“超プロ”K氏の金融講座

このページは、舩井幸雄が当サイトの『舩井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介していた経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2021.01
コロナ ワクチン接種へ

「ワクチンは感染対策の決め手となる。市町村と連携し、接種状況などを管理するシステムを構築していくなど周到な準備を進めている」
 1月25日、菅首相の衆議院予算委員会での発言です。首相は現在全国民に必要なワクチン確保を目指していて、コロナ対策への準備に抜かりのないことを強調しました。ワクチン確保に関しては22日、ワクチン担当の河野規制改革相が6月までの全国民に行き渡る量の確保について「現時点では未定」と述べていましたが、首相が国会でかような答弁を行っている以上、現在総力を挙げて日本のワクチン確保に対しての交渉を行っているとみていいでしょう。
 現在のスケジュールですと、既に欧米では接種の始まっているファイザーのワクチンに関しては2月中旬までに日本での使用許可を出して、その後、モデルナのワクチンも使用許可を出して2月下旬から医療関係者への接種を開始して、3月下旬から65歳以上の高齢者と順を追って全国一斉にワクチン接種を拡大させていく方針です。この方針の下、国は全国に4万カ所のワクチン接種会場を確保する予定です。

●混乱するワクチン事情
 一方世界を見渡すと、コロナ感染は勢いを増している様相で、特に欧米中心に英国から始まってきた変異種による新型のコロナの感染拡大傾向が止まらない情勢です。
 英国のジョンソン首相は「英国の変異種は感染力が強い上に死亡率の上昇にも関連している」と述べて、変異種の猛威に関しての警戒を呼びかけています。
 このような情勢下、ヨーロッパ各国ではロックダウンが相次いで断行されていて、近くフランスでは3回目となる都市封鎖を発表するとみられています。また米国に目を移すと、死者が40万人を超えて、ついに第二次世界大戦で亡くなった米国人の死者数を凌駕する勢いとなっています。バイデン新大統領は米国民に対して100日間で1億回分のワクチン投与を実現すると約束しています。
 一方、世界的にみると、発展途上国中心に全くワクチン確保の目処がつかない地域が劇的に多いのが実情です。各国の事情や対応、米中の動きやオリンピックを控えた日本の現状と今後を予想してみます。
 菅政権がその政権の浮沈を賭けてコロナ対策にまい進するのも当然の流れでしょう。発足当時は高支持率を誇った菅新政権も、今回のコロナのまん延で、その対応が遅すぎたとの批判を浴び、内閣の支持率が劇的に低下しています。これでは衆院解散どころか、政権の維持にも黄信号が灯ってきそうです。菅首相は、自身が一番信頼していると思われる河野規制改革相をワクチン担当に指名して、万全の体制で危機管理を実行しようとしています。
 特に日本では全国民へのワクチン接種を急いで、3月までにはある程度の目処が付かないと東京オリンピック開催が危うくなります。オリンピック開催中止は菅政権としても絶対避けたいところでしょう。そのためには、いち早くワクチンの使用許可を出して、迅速に全国民に滞りなくワクチン接種を実行していくことが肝要です。

 ところがこのワクチン接種の拡大にも難しい問題が絡んできます。
 いざワクチンを接種させようにも、インフラが整っていません。コロナ感染の拡大で医療関係者は極めて忙しく、医療関係者にワクチン接種の業務へ回すための人員の空きがないのです。しかも昨年春、10万円の支給で全国民に行き渡るのに手こずったように、日本はデジタル化が遅れているために、全国民に遅滞なくワクチン接種を行きわたらせるのは至難の技です。都市部のような交通や移動が便利な地域であれば、何とかなるかもしれませんが、山間部や過疎地帯ではワクチン自体を運ぶことも難しく、ワクチンを保管するのも極めて困難です。特にいち早く許可されたファイザー製のワクチンは、マイナス70度で保管する必要があり、これはなかなか難しい作業です。そのようなマイナス70度で保管するだけの設備を持っている病院や施設が少ないわけです。
 またそれ以上に厄介なのが、ワクチンを嫌い、接種を拒否する人が極めて多いという現実です。今回のコロナのワクチンは異様な速さで許可されたわけです。一般的に今まではワクチンの安全性を確かめるには最低でも数年、長ければ10年以上かかると言われてきました。ところが今回のワクチンは、コロナの爆発的拡大という緊急性もあるので、極めて短時間で許可されてきたという事情もあります。人々が副作用を恐れるのも当然かもしれません。特に最近はソーシャルネットワークを使って様々な情報が発信されていますので、ワクチンに懐疑的な考えを強く持っている人も多いわけです。それらの人が進んでワクチン接種を行うとも考えづらいところです。国が人々にワクチン接種を強制するわけにもいかないでしょう。

●ワクチン接種が始まっている米国の現状は?
 現にワクチン接種が始まっている米国において、この接種拒否の流れに米国政府は苦慮しています。最初に接種することになる医療関係者や消防士なども、一部の人々は拒否反応を示しています。「自分たちは実験台では? 何故真っ先に投与されなくてはならないのか」との悲痛な声が上がっているわけです。米国での調査によると共和党員や黒人、農村部を中心に27%の人々がワクチン接種を望んでいないというのです。ワクチン接種に前向きな人は米国で64%、フランスで54%と伝えられています。このような傾向は世界共通でしょう。かように如何に嫌がる人にワクチンを接種してもらうように仕向けて、尚かつ公平にワクチン接種を実行していくか、という問題を解決するのは極めて難題と言えるわけです。
 米国政府はワクチン接種を促すために、くじ引きで景品を提供したり、ピザパーティー開催などを提案しているようですが、そんなことでワクチンを嫌う人々はワクチン接種に動かないでしょう。ついには10ドルのギフト券やアイパットが当たる抽選券、さらには牧師まで駆り出して説得に当たっているという笑話のような現実があるのです。

