トップが語る、「いま、伝えたいこと」
株価は上下を繰り返しながら、基本的には上昇基調にあるようです。舩井メールクラブ(FMC)という世界で一番値段が高いであろうメルマガを発行させていただいています。そこで先週は政治経済学者の植草一秀先生に私がインタビューさせていただきました。高額な有料メルマガの内容をここに書くのはルール違反ですが、少しだけPRもかねて書かせていただくと、植草先生は基本的には株価は上がっていくが、トランプ大統領の政策に3つの死角があり、それが心配なので無条件に上がっていくとは思わない方がいいというものでした。
特にFRB(米連保制度理事会)に対する過剰介入の副作用が懸念されるという話をされていました。現在の中央銀行のトップはパウエル議長にしても植田総裁にしても金融政策の要諦に沿った政策を打ち出し政治の圧力に対抗できる人物ですが、歴代のトップはそうでもない人もいたということが9月5日付の日経新聞に書かれていました。典型的なのが1970年〜78年までFRB議長を務めたアーサー・バーンズ氏です。一部には史上最悪のFRB議長と言われていて、ニクソン大統領の要求に従い政権の意向に沿った金融政策を実行したことでその後の高インフレやスタグフレーション(不景気なのに物価が上昇する現象)の原因を作ったと言われています。
物価高は庶民の生活にとっては大変ですが、経営者の立場に立てば設備投資のための借入の実質的な返済額が減っていくので積極的な経営がやりやすい環境になります。だから政権は金融緩和を望むのですが、1970年代後半から80年代前半にかけては景気が後退しながらインフレになるという最悪の経済状況になり、断固として物価高を押さえるというポール・ボルカー氏が名うてのインフレファイターとして登場してFRB議長になり強引にインフレ退治をするまで世界経済は酷い状態に陥ることになります。それまでは、ケインズ経済学に基づく中産階級を厚く生み出す政策ができたのですが、これ以降は現在の強欲金融資本主義につながる新自由主義による経済政策が主流になり、先進国で格差が顕著になるという現象が一般的になってしまいました。
トランプ大統領がやろうとされているのは、1970年代以前のアメリカの黄金時代に戻そうということですが、確かにウォーターゲート事件(民主党本部に盗聴器を仕掛けたことにニクソン大統領自身の指示があったことがあきらかになり史上初めて弾劾されて大統領辞任に追い込まれた事件)までのアメリカ経済は絶好調ですが、その後のフォード、カーター両政権の不況の元凶はこの時に作られていました。それをボルカーを任命したレーガン大統領が新自由主義を採用することで現在に至るアメリカの強さの基を作り上げたのですが、どうもトランプ大統領はニクソンの道を進んでいるという懸念があるというのがマスコミの姿勢のようです。
トランプ大統領はフェイクニュースと切り捨てるのだと思いますが、一抹の不安は感じてしまいます。
今週は横山直宏著『1つの習慣 うまくいく人は、なぜ「これ」を大切にするのか』(すばる舎)をご紹介します。タイトルの「これ」とはなにか。答えは、「楽しむ」。シンプルですがそれが最も重要である、というのが横山先生の思いです。本文内の記述にもありますが、日本では楽をする、怠けると同義として捉えられてしまう傾向があります。真面目さが美徳である日本人らしい考え方はとても素敵なのですが、それ故に仕事や学業を苦しみと捉える人が非常に多いように感じます。
楽しめることなら全力で取り組める、心理的に負荷がかからなければ作業効率も大幅に向上し、人生も豊かになる。好きなことをやれるなら理想的ですし、そうでなくても楽しめる方法を模索する。それだけでクオリティオブライフは著しく向上する、少し考えれば分かることです。楽しめる方法を考える、自発的な行動を心がける、成功体験を積み重ねるなど、シンプルですが簡単に意識できる方法の紹介もありますし、感覚的に分かりやすいものと科学的根拠に基づいたものが両立しているため、様々な視点を持った方にも受け入れやすい構成となっています。
ひとつ取り上げると、外的なものだけではなく、内的に自己完結する動機を持つ重要性などは、非常に興味深い部分です。あらゆる部分において他人からの評価が可視化されるSNSなどが発展した現代において、外部の影響を受けるものは不安定さを生み出す要因にもなります。SNS、ゲーム、ギャンブルなど外的要因で得られる快楽物質のドーパミンやアドレナリンは、違法薬物に近い効果を持っている成分だそうです。一方、内的な部分から得られるセロトニンやオキシトシンは依存性などが低く、安定した幸福をもたらしてくれるもので、外的な部分が強くなっている現代社会において意識的に発生させるべきという意見には、非常に説得力がありました。
まとめてしまえば、自分らしくを心がけ、自分に合った行動を取り、自分に正直にポジティブに生き、数は少なくても自分に本当にあった人間関係を形成する、そんな内容ではないでしょうか。多様性の時代であり、以前ほど行動に制約を受けない時代において、その意識は非常に相性の良いものであり、自分に素直に生き高いモチベーションを維持し続けることで、結果的に作業効率が上がり仕事でも大きな貢献が可能になると考える事もできます。少し視点や意識を変えるだけで、人生が好転するかもしれない。合う合わないは人それぞれあるかもしれませんが、本書に紹介されている内容は非常に簡単なものが多いですから、騙されたと思って試してみるのも面白いかもしれませんね。
横山先生はザ・フナイにも2度ご登場いただいた最近仲良くしていただいている若手コンサルタントです。本書の出版パーティに出席させていただいたのですが、クライアントの皆さまから熱く支持されておられました。父は最近船井総研ホールディングスの子会社になっていただいた神田昌典先生が自分のやり方を最も踏襲してくださっていると感じていたようですが、私は横山先生にも同じことを感じています。ぜひ、舩井幸雄が大好きだったと仰る著者の本に触れてみていただければと思います。
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2025.09.01:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】『ありのまま』をありのままに考える (※佐野浩一執筆)


舩井 勝仁 (ふない かつひと)
![]() 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』 |
佐野 浩一(さの こういち)![]() 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』 |
