“超プロ”K氏の金融講座

このページは、舩井幸雄が当サイトの『舩井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介していた経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2015.12
2016年の展望

 早いもので2015年も終わり、いよいよ2016年を迎えようとしています。アベノミクスが始まって3年が経ち、日本経済も順調に回復してきましたが、まだ多くの課題を残しています。アベノミクスが始まってから円安と株高が起こって、日本経済を取り巻く風景も大きく変わってきました。しかし一方、食料品など必需品が上昇しているのに給料をはじめとする賃金は思ったように上がらず、生活はかえって苦しくなったという声も聞かれます。世界を見渡しても混乱の度はさらに増してきているように感じます。

●2016年は激動の年になる!?
 年初はパリでテロが起こって改めてテロの脅威を感じていた世界ですが、今度は何とそのパリで11月にはさらに大規模な同時多発テロが起き、多くの死者を出す大事件となって全世界に報道されました。
 また経済に目を向けると中国経済の減速は明らかで、今年春から中国の株式市場は大きく暴落、夏になってその影響は米国市場など全世界に波及していって、9月には世界的な株価の急落を招く事態にまで悪化してしまいました。
 一方、原油をはじめとする資源価格の下落が止まりません。原油価格の世界的な指標であるニューヨークWTIの原油相場は昨年夏の100ドルから現在では34ドル台と3分の1にまで暴落状態となっています。これでは中東産油国やロシアなど、原油や天然ガスなど資源の輸出で国家財政を賄っていた国々が深刻な財政状況となって苦境に陥っていくのも当然です。

 かように世界は不安定さを増してきているし、日本の状況も決して予断を許さない情勢です。このような中、日本の政治の世界をみると、来年は参議院選があり、早くも衆議院選とのダブル選挙になるという観測も広く広がってきました。
 一連の流れをみると、2016年は極めて難しく激動の年になっていくと思われます。今年起こってきたテロの拡散や中国経済の急減速や産油国や資源国の苦境、並びに日本のダブル選挙など、現在懸念されていることや予想されていることは、来年の大きなテーマとなっていくことでしょう。そしてその全てが悪化、拡大していくように思え、また政治の世界で日本では夏にダブル選挙断行ということになると思われます。

 一つ一つ詳しく検証しようと思いますが、まずは世界的なテロの拡散については簡単に収束するとも思えません。すでに今年に入ってシリアをはじめとする紛争地域から欧州へ逃れてきた難民の数は100万人に上っています。人道主義を掲げる欧州も、さすがにこの短期間での大量の難民流入には悲鳴を上げてきています。物理的にも財政的にもこれ以上の受け入れは不可能な状態です。しかしすでに来てしまった難民を追い返すわけにもいきません。今回のパリで起こったテロのたちの悪いところは、欧州の自国で生まれ育った移民の2世、3世が社会への不満を抱いて起こしたテロという側面があるからです。大量の失業者を生んでいる欧州経済は、回復基調ながらも若者の雇用を生み出すまでには至っていませんし、今後も失業率の劇的な改善は無理でしょう。そうなると、ただでさえ若者も失業率が25%を超えていて、ましてや中東やアフリカからの移民の2世、3世の失業率は50%を超えていると言われているのです。このような職のない状態で、移民に対しては差別が生じている社会においてあつれきが起きないということはないでしょう。
 テロを起こした若者をみると、欧州での社会に失望して生きがいを失ったうえで、急速に過激な思想に傾倒していったようです。その結果、シリアに渡ってISの戦闘員になってしまった経緯がある、ということも報道されています。そして欧州ではこのようなテロの予備軍とみられる層が相当数いることも報道されています。自国民にテロを行れては、また組織に加わっていない一匹オオカミ的な単独犯のようなテロが生じては、当局も防ぐのが難しいでしょう。
 欧州では社会全体に閉塞感が広がって、社会の中にテロを生む土壌が存在していて、それをなかなか消すことができないという構造的な問題があります。日本も今のところ大きなテロ事件は起こっていませんが、2016年は伊勢志摩サミットもあり、2020年にはオリンピックもありますから、今後、国際的なテロの標的であることは変わりません。

