ヤスのちょっとスピリチュアルな世界情勢予測

このページは、社会分析アナリストで著述家のヤス先生こと高島康司さんによるコラムページです。
アメリカ在住経験もあることから、アメリカ文化を知り、英語を自由に使いこなせるのが強みでもあるヤス先生は、世界中の情報を積極的に収集し、バランスのとれた分析、予測をされています。
スピリチュアルなことも上手く取り入れる柔軟な感性で、ヤス先生が混迷する今後の日本、そして世界の情勢を予測していきます。

2021.08.01(第90回)
分断が解消されないこの夏のアメリカ

 8月になった。今回は、一向に分断が解消される兆しのないこの夏のアメリカの風景について書く。2022年から始まる次期大統領選挙は、トランプが勝利した2016年の再来になるかもしれない。少なくともそのような予兆はある。

 日本にいると、比較的明るいアメリカのニュースばかりが目に入ってくる。南部を中心にワクチン接種に拒否反応がある地域はあるものの、60%近い国民が接種を行い、全米で行動規制が大幅に緩和されている。バーやレストラン、そしてコンサートやスポーツイベントには多くの人が集まり、コロナ前の2019年頃の状況を彷彿とさせる光景が日常になりつつある。

 これを反映して個人消費もプラス7.0ポイントと強く、それにけん引された成長率もプラス6.4%とすこぶる好調だ。長いコロナのパンデミックの期間がやっと終わり、戻ってきた普段の夏の季節を満喫しているというのが、日本の報道から感じられるアメリカ国内の状況である。いまだに強い行動規制が迫られている多くの日本の地域とは対照的だ。

●筆者の友人からのメッセージ
 そんなとき、筆者が親しくしている複数のアメリカ人の友人からほぼ同時に連絡があった。一人は、アメリカ西海岸在住の友人で、小学校の同級生である。実は筆者は帰国子女で、小学校はアメリカであった。約10年ほど前になるが、当時の小学校のクラスメート数名がフェースブックで筆者を発見し、旧交を温めるようになった。そのうちの一人からおおよそ次のようなメッセージを受け取った。

「家を新築する計画があったのでお金を貯めていたが、購入は諦めざるを得ない状況になった。住宅価格の高騰が続いている。もはや手が出る水準ではなくなった。また、国民の分断と相互の憎しみは激しく、暴力事件が激増している。信じられないくらいだ。将来この国があるのかどうかさえ疑問だ。森の中にこもって、隠遁(いんとん)したい気分だ。」

 このように言ってきた。また筆者には日本に在住し、アメリカと頻繁に行き来をしている友人が2人いる。彼らからも連絡があった。彼らとの付き合いも30年くらいになる。2人ともおおよそ次のようなことを言っている。

「今後アメリカという国がどうなってしまうのかまったく分からない。いまあの国に帰りたいとは思わない。あと一年待つが、状況が好転し安全に暮らせるという確信がなければ、国籍を日本に変えることを真剣に検討するつもりだ。いまのところ、日本の方がはるかに安全に暮らせる。」

 このような内容のメッセージだった。彼らは50代から60代で、きちんとしたキャリアを持つ人物だ。特に政治に対して関心が強いわけではなく、トランプやバイデンの熱心な支持者ではない。比較的ノンポリの平均的なアメリカ人だ。

 もちろん彼らは筆者の個人的な友人だ。これらの意見を一般化するわけには行かないが、自分の国に住み続けることに大きな不安を感じるというのは尋常ではない。彼らとの付き合いは永いが、そのようなことを言ったことは一度もなかった。2020年の大統領選挙と「BLM運動」の高まり、そして新型コロナのパンデミックでアメリカが混乱した状況でも、早くこの混乱が落ち着き正常な日常に戻ることを切に願っていた人達だ。

 そのような人達が、自分の国に住むことに大きな不安を持つということは、彼らがアメリカという国に見切りをつけ始めたことでもある。彼らに自分たちと同じような意見を持つ同世代の友人がいるかどうか聞いてみたところ、大勢いるとのことだった。アメリカの将来に希望を持っている人々は、むしと少数派ではないのかということだった。

