中村陽子の都会にいても自給自足生活

このページは、認定NPO法人「メダカのがっこう」 理事長の中村陽子さんによるコラムページです。
舩井幸雄は生前、中村陽子さんの活動を大変応援していました。

2019.12.20(第63回)
自家増殖原則禁止とは
(種苗法改正が次の国会で通ってしまうと大変です)

 「自家増殖原則禁止」と聞いても、何のことか、どんな不都合が起こるのか、皆目わからないと思いますが、これは本当に大変なことになります。
 「自家採種」というのは、栽培した植物の種子を採り、またそれを播くことです。人間の歴史で栽培が始まった時からずっと今に至るまで続けている行為です。それも、ただ種子を採るだけでなく、よりおいしくて形が良く、多収穫な形質を持った作物の種子を採り続けてきました。種子は気候変動にも、人間の趣向にも合うように変化し続けています。
 「自家増殖」というのは、種子ではなく、芽の出た芋を植えて増やしたり、ランナーという蔓が伸びたものを土に植えて増やしたり、株分けして増やしたりする栽培技術で、農家の腕の見せ所です。
 「自家増殖原則禁止」とは、この2つを禁止するものです。農水省知財課の説明会では、禁止するのは、登録品種だけで、登録品種というのは種子全体の5%ほどだから、全く心配はいらないということで、私も一瞬大丈夫なのかと思いましたが、違いました。

 先日鹿児島の農家が、地域ではとてもおいしい紫芋をたくさん作っていて、みんな在来種だと思ってどんどん増やしているが、調べてみたら登録品種だった。自家増殖原則禁止になったら、みんな法律違反を犯していることになると心配していました。これは氷山の一角だと思います。増やすことは農業の基本ですから、美味しい野菜はどんどん増やしているでしょう。日本中の農家が訴えられれば罪に問われることになる法律が、今度の国会で可決されようとしています。

 国が自家増殖原則禁止にする理由に挙げているのは、シャインマスカットという優秀なブドウの品種が、海外に持ち出され栽培され、日本の市場を奪っているからだと言っています。しかし国内の品種を海外に持ち出すことは今の種苗法でも禁止されているので、このような順法精神のない海外の盗人を、いくら国内法を厳しくしたからと言って、取り締まれるわけがありません。一例ごとに裁判を起こすしかないのです。自家増殖原則禁止で権利を奪われるのは前述した日本のまじめな農家です。

 では今の種苗法はどうなっているかというと、農家は原則として自家採種は認められています。しかし農水省は、自家採種を禁止する作物を増やし続けています。2016年には82種でしたが、2019年には872種になりました。ほうれん草や人参は登録品種ではありませんが、この禁止植物に入っています。どうしてこんな変なことが起こっているのか?

 それは世界の動きを見るとわかります。世界のグローバル企業は特許権、知的財産権でお金を儲けようとしているからです。日本政府もこの方針です。これは工業製品なら理解できます。発明したものや、工夫し、それを実現するために研究を重ねたものに、ある年数の特許権が与えられ、それまでの苦労や費用を回収し儲けることは、必要だと思います。

 しかし、種子や苗などの命あるものを特許の対象にするのはおかしいことです。特許をとれるとしたら、遺伝子組み換え技術やゲノム編集技術でしょう。この技術によって出来た種子や苗に特許を与えるのはへんです。この種子には元の種子が存在し、それは何千年もの間先祖が工夫しながら繋いできた種子なのですから。それにその大本の種子の命は人間には作れません。
 これは生命とは何かという哲学的なところから考えなければなりません。インドでは種子の特許は禁止されています。またEUでも生物特許は認めないという動きが出ています。これは特許の適用に反対する市民団体No Patents on Seedsの活動の成果でもあります。

 グローバル企業の狙いは分かります。TPPもFRAもUPOV条約も国家がグローバル企業への利益誘導をするために利用されています。しかし、これと同じ次元で反対しても成果は出ないでしょう。命の性格、種子の特性をよく知れば、おのずと正しい判断ができます。たとえば種子は、自然界の野生の種子でも常に変化し続けています。それは登録品種でも同じです。1年として同じ気候、同じ環境はないのですから、命あるものは常に適応するため、その環境で繁栄するために変化しています。現在ある種子の多様性は、各地の農家が種子を播き育て自家採種を続けてくれたおかげです。お米も大豆も数千種位以上の品種があります。

 特許を取るには、その遺伝子や形質を記録します。しかし本当は、同じ遺伝子でも違う品種、違う形質が出る植物もあります。命は変化するので管理できません。同じ品種と言えども変化します。それは生きているからです。規格のある工業製品のように、品種を同じ遺伝子同じ形質で維持することは非常に難しいことで、多大な費用がかかります。それゆえ、たとえ維持できたとしてもほんのわずかな品種しかできません。

