“超プロ”K氏の金融講座

このページは、舩井幸雄が当サイトの『舩井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介していた経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2019.1
ユヴァル・ハラリ氏の警告

 「逆にあなたに質問しますが、仮にあなたの大事な肉親や親戚、親しい友人が遺伝病に苦しんでいたら助けてやりたいと思わないのですか?」中国の南方科学技大学の准教授、賀建奎(がけんけい)氏は質問を投げかける記者たちに激しく反発しました。

 昨年暮れ、世界は賀氏の発表に驚愕したのです。なんと遺伝子を操作することによって、エイズにかからない遺伝子を持った双子の女の子を誕生させることに成功したというのです。人類初の遺伝子を操作された赤ちゃんの誕生です。「ここまで研究はきたのか」「ついに人間の遺伝子が操作される時代になった」「神の領域を完全に侵した」。様々な議論が沸騰したのですが、その大半は賀氏の行った人間の遺伝子を操作したという行為に対する激しい非難でした。
 「なぜ秘密裏におこなったのですか?」「倫理委員会の許可を得ているのですか?」世界中からの非難の中、程なく賀氏は中国当局に拘束されました。最近になって中国当局は二人の赤ちゃんの存在と遺伝子を操作して受精した子供を妊娠中である妊婦の存在を正式に認めたのです。
 記者会見での賀氏の反発、「遺伝病を治したいと思わないのか!」との言葉が重く響きます。依然人類は様々な遺伝病を持って生まれてきますし、未だに治療法がない不治の病いも多くあります。もし大事な人がそんな病いを持ったら……と懸念するのも当然でしょうし、そのような憂いがなく健康な丈夫な子供を産みたいというのは人類共通の願いでしょう。

 この遺伝子を操作して新しい人間が誕生するという試みは、現在の世界では許容されていないことです。まさに遺伝子の操作は実験段階で、動物などの実験においては無数の実験例があるわけですが、副作用もはっきりしませんし、第一、地球の生態系が狂ってしまいます。しかしながら現在の加速的なバイオテクノロジーの技術の発展過程を見る限り、いずれ時間の問題で、いよいよ人間の遺伝子を操作した新しい人類が生まれてくる可能性は否定できないかもしれません。
 安全性が確認されれば一応の理屈は通ります。「不治の病いを治したい」という強い欲求に医学の倫理は押されています。ないしは賀氏の自分勝手な行動のように周囲の批判を無視して研究者や企業が成果を先走るケースも出てくるでしょう。
 そうなると、最初は不治の病いや、遺伝的な病気を治すために、特例としてこういった遺伝子操作の技術が利用されるだけ、と規制されるでしょうが、やがて肥満体質や虚弱体質など体質の改善を目指すように規制の緩和を拡大解釈して使われるようになっていくはずです。それがさらに発展していくと、もっと体力が優れた遺伝子を持った子供が欲しい、もっと優秀な頭脳を持った子供が欲しい、もっと容姿端麗な子供が欲しい、と人間の欲望は止められなくなっていくことでしょう。こうして遺伝子を操作された子供の第1号が現実に中国で生まれた歴史的な事例から、数年か数十年経てば、いわゆる遺伝子を自由自在に操作して自分の思うような特性を持つ子供、いわゆる「デザイナーベイビー」の誕生となっていく時代到来というわけです。
 こうなると人類は劇的に変わっていきます。普通生物の進化は遺伝子の変化で変わっていくものです。外部的な環境に対応できるように何十年代もかけながら何万年も経てゆっくり進化していくものです。環境に適応できなければその生物は絶滅するわけです。どんな生物であれ、遺伝子の変化で徐々に変わってくるからその時々の外部的な環境変化に対応して生存し続けるわけです。

●衝撃的なユヴァル・ハラリ氏の予測
 現在の生態系は地球が数億年かけて作り出したものです。ところが人間が闊歩し始めて地球の生態系は大きく変化しつつあります。最近の人類の進化の過程を考えてみますと、人間の遺伝子が進化したというよりも、主に人間が生み出した技術の発展の恩恵によって人類は快適な暮らしを手にいれてきたと言えます。自分の身の回りを見ればわかりますが、この原稿を打っているパソコンも、それを置いてある机も、これが終わって一休みして見るテレビも、住んでいる家も、通勤に使う電車も、仕事が終わってから飲む酒も食事も、これら我々、現代を生きる人類の暮らしはそのほとんど全てが、延々と築いてきた技術の蓄積によって創造された人工物によって暮らしが成り立っているわけです。自分の周りをみても、何の手も加えられないままに自然に放置され続けているものを探す方が難しいでしょう。