●高いインフレ率
 彼らの証言からは、ワクチン接種の拡大で社会的行動規制が撤廃され、好景気のなかで夏を謳歌するアメリカ人という、日本で見るイメージとはまったく異なった状況がアメリカにはあることを教えてくれる。そこで、アメリカ国内のインフレ率と犯罪率を改めて調べて見ると、予想以上に深刻な状況であることが分かった。

 米労働局発表の公式統計では、今年6月までの1年間の消費者物価指数は5.4%上昇している。これは、中古車やトラックの価格が急激に上昇したことが原因とされている。中古車価格は、半導体の供給不足による自動車生産の低下で高騰しており、6月には10.5%も上昇した。

 また「全米不動産業者協会」によると、全米182都市で中古住宅価格は平均で16%上昇している。さらに賃貸料も上昇が続いており、ホテルの室料は旅行需要の急速な回復に伴い、前月比7.9%増と大幅に上昇した。

 日本の同時期の消費者物価指数はマイナス0.1%なので、プラス5.4%と聞くと相当高い印象を受けるが、それでも物価が短期間で2倍や3倍になるハイパーインフレのような状態とは根本的に異なる。まだ十分に耐えられる水準であるような感じだ。

 しかし、アメリカのインフレは地域によって、また物品によって大きな違いがあるので、国民の生活実感は居住しているエリアによって相当異なるようだ。試みに、様々な記事を参照すると、生活実感としてのインフレがどのようなものなのかが分かる。

「CBS」の調査によると、全米平均で今年は住宅価格が急激に上昇したため、「家を買うには悪い時期」と答えたアメリカ人の割合が過去最高になった。家を買うには悪い時期」と答えた人の割合は、過去3ヵ月間で記録的に急増し、6月には64%に達したのだ。消費者は住宅価格を主な理由として挙げている。

 一方、「今はまだ住宅購入に適した時期である」と答えた人は過去最低の32%で、「わからない」と答えた人の割合は4%に低下した。

 また、西海岸など住宅価格の上昇が特に激しい地域もある。現在、ワシントン州東部、オレゴン州東部、アイダホ州、モンタナ州の農村部、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州、テネシー州の農村部や郊外では特に上昇が著しい。

 例えばワシントン州のスポケーン郡では、1週間に販売される約200件の住宅のうち、30万ドル以下の価格で販売されているのは、わずか5件ほどだった。スポケーン郡は農村地域である。所得は決して高いわけではない。2015年には、スポケーン郡の平均的な住宅価格は17万900ドルだった。2021年にはほぼ2倍になっている。

●高い犯罪率
 このようにアメリカの住宅価格の高騰は、特に田舎と思われる大都市圏の郊外や、農村地域で進んでいる。それがこのような地域に住む人々の生活を圧迫している。なぜこのような田舎の住宅価格が高騰しているのだろうか?

 実はその理由は、大都市圏の犯罪率の急上昇なのだ。
「ニューヨーク・タイムズ紙」によると、アメリカの大都市における殺人事件の発生率は、2020年に平均30%上昇し、2021年にはさらに24%上昇している。 このような短期間での急増は、アメリカ史上前例がない。

 その代表的な例はサンフランシスコだ。サンフランシスコでは車上荒らしが急増しており、市内の一部の地域では700%以上も増加しているという。郡や州の規制が解除されて観光客が増えたため、窃盗団が観光客に便乗してレンタカーに侵入している。またサンフランシスコは、ストリートドラッグの大流行に直面している。

 さらに、サンフランシスコに近いオークランドでは、銃撃事件が70%、殺人事件が90%増加している。オークランドの世論調査では、70%の市民が「街の生活の質が低下している」と回答した。また80%の市民が「ホームレス問題への対処は市の最優先事項である必要がある」と答え、88%が「ここ数年で問題が悪化している」と答えている。

