“超プロ”K氏の金融講座

このページは、船井幸雄が当サイトの『船井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介している経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2010.09
中国の謀略

 ついに尖閣諸島問題で、中国が猛然と日本に向かって牙を向きはじめました。問題の漁船は日本の領海内で違法の操業した上に故意に巡視船にぶつかってくるという不法行為に及んでいました。
 当然のことながら船長を公務執行妨害で逮捕拘留としていたわけですが、日本政府は中国政府の強い圧力に負け、異例の釈放となりました。これで一件落着と思いきや中国側の強行姿勢は変わらず、謝罪と賠償金を要求する始末、さすがにこの理不尽な要求には日本の外務省も拒否という姿勢です。しかし、今回の事件と展開はどうも腑に落ちません。
 この不可解な事件の真相は何でしょうか? この事件にはもっとドロドロした裏があるのではないでしょうか?

 事件に関しては『週刊文春』9月30日号に詳しく報じられているので引用すると、

「ことの起こりは、9月7日午前9時17分頃、パトロール中だった海上保安庁の巡視船<よなくに>が尖閣諸島の久場島から約12キロの海上、つまり日本の領海内で操業している中国のトロール船を発見、巡視船は直ちに領海内から出るように拡声器と電光掲示で警告。しかしトロール船は無視を続けた。1時間後、警告を続けながら併走していた巡視船に、トロール漁船が突然ぶつかってきたのである。明らかに舵を切って故意に突撃してきたのだった。巡視船は警告から停船命令という刑事手続きに切り替え、併走を続けた。ところが今度は同じく併走していた巡視船<みずき>に対して、トロール漁船が急に舵を左に切り、それもまた突撃してきたのである。それら二度の突撃は、すべてビデオに収められ、刑事事件としての立件は必然である。と海上保安庁幹部は主張した」ということです。

 当然のことながら船長、船員を連行したわけですが、当初はこの経緯について、彼らは事実を認めていたということです。それが一変したのは東京からやってきた中国大使館の幹部と接見した後で、これを契機に船長、船員も一切容疑を認めることを拒否、明らかに中国大使館幹部が「何も答えるな!」と恫喝したに違いないというのです。そしてこのような指示を一大使館員の判断で出せるわけもなく、本国の意を受けているのは明らかというしかありません、中国政府は表の発言はともかく、この一連の経緯はことをわざと拡大していこうという意図が垣間見えます。
 同じく『週刊文春』によれば、事件直後、現場海域の漁船から中国へ発信された通信は、いわゆる一般の漁船が使う通信ではなく、“特殊な通信”だったとのこと。昨今中国の漁船は大挙してこの尖閣列島の水域に現れていたわけですが、その中には当然怪しいスパイ船も交じっていたというわけです。
 そして夜中に日本の丹羽大使を呼び出したのは、中国の裏外交、いわゆる諜報機関を牛耳る戴(だい)国務委員だったのです。日米の情報のプロによれば、彼は中国では副首相クラスの大物で、特に人民解放軍の諜報機関<総参謀部2部>と一体化した<裏外交>の最高責任者ということなのです。今まで全く動静が伝えなれなかった戴国務委員がなぜ、表舞台に登場したのか? ここに今回の事件を解く鍵がありそうです。

 その後の展開はご存じのとおりで、中国側は態度もますます硬化させて、日本側を追い込んでいきました。フジタの社員4人がスパイ容疑で逮捕され、このスパイ容疑は死刑に相当する罪になりますから日本側も中国政府の異様に強い警告を感じ取る形となりました。
 フジタの社員は旧日本軍が中国各地に遺棄した化学兵器を発掘、回収して無毒化する事業に関わってその準備のため現地入りしていたといいます。日中間で合意した戦後処理事業の一環でまさに日中関係改善のために訪れていたわけで、それを利用して拘束するとは何という仕打ちか! そして日本のハイテク製品の生命線であるレアアースの実質輸出禁止措置がとられ、日本側もついに船長の解放に踏み切らざるを得ないという判断に達したのです。
 そして解放後、中国政府は今度は賠償と謝罪を求めるという驚くべき強硬策を取り続けています。2004年3月に、中国人7人が尖閣諸島に違法上陸して日本政府が彼らを国外退去させたときは中国はかような理不尽な要求はしていません。明らかに今回は違います。
 これら一連の経緯を考えてみると、中国漁船の巡視船への体当たり、また日本側の船長拘留という措置、それに伴って中国側の異例と思えるほどの反発という具合に話が綺麗に、まるでシナリオに沿っているかのように進んできています。
 日本側としては、船員も船長もすぐにでも中国に送還したかったと思いますが、容疑を否認され、余りの悪質さに拘留せざるを得なくなりました。それに比べ中国側の手際よさは驚くほどで、事件後すぐに対日工作会議が開かれ、軍事、経済、外交、観光と次々と報復措置が決定されたということです。
 今回の事件で常に戸惑っているのは日本側で、その都度やむなく当たり前の対応をしてきただけなのですが、いつ間にか中国側と事を構える形となっています。そして結果的に、中国は声高らかに「尖閣諸島は我が国の領域だ!」「わが国の漁民を我が国の領海で日本の巡視船が逮捕するとは許せない!」と主張し始めているのです。今までは日本の領域として日本が管理していたのにいつ間にか中国の強い怒りに押されています。このわけのわからない事件をきかっけにして……?

