“超プロ”K氏の金融講座

このページは、船井幸雄が当サイトの『船井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介している経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2013.10
金相場のたそがれ

●13年上り続けた金相場が下がり始めた!
 金相場が低迷しています。日本でも春には1グラム5,000円に乗せたということで話題になりましたが、今は4,000円台をかろうじてキープしている状態で低迷から脱せません。また世界的にみると金相場の下落基調ははっきりしてきています。
 金相場は普通、ドルに対して1トロイオンスが何ドルかということで表され、その値段が世界的な指標となってきたわけですが、現在、1トロイオンスが1,340ドル台で年初の1,600ドル台からは大きく下落した状態で浮上のきかっけがつかめません。
 私も今年に入ってからはセミナーや講演会の時に、金相場に関しては今後も低迷する可能性が高いので、金よりも株や不動産に乗り換えていった方がいいでしょう、ということで金から株や不動産並びにドル投資ということを呼び掛けてきました。
 年初から金相場は紆余屈折ありましたが、基本的に下げ基調であることは否定できません。2000年からは毎年上げ続け、13年に渡って上げ続けた金相場ですが、さすがに今年は1年を通して下げましたので、14年連続の上げとはなりませんでした。
 金相場に何が起こっているのでしょうか? 金は持つべきか、手放すべきか、金相場の下げは一時的なものか、それとも今後もさらに下げ続けるのか、検証してみましょう。

 結論的に言うと金は売却して、株か不動産、ないしはドル投資にすべきと思います。相場の転換点というものはどんな相場にも訪れます。相場では一般的に考えて高値で売ることはできませんし、また安値で買うこともできません。それができたという人もいるとは思いますが、そのようなことができたのは偶然か、幸運だったと思った方がいいでしょう。
 兜町の格言には<魚の頭としっぽはくれてやれ>というものがありますが、これは相場で欲張って安値で買って高値で売ろうとしても失敗しますよ、という戒めです。魚の頭としっぽは誰かにあげてしまうように、相場でも一番の高値で売ることはできないし、また一番の安値で買うこともできないのだから、大まかにトレンドが発生した時にその相場にうまく乗れということで、決して一番の安値で買い、一番の高値で売ろうなどと欲張りすぎた気持ちは持たない方がうまくいくということです。逆に相場の売り買いで完璧を目指せば墓穴を掘るということでもあります。

 相場の世界は日々変化しますし、買いと思った翌日に売りに転換しなければならない時もあります。相場に相対するときは常に臨機応変に構えて、時の変化に大胆に対応しなければなりません。相場の上手い人はこの辺の切り替えが巧みです。昨日まで買いと言っていた人が今日は全く逆に売りと平気で話すのです。相場を扱う心得として、このあたりの臨機応変なところ、いわゆる柔軟性が必要なところです。
 相場には大きなトレンドがありますし、明らかに年単位などのトレンドが変化したときは、それが相場の基調変化を表すものか、一時的なものか、見極める必要があります。意地を張って下げ基調になった相場にいつまでもしがみついていたら大きな損をしてしまいます。また上げ基調が続いているのにあわてて売却してしまってはせっかくの儲けが少なくなってしまいます。そういう意味では、相場の世界では大きなトレンドを把握することが一番重要となるのです。相場の世界は日々の動き、週単位の動き、月単位の動き、年単位の動きと短期から長期までの様々なトレンドがありますが、普通の投資家が投資する上で最も大事なことは、この長期のトレンドがどうなったか、ということです。

 例えば私は、一昨年にドル円相場が天井をつけたこと、また日本の株式市場が上昇局面に入ったことをこのコラムでも著作でも指摘してきました。現に円相場は今や誰の目にも円安基調が生まれ、株式市場も昨年の8,000円台から現在の14,000円台へと完全に基調転換しています。この大きなトレンドを正確につかむことができれば、日々や週単位の細かい動きは気にする必要はありません。株を買い、ドルを買い、ただ保有していればいいのです。株やドルの長期トレンドが上昇に転じたのであれば、保有さえしていればいいわけで、現在は株もドルも基本的には上昇基調ですから、投資家は持てば持つほど利益を増やしていけるでしょう。これは現在、私が強く勧めている株やドルの投資方法です。

 その意味で金相場に対しての取り組みですが、私は金相場については、はっきり売りに転換したと考えています。<相場は相場に聞け>と言いますが、まずは金相場の冴えない動きがその根本的な変調を物語っています。金相場は世界的に動いていますので、日本円での1グラム何円、という日本の相場で見ていては金相場の大局はつかめません。金相場はドル表示で毎日、世界で取引されているわけですから当然、世界の金融の中心地であるニューヨーク市場における1トロイオンス何ドルかという指標で相場の動きを計らなければならないのです。
 そのニューヨークにおける金相場が今年13年ぶりの下落となるのです。ここで書いたものを読むだけなら、「そうか13年ぶりに下落したのか」と単純に理解するかもしれません。そのような簡単な理解ではいけません。そもそも一つの相場が13年も上がり続けるということは異常なのだ、という相場の常識的な前提を理解する必要があります。
 例えば株式市場にしても円相場にしてもドル相場にしても、みなさんがみている個別の株にしても、商売で関係のある商品や物資にしても13年も休みなく上がり続ける相場が一回としてあったでしょうか? これは年間ベースでの話です。金相場が13年にわたって上がり続けたということは毎年、年初から年末まで基本的に上がり続けたということです。
 相場の世界では普通はこのようなことはありません。例えば円相場ですが、1972年、変動相場制に移行して以来、一貫して円は円高トレンドだったわけですが、中には円相場が下がった年もあったはずです。そのような上がる年、下がる年と繰り返しながら結局は円相場が大きく上がっていったわけです。これが普通のパターンです。上がる年も下がる年もあったということです。ところが2000年からの金相場は異常の一語で、下がる年はなく、13年間にわたって上がり続けたのです。

