなる!」と考えていれば、必要以上に挑戦を恐れることなく、行動に踏み出しやすくなります。そして、自己否定ではなく自己受容を心がけることが幸せでいるためになくてはなりません。
 Cの「ありのままに」因子は、自分に集中し、いわば「本当の自分らしさ」を探して向き合うことです。常に人と自分を比べて他人をうらやんでいるのではなく、ありのままの自分自身を受け容れることが、結果的に確固たる幸せを呼び込むカギになるということです。

 この「幸せの四つの因子」のなかでも、「自分らしさ」という概念に触れられています。
 「幸せ」のあり方、とらえ方が変化してきていることを実感しますよね。
 そもそもカラダが「健康」であることが「ヘルス」というとらえ方であったものから、カラダもココロも健康で満たされていることを「ウェルネス」と呼ぶようになりました。そんな時代から、より自分らしく生きることを求める真の「ウェルビーイング」の時代へ。
 積極的に自分らしくあろうとする若い世代に学び、さらにさらに多様性が花開く時代に向けて、ワクワク胸躍る思いがするのは私だけではないと思います。
                              感謝

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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長
1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。
2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了)
著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。
佐野 浩一(さの こういち)
株式会社本物研究所 代表取締役社長
株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長
公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事
ライフカラーカウンセラー認定協会 代表
1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。
著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。
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