 人類が誕生した時点では人間も猿も大きな違いはなかったのでしょうが、人間は火を使うようになり、道具を使うようになり、集団で行動するようになり、徐々に技術の果実を得るようになっていきます。およそ1万年前に農耕を行うようになってから人類史は大きく変化していきますが、近代史を振り返れば19世紀の産業革命から飛躍的に技術の発展に至ってきたのが実情です。それまでは飛行機も自動車も電車も電気も高層ビルもエレベーターも何もなかったわけです。
 そう考えると本来、生物の進化とはその遺伝子の進化によって環境に適応できるように進化していくものでしょうが、人間の場合は遺伝子の進化の速度はそれほどではなかったわけですが、この技術の著しい発展によって、人間全体が大きく進化してきたと言えるわけです。1万年前の太古の人間と現代を生きる人間で遺伝子の違いはほとんどないはずです。
 ところが今回、人間の遺伝子を操作して新しい人間が生まれました。これは今までの進化とは全く別物です。遺伝子を直接いじくったことで、この行為が人間の進化の速度を飛躍的に高める、ないしは全く違った人間を作り出すという方向に動いていく可能性が否定できません。
 競馬のレースで最も速く走る馬を作り出すためにサラブレッドの中でも、最も速いと思われる優秀な種を交配して、優れたサラブレッドを生み出すことに切磋琢磨しているわけですが、人為的に行っているとはいえ、これなどはまだ自然の交配の中で行っているだけです。
 ところが遺伝子を操作するとなると、かような進化はあっという間で、爆発的なことに発展していく可能性が否定できません。現在わかっている遺伝子情報や副作用発症など様々な事例の信頼性が確立していませんから、はっきりとしたことは言えないものの、このバイオテクノロジーの分野の発展は加速度がついてきています。マウスなどの実験ではあらゆるケースが試されているのが実態です。今や遺伝子情報の入手はかつてより割安になり、誰でも自分の遺伝子情報を得られる時代もそこまできています。

 世界的なベストセラーになった『サピエンス全史』『ホモ・デウス』(ともに河出書房新社)を書いたユヴァル・ハラリ氏によれば今や人類はますます神に近づいていくということです。遺伝子を操作して自由に人間が作れるようになるなど完全に神の領域です。ハラリ氏によれば、人間自身が自由に思うように人間が作れるようになることで、人間社会の未来は激変するといいます。新しい波に乗った人間は<ホモデウス>、いわゆる<神のヒト>になっていくというのです。そしてその波に乗った<神のヒト>は益々普通の人間とは乖離して、いわゆる<スーパー人類>のような能力を持つようになり、その他多くの人間は取り残され<無用者階級>に転落するというのです。
 実際、遺伝子が操作されて自由自在に人間が作れるようになれば、今までの人間の進化のスピードとは桁違いの進化が発生して、それが昨今のAIの発展と結びついてありえないような格差社会ができてくる、というハリル氏の警告は納得できると共に恐怖を感じます。
 現在アマゾンなどで本を購入すると次々に自分の好みの本が推奨されてきます。ネットフリックスやアマゾンなどでドラマを見ていると、次々に新しい自分好みのドラマが推奨されてきます。アップルの音楽サービスでは次々に好みの音楽を推奨されてきます。すでに現在の段階で自分自身の好みや性向はIT各社には筒抜けのようです。
 今後はこれに血圧計や興奮度などをみる体内時計のような機器が出来てきますと、自分の体の悪いところとかいいところが即座にわかるようになってくるようです。そうなれば何の薬を飲んだらいいか、どのような食事をしたらいいか、どのような行動や運動やしたらいいかわかってくるようです。人間の寿命は限りなく伸びていくでしょう。そして更には自分の長所はどこか、自分がどの道に進んだら自分の才能が開花できるか、AIに絶えず見てもらうことで、人生の方向が決めやすくなるようです。
 かようにAI全盛時代は便利で人間の暮らしを快適にしていくでしょうが、かようなAI依存を続けているうちに人間は片時もAIを離すことができなくなるようになっていくというわけです。AIは自分以上に自分のことを知ってくれていて、あらゆる知識を有していますから全てをAIに頼って行動していた方が合理的というわけです。ハラリ氏はかような未来について「人間がAIに飲み込まれていく」として、そのような将来を「人間そのものの価値が失われていく」と警鐘を鳴らしています。


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バックナンバー
19/01

ユヴァル・ハラリ氏の警告

18/12

欧州混乱から見える世界の潮流

18/11

中国の危険な挑発

18/10

米中間選挙(衰えぬトランプ人気)

18/09

輝き失った金相場

18/08

急進化する米国政治

18/07

衰えぬトランプ人気

18/06

米中対立とトランプ劇場

18/05

監視社会

18/04

イラン攻撃はあるか?