 もちろんこうした状況は西海岸だけではない。ニューヨークやワシントンなどの東海岸、そしてシカゴなどの中西部などでも似たような状況だ。犯罪率は激増している。

 そして、こうした大都市圏から人々が安全な地域を求めて急速に転居しており、その転居先として選ばれたのが、先のワシントン州東部、オレゴン州東部、アイダホ州、モンタナ州の農村部、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州、テネシー州の農村部や郊外なのだ。こうした地域では、住宅価格が急騰している。ちなみに筆者に連絡してきたアメリカの友人もこのオレゴン州に住んでいる。

●2020年と変らない状況
 これは大統領選挙と「BLM運動」、そしてコントロールが効かなくなった新型コロナのパンデミックに見舞われ、混乱が拡大していた2020年と変らない状況だ。昨年の9月17日に配信した第607回の記事にも書いたような事態が、いまだに続いているということなのだ。

 2020年には、人種差別に反対する「BLM運動」は全米に拡大し、武装したトランプ支持の極右との衝突も発生した。死者も出ている。そうしたなか、警察が憎しみの対象になり、警察官への殺害や暴力が多発していた。

 そして、「BLM運動」の要求を受け入れ、警察予算を大幅に削減した自治体も多い。この結果、警察官の辞職が相次いだ。地域によっては、警察署長をはじめ、警察官全員が辞職した警察署すらもある。

 こうした状況で、警察官の対応能力が低下し、その結果として犯罪率が急速に上昇する地域も多くなった。緊急時でも警察はやってこない。市民は自警団を結成して自己防衛すると同時に、護身用の銃の売れ行きが止らなくなっている。地域の銃のトレーニングセンターはいつも満杯で予約はできない状態だ。

 そして、この状況に恐怖した富裕層や中間層は、都市の中心部に近い住宅地から、近隣の州の安全な郊外へと引っ越しを始めた。その結果、大都市圏の中心部の地価が下落し、郊外の地価が上昇するという逆転現象が起きているのだ。

 国民の分断を乗り越え、統合を実現するとして就任したバイデン政権だが、どうもそのようにはなっていない状況だ。バイデン政権は、国民への直接給付を含む約200兆円にも上る巨額の経済対策を実施し、さらに190兆円のインフラ建設も計画されている。これらの政策によって、低賃金のエセンシャルワーカーでは、政府の給付が給与を上回る状況にもなっている。長引いた新型コロナのパンデミックによる貧困の激増は、かなりの程度この政策でくい止められた。

 しかし、「BLM運動」による警察署の予算削減と人員整理はいまだに続いており、犯罪率の増加と富裕層や中間層の郊外移転の流れには歯止めがかかっていない。これがバイデン政権の巨額の経済対策がもたらした高いインフレ率の元で進行しているのだ。

●この夏に始まったトランプラリー
 しかし、次の大統領選挙に立候補する意志をすでに表明しているトランプからすると、こうした状況は追い風になっている。この夏からトランプ前大統領の活動が活発になっている。全米各地でトランプラリーを開催し、数千人の支持者が結集している。

 たしかに一時期まで、いまだに2020年の大統領選挙に不正があったと主張しているトランプの支持には陰りが見えていた。トランプは明らかに一時期のような勢いを失っていた。ブログも閉鎖し、「Qアノン」も批判的な投稿が目立っていた。

「Qアノン」は、「テレグラム」という暗号メッセージングのアプリを通じて、トランプが6月25日のオハイオ州、ウエリントンで開催した「2022年(中間選挙)のための初の選挙集会」と称する場での演説に対する退屈と怒りを表明するメッセージを次々と投稿した。

「Qアノン」は、トランプが1月6日の米議会襲撃事件でトランプの呼びかけに応えて議会に押し寄せたために刑務所入りになった支持者たちに、一言も触れなかったと、トランプを攻撃したのだ。

 しかし、その後のトランプの変わり身は素早かった。同じ週の日曜日に「フォックス・ニュース」のマリア・バーティロモが司会を務める「サンデー・モーニング・フューチャーズ」のインタビューのなかで、この集会についてコメントした。トランプは、支持者が議事堂を襲撃する直前にホワイトハウスの近くで行われた集会に焦点を当てて答え、次のように述べた。