●世界のワクチンの現実
 私などは新しい技術に肯定的ですし、今回、ファイザーやモデルナのワクチンで実証されつつあるメッセンジャーRNAという技術は人類を変えていく技術であって、かような新しい波に乗り遅れると今後出てくるであろう様々な新種の脅威に対して対応できなくなる恐れもあると感じています。しかしながら多くの人は未知のものを恐れますし、かようなワクチン拒否の姿勢が強いのも現実だと思います。実際、今回のファイザーのワクチンでは7万人を超える人々で臨床治験が行われ、その有効性は95%と診断されています。米疾病対策センター(CDC)によれば深刻な副作用が生じる可能性は0.001%ということです。
 たとえこのような圧倒的な治験結果があって、ワクチンが認可された事実があったとしても、現実にワクチン接種に対して否定的な人たちが膨大に存在していますので、様々な誇張された情報が今後、あらゆる場面で飛び交っていくのは必至でしょう。今後、数千万人から数億人とワクチン接種を行っていく過程で、偶発的な死者が出てくるのはやむを得ません。たとえワクチンと関係のない死亡原因であったとしても、ソーシャルメディアを通じてワクチンは危険という噂があっという間に広がってしまうのが今の世界です。偶発的な死であってもワクチン接種後に死者が出た場合は、ワクチンのせいだと関連付けられて報道されるリスクが高いでしょう。
 かような懸念とは全く別次元の問題もあります。世界的なワクチン不足です。ワクチンが欲しくとも手に入らないという切実な問題がこれから世界各地で発生する様相です。単純に考えればわかりますが、日本のような先進国でさえ、保管が難しいマイナス70度という保管体制を発展途上国、特にアフリカのような暑い地域において可能とはとても思えません。現在、世界で最も信頼性があるとみられているのがファイザーのワクチンとモデルナのワクチンですが、この二つのワクチンは既に予約だけで完売状態です。日本政府もこの2社をはじめとするワクチンの確保に奔走していますが、ファイザーのワクチンですと、2021年に生産を計画しているワクチンの総量の80%は予約生産分です。
 さらにモデルナのワクチンとなると、2021年の生産予定分のほぼ100%が予約されている状態です。これらを抑えているのが、オーストラリア、カナダ、日本、アメリカ、EU各国です。これらの国では国民全員に行き渡るのに十分な量が予約されているわけです、もちろんこれらの国でワクチンが余るような事態となれば、その余ったワクチンは他国に寄与されるかもしれません。しかしこれらの国では国民全員にワクチンが行き届くまでは、他国にワクチンを譲るというような行為に出るとは思えません。
 このような富裕な国の人々だけがワクチン接種を受けられるという現実に対して、世界中で批判の声も強まっています。発展途上国ではワクチンを購入する資金もありません。ワクチン確保を世界中で公平にできるように作られた組織が<COVAX>です。世界保健機構(WHO)をはじめとしてワクチンは世界中に公平に配分されるべきだとの声もありますが、このCOVAXにおいても資金不足からワクチン確保は難しい情勢です。
 この合間を縫って、中国やロシアは自国が生産したワクチンを世界各国に供給しようとしています。ただ中国やロシアのワクチンは正式な臨床治験を通過して安全性を確保されたものがどうか疑問視されています。それでも発展途上国ではそんな贅沢を言っていられず、中国やロシアのワクチンに頼っているのが実情です。ロシアのワクチン<スプートニクV>は中南米地域に浸透中です。これらの国々はベネズエラ、アルゼンチン、パラグアイ、ボリビアなど左派指導者が政権を握る米国と距離を置く国々です。一方、東南アジア各国は中国のワクチンに頼る構図です。
 かように世界のワクチンの現実をみてきましたが、今後、われわれが最も注目すべきはイスラエルの実情です。
 イスラエルは富裕国であり、ワクチン確保もいち早く達成、既にイスラエルの人口923万人のうち268万人が1回目の接種を受け、二回目の接種を受けた人はそのうち124万人となっています。驚くべきスピードで全国民に接種を実施してコロナ危機を乗り切ろうとする国家の姿勢に、常に危機感を有しているイスラエルという国家の凄みを感じます。
 結果、二回目を接種した12万8000人の追跡調査では、感染した人わずか20人ということで、ほぼコロナ感染を撲滅させた状況が生じているのです。この状況は、先進国を中心に始まる、今後多少の時間を置いた世界の未来です。日本でも2月末から接種が始まれば、当然紆余屈折はあるでしょうが、最終的にはほぼ全国民にワクチン接種が終了する時期が訪れるでしょう。イスラエルでコロナ撲滅が成し遂げられれば、日本でも時間の問題で、コロナが撲滅となっていきます。イスラエルの情勢は更に今後2、3カ月すればはっきりと追加的な詳細がわかってくるでしょう。コロナの拡大やワクチンへの不安は、今が最も大きい時期だと思います。報道されつつあるイスラエルの情勢をみると、東京オリンピックの開催や日本でのコロナ撲滅、そして世界でのコロナ撲滅の日も見えてきたように思えます。

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暴走する日銀相場『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/
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Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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