18/03

強権、独裁化の時代

18/02

新著『株の暴騰が始まった!』まえがき

18/01

イアン・ブレマーの警鐘

17/12

ビットコイン相場は終了へ

17/11

年金が大黒字

17/10

株式市場の<びっくり現象>

17/09

中国 止まらぬネット企業の勢い

17/08

好調な日本経済と外部情勢

17/07

仕事はなくなるのか?

17/06

イスラエルとサイバー技術

17/05

欧州危機は去ったか?

17/04

加速する人手不足と日本の将来

17/03

民主主義の危機

17/02

止まらない米国株の上昇

17/01

迫りくる戦争の危機

16/12

日本人と株式投資

16/11

トランプ勝利をもたらしたもの

16/10

新著『暴走する日銀相場』まえがき

16/09

AI技術者に殺到するヘッジファンド

16/08

止まらないデフレの行く末

16/07

ウーバーライゼーション

16/06

衝撃的な英国の離脱派勝利

16/05

衣食住がただ、お金のいらない世界に!?

16/04

熊本地震とヘリコプターマネー

16/03

トランプ旋風が写すもの

16/02

新著『世界経済のトレンドが変わった!』まえがき

16/01

波乱で始まった2016年

15/12

2016年の展望

15/11

中国の結婚事情

15/10

郵政上場

15/09

現れ始めた高齢化社会のひずみ

15/08

荒れた株式市場の先行きは?

15/07

異常気象の連鎖

15/06

値上げラッシュ

15/05

新刊『株、株、株! もう買うしかない』まえがき

15/04

日米同盟強化の恩恵

15/03

アベノミクス その光と影

15/02

ギリシアの悲哀

15/01

止まらない<株売却ブーム>

14/12

アベノミクス

14/11

バンザイノミクス

14/10

新刊『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(舩井勝仁との共著)まえがきより(※目次、舩井勝仁のあとがきも含む)

14/09

加速する物価高

14/08

新冷戦という脅威

14/07

新刊『株は再び急騰、国債は暴落へ』まえがき より

14/06

深刻化する人手不足

14/05

何故ドルなのか

14/04

株高は終わったのか?

14/03

ウクライナを巡る暗闘

14/02

中国ショック

14/01

ハッピー倒産ラッシュ

13/12

インフレに向かう日本

13/11

株式投資に舵を切る年金基金

13/10

金相場のたそがれ

13/09

新刊『2014年 インフレに向かう世界』まえがき より

13/08

崩壊に向かう新興国経済

13/07

ドルが復権する世界

13/06

激動前夜

13/05

株 売却ブーム

13/04

異次元の世界

13/03

日本の行く末

13/02

株バブル勃発、円は大暴落(新刊まえがき)

13/01

「アベノミクス」がもたらすもの

12/12

浜田教授のリフレ政策

12/11

円を売る時がきた!

12/10

チャイナリスク

12/09

大恐慌か超インフレだ!(新刊「あとがき」より)

12/08

中東情勢の泥沼化

12/07

食糧危機の足音

12/06

ユーロ崩壊へのカウントダウン

12/05

新刊『2013年 株式市場に答えがある』まえがき

12/04

ぶり返すユーロ危機

12/03

円安が始まった

12/02

株式投資の勧め

12/01

上昇転換した株価とその背景

11/12

大波乱の幕開け(最新著『もうこれは世界大恐慌』序章)

11/11

ギリシア救済というトリック

11/10

崩壊に向かう資本主義

11/09

欧州危機と錬金術

11/08

ユーロ崩壊

11/07

逆ニクソンショック(金本位制への回帰)

11/06

2012年、日本経済は大崩壊する!(はじめに)

11/05

スーパーマリオ

11/04

インフレの到来

11/03

今後の経済と生き方

11/02

液状化する世界

11/01

始まった食料高騰

10/12

迫りくる大増税

10/11

物価高騰に備えよ

10/10

まえがき(新著『2011年 本当の危機が始まる!』より)

10/09

中国の謀略

10/08

ニューノーマル

10/07

焼け太ったFRB

10/06

金(ゴールド)相場の映すものは?

10/05

ギリシア問題の末路

10/04

ゴールドマン・ショック

10/03

郵政改革の裏

10/02

金融問題公聴会

10/01

グーグルVS中国

09/12

新興衰退国

09/11

デフレとインフレ

09/10

円高で、為替仕組み債が破裂(破綻続出へ)

09/09

悲惨なアイスランド

09/08

不発弾(米住宅問題)が爆発するとき

09/07

秋に向け、鳴りをひそめている危機

09/06

今後の行く末は?

09/05

ゆっくり進むドル危機

09/04

上昇、やがて、壊死する株式市場

09/03

アメリカン・エキスプレスのキャンペーン

09/02

リーマンと山一證券

09/01

ゲート条項

08/12

ドバイの落日

08/11

ターミネーター


暴走する日銀相場『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/
★(株)ASK1: http://www.ask1-jp.com/

Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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