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このページでは、舩井幸雄が(2014年1月19日の舩井幸雄の他界後は舩井勝仁が)いま一番皆様に知ってほしい情報をタイムリーにお伝えしていきます。
毎週月曜日定期更新
2010年4月26日
JAL再建なるか?

 今回も先週の4月23日につづき、経営の実務家として、そして経営の専門家として私の本音を赤裸々に書くことにします。多少マイナス発想的部分もありますので、このような文章は4月23日と今回4月26日の2回でうちどめにしたいと思っています。
 ここに書くことは、あくまで経営のことをよく知っている実務家としての、やむにやまれぬ危惧の念からの本音ですから、読み苦しいところがあると思いますが、お許しください。
 私は本来、こんな文章は書きたくない人間なのです。そこをぜひよろしく御了解ください。
 では本文に入ります。
 
 4月に入ってJALから「JMB FLY ONカードをお届けします」という手紙とともに、今年も私のところへ『JAL GLOBAL CLUB 2010』というカードが送られてきました(ちなみに『ANA SUPER FLYERS CLUB CARD 2010』は何ヵ月か前に届いていました)。
 週に平均して4−5回は飛行機を利用していました。日本人ですからそのほとんどはJALとANAです。ただ、ここ2年半ほどは外出(特に飛行機利用)を医師から制限されましたので、やむをえない時以外は利用していません。
 世界の航空会社の中で国内線の機内サービスをもっともけちっているのが、JALとANAです。機内食などを、運航の最初からカットして来ました。が、「日本人らしくてこれもよいな」と思っていました。
 しかしいま、ANAは黒字、JALは大赤字。経営的には、JALはとうとうつぶれてしまって、いま血税による資金援助で立ち直ろうとしているというのが現状ですね。
 果してうまくいくでしょうか……、うまくいってほしいだけに、経営のプロとして本音を書こうと思います。というのは、現状では99%立ち直るのはむつかしいと思うからです。
 私のよく知っている稲盛和夫さんがJALの会長になり、経営再建の第一線に立ちました。総指揮をとるとのことです。もうやっているようです。
 彼は4月1日の新入社員入社式で「私を信じてついて来なさい。必ず再建できるから」と力強く訓示しています。一方、4月9日の週刊朝日によりますと、彼の本音らしいのがそこには出ています。これは記名記事ですが、その一部を以下に紹介します(以下は週刊朝日 2010年3月9日号から一部を転載したものです)。

 「JALの役員らは八百屋でも経営できないだろう」
 それはさながら人間失格ならぬ、「会社失格」宣告だった。3月17日、稲盛氏がJAL会長就任後初の会見で語った言葉だ。
 「毎日赤字を出しているのに、責任体制が明確になっていない。大学の経営工学のことは理解していても、商売人という感覚を持つ人があまりにも少ない。朝から市場へ行って、いくらで売って、夕方に余ったものをどうするか、という八百屋のおばちゃんでも持っている感覚がない」
 話しぶりは柔らかだか、中身は痛烈だ。隣に座った生え抜きの大西賢社長の顔はこわばったままだった。
 同日夜、内閣特別顧問でもある稲盛氏は束京・赤坂の日本料理店で鳩山由紀夫首相や菅直人財務相らと会食した。関係者によると、その席でもJAL執行部について次のように話したという。
 「国内、国際線の路線別の採算、月々の損益が届くのに2ヵ月はかかる。こんなに時間がかかったら、経営判断が瞬時にできない」
 ライバルの全日空(ANA)では、伊東信一郎社長のもとに翌日に路線別収入が届けられているという。
 稲盛氏といえば、社内を少人数のチームに分けて収益や生産性を競わせる「アメーバ経営」で知られるが、会見でJALにアメーバ経営を導入するかを問われると、こう苦笑した。
 「まず、どの企業でもやっているような、当たり前に採算をとるやり方をやってみる。アメーバ経営のような高度な経営手法を適用するのは、あと2、3年は無理だろう」
 JALの経営体質そのものに重大な問題があることを、希代のカリスマ経営者が認めているのだ。2月1日の着任と同時期に経営陣も入れ替わったが、「一部に旧経営陣が残り、相変わらずの派閥人事の跡があるなど、一新されたとは言い難い」(航空関係者)。前社長の西松遥氏が、日航財団理事長になるなどの温情人事も指摘されている。

