“超プロ”K氏の金融講座

このページは、舩井幸雄が当サイトの『舩井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介していた経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2021.02
景気回復へ

「すべての主要地域で営業利益が前年同期を上回った。リーマン・ショック以降進めてきた努力の成果が出た」
 2月10日、トヨタ自動車の決算発表において、最高財務担当責任者は胸を張りました。もちろん2021年3月期の利益は大きく上方修正、純利益は従来予想の1.4兆円から1.9兆円へと拡大するということです。保守的な予想をするトヨタですから3カ月後の通期の決算発表時には更なる上方修正となることでしょう。上場企業の10-12月期の決算発表が概ね終わった時点で、市場関係者の多くは予想以上の決算内容に喜びました。決算がいいことは事前に予想されていたのですが、多くの企業が想定を上回る業績を発表してきたわけです。海外投資家たちも日本企業の想定以上の業績改善ぶりを目の当たりにして一気に日本株を追加的に大量購入し始め、ついに日経平均はあっという間に3万円乗せとなりました。
 昨年11月に米国の大統領選挙が終わってからわずか3カ月で3割近く上げるという驚くべき上昇となりました。「業績の割に株価が高いのではないか」という声に対して「業績が急ピッチで追いついてきた」ということで株価がバブル、という声が一気にしぼんできたわけです。
 現在の株価が「バブルか、バブルでないか?」という見方は久しく議論となっていますが、現在市場関係者のアンケートでは、約半分がバブルと言い、約半分がバブルではなく、妥当な株価である、との見方となっています。私、朝倉は一貫して日本の株式市場が大相場に突入していると言い続けていますので、当然この水準はまだまだと考えていて、これから更なる大相場が待っていると考えています。

●自動車産業はじめ、業績回復は好調
 さてトヨタの決算ですが、この決算が象徴するように、自動車産業の業績回復ぶりは際立っています。自動車などは耐久消費財ですから、今回のようなコロナの影響で一時的に需要が落ちても、どの人も必要なものですので、時期が来れば買うしかないわけです。かような一時的な混乱や不況で、自動車販売が著しく減少するということは過去にもありました。リーマン・ショック時も世界的な大混乱となりましたので、自動車販売も一時期従来の半分程度まで落ちたのですが、1年もしないうちに販売数量は回復基調となったのです。
「コロナの影響は明らかに一時的なことですから、いずれ自動車の販売は上向くはずで、自動車株などは中長期で買うべきである」
 朝倉は昨年の株価暴落時から一貫してそう主張してきました。その販売回復が予想以上の速さで世界中で起こってきたのが現在の状況です。

 ちなみにトヨタが昨年5月12日、決算発表した時に、2021年3月期の利益予想を発表したのですが、この時、営業利益の予想を5000億円と発表しました。この数字は前年比80%減という驚くべき数字だったのです。そして営業利益でなく純利益に関してはコロナの影響が不透明なので算定不能であると述べていました。実際昨年5月の時点ではトヨタの生産は前年に比べて半減していたのです。ところがその後、上方修正に次ぐ上方修正を続け、今では営業利益は2兆円を超える見通しとなっています。昨年5月の時点の予想から4倍以上になったのです。トヨタの10月〜12月の自動車生産台数は過去最大にまで拡大したわけです。いかに情勢が変化したか、自動車販売に関しては前に戻るどころか、それを超えて過去最高となったわけです。
 かような驚きの好決算はトヨタに限ったことではありません。ソニーも昨年10-12月期の決算を発表して驚くほどの好業績となり、その勢いで2021年3月期の決算予想を上方修正し、なんとソニーとしては初めての純利益1兆円乗せを達成できるとの見通しを述べたわけです。日立も好決算を発表、2021年3月期は3700億円の利益が出るとし、これは前年の4倍という凄さなのです。電気産業の好業績は相次いで、特に半導体関連は巣ごもりからくるパソコンなどの需要と5Gへの対応への需要で超繁忙状態となっていて、日本電産、信越化学、東京エレクトロン、太陽誘電など軒並み過去最高の利益計上が相次いだわけです。
 また赤字が続いて苦しい状態にあった素材産業なども急回復してきました。日本製鉄やJFEなど鉄鋼関連企業はコロナ禍の需要減退で赤字転落は必至とみられていたのですが、今回の10-12月期の決算発表において予想以上に回復基調となったようで、2021年3月期の赤字予想を翻して黒字予想に転換させてきたわけです。
 自動車関連全般をみてもトヨタがかような決算を出すくらいですから、ほとんどの自動車メーカーが予想を超える決算を例外なく出してきたわけです。
 ちなみに世界全体の自動車販売も昨年4月の時点では月間400万台だったのですが、12月の段階で月間800万台にまで拡大してきたのです。まさにコロナ禍における世界的な自動車需要の爆発です。そして今ではあまりの繁忙さで自動車生産に使う半導体が足りなくなってしまって、そのために減産に追い込まれるというほどです。
 とにかく、世界的にみて半導体は全く足りない状態です。新しいもの何を作るにも半導体が必要です。電気機器も自動車もゲームもビットコインの採掘までも、半導体がいるわけです。
 コロナ禍の時は巣ごもり需要だけだったのでパソコンとかゲーム関連の需要が大半だったのですが、ここにきて自動車、機械などの回復もあり、生産が需要に全く追いつかない状態となってしまいました。

