中村陽子の都会にいても自給自足生活

このページは、認定NPO法人「メダカのがっこう」 理事長の中村陽子さんによるコラムページです。
舩井幸雄は生前、中村陽子さんの活動を大変応援していました。

2023.07.20(第105回)
フランスでオーガニック給食を可能にしたスクールシェフたち

 オーガニック給食が進んでいる国、フランスから現場を支えるスクールシェフたちが、昨年に引き続き、今年も日本縦断研修を開いてくれたので、東京の会場へ調理実習に行ってきました。栄養士、調理師、給食関係者が対象なのですが、私も毎日田んぼカフェで料理を作っているので、仲間に入れてもらいました。参加者は東京近郊のカリスマ栄養士やすでに有機米給食を取り入れている栄養士さんなど、この世界では有名なすごい方たちでした。心や技術では決してフランスのシェフたちに負けない方たちです。

 このフランスのスクールシェフたちは、CPPフランスという、オーガニック給食を実現するための有機生産状況、環境への貢献、健康への良い影響、調理技術など、あらゆることを研修する民間団体です。彼らを日本に招いたのは、昨年設立されたCPPジャパンで、代表の本田恵久さんはイギリス在住ですが、日本に向けて“こどもと食がつながる給食だんだん”という研修、提案する活動をしています。
 https://organickyushoku.com/1mincpp/

 CPPフランスの代表フィリップさんと、息子さんのジョイさんの話はとても勉強になりました。2006年頃、当時大統領だったサルコジ大統領が、何か国民の人気取りのために「オーガニック給食」という言葉を出したそうです。その後、法律や予算などのフォローはなかったのですが、この言葉を逃さずオーガニック給食を実現させようと思い、2007年にCPPフランスを立ち上げて、活動を始めました。有機農家を探し、環境に良い食材や調味料に変え、加工品を止めて手造りにする自校式オーガニック給食をやり始めました。始めの10年は本当に大変だったようです。彼の口からは「国のお金を待っていたら何も始められない!とにかくやるしかない!」という言葉が何回も出ました。ここのところに革命の国フランスの国民性の強さを感じました。

 特筆すべきことに、CPPフランスが目指す給食の中に、「食材費はそのままで!」というスローガンがあります。実証もされています。パリのある学校給食で8か月間の給食にかかった費用を比べたところ、従来の冷蔵配達の給食より、自校式100%オーガニック給食の方が、1ユーロ安かったという結果が出ました。大規模なセンターキッチン方式の給食は、冷蔵できた加工品をただ袋を開けて温めるだけで安上がりのようですが、自校式ですべて手作りのオーガニック給食は、材料費は高くつきますが、内容の工夫があり、肉を減らし大豆たんぱくを増やしたり、オーガニック食材は美味しいので料理方法がシンプルになったり、前日の余り野菜をスープにしたりと無駄がないなど、手作りはコストコントロールができるなどの利点があり、大量のエネルギーを使う冷蔵品を使う給食よりも、安くなることはあっても高くなることはないということがわかりました。これが分かれば他の地域でも自信をもって始められます。結局政府に負担をかけないで済むのです。

 もう一つ、ジョイさんの言葉でなるほどと思ったことは、「政治家には“できる”ということを見せることが大事だ」です。多くの政治家は、現場を知らず、スクールシェフの重要性に気付いていなからです。フィリップさんがCPPフランスを立ち上げてちょうど10年後、2017年にエガリム法が出来ました。エガリム法は、学校給食や老人ホームなどの共同食堂に適用される法律で、食材の20%をオーガニックに、50%を高品質で持続可能な食材にしていくこと、プラスチック製品を使わない、廃棄物を少なくするなどの目標が盛り込まれています。既にオーガニック給食の実行例が多々あったことが、国の政策を動かしたのだと思います。

 CPPフランスでは、3日間研修があり、1日目に有機農業の意味や環境や健康への影響、エガリム法など、2日目にこどもたちの食事に必要栄養の基礎として、植物性たんぱく質や献立の立て方など、3日目に調理実習で有機食材や調味料の味見、ベジタリアン料理のレシピやホールフーズや旬の食材使い方など、が学べる場を提供しています。現在40人ほどのトレーナーがいて、自治体からの要請でオーガニック給食を推進する公務員として引き抜かれたりしているそうです。

 フィリップさんの話ですが、初め栄養士の学校を卒業した人は、休みも多いし楽をするつもりでスクールシェフになる人もいるが、1年くらいでつまらなくなるそうです。そんな時、CPPの研修を受けて、料理技術を身に着けて面白い人生に転換する人も少なくないそうです。肉の購入の仕方も、ある部分だけを買っていた時はつまらなかったが、1羽、1頭を買うと、料理のアイデアが次々と浮かびとても面白くなると言っていました。

 東京での研修に集まった日本の栄養士さんたちも、料理は毎日がクリエイターだという意見にみんなが共感していました。
 2023年のCPP研修会開催は全国縦断で8/11まであります。申し込みは↓にどうぞ
 https://organickyushoku.com/2023kenshu/


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Profile:中村 陽子(なかむら ようこ)
中村 陽子(なかむら ようこ)
首のタオルにシュレーゲル青ガエルが
いるので、とてもうれしそうな顔を
してい ます。

1953年東京生まれ。武蔵野市在住。母、夫の3人家族。3人の子どもはすべて独立、孫は3人。 長男の不登校を機に1994年「登校拒否の子供たちの進路を考える研究会」の事務局長。母の病気を機に1996年から海のミネラル研究会主宰、随時、講演会主催。2001年、瑞穂(みずほ)の国の自然再生を可能にする、“薬を使わず生きものに配慮した田んぼ=草も虫も人もみんなが元氣に生きられる田んぼ”に魅せられて「NPO法人 メダカのがっこう」設立。理事長に就任。2007年神田神保町に、食から日本人の心身を立て直すため、原料から無農薬・無添加で、肉、卵、乳製品、砂糖を使わないお米中心のお食事が食べられる「お米ダイニング」というメダカのがっこうのショールームを開く。自給自足くらぶ実践編で、米、味噌、醤油、梅干し、たくあん、オイル」を手造りし、「都会に居ても自給自足生活」の二重生活を提案。神田神保町のお米ダイニングでは毎週水曜と土曜に自給自足くらぶの教室を開催。生きる力アップを提供。2014年、NPO法人メダカのがっこうが東京都の認定NPO法人に承認される。「いのちを大切にする農家と手を結んで、生きる環境と食糧に困らない日本を子や孫に残せるような先祖になる」というのが目標である。尊敬する人は、風の谷のナウシカ。怒りで真っ赤になったオームの目が、一つの命を群れに返すことで怒りが消え、大地との絆を取り戻すシーンを胸に秘め、焦らず迷わずに1つ1つの命が生きていける環境を取り戻していく覚悟である。
★認定NPO法人メダカのがっこうHP: http://npomedaka.net/

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