中国の恐るべき真の狙いとは!?
 こう振り返ってみると、今回の事件は明らかに中国側の周到な仕掛けによるもので、中国はいよいよ尖閣諸島を本気で取りに来たと思っていいでしょう。中国側は領土問題を表に出したかったのです。戦国時代の争いではないですが、欲しいところはわけのわからない因縁(いんねん)をつけて喧嘩をふっかけ、脅し、それに従うなら綺麗に領土を戴き、逆らうなら戦さ、要するに戦うというわけです。この行為を巧妙に行ってきたのが今回の中国の行為であって、日本側ははっきりと真相を理解しておく必要があるでしょう。

 じっと今までは自らの経済発展に力を注いできた中国ですが、いよいよその発展を維持、拡大するためについに外に向かって大きく力を使い始めることに決めたようです。
機は熟したというか、経済的にも軍事的にも力をつけてきたわけですから、他国のことなど気にせず、自らの勢力範囲の拡大に乗り出そうということです。このまま黙っていて平和的な手段や普通の方法では尖閣諸島を取ることはできません。立場は逆になりますが、戦前、日本が満州事変を起こしてそれをきかっけにして戦いを拡大させていったように、真の目的、この場合は資源確保のため尖閣諸島を奪い取ることですが、まずは謀略を使って事を起こすのが一番です。そして実は、中国にとって尖閣諸島などまずは第一段階に過ぎないのです。次は沖縄、そして日本本土という風に中国の真の狙いは大中華圏の構築です。
 人民日報系の『環球時報』は9月25日に社説で、「国を治める経験の乏しい日本の現政府に、中国が軽率に対立できる国でないことを知らしめるべきだ」と主張したのです。
 市民運動出身の菅総理は中国側になめ切られています。夫人の伸子さんからまさに「小粒」と称せられたように、このような国際社会の修羅場は想像していなかったでしょう。
 「尖閣諸島は我が国の領土である。賠償に応じるつもりは全くない」と言ったものの、迫力はありませんでした。この局面では荷が重すぎるかもしれません。

 中国の温家宝首相は9月23日にニューヨークで、「中国は領土問題で一切譲歩しない!」と言明しました。中国の領土は誰が決めるのか? 勝手に自分の領土を決めて軍事力を背景に譲歩しないというのですからたまりません。
 「組みしやすい」、中国政府は日本の新しい菅政権に対して思っていることでしょう。今回とことん強気に出てみて、まずは日本側の対応をみているに違いありません。菅政権だけではありません。日本の各政党、そして世論の動向を注意深く観察していることでしょう。
 米国はどう出るのか? 日米安保は機能するのか? 試しているのでしょう。どのようなことがあっても中国の野心は変わりません。いずれ日本を飲み込もうという腹です。
 拡張政策は中国の生きる道です。形を変えても帝国主義は生きているのです。今拡大を続ける中国はさらなる資源、領土、を必要としています。13億人の人間を食わせなければなりません。発展し続けなければならないのです。国家が拡大すると共に支配地域の拡大は不可欠なのです。“核心的利益”と位置付け、チベットやウイグルを弾圧したように、今度は牙をアジア全域、そして日本に向けてくるのです。そうすることが自分達が生き残っていく道と思っていることでしょう。お人よしの日本も覚悟を決めてかかっていないと大変なことになっていきます。日本は国力では中国にもアメリカにも対抗できません。二大国の狭間にあってどう振る舞っていくのか? したたかな外交と共に、国民に強い覚悟がなければ生き残っていけません。
 いずれ酷いインフレが世界を襲ってくることでしょう。日本も今では想像もできないような悲惨な事態に陥っていくことでしょう。しかしその時に一番困るのはどの国だと思いますか? 実は13億の人口を抱える中国なのです。経済成長の甘い蜜を知った中国人は貧乏や耐乏生活に後戻りできません。その時中国は、今の数倍の牙を向いて自分達の生き残りをかけて、日本に対峙してくるに違いありません。その日は遠いようで実はもうすぐです。今回日本中、あまりの中国の強行姿勢にびっくりしていることと思います。しかしこんなことはまだ序の口です。いよいよ大国中国が本気で牙を向いてきたのです。事の流れは決して偶然ではありません。中国側の予定通り事は運んでいるのです。「想定通り」ということです。もう日本人も平和ボケからは冷めなければなりません。今回のことははっきりと真の事情を認識し、来るべき驚愕する未来にどうすべきか? 日本人全体が胆を据えいかなければなりません。
 ますます膨張し続ける中国、いよいよ本性を見せてきました。9月27日に中国とロシアは首脳会談を開き、共同声明を発表、中露の尖閣、北方領土での共闘をみせつけました。まさに準備周到です。一方、アメリカは何を思っているか? 中国が巨大化して世界を牛耳ることを許すと思いますか? 13億人の中国人が世界の資源を食い尽くすことを許すと思いますか? このままアメリカが世界のナンバー2になることを黙ってみていると思いますか? アメリカVS中国、これから世界で起こってくる想像を絶したインフレが決定的な対立を生み出すでしょう。彼らは雌雄を決するのは中東ですか? それともアメリカと中国の真ん中、太平洋ですか? ちょうどいいところに絶好の紛争地帯ができました。尖閣は日本と中国だけの火薬庫でしょうか? それとも米中激突の世界を恐怖に陥れる火薬庫となっていくのでしょうか? はっきりわかっていることは日本はアメリカの力を借りなければもはや領土は守れないという現実です。

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暴走する日銀相場『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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