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このページでは、舩井幸雄が(2014年1月19日の舩井幸雄の他界後は舩井勝仁が)いま一番皆様に知ってほしい情報をタイムリーにお伝えしていきます。
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2008年10月27日
「断末魔の資本主義」

 2002年1月31日に徳間書店から出した私の本の題名が『断末魔の資本主義』でした。
 2001年の10月ごろに講演をたのまれ、約束していたので、2002年2月にある銀行に講演に行きました。
 その時、その銀行の頭取から、「この本を先に読んでいたら船井先生には絶対に講演をたのまなかったですよ。
 資本主義がつぶれる…なんてバカなことを冗談でも言わないでください」と説教されたのを思い出す本です。
 しかし、いま、この本に書いた通りになりました。
 この本は98年の「LTCM」についで、2001年12月2日に「エンロン」が倒産したのを見て、「資本主義は2020年くらいまで持つ」といままで言っていたが、「2010年ころには危なくなるな」と思って書いた本です。自分で自分の予測が当ったなどと言いたくないので、9月29日にKさんこと朝倉慶さんが私に送ってくれたレポートの一部をここにほとんど原文のまま紹介しておきます。
 よろしければ、すでに絶版となっていると思いますので、この本のポイントぐらいはKさんにでも聞いてください。

船井幸雄さま
                               2008年9月28日
                                         (Kより)

