ヤスのちょっとスピリチュアルな世界情勢予測
このページは、社会分析アナリストで著述家のヤス先生こと高島康司さんによるコラムページです。
アメリカ在住経験もあることから、アメリカ文化を知り、英語を自由に使いこなせるのが強みでもあるヤス先生は、世界中の情報を積極的に収集し、バランスのとれた分析、予測をされています。
スピリチュアルなことも上手く取り入れる柔軟な感性で、ヤス先生が混迷する今後の日本、そして世界の情勢を予測していきます。
イランとアメリカの間で、二週間の停戦合意が成立したようだ。しかし、今後どうなるかまだ分からない。停戦合意がすでに破られたとの情報もある、泥沼化する可能性はまだ高い。
しかしイラン戦争を、単なる国際政治上の出来事として見るだけでは、もはや不十分だ。
この攻撃は、人類の深層に二千年以上にわたって刻み込まれてきた「終末論」という集合無意識の地雷原に、直撃弾を打ち込んだのである。
イスラエル・ロビーと福音派は融合している。しかし、その融合の最も危険な側面は、まだ論じられていない。それは、「終末論が政治権力と完全に融合した時、終末論が自己実現するメカニズム」が作動することだ。
●三つの集合無意識が共有する「終末のコード」
まず、三つの一神教が共有する「終末論」の構造を整理しておく必要がある。
キリスト教の終末論では、「携挙(ラプチャー)」と「大患難時代」、そして「ハルマゲドン」という三段階が描かれている。携挙とは、真のキリスト教信者が突然天に引き上げられる出来事であり、その後、地上には7年間の大患難時代が訪れる。この期間に「666」の刻印を持つ「獣(反キリスト)」が世界を支配し、真のクリスチャンは迫害される。そして最後に、ハルマゲドンの戦いでキリストが再臨し、悪の勢力を滅ぼす。
特にアメリカの福音派の間で広く信じられているのは「前千年王国説」であり、この立場では、イスラエルがその土地を完全に取り戻し、エルサレムに第三神殿が再建されることが、キリスト再臨の前提条件とされている。つまり、イスラエルの「完全勝利」を積極的に支援することが、キリスト再臨を早めることだと信じられている。
ユダヤ教の終末論では、「メシアの到来」と「ゴグとマゴグの戦い」が中心的概念だ。エゼキエル書三八章から三九章には、終末の時に「ゴグ」という名の王が率いる多国籍連合軍がイスラエルを攻撃するが、神が直接介入してイスラエルを救い、メシアの時代が到来するという物語が記されている。超正統派の一部は、イランをこの「ゴグの連合軍」の構成員として具体的に同定している。
イスラム教の終末論では、スンニ派とシーア派で描写は異なるが、どちらも「マフディーの到来」という概念を共有している。シーア派では、第十二代イマームのムハンマド・アル=マフディーが「隠れイマーム」として現世に存在し、終末の時に姿を現して世界を正義で満たすとされている。イランのシーア派神学では、この「隠れイマームの再臨」を促進するためには、世界に大きな混乱をもたらすことが必要だという思想が存在する。
三つの終末論は、それぞれ異なる「主役」と「結末」を持っている。しかし、それらはすべて「中東での大規模な戦争」を終末の「トリガー」として共有している。そして、それぞれの側が自分たちの側の「勝利」を信じている。
●三つの集合無意識の「化学反応」、なぜ戦争が「加速」するのか
2026年のイランへの攻撃は、この三つの終末論を同時に活性化させた。しかし、「活性化した」という描写では、その危険性の実態を捉えられない。より正確に言えば、攻撃は三つの集合無意識が互いを増幅させる「連鎖核融合」を引き起こしたのだ。
まずキリスト教の福音派の反応を見よ。彼らにとってこれはハルマゲドンの前触れだ。イスラエルとペルシャ(イラン)の対立は、エゼキエル書が預言した通りだ。多くの福音派の指導者たちは、イランへの攻撃を「神の計画の進展」として説教台から語った。SNSでは「Rapture」「EndTimes」というハッシュタグが溢れかえった。
