“超プロ”K氏の金融講座

このページは、船井幸雄が当サイトの『船井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介している経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2009.09
悲惨なアイスランド

 8月13日、アイスランドの議会には、数千人のデモ隊が押し寄せました。
 人口30万人のアイスランドからすれば、大変な数の人々です。日本で言えば、1,000万人がデモ隊になったようなものでしょうか。
 今回の金融危機で、最初に国家破綻という危険に晒(さら)されたアイスランドですが、その後も悲惨な経緯をたどっています。

デモ隊が押し寄せた理由
 今回、デモ隊が押し寄せたのは、同国のインターネットのオンライン銀行<アイスセーブ>の預金者の払い戻しに反対するためでした。
 アイスランドの3大銀行は高金利を売りものにして、ヨーロッパ各地から大量の預金を集めていましたが、その運用に失敗し、多額の負債を抱えることになりました。その規模は同国GDPの約10倍。しかしながら、破綻すれば、預金者にお金を返すことはできません。アイスランド政府は当初、自国の預金者だけには「国家として預金を保証する」と宣言しましたが、これに大反発したのが、隣の英国をはじめとした欧州各国だったのです。
 それはそうでしょう。そのような銀行破綻となれば、<アイスセーブ>を通じて、預金者を大量に抱えている自国の国民が多大な損失を蒙(こうむ)り、ひいてはヨーロッパ全体の金融危機にまで発展する可能性があるからです。今の脆弱な金融の状態からすれば、このような破綻から始まる全体的な危機、いわゆるシステマティック危機を封じることが難しいからです。
 英国やオランダは、IMF(国際通貨基金)の緊急融資を使って、なんとかこの問題を収め、自国の預金者に被害が及ばないようにと最大限の努力をしたのです。 結果、8月28日、アイスランド政府はインターネット銀行<アイスセーブ>について、現在預金を凍結中の英国、オランダの預金者に対して、政府保証をつけることを承認したのでした。
 8月初めには、アイスランド政府と英国、オランダ政府は、この問題に関しては合意していたものの、アイスランドの民衆の大反対にあって、議会の承認は難航を重ねていました。
 これは、アイスランドの国民からすれば当然のことです。なぜならアイスランドの銀行は同国のGDPの10倍もの資産を拡張して破綻したわけですから、この債務をアイスランドの国民が払うとなれば、一生ただ働きをして、その借金返済に自分の半生をささげることになりかねません。
日本のGDPは約530兆円ですが、もし日本の銀行が破綻し、その額が膨大で「日本国民全体で5,300兆円の負債を払え!」と迫られたらどうしますか?
   そんなことを受け入れたら、日本国民は一生、借金を背負って働くしかないではないですか! それでも払いきれません。アイスランド政府が英国、オランダの人達の預金も保証する、という法案に多少の修正はあったでしょうが、アイスランドとしては、実質的にすでに国家破綻している状態であり、国を運営するためには、IMFの条件を飲むしかない状態に陥っているのです。

 8月から難航したアイスランド議会でしたが、同国の銀行が背負った債務の負担に対して、年間返済額の総額を制限することで折り合いました。また、返済期限も2024年6月5日に終了するとしたのです。

いまは、かろうじて一息ついている状態
   冷静に考えれば、このような巨額の負債を漁業が主産業であるアイスランド国民の働きで返しきるわけもなく、とりあえずIMFの融資で急場を凌ぎ、アイスランド政府も、英国、オランダも一時しのぎで、互いの国民を納得させているだけです。いずれまた、問題が噴出してくることでしょう。
 アイスランドの借金は国家レベルだけではありません。個人も膨大な金額の住宅ローンをユーロなどの外貨建てで背負っており、自国の通貨安から返済不能に陥っているのです。市民のアンケートによれば、4割の人が今後半年以内にローンを払えなくなる、と言っているのです。

 このような問題は東欧諸国も同じで、これもいつ破綻してもおかしくない。今、アイスランドと同じように、IMFの融資で、かろうじて一息ついているだけなのです。
 東欧諸国には、西欧の銀行が山のように貸し出していて、その額はアイスランドのケースの比ではないのです。現在、世界中で紙幣を乱発し、IMFからも限りない資金を融通させているため小康状態となっていますが、借金の返済、不良債権処理という根本的な解決は不可能で、いつ、また、どこからマグマが破裂するか、わからないのです。

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暴走する日銀相場『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/
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Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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