“超プロ”K氏の金融講座

このページは、舩井幸雄が当サイトの『舩井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介していた経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2025.05
コメ問題の次

 コメ問題が日本中を揺らしています。新しく農水相に就任した小泉氏はコメの価格を現在の2分の1の5キロ当たり2000円の小売価格にすると公言、退路を断って難題に挑もうとしています。
 このコメの問題は現在の日本全体で最も注目を集めている関心事です。今の日本全体のムードをみているとコメの高騰は極めて特殊な一時的な出来事に過ぎず、これは政治や行政の力で何とか収まることができるはず、という風に感じていると思います。
 参議院選挙を前にして石破内閣も必死でコメ問題に取り組んでいます。しかし朝倉は今回のコメ問題は日本の劇的な変化を示す一つの典型的な象徴に過ぎないと思っています。
 何の象徴でしょうか?

●コメ問題に象徴される今後の日本
 それは、日本の全般的なインフレ加速を告げる一つの象徴的な事象と捉えるべきと思うのです。故舩井幸雄先生は「世の中の変化をみるにはびっくり現象を観察すればいい」と述べていました。
 まさにコメの価格が1年で倍になるということは日本の根本的な変化を示すびっくり現象だと思います。そして常にびっくり現象の中にはその背後に真実が隠されているのです。その真実こそ、「日本の本格的なインフレ転換」に他ならないでしょう。コメに続くものは何でしょうか? 今回、その一つの例として介護の問題に迫ってみます。

 コメ農家に従事している平均年齢は70歳を超えています。70歳以上の従事者が6割超に達しているのです。これでは10年後は80歳を超えるわけであり、かような産業が続くわけもありません。当然高齢化から労働力不足が起こり、それが供給不足を引き起こすわけで、そのような走りが現在のコメ価格急騰の主因でしょう。このような労働力不足の問題は日本全体を見渡せばわかりますが、何も農業だけの問題でなく、漁業や建設業や介護や医療など様々な分野に広がっています。
 例えば介護に従事する人は日本全体で2023年212万6千人と2000年以来初めて減少に転じたのです。
 考えてみればわかりますが、日本は益々高齢化が進みます。特にここで団塊の世代の全員が75歳超となります。こうなれば介護職員が足りなくなるのは目に見えているはずです。実際ここにきて要介護認定者は爆発的に増加しているわけです。ところが介護職員はついに減少に至りました。もともと介護の仕事は他業種に比べて給与が低い、その上重労働であると言われてきました。若い人も介護職を敬遠しているのが実体です。ところが介護職員は2025年の段階で240万人必要ということですが、現在25万人足りない状況です。更に高齢化が進み2040年には272万人の介護職員が必要とのことですが、これが補充できるとは思えないのです。日本は人口減ですし、海外からの労働者も日本の労働力不足を補えるほど大きく増えるわけではないからです。結果、現在の試算ですと介護職員は2040年の段階で60万人も不足すると見積もられているのです。
 介護に従事する職員は増えず、足元で離職者が増え続けています。結果的に介護職員はどこでも不足状態となってきているわけで、現場は益々重労働となっていくでしょう。そうなれば益々介護現場で働く人が去っていくかもしれません。
 そもそも介護認定者が爆発的に増える一方で介護従事者が減り始めたわけですから、当然のことながら現場が今までのように回るとは思えません。今までのままのペースでやろうとすれば職員一人当たりの仕事は爆発的に増えてしまいます。それでは現場が持ちません。となると勢い、現場の仕事を減らすしかないでしょう。介護ロボットなどが本格的に実用化されればいいですが、とてもそこまでいきません。結果現在の状態で仕事を続ければ一人当たりのケア数は増える一方となり、それに職場全体が対応できるわけもなく、事故やトラブルが発生してくる可能性が高いわけです。
 こうなってくると最初に見捨てられるのは軽度者、予防サービスなどです。これもいずれ限界がきて重度者向けサービスも足りない状況になっていくでしょう。必然的に保険料が上昇するでしょうし、同時に介護の利用者の負担が大きく増加することになると思います。このような現実がある日突如訪れて、まさにコメの価格が1年で倍になったように突如、介護が受けられない、介護料金が急騰するという事態が起きかねません。
 介護料金は国が決めているからそんなことは起きないと思うかもしれません。しかしながら公的な介護は今のままで行けば確実に人手不足で行き詰まってしまうでしょう。今でも一般的な有料老人ホームは月額15万円〜25万円となっていますが、財閥系の高級施設では月額50万円を超えるところも出てきているのです。このような高級な介護施設であれば介護職員に相応の賃金を支払えるかもしれません。一方で公的な介護施設では給与も上がらないとなれば益々そこで働く人が去っていくでしょう。
 こう考えると介護も人材不足から将来的には二極化が避けられないように思えるのです。コメの高騰のごとく介護の費用がどこかでいきなり急騰してしまって、結果的に満足する介護を受けられる人はそれ相応の資金力のある人に限られるようになるかもしれません。日本のいいところとして誰でも介護が受けられる、誰でも医療が受けられるという世界に誇れる点があったのですが、ここに来ての少子高齢化の加速と深刻な労働力不足によって、そのような安定した介護システムが続けられるとは思えないのです。最終的には介護を頼んでも介護施設に空きがなく順番待ちとなり、その順番待ちが数カ月から数年になっていき、結局資金のある人だけは民間の高い介護サービスを受けることとなるのですが、普通の人の場合は介護施設に入ることができずやむなく家族が家で介護するという流れになると思います。
 このような現実は考えたくないものですが、コメの急騰を見るにつれ、このコメ問題の根っ子にあるものは極めて深刻であり、今後日本で様々な深刻な問題が顕在化してくるとしか思えないのです。

★朝倉慶さんの最新刊『トランプ・インフレが世界を襲う』(2024年12月 ビジネス社)大好評発売中!

■□-----------------------------------------------------------------□■
★「ASAKURA経済セミナー」
音声ダウンロード、CD、DVDを販売中!
 ご自宅にいながらセミナーを受講。
 お好きなときに、お好きな場所でお聴きいただけます。
  ●収録時間 約3時間
    ●価 格
   【DVD版】16,000円(税込)
   【CD版】13,000円(税込)
   【音声ダウンロード版】13,000円(税込)
 ※音声ダウンロードはEメールでお届けするので、一番早くお届けできます◆
   →https://www.ask1-jp.com/shopping/study/seminar_media.html

★ASAKURA経済セミナー2025年 !★
【東京】
 7月12日(土)・9月20日(土)・11月15日(土)

   → https://www.ask1-jp.com/shopping/seminar/live-tokyo.html

※参加者全員に復習用の動画をお届けいたしますので、当日参加が難しくても大丈夫です。

復習用動画は次のセミナー前日まで視聴可能です。
■□-----------------------------------------------------------------□■


バックナンバー


暴走する日銀相場『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/
★(株)ASK1: http://www.ask1-jp.com/

Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/
★(株)ASK1: http://www.ask1-jp.com/

健康の超プロ4名が語った「じぶんでつくる健康未来図」の動画をプレゼント 数霊REIWA公式サイト 佐野浩一 本物研究所 本物研究所Next C nano(ネクストシーナノ) 成功塾説法 舩井幸雄動画プレゼント 高島康司先生の「日本と世界の経済、金融を大予測」 メールマガジン登録 舩井メールクラブ 佐野浩一note