●来年の中国はどうなる?
 一方、世界の経済全体に目を向けると、中国経済の減速という大問題がありますが、これは防ぎようもないことです。あれだけ急成長を遂げた中国があのまま成長し続けること自体が不可能なことは誰が考えてもわかります。そして、成長し続けたためにその反動が生じるもの当然のことなのです。日本も終戦後、高度経済成長で一気に経済大国にのし上がったわけですが、その反動としてバブルの崩壊があり、25年以上もその反動に苦しんでいます。中国ではすでに生産年齢人口(15歳−64歳)が減少し始めているわけですから、今までのような成長が続けられるわけはないのです。
 また、昨今の深セン市の工業団地で起こった土砂の崩壊事故による多数の死傷者の発生や記憶に新しい天津の化学工場の大爆発事故、さらには、一向に改善しない北京をはじめとした中国全土の酷い大気汚染など、すべてその根っ子にあるのは、経済成長至上主義で安全や環境対策をおろそかにしてきた結果です。一連の問題のひずみがこれから大きく生じてくるわけで、このような過渡期は、どんな国でもどんな経済発展でもそれが成功していればいるほど生じてくる必然的な問題です。来年からは中国経済の極めて深刻な諸問題がさらに噴出してくることでしょう。
 この流れと連動しているわけですが、やはり中国経済の減速が世界的な資源需要の低迷を生じさせ、結果的に資源の世界的な需要を急減速させ、産油国や資源国を苦境に陥らせる羽目になっているわけです。
 このような資源需要の大低迷状態に加えて、米国でのシェールガスやシェールオイルの爆発的な開発加速が、原油や天然ガスなどの資源のさらなる供給を増やしてきたわけです。
 いわば現在の原油や天然ガスなど資源全般を取り巻く状況をとらえると、需要は大きく落ち、供給は大規模に増えるという需給関係の大規模なアンバランスを生じさせているわけです。その結果として、資源価格の急落を引き起こしているわけですが、これもまた需給双方が変わってきていますので、構造的に短期間で収まる問題ではありません。そう考えると当面、資源価格の反騰は考えづらく、中東産油国やロシアやブラジルなど資源国の苦境は2016年さらに激しくなっていくでしょう。

●来年の安倍政権はどうなる?
 一方、安倍政権は非常に安定した人気のある政権です。安倍首相としても今後は、悲願である憲法改正に動くと思われます。そのためには衆参両院で圧倒的な勢力を必要としているわけですが、野党が弱い今は、与党体制を盤石にする好機と考えていることでしょう。
 2017年には4月に消費税引き上げが予定されていて、その後、景気が減速するのは必至でしょうから、それ以前の、消費税引き上げの影響が顕在化していない時点での選挙が望ましいことは言うまでもありません。また、悲願の憲法改正のためには選挙で大勝する必要もあるでしょう。
 すでに自民党は、今回の食料品の軽減税率導入でも、公明党案を丸のみして公明党に対しては大きな妥協を行っています。こうして自民党は、参議院選挙での公明党の支持を取り付けています。さらに最近、安倍政権は大阪維新の会の橋下代表とも急接近しています。自民党、公明党、大阪維新の会の3党で夏の選挙で大勝して、その後の憲法改正の道筋をつけていくことが現在練られている構想だと思われます。そういう意味では、2016年夏は衆参ダブル選挙ということになっていくでしょう。

 このような中2016年は、2015年と同じように株式市場は荒れ模様ながらも上昇基調を続ける展開となるでしょう。日本企業の収益は盤石で、増益率を見ても、欧米市場と比べても突出しています。テロは拡散して中国経済はさらに減速、産油国や資源国は大きな波乱に見舞われるでしょうから、世界的にみれば思わぬ事件や展開も多々生じることでしょう。一方、原油をはじめとする商品価格の下落で、日本ではインフレが生じにくい状態が続きます。また円安も一服模様となるでしょう。日本の国債発行は相変わらず天文学的な額に及んでいきますが、そのこと自体が2016年の段階では国債の大暴落(金利急騰)など波乱を起こすまでにはいかないでしょう。

15/12

2016年の展望

15/11

中国の結婚事情

15/10

郵政上場

15/09

現れ始めた高齢化社会のひずみ

15/08

荒れた株式市場の先行きは?

15/07

異常気象の連鎖

15/06

値上げラッシュ

15/05

新刊『株、株、株! もう買うしかない』まえがき

15/04

日米同盟強化の恩恵

15/03

アベノミクス その光と影

15/02

ギリシアの悲哀

15/01

止まらない<株売却ブーム>


バックナンバー


暴走する日銀相場『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/
★(株)ASK1: http://www.ask1-jp.com/

Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/
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