 さらに日本企業の決算発表で驚かされたのが、ソフトバンクグループの決算でした。孫社長はソフトバンクグループを「金の卵を産む製造業」と述べて、自らの会社が投資した企業が次々と大きく発展していって株が上場して、巨額の投資利益を叩き出していることを詳細に説明していました。

●まだら模様の景気回復
 そのソフトバンクグループの4-12月の純利益ですが、何と3兆500億円と、日本企業として初めて純利益3兆円を達成したのです。従来の日本企業の純利益の最高額は年間ベースでトヨタの2兆4900億円でした。ソフトバンクグループは4-12月期という9カ月の利益で、トヨタの記録を抜き去ったのです。孫社長は「たかだか3兆円、まだまだ道半ば、この程度の利益で満足するつもりはない」を豪語しました。志はかように高く持つべきで気持ちのいい発言だと思います。
 とは言うものの、やはりコロナの影響で非製造業は打撃を受けています。鉄道、バス、空運、旅行、サービス、飲食業などは赤字、大減益から脱することはできていません。
 ただ日本企業全体として企業業績を見渡した場合、この3カ月間で業績見通しの改善は著しく、日本企業全体の2021年3月期の純利益合計は、前年比19%減の14兆7540億円となり、3カ月前の34%減から15%も改善するという驚異の回復ぶりをみせたわけです。
 今後、ワクチン接種が本格化し、7月には東京オリンピックも開催されることでしょう。今まで抑えていた消費が爆発する可能性が高く、2021年3月期から2022年3月期への企業業績の劇的な拡大と景気のV字型回復は必至でしょう。コロナが収まると今まで我慢してきた購買意欲が解き放たれ、消費が雪崩を打ったように拡大していくことでしょう。
 一方で、依然最悪期を脱せないサービス業や小売業、旅行関連など厳しい情勢下に置かれている企業も山ほどあるのが実情です。上場企業の2割は純利益が過去最高となるのですが、他方でコロナの後遺症に苦しむ多くの企業があるわけです。特に日本の中小企業は厳しいところです。中小企業においては資金繰りの厳しさもあるでしょう。もう少しの辛抱で光が見えてくると思いますが、そのもう少しがきついところです。
 法人企業統計によると、コロナの影響を直接受けている中小企業ほど財務が悪化している現状がみてとれます。資本金1000万円以上2000万円未満の企業においては2020年の利益剰余金が1年前の60兆円から50兆円に減少しているのです。いわばこれら中小企業は、今回のコロナの影響を受け10兆円も資金を流出してしまったわけです。売掛金の保証業務を行っているイー・ギャランティーによると、2020年12月の売掛金の保証料の平均は2.77%と、1年前に比べて1.15%上昇してしまったとのことです。政府は必死に中小企業の資金繰りを支えようとしていますが、限界もあるでしょう。昨年の企業倒産件数は7773件と30年ぶりの低水準でした。これは政府の政策によって多くの中小企業の資金繰りが支えられたからです。しかしいずれ借金は返さなくてはなりません。コロナが蔓延してほぼ1年経過して、いよいよ借入金の返済も始まってくるわけです。サービス業を中心としてまだ回復は先でしょうから、ここでの返済開始は厳しいと思われます。当然政府も当面の返済猶予策を金融機関に指導してくるものと思います。依然厳しい状況に置かれた中小企業の声を受け、自民党は3月に企業の資金繰り支援を政府に提言するということです。
 製造業中心に景気の回復基調は確かなものとなってきています。ワクチン接種が始まり、非製造業においても時間の問題で元の状態に戻っていくでしょう。株価は先行きを見越してどんどん上昇してきています。日本全体が回復を実感できるまでもう少しの辛抱だと思います。

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Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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