中村陽子の都会にいても自給自足生活

このページは、認定NPO法人「メダカのがっこう」 理事長の中村陽子さんによるコラムページです。
舩井幸雄は生前、中村陽子さんの活動を大変応援していました。

2024.05.20(第115回)
井の頭公園大地の再生活動班の活動が始まりました

 昨年10月のコラムで紹介しましたが、オーガニックフェスタ井の頭で、大地の再生の矢野智徳さんと、彼を主人公にしたドキュメンタリー映画「杜人」を製作した前田せつ子さんの講演会と、井の頭公園内のワークショップを開催してから、半年経ちました。
 今日はその後の嬉しいお話です。
 この時に理解を示してくださった東京都の公園管理課の方が2名いらっしゃり、公園内の作業を許していただきました。ところが、その方たちがこの3月に異動になり、一時はどうなることかと思いましたが、ありがたいことにこの活動が続けられるように、ちゃんと予算をとっておいてくれました。
 東京都の公園管理課と私たちをつないでくれているのが井の頭自然の会の鈴木浩克さんです。今日は長くなるので話は省きますが、彼とはメダカのがっこうを始めるはるか前、私が海のミネラル研究会をしていた頃からの仲間で、自然の摂理にアンテナを持っている同志です。
 彼が4月からの新任の方と大地の再生の話の続きをした結果、大地の再生活動班を作って良いことになり、4月中旬からメダカのがっこう関係で募集を始めました。すると、すぐに47名の申し込みがあり、井の頭公園内で作業できるように公園課に登録し、ボランティア保険に入り、4月28日に第1回の顔合わせと作業ができました。作業は既に3回行われ、そのたびに20名ほどの都合のつく方が、移植ゴテと30センチのドライバーを持って集まります。それでは、井の頭公園大地の再生活動班の作業の一部を紹介しましょう!

ロープエリアのやたら掘りと穴あけ
 矢野智徳さんが昨年10月に視察に入る1か月前、井の頭自然の会の鈴木浩克さんの提案で、雨が降ると水浸しになる林の樹の1本ずつの周りにロープを張りました。樹の周りは踏み固められると、地下のガスも抜けず、空気も入らない状態になり、落ち葉は落ちてもすぐ風で飛んで行ってしまいます。ところがロープを張って1か月もすると、土にひびが入りガスや空気の出入りができるようになり、大気が地面を押せる状態になるので、落ち葉が大気圧に押されて厚く溜まり、グランドカバーができます。地球の表面の健康な状態は、地面がむき出しではなく、草で覆われるか落ち葉が降り積もる状態です。矢野さんは10月にこれを見て、ロープで囲むことの意味を教えてくれ、囲みをもっと増やすと良いと言いました。

 私たちは、その囲みの下を、やたら掘りと言って、移植ゴテの地面に充てる角度を左右に変えながら、溝を掘ります。やたら掘りのお手本はモグラです。モグラが右左の手で掘り進む様子をイメージしながらリズミカルに溝を掘っていきます。次にその溝の数か所に30センチのドライバーで深く穴をあけ、グルグルとまわして円錐状に穴を拡げ、その中に小枝を入れて空間を維持します。溝にもいろいろな小枝や落ち葉を入れて土を戻します。これをシガラマセル と言います。シガラミという言葉は、今まで良い意味に使ったことはありませんでしたが、人間の作業を大地と馴染ませる働きをしてくれるようです。
 次に雨が降ると水が溜まる道の水切りの溝を掘ります。こちらの方は地面が硬いので大変ですが、やることは同じです。やたら掘りと穴あけとシガラマセル です。

 5月末の作業は、雨が降ると水たまりになってしまい、全く草が生えなくなってしまった広場に、みんなで穴を開けました。固く踏みしめられた広場に穴をあけるのはかなりの力が要りますが、みんな一生懸命開けて、合計300か所ほどの穴を開け、小枝でシガラマセました。数か月後には草が生えてくるでしょうか? 実験です。たのしみです。

 大地の再生活動班の皆さんは、大地の再生に関心がある方だけでなく、井の頭公園にお世話になったので恩返しをしたい方、草や鳥を愛する方たちです。
 矢野さんは人間は表層5センチに手を入れれば、あとは自然がやってくれると言って、ポイントを教えてくれます。まるで大地の針治療のようです。ご夫婦で参加される方、お孫さんを連れて参加される方、親子で参加される方、様々ですが、みんな穏やかで楽しそうで妖精のようだと感じるのは、私だけでしょうか?
 江戸時代までは、地域の環境整備は、みんな地域の方たちが結いを作って当たってきました。表層5センチの大地の再生技術が、老若男女に自然に伝わっていく良い場ができたと喜んでいます。
 井の頭公園大地の再生活動班に関心のある方は、メダカのがっこう中村までご連絡ください。
 takashima@tbs.co.jp


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Profile:中村 陽子(なかむら ようこ)
中村 陽子(なかむら ようこ)
首のタオルにシュレーゲル青ガエルが
いるので、とてもうれしそうな顔を
してい ます。

1953年東京生まれ。武蔵野市在住。母、夫の3人家族。3人の子どもはすべて独立、孫は3人。 長男の不登校を機に1994年「登校拒否の子供たちの進路を考える研究会」の事務局長。母の病気を機に1996年から海のミネラル研究会主宰、随時、講演会主催。2001年、瑞穂(みずほ)の国の自然再生を可能にする、“薬を使わず生きものに配慮した田んぼ=草も虫も人もみんなが元氣に生きられる田んぼ”に魅せられて「NPO法人 メダカのがっこう」設立。理事長に就任。2007年神田神保町に、食から日本人の心身を立て直すため、原料から無農薬・無添加で、肉、卵、乳製品、砂糖を使わないお米中心のお食事が食べられる「お米ダイニング」というメダカのがっこうのショールームを開く。自給自足くらぶ実践編で、米、味噌、醤油、梅干し、たくあん、オイル」を手造りし、「都会に居ても自給自足生活」の二重生活を提案。神田神保町のお米ダイニングでは毎週水曜と土曜に自給自足くらぶの教室を開催。生きる力アップを提供。2014年、NPO法人メダカのがっこうが東京都の認定NPO法人に承認される。「いのちを大切にする農家と手を結んで、生きる環境と食糧に困らない日本を子や孫に残せるような先祖になる」というのが目標である。尊敬する人は、風の谷のナウシカ。怒りで真っ赤になったオームの目が、一つの命を群れに返すことで怒りが消え、大地との絆を取り戻すシーンを胸に秘め、焦らず迷わずに1つ1つの命が生きていける環境を取り戻していく覚悟である。
★認定NPO法人メダカのがっこうHP: http://npomedaka.net/

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