 相場的に言うと、金相場上昇の巨大なトレンドが発生していたといえるでしょう。それは基本的には通貨、特にドルに対しての不信任だったと思います。投資家も世界も際限なく印刷されるドルという紙幣に対して大きな不安を抱き、それが13年にわたる金相場の上昇を牽引してきたと言えるでしょう。
 相場の動きをテクニカル的にみていく、チャート、いわゆる値動きの変化の推移からみれば、明らかに13年ぶりに大きく変化したわけです。毎年毎年上げ続けていた相場が年間を通じて初めて下がったという現実、この変化は強烈です。13年にわたったトレンドが変化したということは、金相場の流れは変わった、何かが確実に水面下で変わってきたと思うべきでしょう。<人知を超える相場の世界>が何を言わなくても確実に将来を映し出してくるのです。

●米国経済は正常化?
 では何が変わったか? と言えば、先に指摘したようにドルに対する評価が変わってきたのです。ドルが機能しなくなる、ペーパーマネーが通用しなくなる、という懸念が急速に弱まってきたのです。言い換えれば、ドルが通貨として機能する、経済の混乱を回避できる、ペーパーマネーの世界が今までのように続けられるという観測なのです。金自体は利息が付きませんから投資家が金投資を行うのは有事、いわゆる世界経済の混乱を懸念した保険的な投資だったわけです。今日、世界の混乱、とりわけドルの本家である米国経済が順調に回復するのであれば、投資として金に投資する必要はなく、米国のドルや不動産や株に投資した方がいいという考えなのです。
 ドル暴落はない、米国に経済的な大混乱が来ない、と思えば、利息の付かない金投資よりも、収益の上がる不動産、不動産ならば地代や家賃がもらえ、そのうえ値上がりが期待できます。株であれば同じく配当ももらえ、値上がりも期待できます。株や不動産が嫌いでドルに投資したければ、米国債や社債などで安定した金利がもらえます。もし、ドルを有する米国社会に経済的な大混乱が訪れないのであれば、利息の付かない保険的な金投資よりも、株や不動産やドルを通じた債券投資がいいということになるのです。
 大まかに言うと、米国経済の正常化から混乱は回避され、今までのペーパーマネーの世界は機能するという見方が増えてきたということなのです。実際、リーマンショック時はリーマンだけで約60兆円の損失、米政府はフレディマック、ファニーメイの米住宅公社に約20兆円の公的資金投入、世界ナンバー1の保険会社AIGに約20兆円の公的資金投入、さらに大手銀行に相次いで資金投入を行いました。あのモルガンスタンレーは日本の三菱UFJから約1兆円の資本を入れてもらったわけです。
 リーマンショック当時は世界経済が壊滅するかのごとき極めて深刻な状況だったのです。ところが今や当時の借金はほとんど返済されました。AIGは米国政府に公的資金全額を返済、フレディマック、ファニーメイの住宅公社も公的資金の8割まで返済、そしてGM、クライスラーは倒産から復活、米国の失業率はリーマンショック当時の10%超えから7.2%まで低下、景気を計る典型的な指標である米国の自動車販売台数は年間1000万台割れから1600万台へと完復活したのです。リーマンショック当時の深刻な危機は消え去ったのです。
 そしてここで米国経済は順調に回復基調に入り、いよいよ危機対応であった量的緩和政策も終了するという見通しになってきました。となると米国経済の正常化ということでいよいよドルが世界通貨として再び機能し始めたということです。そこでは金投資に対しての投資する動機が薄れてきたとういうのが現状です。ですから金投資の人気が急速になくなってきたのです。米国経済の復活劇が金投資からドル投資へと世界の投機資金の流れを変えてきつつあるということです。

 私は今年から始まってきた米国経済の正常化の動き、ドルの復権はこれからのさらなる大きなトレンドになってくると思います。かつてこのコラムでも<ドルの復権>については解説してきました。その中で金相場が輝きを失うのはやむを得ないでしょう。
 <金相場は来年、スラムダンク(バスケットボールの強烈なダンクシュート)のような売りに見舞われる>ゴールドマン・サックスの商品調査責任者、ジェフリー・カリー氏は来年の金相場は一時的に1,000ドルを割れもあり、1,050ドル程度に下落するだろうと述べました。一方でクレディ・スイスの商品責任者リック・デベレル氏は来年の相場では金相場の売りを最も推奨すると述べました。
 大物ヘッジファンドの金相場離れも続いています。すでにヘッジファンドの帝王と言われるジョージ・ソロスは金保有をゼロにしたことを明らかにしました。金の世界的なETFであるスパイダーゴールドの一番の大量保有者であった同じくヘッジファンドの大物、ジョン・ポールソンもスパイダーゴールドの持ち高が半分にまで減らしたことが明らかになっています。もはや金相場のトレンドが変化したことは大物ヘッジファンドをはじめ多くの投資家が感じていることです。一方で株や不動産へは世界的に見ても怒涛の資金が流れ続けています。
 世界中にばら撒かれた巨大な資金は儲け口を探そうと血眼になって投資先を吟味しています。そしてその多くは日米欧など先進国の株、そして不動産に殺到しようとしています。
 13年ぶりにトレンド変化を起こした金相場へは当分の間、資金が本格的に戻ってくることはないでしょう。

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暴走する日銀相場『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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