 これは食の安全保障上、非常にまずいことなのです。気候変動によりある品種が全滅することがあります。過去にもありました。その時出来るだけ多様な種子を持っていることが必要なのです。今までの歴史では、農家が自家採種で守ってきた多様な品種の中からまた私たちの食料となる作物を見つけてきたからです。今まで日本は農業試験場でたくさんの品種を維持管理してきました。民間ではいつ役に立つかわからない品種を維持管理することはできません。もうけに繋がらないからです。しかしこれも種子法廃止で国から民間に移せというのが国の方針です。本当にヤバいことになりました。

 日本は種子の種類は多分世界一、水も豊かな国で、今まで危機感はありませんでした。しかし、世界を支配しようとする人は、水と種子を押さえることで、その国を征服するのです。そして今日本は、ほぼ征服されてしまいました。だから、国を私たちの手に取り戻さなければなりません。生きるためには、みんな水と食料は必要とするのですから、主義主張は関係なく、生きているものに特許を与えることと、自家増殖原則禁止に、反対の声を上げてください。お願いします。


バックナンバー
23/05

子どもに食べてもらいたい理想の食を考えてみました

23/04

フードテック、代替母乳、細胞培養って知っていますか?

23/03

女性のみなさん!泣きましょう!男の本性を目覚めさせるために

23/02

「大地の再生」実践マニュアル

23/01

1/18日本の有機農業技術大集合で感じたこと、わかったこと

22/12

オーガニック給食のオーガニックという言葉に込める意味

22/11

オーガニック給食を支える有機農業技術大集合

22/10

正義は勝つこともある

22/09

子どもたちのために立ち上がったカッコイイ首長さん紹介

22/08

有機給食にトップダウンの時代がやってきた!

22/07

田んぼカフェでもシードライブラリー始めました。

22/05

食料危機が来ることは悪くない

22/04

食品表示をさせない問題について考える

22/03

最近気が付いた黒焼きの正体

22/02

子どもを元気にする「生命尊重食」=有機給食をいまこそ文科省にお願いしましょう!

22/01

有機給食へのはじめの一歩

21/12

国が推進するゲノム編集の進捗状況とOKシードプロジェクトの中間報告

21/11

私の炭生活

21/10

導かれて炭に目覚めた私の炭遍歴

21/09

秋にこそ楽しむマコモの浄化力

21/08

今は亡き稲葉光國先生の功績に感謝して

21/07

映画「食の安全を守る人々」

21/06

OKシードマークをご紹介します。

21/05

有機給食を支える技術と政策、育てる心

21/04

野菜の栄養価をみえる化したら…有機給食が実現する

21/03

ゲノム編集トマトの苗分け始まってしまいます!

21/02

こんな町に住みたい 元気な子が育つ自治体調べてみました。

21/01

有機給食と有機農業の素晴らしい関係が始まりました

20/12

日本人の遺伝子配列が教えてくれる伝統和食

20/11

種苗法改正案の慎重審議をお願いする活動に協力してください。

20/10

種苗法改正は11月強行採決の予定。反対の声を#で届けましょう!

20/09

有機給食全国集会のご報告

20/08

食べ物を変えたいママプロジェクト 一人から始めるママたち

20/07

そうだったのか種苗法改正

20/06

私のナウシカプロジェクト 自然再生葬編

20/05

種苗法改正って何? 賛否両論の理由と、どうしてもわからない大きな矛盾

20/04

WorldShift 不安から慈愛へ 〜コロナが教えてくれたShift〜

20/03

私の安上がりシンプルライフ

20/02

こんなに元気な子が育つ有機の和食給食

20/01

みんな母親たちの味方です。敵はいません。頼りにしましょう!

19/12

自家増殖原則禁止とは(種苗法改正が次の国会で通ってしまうと大変です)

19/11

私の一番の味方でいてくれた母を偲んで

19/10

2019年12月2日〜12月12日 アメリカを変えたママがやって来る!日本のお母さんたちも、アメリカのママたちに続こう!

19/09

ゲノム編集について知っていてほしいこと

19/08

今一番の緊急課題。それは子どもの食を有機にすること!

19/07

人も自然も健康を取り戻すのはとても簡単です。

19/06

韓国の有機栽培面積が日本の18倍になっているのはなぜ?

19/05

不調の原因が一つ明らかになりました。小麦とパンを変えましょう!

19/04

やっぱり、人間の腸能力はすごい!

19/03

今年も醤油を搾って、来年のもろみを仕込みました。

19/02

種子法廃止後、最新状況をご報告します。

19/01

田の草フォーラムに来てもう一つの国を生み出す仲間になって!

18/12

第8回田の草フォーラムin東京 草と向き合う田んぼの達人が集合します!

18/11

千葉県いすみ市で全市で有機米給食が始まりました。

18/10

原発と自然エネルギーと火力発電や水力発電の関係

18/09

40年前、子どもの命を支える食に立ちあがった人たち
―高取保育園、麦っこ畑保育園のお話―

18/08

ガン細胞のエサを解明したコリン・キャンベル博士の研究

18/07

私のナウシカプロジェクト

18/06

食と農に大異変

18/05

家族の健康を守るためにできること

18/04

種子法廃止とTPPとISD条項の関係を知っていますか?

18/03

本当に恐ろしいのは大自然の逆襲です

18/02

改めて農薬の害を知ろう!