「大規模な集会が開かれた。実際には、誰も知らなかったが、集会が開かれ、非常に多くの人が集まった。私がこれまでに講演した中で最大規模の集会は、愛国者たちによって開かれたのだ。そして、彼らは私に話してくれないかと頼んできたので、私は話した。そしてそれはとても温和なスピーチだった。」

 またトランプは、インタビューのなかで、国会議事堂に侵入し、議員たちが暴徒から逃れている部屋に入ろうとして撃たれた支持者のアシュリ・バビットが、民主党の著名な幹部の警備主任に殺されたと示唆した。「誰がアシュリ・バビットを撃ったのか、彼らは知っていると言ってやろう 」とトランプは主張し、「人々は その人物を守っている 」と主張した。また、この銃撃事件の真相は「明らかになるだろう」と述べた。トランプはバビットを 「無実で、素晴らしく、信じられない女性」と称賛した。

 このように、連邦議会議事堂に侵入した人々に敬意を表す発言を行い、「Qアノン」の批判に答えた。そのためもあってか、7月3日のフロリダ州、サラソタで開催したトランプラリーには数千人が結集してUSAと叫び、2020年の大統領選挙を彷彿とさせる熱狂になった。トランプは帰ってきた。もしかしたら、勢いを取り戻す可能性もある。

 トランプの2022年の中間選挙を見据えた「セイブ・アメリカ」と称する一連のラリーはこれからも続く。次は7月23日のアリゾナ州、フェニックスのラリーだ。暑い夏になりそうだ。

●2016年の再来か?
 2016年、トランプはグローバリゼーションの波に乗れずに没落した中間層の怒りを追い風にして、大統領になった人物である。民衆の抑圧された怒りが押し上げた大統領だった。この夏のトランプラリーの状況を見ると、いまだにトランプの支持は根強いことが分かる。彼らは一部の熱狂的なトランプファンだけではなく、バイデン政権でさらに問題が拡大しているいまのアメリカの現状に対する怒りの吸収先が、トランプになりつつあるようだ。

 怒りの対象になっているのは、警察予算の縮小で悪化した大都市圏の治安、大都市圏を脱出し、郊外と農村部に逃れる人々によって吊り上がる住宅価格、そしてバイデン政権の経済政策が引き起こした高インフレという連鎖である。

 もちろんバイデンは、新型コロナのパンデミックをコントロールした政権としての評価は高い。しかしながら、バイデン政権下でも2020年に爆発した社会矛盾はさらに悪化し、出口が見えない状況だ。そうした怒りが、2016年と同じように、トランプの追い風になりつつあるようだ。最近の世論調査の結果を見ても、この傾向は明らかだ。

・トランプが2024年大統領選挙に立候補したら投票するか? イエスの割合

 民主党支持者  共和党支持者
  3%     71%

・バイデンは合法的に選ばれたか? ノーの割合

 民主党支持者  共和党支持者
  3%     78%

 これを見ると、大多数の共和党支持者は2020年の大統領選挙には不正があり、次回の選挙ではトランプに投票すると答えている。

 トランプラリーの復活で始まった今年のアメリカの夏は、さらに暑くなりそうな予感がする。どうだろうか?

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Profile:高島 康司(たかしま やすし)
高島 康司(たかしま やすし)

社会分析アナリスト、著述家、コンサルタント。
異言語コミュニケーションのセミナーを主宰。ビジネス書、ならびに語学書を多数発表。実践的英語力が身につく書籍として好評を得ている。現在ブログ「ヤスの備忘録 歴史と予知、哲学のあいだ」を運営。さまざまなシンクタンクの予測情報のみならず、予言などのイレギュラーな方法などにも注目し、社会変動のタイムスケジュールを解析。その分析力は他に類を見ない。
著書は、『「支配−被支配の従来型経済システム」の完全放棄で 日本はこう変わる』(2011年1月 ヒカルランド刊)、『コルマンインデックス後 私たちの運命を決める 近未来サイクル』(2012年2月 徳間書店刊)、『日本、残された方向と選択』(2013年3月 ヴォイス刊)他多数。
★ヤスの備忘録: http://ytaka2011.blog105.fc2.com/
★ヤスの英語: http://www.yasunoeigo.com/

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