しかし、この「解釈」は単なる受動的な感想ではなかった。彼らの信仰体系においては、「神の計画の進展を助ける」ことが信仰者の義務だ。したがって、著名な福音派の牧師、ジョン・ヘイジーは即座に声明を発した。「イスラエルへの支持を緩めるな。今こそ圧力をかける時だ」。数千万人の信者が、その号令に従ってワシントンへのメールと電話を殺到させた。これが議会の対イスラエル支援継続決議を加速させる。攻撃への「宗教的承認」が、政治的圧力へと直接変換された瞬間だった。
ユダヤ教の超正統派の一部にとって、これはゴグとマゴグの戦いの始まりだ。イスラエルの安全のためには、イランの核施設を完全に無力化することが「神の命令」だという確信が広がった。「神がイスラエルを守る」という信仰は、時として「神がイスラエルの軍事行動を祝福する」という結論に行き着く。イスラエル国内でこの確信を持つ勢力は、ネタニヤフ政権を「より積極的な作戦」へと押し込んだ。人質交渉の場で外交官が停戦を模索している最中に、宗教右派の閣僚が「停戦は神への背信だ」と公言した。外交的出口が宗教的に封鎖された瞬間だ。
イランのシーア派神学の観点からすれば、この攻撃は「大いなる試練の時」の到来を意味する。「隠れイマーム」の再臨を信じる者たちにとって、イスラエルやアメリカとの戦争は、終末の時代への「産みの苦しみ」として解釈される。「殉教」は恐れるものではなく、最高の栄誉なのだ。イランの一部の革命防衛隊幹部は「この攻撃は我々を弱らせるどころか、神の計画の中に我々を位置づけた」と言明した。通常の軍事的合理性なら「損害を最小限に」と判断する局面で、「殉教的応戦」という選択肢が真剣に検討されるようになる。
この三者の「化学反応」の最も危険な側面は、それぞれが相手の行動を「自らの終末論の証拠」として読むことにある。
福音派がイスラエル支持を強化すれば、イランの過激派は「キリスト教徒の十字軍が来た」と解釈する。これがイランの終末論的過激派を活性化させる。イランの過激派が「殉教的応戦」を試みれば、ユダヤ教の超正統派は「ゴグとマゴグの連合軍の攻撃が始まった」と解釈する。ユダヤ教超正統派の「神がイスラエルを守る」という確信が強まれば、福音派は「預言通りに進んでいる」とさらなる確信を得る。
三者の間に外交的妥協の余地はない。なぜなら、三者のいずれにとっても「妥協」は「神の計画への背信」として映るからだ。これが終末論的連鎖の構造的特徴である。
●「グレイゾーンの絶滅」、終末論が生む二元的世界観とその政治的帰結
この化学反応をより深く理解するために、2014年に突然と現れ、2021年頃まで中東全域を混乱させたテロ組織、イスラム国(ISIS)が機関誌「ダービク」で明示した概念を参照する必要がある。ISISは「グレイゾーンの絶滅(Extinction of the Grayzone)」という概念を提唱した。「グレイゾーン」とは、ISISとも西洋とも一線を画しながら中立的立場をとるムスリムの存在領域を指す。ISISはこの中間地帯を存在してはならないものとして攻撃対象とした。終末論的な最終戦争の文脈において、中立という立場はそれ自体が敵への加担として定義される。
この「グレイゾーンの絶滅」という論理は、ISISに固有のものではない。それは終末論的思考全般に内在する構造だ。
キリスト教の終末論においても、「ゆるいクリスチャン」は破滅する。ヨハネの黙示録三章一六節「あなたは冷たくもなく熱くもなく、中ぬるであるから、わたしはあなたをわたしの口から吐き出そう」。ユダヤ教の超正統派においても、終末の戦争において「中立なユダヤ人」は背教者として扱われる傾向がある。そしてシーア派過激派においても、「殉教を拒否する者」は信仰の弱い者として軽蔑される。
この三つの終末論が同時に「グレイゾーンを絶滅させる」方向に作動するとき、世界は急速に「彼我の境界」によって切断される。外交官が停戦交渉の場に座れる「グレイゾーン」が消滅し始める。「神の計画に反する」外交的妥協を拒否するという行動パターンが、三者に共通して現れるのだ。