主力銀行からも「レッドカード」

 幾多の企業をおこし、立て直してきた稲盛氏も今回は少し勝手が違うようだ。
 稲盛氏をよく知る政治評論家の屋山太郎氏は心配する。
 「ぼやく人ではない稲盛さんが、『まさかこんなことだったとは』と、周囲に漏らしているようなんです」
 そもそもJALをどのような航空会社に再建するかについて、前原誠司・国交相らと意見が合わないのだという。  
 「国際線を売却してでも事業を縮小すべきだとする前原さんに、稲盛さんは納得しないらしい」(屋山氏)
 一時的に事業規模を縮小して余剰施設や人員を削り、コスト構造を改善するのは企業再生の定石とされる。
 にもかかわらず稲盛氏は、「路線別収支がよくわからないのに、規模を縮小すべきか、現在の状況の中で採算をとるべきか決められない」
 と会見で述べるなど、JALの効率の悪い経営体質の中で身動きがとれないようなのだ。
 混迷するJAL再建を見て、民間銀行は早くも再建から距離を置こうとしている。3月26日、JAL再建を請け負う官民ファンド「企業再生支援機構」は、総額7,100億円(簿価)の債権のうち、約1,900億円分を融資していた銀行などから買い取ることを発表した。機構はその内訳を明らかにしなかったが、関係者らによると、そのうちの約1,700億円分が、みずほ、三菱東京UFJ、三井住友の、JALを支えてきた主カメガバンク3行の大口債権だという。支援機構関係者が解説する。
 「今回、機構は債権者に対して、再生計画に同意して引き続き債権を持ったまま弁済を受けるのか、それよりも先に機構に買い取ってもらうのか、選択を求めました。買い取りになると、5%割り引いた金額しか機構は払いません。引き続き支援する気なら、同意を選ぶのが自然でしょう」
 にもかかわらず、ディスカウントを覚悟してまで買い取りを求めたのはなぜか。
 メガバンク3行はそろって、
 「個別の取引についてはお答えできません」
 としているが、事情をよく知るメガバンク関係者が明かす。
 「とにかく早く処理したい、という意思表示です。JAL再建の行方は極めて不透明で、このままズルズルつき合わされていては『主力銀行なんだから』と、また資金繰りに協力させられてしまう。もう今後はビタ一文、出したくない。さっさと縁を切りたいんです」
 つまり、今回の買い取り申請は、3行がJAL再建に突きっけた「レッドカード」と言えそうなのだ(転載ここまで)。


