中村陽子の都会にいても自給自足生活

このページは、認定NPO法人「メダカのがっこう」 理事長の中村陽子さんによるコラムページです。
舩井幸雄は生前、中村陽子さんの活動を大変応援していました。

2024.02.20(第112回)
内なる海をニガリで再現する

 今回は、内なる海の話をしたいと思います。内なる海とは、体液のことです。体液は、私たちの体の中を流れている血液や分泌液などですが、その中でも最も能力が高いものが羊水です。羊水は子宮の中で受精卵の10億年の進化を手伝い、人間の赤ちゃんとして生まれてくるまでの条件を充たしています。
 この仕組みの起源は生命の源である古代の海です。命は海から生まれ、私たちの祖先は海から陸上に上がってくるときに、海水を体液として背負ってきました。体液は、海水が持っているいろいろな菌や酵素を活性化する微量ミネラルを体の隅々まで運び、各細胞の排泄物を受け取り濾過機能を備えている臓器に運び、生命を維持させています。
 体液の塩分濃度も、私たちの祖先が上陸したころの0.88%に近いもので、現在の海の濃度3.5%とはかけ離れており、塩化ナトリウムの割合がかなり低いと考えられます。
 この古代の海水に近いものを作ることが出来れば、私たちの細胞を元気にする力が抜群にあると思い、私は塩とニガリで1%未満の塩水を作り、ローションや目薬にしています。思っていた通り、皮膚にいる常在菌やシナノウイルスなどが元気になったせいなのかよくわかりませんが、結果として、肌がすべすべになったり、若い人の背中のブツブツが消えたり、ドライアイが改善したりしています。
 外皮からだけでなく、口から適量入れることもしています。ご飯を炊く時、お湯を沸かすとき、漬物を漬ける時、ニガリをほんの1適入れています。たくさん入れる必要はありません。多量使うと害になるので注意してください。50t くらい瓶入りのニガリは、非常に濃縮されているので、1万倍でよいのです。10リットルのバケツに1t の割合ですから、1ビン買うと2年くらいなくなりません。本当に安上がりの健康法で、申し訳ないくらいです。
 これは植物も元気にします。これを苗づくりに使うと丈夫に育ちます。ニガリの他にも農業資材としてミネラルとして、古代の海藻や貝化石が隆起してできた断層の貝化石ミネラルがありますが、これも海のミネラルです。
 ニガリというのは、塩を作る過程で出てくるもので、天日結晶でも、平窯で煮詰めても、塩の結晶ができたところで網に濾すと、下に出てくる苦い液体のことです。一般的には、お豆腐を固める時に使うことで知られています。塩の主成分は塩化ナトリウムですが、ニガリの主成分は塩化マグネシウムです。とはいえ、海水に含まれているたくさんの元素が含まれており、植物が非常に丈夫に育ちます。植物はよく塩害に弱いといいますが、ニガリの主成分の塩化マグネシウムは葉緑素の中心を形成する要素なので全く問題はありません。
 私は、このニガリの効用が素晴らしいので、これを研究するために、1996年に海のミネラル研究会を立ち上げました。ニガリは菌や酵素の活性剤でもあります。そのころ、世の中はEM菌などの菌ブームで、私は日本中から松本微生物、オーレス菌、東江菌など集めては培養したり、下水の悪臭処理の実験をしたりしていました。
 そのうち、菌の働きを活発にする活性剤の多くは微量元素を含むミネラルであることが分かりました。そのミネラルにも、岩石由来の岩石ミネラルと、海のミネラルがあることを知りました。岩石ミネラルは花崗岩に硫酸をかけて溶かし、それを薄くのばしたもので、作物が元気に育つということで農業資材になっていました。しかし、岩石ミネラルは薄くなっているとはいえ硫酸の害があり、海のミネラルの方がもっとミネラルバランスが優れていることが分かりました。
 このころ、私は菌を買うことを卒業しました。ニガリを一万倍に薄めて撒くと、土中の菌がバランスよく活性化するので、菌は買うものではなく、地元にある菌を元気にすればよいことに気が付いたのです。
 会が出来て1年後の1997年に、塩の専売法が廃止され、だれでも自由に塩が作れるようになりました。各地で塩づくりが始まり、会の名前が海のミネラル研究会ということでもあって、塩についての質問をたくさん受けるようになったので、塩の研究も始めました。
 次回は塩のお話をします。


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Profile:中村 陽子(なかむら ようこ)
中村 陽子(なかむら ようこ)
首のタオルにシュレーゲル青ガエルが
いるので、とてもうれしそうな顔を
してい ます。

1953年東京生まれ。武蔵野市在住。母、夫の3人家族。3人の子どもはすべて独立、孫は3人。 長男の不登校を機に1994年「登校拒否の子供たちの進路を考える研究会」の事務局長。母の病気を機に1996年から海のミネラル研究会主宰、随時、講演会主催。2001年、瑞穂(みずほ)の国の自然再生を可能にする、“薬を使わず生きものに配慮した田んぼ=草も虫も人もみんなが元氣に生きられる田んぼ”に魅せられて「NPO法人 メダカのがっこう」設立。理事長に就任。2007年神田神保町に、食から日本人の心身を立て直すため、原料から無農薬・無添加で、肉、卵、乳製品、砂糖を使わないお米中心のお食事が食べられる「お米ダイニング」というメダカのがっこうのショールームを開く。自給自足くらぶ実践編で、米、味噌、醤油、梅干し、たくあん、オイル」を手造りし、「都会に居ても自給自足生活」の二重生活を提案。神田神保町のお米ダイニングでは毎週水曜と土曜に自給自足くらぶの教室を開催。生きる力アップを提供。2014年、NPO法人メダカのがっこうが東京都の認定NPO法人に承認される。「いのちを大切にする農家と手を結んで、生きる環境と食糧に困らない日本を子や孫に残せるような先祖になる」というのが目標である。尊敬する人は、風の谷のナウシカ。怒りで真っ赤になったオームの目が、一つの命を群れに返すことで怒りが消え、大地との絆を取り戻すシーンを胸に秘め、焦らず迷わずに1つ1つの命が生きていける環境を取り戻していく覚悟である。
★認定NPO法人メダカのがっこうHP: http://npomedaka.net/

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