終末論的確信において暴力への傾向を生み出すためには、終末論的信仰が、出来事の結果は個人の選択と行動に依存するという近代ヒューマニズムの信念と結合しなければならない。「世界に出て、それを変えることができる」というヒューマニストの信念は、テロリストたちによっても極めて真剣に受け取られる。
ここが核心だ。「神の計画は変えられない(宿命論)」と「私たちは神の計画を早める行動をとるべきだ(能動主義)」という二つの命題が、終末論の中で共存している。これが「終末を手伝う」という行動パターンを生み出す。単なる待機ではなく、積極的に終末を実現しようとする意志が発生する。
●自己実現予言のメカニズムが動き始める、五段階の連鎖
社会学者ロバート・マートンが提唱した「自己実現予言(Self-fulfilling Prophecy)」は、ここで最も危険な形をとって現れる。マートンは1948年の著書「社会理論と社会構造」でこの概念を定式化した。その核心は「W・I・トーマスの定理」にある。「人々がある状況を真実として定義するならば、その状況は結果において真実となる」。銀行の倒産が噂されれば、人々が預金を引き出しに走り、実際に銀行が倒産する。噂が現実を作り出す。
マートンは自己実現予言の連鎖を断ち切る条件についてもこう述べた。「この悲劇的でしばしば悪循環的な自己実現予言の連鎖は、断ち切ることができる。連鎖を動かした最初の状況の定義が放棄されなければならない。元の前提が問い直され、状況の新しい定義が導入されたときにのみ、その後の出来事の流れが前提の嘘を暴く。そのときにのみ、信念はもはや現実を生み出さなくなる」。
これが最も重要な点だ。連鎖を止めるためには「最初の前提の放棄」が必要だ。しかし終末論においては、その「最初の前提」つまり「終末は来る、そして私はその徴候を見ている」という信念は、信仰の核心と同一視されている。これを放棄することは、信仰そのものを捨てることを意味する。したがって、外部からの「理性的な説得」は原理的に効果をもたない。
終末論が引き起こす自己実現の連鎖は、以下の五段階を経て進行する。
・第一段階:解釈の固定
イランへの攻撃という現実の出来事が発生すると、三つの終末論はそれぞれ固有の「解釈コード」によってこの出来事を吸収する。ある意味でこの段階は既に「過去」だ。ISISがダービクを占領したとき、イスラム国の支持者たちは「30カ国が「ローマ」の連合軍を形成してダービクに集まった時、最終の戦いが始まる」と計算し始めた。トルコ議会が対IS軍事行動を承認した翌日、彼らのSNSは「トルコの参戦によって異教徒の北シリア侵攻が可能になる」と歓呼した。同じメカニズムが2026年に三つの宗教で同時に起動したのだ。
・第二段階:行動の強制
「終末の徴候を見た」という確信は、確認後に平静に座っていることを許さない。それは行動を強制する。終末論的信仰が暴力と恐怖への傾向を生み出すためには、出来事の結果は個人の選択と行動に依存するという信念と結合しなければならない。終末論的思考において、「敵」は単に罰せられるべき存在ではなく、絶滅されなければならない存在となる。なぜなら最高の正義のために行動しているからだ。暴力は癒しとなり、贖罪となる。
ここで「義務としての暴力」が生まれる。通常の戦争では「敵を倒す」ことが目的だが、終末論的戦争では「神の計画を完成させる」ことが目的だ。この差異は、戦闘行動の形態を根本から変える。停戦を拒否し、和平交渉を破壊し、最大限の損害を相手に与えることが「神への奉仕」となる。
・第三段階:証拠の循環
自己実現予言が最も強力に機能するのは、「どんな出来事も予言の証拠として解釈できる」封鎖された解釈システムが完成した時だ。「終末論的想像力の中では、不都合な事実が栄光ある終末への行進を妨げることはほとんどない」と安全保障アナリストのウィル・マッキャンツは指摘する。