   断末魔の資本主義
 <このまま進めば、2010年頃までに、資本主義は崩壊するのではないか>名著<断末魔の資本主義>は2002年1月に発刊されました。当時から話題の本でしたが、船井幸雄先生の本は、ほとんど読んでいる私にとっても、衝撃的で、今でもバイブルにしている大事な一冊です。そして、まさに今、先生の予想通り、資本主義は断末魔の様相を呈してきたのです。本から引用します。
 <経営者、学者、政治家、官僚など、多くの外国人を個人的に知りました。その中の何十人かとは非常に親しくなりましたが、そのほとんどはエリートですし、マクロに世の中の情勢を把握している有識者といっていい人たちだと思います。
 彼らと親しく本音で話して私が知ったことは、彼らすべての人が、資本主義は根元的に矛盾をもった社会制度であり、永続は不可能である。発展すればするほど、制度として行き詰まるだろうし、近未来には、必ず社会制度上の大変革が必要だろう…。と認識していることでした。
 彼らのなかの多くの人が、物質的なモア・アンド・モアの追及とともに、競争、秘密、浪費、分離、エコノミー(金銭市場主義)などという資本主義の持つ人間のエゴに立脚した方向性は、人間を不幸にし、文明を破壊させ、人間を原始人に逆戻りさせる可能性が高い、と人類の将来を心配しながら真剣に話してくれました。>
 そして、1990年代のソ連の崩壊、日本のバブル崩壊、債務国のアメリカが、より債務を増やすことで、好景気を謳歌するのを見て、
 <これらは、資本主義がいよいよ崩壊する前兆だ。21世紀のはじめには、資本主義は断末魔のあがきをするだろう。近未来の資本主義の崩壊は間違いないと思える>
 として、その具体的な例として、エンロンの破綻を上げ、
 <エンロンはデリバティブの怪物でもありましたから、資本主義の申し子である究極のマネーゲームといわれたデリバティブへの危機感が、今世界中で高まっています。全世界で想定元本が1京2000兆円という一大天文学的数値になっているデリバティブへの不信感は、今後の世界経済にたいへんな影響を与えるでしょう。私はデリバティブのバブルは近い将来、崩壊する可能性が高く、それによって、その本家本元のアメリカをはじめ先進国経済の収拾がつかなくなるだろうと思えてなりません>
 と書いていましたが、まさに慧眼(けいがん)と言えます。そして、6年前の予言通り、さらに巨大化したデリバティブというお化けが、その牙をむき出しにして、資本主義をずたずたにして、人間社会そのものを破壊しようとしているのです。何度も何度もデリバティブの洗礼を受けながらも、懲りずに拡大していった過程を追ってみます。
   LTCM
 まずは1998年のLTCMショックを追わないわけにはいきません。このときに、現在起こっていることのすべての問題は網羅されているからです。LTCM(ロングターム・キャピタル・マネージメント)は、ソロモン・ブラザーズの伝説のトレーダー、ジョン・メアリーウエザーによって創立され、そのパートナーには、ノーベル賞経済学賞受賞者で、スタンフォード大学教授のマイロン・ショールズとハーバード大学教授のロバート・マートン、元FRB副議長のデビット・マリンズなど、まさにドリームチームだったのです。彼らはまさに、投資の世界に、物理学や高等数学を用いて、市場を定量的に分析して、いわゆる債券の裁定取引(アービトラージ)を始めました。デリバティブの市場では、先物の価格や、オプションまた、市場間、期限別の物など、様々の価格が最終的に同じになるべきものが、一時的には、理論価格を超えて乖離してしまうことがあります。先物、オプションの決済は、ある期日が決められていて、その日にはSQと呼ばれる清算値で決済されますので、このことを利用してプログラムを作ったりします。LTCMの場合は、割安な債券を買い、同時に割高な債券を売ることを執行して、そのさやを稼いでいたわけです。簡単に言えば、米国債のようなものを売って、ジャンク債のようなものを買う、といった取引です。市場は不特定多数の投資家が存在するものですし、様々な思惑を持って注文は執行されますので、時には、割高な値段で買ったり、割安な値段で売ってしまったり、ということが日常茶飯事で起きるわけです。彼らの考えは、この愚かな投資家のミスを見逃さず、そのロスを瞬時に把えて確実に儲けよう、とするものです。この為には、絶えず投資家の動向をウォッチしていなければなりません。またどのくらいの乖離が出たら注文を執行すべきなのかプログラムを作る必要がありました。これらの理論を考えたのが数学者や物理学者だったわけです。そして値段の乖離が発生する、そのチャンスを見逃さない為に、ロボットに瞬時に発注させるプログラムを作ったのです。コンピュータの発展と高速化が為し得たことと言えるでしょう。このロボットトレーディングを使って確実に儲かる均衡点やチャンスを見つけることができるというわけで、後はいかに多額の資金を投入できるかが課題だったわけですが、これも可能にしたのが、レバレッジというわけです。レバレッジというのは、自分の元金に対して何倍かの資金を投入することですが、たとえば一般の投資家が100万円持っていて、100万円の株を買えば、レバレッジは1です。これを1000万買えば、レバレッジは10、一億円買えばレバレッジは100です。100万円で1億円買って、1%値上がりすれば、利益は100万円となり、投下資金は倍の200万円に増えます。LTCMのやった債券の裁定取引は、それほど大きな利益を瞬時に上げることはできないものの、確実に儲かる均衡点で取引を執行するプログラムでしたから、余計に大きなレバレッジを効かせる必要がありました。考えればわかることですが、相場で確実に儲かるのであれば、いくらでも金をだすのは当たり前です。これで、発足当時は年率40%という利回りをたたきだしていたわけです。金融工学とコンピュータをつなぎ合わせた見事な戦略でした。しかしその根本的な発想は上手く知恵を使って、コンピュータロボットに勝負させて、愚かな人間の隙をついて、金を儲けてしまおうと言うことにしかすぎません。先般、チェスの名人がコンピュータロボットと勝負して、負けてしまいましたが、ある程度決まったルールですと、人間の知恵がロボットに敵わないのも事実です。オセロのような単純なゲームですと、人間はまず勝ち目はありません。日本の将棋のようなゲームでも、昨今のプログラムは将棋では素人の、コンピュータの専門家が作っているプログラムに、一流プロがかろうじて勝っていましたが、ロボットが勝つのは時間の問題と言われているのです。将棋やチェスならゲームだからいいですが、相場となると、多額の金がかかってくるから話は違います。物理学者や数学者の作ったプログラムを組み込んだロボットに儲けられて、生の人間が損失を重ねる姿は滑稽です。しかし、笑い話ではありません。これが行き過ぎた資本主義の典型的な金融の姿なのです。今回起こったヘッジファンドの暴走の原点はここです。今、日本の投資家のほとんどの人は知りませんが、先物を使って、日本の市場を自由自在に動かしているのは、このロボットトレーディングを使った、マネージド・フューチャーズと呼ばれるヘッジファンドなのです。このマネージド・フューチャーズは85%ロボット取引なのです。株式市場では、<先物に振り回されている>と、よく言われますが、その実態は日本人全員がロボットに翻弄されているだけなのです(転載ここまで)。


 ともかく、世の中のできごとへの対処法はマクロに捉えて、そしてミクロに対処することです。
 Kさん(朝倉さん)は、この両方を知り、これらが見事だから経済予測が当るのです。しかも生命をかけているから当るのです。複雑なシステムになりすぎたいまの金融業界では、人の気持をロボットは把えきれなくなりました。ということは、所詮この世の中では実際のところロボットは人間には勝てないものともいえましょう。人間とは、そのような存在のようです。
 皆さんもよろしくこのことを知っていてください。
 私はいま『いよいよ資本主義断末魔』という本でも、マクロとミクロの両面から具体的に人間の気持ちとか性格を把え、実例をふんだんにとりあげて書きたい…といま思っています。
                                            =以上=

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