 かつて私と親しい経営者に、カネボウグループの総帥であった伊藤淳二さんがいました。彼とは昭和40年代はじめから親しく付きあい、永年いろいろ教えてもらいました。よい友でした。
 この伊藤さんがJAL会長を引きうけ、大苦労の後に結果として失敗(?)しました。いま稲盛さんの顔と伊藤さんの顔が私には重なって見えて仕方がないのです。
 週刊朝日の記事はほとんど正しい…ように思えてならないのです。
 少し詳しく私の知っていることを述べましょう。日本の航空機の運営コストは世界一高いのです。それは経費が嵩(かさ)むようになっているからです。これはJALもANAもスカイマークも同様です。
 まず公租公課が高いのです。飛行機の離発着毎に空港に払う使用料が世界の中でダントツの高さで、韓国の空港に比べても3倍もします。さらに航空機燃料税などという変な税金があります(アメリカにも一部ありますが、世界中で他の国にはこれはありません)。飛行機燃料1KL当り26,000円です。
 だからJALやANAの運航コストはシンガポール航空やキャセイの2倍強、マレーシアのエア・アジアの5倍に達しているのです。
 それにこれから本格的に世界の航空会社と価格競争がはじまります。それが航空業界です。世界各国では、国がそれぞれ航空会社の補助をしていますが、日本にはなぜか一切ないと言っていいでしょう。
 それだけでなく100もある日本の空港中、黒字空港は10ぐらいしかないのですが、そのような地方空港への政治的乗り入れも、強制されがちです。日本は政治家と役人の多くがとんでもない人たちの変な国なのです。
 さらにいままでのJALの経営陣は、全く経営努力をしてこなかったようなのですが、そのツケをこれから払わされるでしょう。国内線でジャンボ機を飛ばしているのは、いまは日本くらいですが、羽田発着の飛行機は平均230席、ニューヨークでは100席ぐらいです。これ一つで分るでしょう。経費がまったくちがうのです。もちろん日本の方がかかります。航空行政もなっていないと言えるのです。
 そのうえにJALには8つの労働組合があり、経営者から社員まで親方日の丸意識で何一つ経営努力をしてこなかったように私には見えるのです。たとえばJALは80年代に10年の長期為替予約を結びました。常識ではありえないことです。それだけで2,300億円くらい(ジャンボ機10機分くらい)の損を出していますが、だれもその責任を取ろうとしないし、取っていません。個人的にはJALの役職員の大半はよい人でしょうが、経営的には問題な人が多いのです。
 ともかく経営資源の人、物、金とも経営的にはどうにもならないほどムチャクチャな上、JALをまだ喰いものにしたい、経営の分らない政治家や役人が回りに多くいる……こんなJALがかんたんに経営内容がよくなるとは私にはなかなか思えないのです。
 稲盛さんは、以上の私でも知っているこんなことを知らなかったはずはないと思うのです。
 私は経験上、経営者は政治や行政には関係しない方がいいと思います。本当は宗教にも余り深入りしないことです。特に国に入る税金を当てにする経営などは、できればやらないことです。ゼネコンや専門農家はますます経営が苦しくなるのと同じことです。
 しかし稲盛さんは小沢一郎さんと仲がよいようだとか、内閣特別顧問になったりで、これは私としてはかなり気になります。できればこういう人とは公的に付きあわない方が良いように思います。
 今、JALは「企業再生支援機構」という国がからむところの、お金をバックに再建計画を実行しようとしているのですが、これについて非常に気になることがあります。
 それはJALにつづき今年2月18日に会社更生法の適用を申請して経営破綻したPHS事業をやってきたウィルコムも企業再生支援機構に支援をうけることになったからです。この機構の第一番目の支援企業がJALで、二番目がウィルコムなのです。以下の理由で稲盛さんを政商という人も多くいます。
 私は中小企業支援を目的とした企業再生支援機構がJALやウィルコム(負債総額2,060億円)に資金を出すことには、正直言って大反対です。血税を、こんな大企業に注ぎ込むべきではないと思います。それを必要とするトップが生命をかけている中小企業がどれだけあるか考えてみてください。
 ところでこのウィルコムは稲盛さんがつくった会社なのです。この会社の前身はDDIポケットです。京セラが30%も株式を持ち、彼はこのウィルコムの取締役最高顧問だったのです。
 やはり、だれもが知っているこのような事情があるだけに、稲盛さんには晩節を汚さないでほしいし、できれば高齢を理由に、早くJAL経営の適任者を探して仕事をゆずられ、JALの本格的再生を心がけてほしいと思えてならないのです。それが、いま一番大事なことのように思えます。
 民主党というか、自民党も含めて日本の政治家たちは、99%経営というものを知らないように見えます。
 役人は、もともと経営などのリスクをとりたくないから役人になった人たちの集団と考えればよいでしょう。彼らを当てにしたり頼るのはふつう経営者にとっては問題です。
 最近、日本航空社員の友人から以下のような話をききました。
 稲盛さんはすばらしい経営者です。その経営手腕はだれもが肯定してきました。
 それは最近彼が出した回顧録『挑戦者』を一読すればだれでも分ります。永年私も彼の経営手法や生き方に教えられました。すばらしい先生でした。先ほどの話をつづけます。
 ところが最近、JALの管理職5000人くらいに、この本を「自費で買え」というメールが来たと私の友人はいうのです。私は良いことが書いているから、彼に「買ってしっかり読めばよいよ」と答えておいたのですが、親方日の丸型サラリーマン社員にとりましては、このようなことは不満の種となります。JALは京セラとはちがうのです。企業はまず、人なのです。
 こんなJALのような会社が、そうかんたんによくなる…とは、私にはいまはどうしても思えない…という私見の一端だけをきょうは書きました。
 経営というのは、本当は簡単なのです。なによりも、従業員たちがどれだけTOPや会社や仲間を信じ、客のために尽くすか…を考えて身を粉にして働けばよいのです。ちょうど京セラのようにです。稲盛さんは充分ご存知のはずです。
 どうして、そのような社員をつくるかが経営なのです。これは言うのはやさしいが、時間がかかります。そのような社風をつくらねばならないからです。
 話は変りますが、日本国のよい経営者が出てくることを、いまほど期待する時はありません。ともかく早く若い良い人がとび出してほしいと思います。
 4月23日につづいて今日も本当は書きたくないことを書きましたが、やむをえない経営のプロの私の本音です。
 これでやめます。よい日本のためにみんな前向きでがんばろうではありませんか? 経営を知りましょう。かならず良くなると思います。どうぞよろしく。
                                           =以上=

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