これは「反証不可能性」という認識論的特徴だ。停戦が成立すれば「神が介入して和解をもたらした」と解釈される。攻撃が失敗すれば「殉教者の血が神の計画を前進させた」と解釈される。戦争が長引けば「患難の時代が深化している証拠だ」と解釈される。どの出来事も終末論の「証拠」となる。この解釈の循環は、外部からの情報によって壊れない。むしろ、矛盾する情報は「悪魔の欺き」として排除される。
・第四段階:相互活性化の加速
三つの終末論が同時に「証拠収集モード」に入ると、互いの行動が互いの証拠を生産し続けるという加速装置が作動する。
イスラム国の事例で確認されたことだが、「極端な暴力、政治的混乱は終末論的枠組みを招き入れる。より安定した時代では生じないような終末論が、混乱の中で花開く。それはまた、終末論を利用して予言を実現しようとするグループが混乱を利用する機会をも提供する」。
2026年の文脈ではこれが三方向で同時に起きている。福音派の「イスラエル無条件支持」がイランの過激派を刺激し、イランの「殉教的応戦」がユダヤ教超正統派の「ゴーグとマゴーグが来た」という確信を強化し、その確信が福音派に「預言通りに進んでいる」という証拠を与える。この三角形の連鎖は、各辺が他の二辺を強化するフィードバック・ループを形成している。
ここで一つの致命的問いが浮上する。このフィードバック・ループの中に、制動装置はあるのか。
通常の政治的紛争には、双方の「疲弊」という制動装置がある。コストが許容限度を超えた時、指導者は妥協を選ぶ。しかし終末論的紛争においては、この制動装置が機能しない。「疲弊」は「試練」として解釈され、「神への服従の証明」として歓迎される。コストの増大は、妥協への誘因ではなく、より深い信仰への号令となる。
・第五段階:臨界点への到達
連鎖の最終段階は、理性的な制御が及ばない「臨界点」への到達だ。歴史においてこの段階に最も接近した事例として、ブルッキングス研究所の上級研究員ウィリアム・マッキャンツが指摘したISISのシリアの町、ダービク占領がある。「ダービクは軍事的に重要ではない」と反体制派指導者が述べたにもかかわらず、イスラム国の戦闘員たちは終末の最終戦争がそこで起きると信じていたため、この村を死守した。彼らは預言を実現しようとして、軍事的合理性と無関係の行動をとった。
これが五段階の最も危険な帰結だ。通常の戦略的合理性によっては説明できない、そして予測できない行動が生まれる。
●核の抑止力はこの連鎖に対して機能するのか
核の抑止力は「相互確証破壊(MAD)」という論理に基づいている。「攻撃すれば自国も滅びる」という恐怖が、相手の攻撃を思いとどまらせる。核抑止論は合理的行為者という前提に依存している。どんな核攻撃も自滅的な反撃を保証し、侵攻のコストがいかなる利益をも超えることを前提とする。核兵器はもはや戦場での使用手段ではなく心理的支配の道具となり、軍事ドクトリンはいかなる合理的行為者も生き残ることのできない戦争を冒険するリスクを取らないという前提を中心に据えた。
しかし、終末論的確信を持った指導者に対して、MADは機能しない。三つの理由がある。
第一の理由。「死を望む行為者」にはMADの脅しは届かない。核戦略家ハーマン・カーンは一九六二年に指摘した。「われわれは狂人さえも抑止したい」。しかしカーンは「不合理性は程度の問題だ」という結論に安堵を見出した。核抑止のレベルを高めることで、「不合理な」相手にも「注意が必要だ」という感覚を与えることができるかもしれない、と。しかし、これは終末論的確信を持った指導者には当てはまらない。「自国が核攻撃によって滅びることが神の計画の成就だ」と信じる指導者には、抑止のレベルを高めても意味をなさない。
第二の理由。MAD理論は行為者が合理的であり、コストと便益を考慮して決断を下すという前提に依拠している。もし今日の政治情勢において不合理な行為者が一人でも現れるならば、MADが依存する均衡は崩れ、全面的な核戦争が引き起こされかねない。
