中村陽子の都会にいても自給自足生活

このページは、認定NPO法人「メダカのがっこう」 理事長の中村陽子さんによるコラムページです。
舩井幸雄は生前、中村陽子さんの活動を大変応援していました。

2019.07.20(第58回)
人も自然も健康を取り戻すのはとても簡単です。

 7月1日の朝日新聞に、「有機食材続ければ体内の農薬大幅減」という見出しで、うれしいニュースがでました。これは福島県のNPO法人福島県有機農業ネットワークが北海道大学の池中良徳准教授の協力を受けて調査したもので、慣行栽培の食材を食べた人と有機栽培の食材を食べた人の尿中のネオニコチノイド系殺虫剤の濃度を測定し比較したのです。

 これによると、普通に近所のスーパーで購入した食材を食べ続けた人は5.0ppm尿中のネオニコチノイドが検出されましたが、有機食材のみを5日間とり続けた人は2.3ppmで、有機食材のみを1か月食べ続けた人は0.3ppmと格段に低い数値になりました。1/10以下です。

 ネオニコチノイドは日本人が発明した殺虫剤で、水によく溶け使いやすく、散布してから長期残留するので、回数を減らしても同じ効果が得られることから、減農薬を可能にした農薬として使われています。(回数を半分にしただけで減農薬と言えるので)

 日本の稲作では、2000年ころから使用が始まり、まず苗箱に入れたので、田植えをすると田んぼのヤゴが全滅し、トンボが絶滅しかけています。またお茶やほうれん草などの葉物にも残留基準40ppmという高い濃度で使われ、お茶や紅茶や抹茶やウーロン茶のペットボトルからは100%検出されています。茶葉でも70%以上検出しています。

 生きものへの影響は甚大で、先ほどのトンボの激減の他に、脳かく乱物質であるため2000年ころからミツバチが巣に帰れなくなり、絶滅の危機に瀕しています(この時EUでは使用禁止になりました)。人間にも多大な影響があり、大人でもイライラや低調でボーっと物忘れ状態が極度にひどくなります。まして脳関門が完成していない子どもへの影響は甚大で、多動性や学習障害、自閉症、情緒障害などの特別支援学級の生徒数がネオニコチノイドの使用開始時期から増え続けています。これは、木村純子さんの研究にあります。

 この治療にあたっている青山美子医師の処方は実に簡単で、お茶と果物を止めることです。これらの作物はネオニコチノイドを多量に使用しているからです。止めると5日くらいで症状が改善されます。このことを知っていたので、今回の福島のNPO法人の調査結果はすぐ納得できました。食べ物の選び方を変えるだけで、体内の農薬が劇的に減ることを実際の測定値で示してくれたのです。有機農産物で子どもたちを育てなければと、親なら誰しも思うでしょう。学校給食も1日も早く有機給食を実現したいものです。

 生きていることは素晴らしいです。人間は腸と脳が健在なら、健康な血液を造ることができ、そして脳が正常に働けば、あらゆる病気から立ち直ることができるのです。自然治癒力ともいいますが、それは当たり前で簡単なことなのです。食べ物は穀類と味噌などの良い塩気とたくあんと梅干と少々の野菜と海藻で十分です。日本にあるものだけで美味しく健康になれます。

 これは自然界にも言えます。2001年メダカのがっこうは、農薬・化学肥料を使わず、冬の田んぼに水を張ったところ、2月末にニホンアカガエルの卵塊を発見しました。千葉では絶滅危惧種であり、どこに今までいたのか、どうして水を張ったことを知ってここまで来て卵を産んだのか、不思議で仕方ありませんでしたが、6月には畔はニホンアカガエルの子どもでいっぱいになりました。うれしくなって、田んぼの生きもの調査を始めたのもこの時です。

 「自然は人間が都合の悪いものを殺すことを止めれば、あっという間に回復する」と自信を持って言えます。まして日本には熱帯のジャングルに次いで草や虫の多様性があります。自然環境でもうダメだと諦める必要は全くありません。

 「だって、農薬や化学肥料を使わなければ、食糧が足らなくなるでしょう?」という意見があります。しかし全く違います。それは自然界のあらゆるものを活かして使う技術を知らないからです。メダカのがっこうでは、14年前から「田の草フォーラム」で除草剤、殺虫剤を使わない農法を研究発表する会をやっていますが、今やその技術は確立しています。

 有機栽培や自然栽培の農家たちは凄いですよ。彼らは、水と土と太陽光を総動員します。森からくるフルボ酸、田んぼに棲む嫌気性菌、好気性菌、土壌菌、光合成菌、降り注ぐ紫外線、イトミミズや生きものたちの働きや死骸などをすべて活かして、毎年十分な収穫量を確保しています。大体人口問題といいますが、人口が増えれば、人手だって増えているのです。少しだけ食料生産に係れば、すぐ解決します。

 それより有機農家の一番の悩みは売り先の確保です。ほとんどの農協が、化学肥料や農薬をセットで買わない農家の収穫物を売ってくれないからです。これを一挙に解決し、みんなを幸せにする方法があります。それが学校給食を有機にすることです。出来れば無償化し、有機農家の収入が十分安定するだけの補助を国か自治体が出せば、すべて解決です。

 本当に、生きとし生けるものはみんな健康になる力を持っています。人も自然も、そして政治も、健康になる力は本物です。出来ない理由や諦めさせる理屈の方が偽物です。ですからメダカのがっこうが始まって以来、私はこの希望が原動力になって動いています。19年間1日もやる気の出なかった日はありません。みんなも元気を出してください!

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Profile:中村 陽子(なかむら ようこ)
中村 陽子(なかむら ようこ)
首のタオルにシュレーゲル青ガエルが
いるので、とてもうれしそうな顔を
してい ます。

1953年東京生まれ。武蔵野市在住。母、夫の3人家族。3人の子どもはすべて独立、孫は3人。 長男の不登校を機に1994年「登校拒否の子供たちの進路を考える研究会」の事務局長。母の病気を機に1996年から海のミネラル研究会主宰、随時、講演会主催。2001年、瑞穂(みずほ)の国の自然再生を可能にする、“薬を使わず生きものに配慮した田んぼ=草も虫も人もみんなが元氣に生きられる田んぼ”に魅せられて「NPO法人 メダカのがっこう」設立。理事長に就任。2007年神田神保町に、食から日本人の心身を立て直すため、原料から無農薬・無添加で、肉、卵、乳製品、砂糖を使わないお米中心のお食事が食べられる「お米ダイニング」というメダカのがっこうのショールームを開く。自給自足くらぶ実践編で、米、味噌、醤油、梅干し、たくあん、オイル」を手造りし、「都会に居ても自給自足生活」の二重生活を提案。神田神保町のお米ダイニングでは毎週水曜と土曜に自給自足くらぶの教室を開催。生きる力アップを提供。2014年、NPO法人メダカのがっこうが東京都の認定NPO法人に承認される。「いのちを大切にする農家と手を結んで、生きる環境と食糧に困らない日本を子や孫に残せるような先祖になる」というのが目標である。尊敬する人は、風の谷のナウシカ。怒りで真っ赤になったオームの目が、一つの命を群れに返すことで怒りが消え、大地との絆を取り戻すシーンを胸に秘め、焦らず迷わずに1つ1つの命が生きていける環境を取り戻していく覚悟である。
★認定NPO法人メダカのがっこうHP: http://npomedaka.net/

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