18/01

最近感動したことと考えたこと。

17/12

ダーチャを知っていますか? 種播く土地を持つ人間は最強です。

17/11

知ることは力になる 知っている国民になろう!

17/10

衆議院選挙の当選者に5つのお願いを出しました。

17/09

もう一つの国づくりと裏の世界

17/08

8月2日種子法学習会の報告とまとめと見えてきた方向

17/07

怒涛のように崩壊する日本の食の安全

17/06

拝啓 安倍晋三内閣総理大臣殿

17/05

種子法廃止につづいて品種の多様性と種子情報が奪われる!

17/04

日本の種と自家採種の権利が大変なことになっています!

17/03

野草の季節が始まりました。なぜ野草なのか。

17/02

自家採種を守っている農家たち

17/01

お米の優位性10項目

16/12

恐るべき田んぼの生産力

16/11

「食は命」を知っている料理人

16/10

田の草フォーラムのことで頭がいっぱい

16/09

米飴を作ってみてわかったこと

16/08

知恵と技を極めているじいちゃんばあちゃん(ご先祖様)のあとに続け!

16/07

炭の研究開始に当たり、3人の炭焼き名人に会ってきました。

16/06

炭の力を体験しました。

16/05

生きものいっぱいの田んぼへ行こう!(メダカのがっこう紹介)

16/04

野草を愛する人は自然を理解してほしい。

16/03

もし逆表示でなかったら農産物はどういう表示になるのか
―遺伝子組み換えの表示が消されていく―

16/02

遺伝子組み換え作物に対するメダカのがっこうの考え

16/01

塩で本当に心配しなければならないこと

15/12

日本人の乳酸菌の宝庫、たくあん・ぬか漬けは自分で作ろう。

15/11

梅干しは日本人の食養生の基本

15/10

砂糖や甘味料が自給自足生活と相容れない理由(わけ)

15/09

これぞ現代の最強サプリメントだ!
〜米・味噌・梅干し・黒焼きという高機能食品の恩恵に浴そう〜

15/08

日本人は昔から味噌という高機能サプリを持っている

15/07

自家採種できる種を子孫に残すオイルプロジェクト

15/06

赤峰勝人は現代の食医だ!――アトピーが治らないわけ

15/05

今こそ、本物の米、味噌、梅干し、黒焼きが必要なわけ 

15/04

新潟県阿賀町に元氣な糀ばあちゃんあり(山崎京子さんの場合)

15/03

醤油造りのご先祖様

15/02

次世代のために「なんでもやるじゃん」メダカのがっこうの理事Mさん紹介

15/01

子育て介護を終えて、地球とみんなの元気のために生きる

14/12

東京から移住、田舎で子育てをするホームページビルダー

14/11

「自給自足くらぶ」でどんどん幸せに

14/10

都会にいても自給自足生活のおすすめ

Profile:中村 陽子(なかむら ようこ)
中村 陽子(なかむら ようこ)
首のタオルにシュレーゲル青ガエルが
いるので、とてもうれしそうな顔を
してい ます。

1953年東京生まれ。武蔵野市在住。母、夫の3人家族。3人の子どもはすべて独立、孫は3人。 長男の不登校を機に1994年「登校拒否の子供たちの進路を考える研究会」の事務局長。母の病気を機に1996年から海のミネラル研究会主宰、随時、講演会主催。2001年、瑞穂(みずほ)の国の自然再生を可能にする、“薬を使わず生きものに配慮した田んぼ=草も虫も人もみんなが元氣に生きられる田んぼ”に魅せられて「NPO法人 メダカのがっこう」設立。理事長に就任。2007年神田神保町に、食から日本人の心身を立て直すため、原料から無農薬・無添加で、肉、卵、乳製品、砂糖を使わないお米中心のお食事が食べられる「お米ダイニング」というメダカのがっこうのショールームを開く。自給自足くらぶ実践編で、米、味噌、醤油、梅干し、たくあん、オイル」を手造りし、「都会に居ても自給自足生活」の二重生活を提案。神田神保町のお米ダイニングでは毎週水曜と土曜に自給自足くらぶの教室を開催。生きる力アップを提供。2014年、NPO法人メダカのがっこうが東京都の認定NPO法人に承認される。「いのちを大切にする農家と手を結んで、生きる環境と食糧に困らない日本を子や孫に残せるような先祖になる」というのが目標である。尊敬する人は、風の谷のナウシカ。怒りで真っ赤になったオームの目が、一つの命を群れに返すことで怒りが消え、大地との絆を取り戻すシーンを胸に秘め、焦らず迷わずに1つ1つの命が生きていける環境を取り戻していく覚悟である。
★認定NPO法人メダカのがっこうHP: http://npomedaka.net/

数霊REIWA公式サイト 佐野浩一 本物研究所 本物漢方堂 ほんものワイン原産地ジョージア 成功塾説法 舩井幸雄動画プレゼント 高島康司先生の「日本と世界の経済、金融を大予測」 メールマガジン登録 舩井メールクラブ 佐野浩一note