第三の理由。これが最も見逃されてきた点だが、終末論的指導者にとって「核の使用」は敗北のシナリオではない可能性がある。「世界は終わる。その終わりにおいて私の側が正しかったことが証明される」という確信の中では、核戦争は「最終的勝利への道」として解釈されうる。イランの一部のシーア派神学者は、「マフディーの帰還の前には、この世界は大きな混乱に包まれる」という神学的命題から、「大混乱をもたらすことが神への奉仕だ」という結論を導いた。核攻撃は最大の「混乱」だ。
「もし安定した民主主義国家でさえ危険なほど不適切な指導者を選出しうるなら、核抑止は長期的に持続不可能だ。核兵器を考える時、恐怖や戦慄を感じる必要はない。ただ現実的であることが必要であり、行動することが必要だ」とウォード・ウィルソンは論じる。
これは2026年の現在において、最も切実な警告だ。核時代が始まって以来、人類が直面したことのない種類の問題がここにある。冷戦時代のソ連も、中国も、「自国の存続」を最優先に考える合理的な行動者だった。
しかし、終末論的な確信を持った核保有国の指導者は、異なる論理で動く。
テック・ライトだが、彼らのアルゴリズムは、この問題に対してどのような答えを持っているのか。おそらく、答えを持っていない。なぜなら、このような「非合理な行動者」の存在は、彼らのモデルの前提の外にあるからだ。パランティアのアルゴリズムは「生存本能に基づいて行動する人間」を前提としている。「死を恐れずに突撃する人間」の行動パターンは、そのモデルには記述されていない。
●SNSとAIが終末論的連鎖に与える「乗数効果」
2026年の終末論的連鎖が、過去のいかなる類似事例とも根本的に異なる点がある。SNSとAIによる「乗数効果」の存在だ。
ISISがダービク神話を利用して戦闘員を募集したとき、彼らはソーシャルメディアを通じて世界中にそのメッセージを拡散させた。ニューヨーク・タイムズやジャーナリストのユルゲン・トーデンヘーファーによるイスラム国に参加したムスリムへのインタビューや、グレアム・ウッドによるイスラム国支持者へのインタビューは、「終末論的期待」が参加の強力な動機となっていることを見出した。しかし2014年当時のSNSは、2026年のそれとは比較にならないほど原始的だった。
現在、生成AIは終末論的コンテンツを工業的規模で生産できる。特定の聖書の節や預言書の一節と、現在の地政学的出来事とを組み合わせ、「預言の成就の証拠」を大量生成することが可能だ。これらのコンテンツはアルゴリズムによって「類似の信念を持つユーザー」に優先的に配信される。終末論的信念を持つユーザーには、終末論的コンテンツがより多く届く。信念はより強固になる。強固になった信念は、より積極的な行動を生み出す。
三つの宗教の終末論的コミュニティは、それぞれが「自らの終末論的エコーチェンバー」の中に閉じこもりながら、互いの行動を「終末の証拠」として解釈し続けている。この構造は、2026年以前には存在しなかった。
●終末論が現代政治に与える具体的影響
終末論的確信が現代政治に与える具体的な影響を、いくつかの事例で確認しておく。
2003年のイラク戦争。ジョージ・W・ブッシュは、この戦争を「善と悪の戦い」として語った。彼の信仰における「善と悪の最終決戦」というイメージが、政策判断に影響を与えた可能性は否定できない。少なくとも、終末論的な世界観を持つ彼の支持者たちは、この戦争を「神の計画の一部」として支持した。
イスラエルの入植政策。ヨルダン川西岸への入植を推進する超正統派の信者たちにとって、「聖書が約束した土地(エレツ・イスラエル)を取り戻す」ことは宗教的義務だ。国際法や外交的解決よりも、神の命令が優先される。この信仰に基づく行動が、中東和平プロセスを繰り返し頓挫させてきた。
イランの核開発。イランのアフマディネジャド前大統領は、「隠れイマームの再臨」を信じることを公言し、イランの核開発をその再臨を早めるための手段として位置づけていたとされている。「世界の終わりを早めることが神への奉仕だ」という信仰と核技術が結びつく時、通常の抑止論理は崩壊する。
これらは過去の事例だ。しかし、2026年の現在、これらの力は倍加している。SNSによって終末論的確信は瞬時に増幅される。AIによって偽情報が大規模に生産される。そしてイランへの攻撃という具体的な出来事が、三つの終末論を同時に活性化させている。五段階の連鎖が、かつてない速度で動いている。
●日本が直面する「集合無意識の外側」という危険
日本はこの三つの一神教の集合無意識の「外側」にいる。日本には、終末論の伝統がない。「ハルマゲドン」も「ゴグとマゴグ」も「マフディー」も、日本人の集合無意識には刻まれていない。
これは一見、安全に見える。しかし実際は逆だ。
終末論的熱狂の中にいる人々は、「終末の意味を理解しない者」を最も危険な障害として扱う傾向がある。彼らにとって、「神の計画」を理解しない日本のような国は、「悪の側に立っている」か「何も理解していない愚か者」のどちらかだ。
さらに致命的なのは、日本がこの終末論的連鎖の「結果」を受け取る立場に置かれていることだ。日本はエネルギーの九割以上を中東に依存している。ホルムズ海峡が封鎖されれば、日本経済は数週間で機能不全に陥る。しかし、ホルムズ海峡の運命を決めるのは、日本の合理的な外交ではなく、ペルシャ湾を神の計画の舞台と見なす終末論的確信を持った人々の行動かもしれない。
日本はこの終末論に対して、何の免疫も持っていない。そして何より、この問題を「宗教的狂信者の問題」として他人事に考える傾向が、日本のエリート層には根強くある。
しかしそれは誤りだ。終末論は「狂信者の問題」ではない。それは、西洋文明とイスラム文明の「オペレーティング・システム」に深く書き込まれた、消去不可能なコードなのだ。そして今、そのコードが同時に三か所で、かつてない速度で実行されている。
●希望はあるのか、「別の物語」という唯一の対抗手段
しかし、絶望だけを語ることはこの記事の目的ではない。終末論の自己実現連鎖を止める力は、存在する。それは「別の物語」だ。
マートンが示したように、自己実現予言の連鎖を断ち切るためには「最初の定義の変更」が必要だ。「中東の戦争は終末の前触れではなく、解決可能な政治的問題だ」という物語。「現在の危機は神の計画の成就ではなく、人間の失政の結果だ」という物語。「混乱は神への奉仕ではなく、人間の苦しみを増やすだけだ」という物語。
日本はこの「別の物語」を提供できる立場にいる。一神教の終末論に囚われていないからこそ、日本は「この世界の終わりを欲していない存在」として、独自の役割を果たせる可能性がある。仏教の「三世常住」という概念は、「この世界は終わるが、その終わりは神の計画ではなく、人間の選択によって変えられる」という思想的基盤を提供できる。それは終末論的「宿命」への対抗言語でありうる。
しかし、それが終末論にはまり込んだ人々の心に、どのように届ければいいのか分からない。しかし、とりあえず我々は終末論のメンタリテイーに影響されないことが重要だろう。
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社会分析アナリスト、著述家、コンサルタント。
異言語コミュニケーションのセミナーを主宰。ビジネス書、ならびに語学書を多数発表。実践的英語力が身につく書籍として好評を得ている。現在ブログ「ヤスの備忘録 歴史と予知、哲学のあいだ」を運営。さまざまなシンクタンクの予測情報のみならず、予言などのイレギュラーな方法などにも注目し、社会変動のタイムスケジュールを解析。その分析力は他に類を見ない。
著書は、『「支配−被支配の従来型経済システム」の完全放棄で 日本はこう変わる』(2011年1月 ヒカルランド刊)、『コルマンインデックス後 私たちの運命を決める 近未来サイクル』
(2012年2月 徳間書店刊)、『日本、残された方向と選択』
(2013年3月 ヴォイス刊)他多数。
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