“超プロ”K氏の金融講座

このページは、舩井幸雄が当サイトの『舩井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介していた経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2022.06
中国、健康コードを乱用する当局

「我が国の方針をねじ曲げ、疑い、否定するすべての言動を断固戦う」
 5月5日、中国の習近平主席は共産党政治局常務委員会の会議を招集して、ゼロコロナ政策を堅持する方針を内外に明らかにしたのです。
もはや中国のゼロコロナ政策の堅持は党の最も重要な事項であり、この方針に逆らうような言動や行動は、すなわち党に歯向かう勢力と認定されてしまうようです。
 中国における共産党の方針は絶対です。この圧倒的な党の強い意志の下、中国の人々は日夜、コロナの検査を義務付けられ、場所によってはPCR検査が連日行われている模様です。このPCR検査も基本的に48時間しか有効でなく、人々は絶えず検査をやり続ける必要があります。その健康の証明として、人々に健康コードが付与されるわけです。
 健康コードでは、緑は陰性、黄色は注意、赤は陽性というわけで、仮に健康コードが赤になった場合は、施設に閉じ込められるか、自宅に監禁されるかで行動の自由は完全に奪われます。いわば中国においては健康コードが赤になった瞬間からすべての自由は束縛されて、当局の監視下において陽性が陰性に変わるのを待たなければなりません。中国ではこれだけ徹底したコロナ対策を行ってきましたので、感染者および死亡者は世界各国の状況に比べて格段に低く抑えられているわけです。
 しかしながら驚いたことに、この健康コードを当局が乱用して、人々の行動を監視、規制することに使い始めたというのです。この恐るべき監視体制とその効果には驚愕するしかありません。いうなれば当局に逆らおうとする者はいつの間にか、健康コードが赤にされてしまって、何もできなくなってしまうというわけです。

●中国の嘘のような驚くべき実態・・・
 事の発端は預金の取り付け騒ぎから始まりました。中国では放漫な経営を行っている金融機関が山のようにあります。折しも中国において、不動産バブルの崩壊も顕著であって、銀行によってはその財務体質がきわどいところは続出しているわけです。さらに今回のゼロコロナ政策の断行によって、各種の不良債権は拡大しているわけで、銀行の不良債権は膨らむ一方です。こういう中、河南省の銀行において取り付け騒ぎが発生したわけです。その銀行は預金の払い戻しに苦慮する状況であり、当然のことながら噂を聞いた預金者は居ても立ってもいられず、河南省の銀行まで駆けつけて預金をおろす行動に殺到しました。
 ここまでの話ならよくある話であって、銀行が倒産するか、当局が資金を提供してことを収めるかということで、これなら中国だけでなく世界各国でよく起こる話であります。
 ところが驚いたことに今回、この取り付け騒ぎ、預金者の殺到に対して、何と銀行に駆けつけようとした人、河南省の銀行まで電車のチケットを購入した人、銀行に向かうため電車に乗っていた人、これら預金の引き出しを求めて銀行に行こうと行動し始めた人たちほぼ全員の健康コードが突如緑から赤に変わってしまったのです。
 これではたまりません。銀行に向かってバスに乗ろうとしても健康コードが赤ですからバスに乗ることはできず、銀行にたどりつけません。またホテルに泊まろうとしてもホテルを追い出されてしまいます。銀行に向かおうと電車に乗った人は駅から出ることもできなくなってしまいます。同じく銀行に向かうためネットで電車のチケットを購入しただけの人は家から出ることができなくなったというわけです。
 これらすべての人は、預金を引き出しに銀行に向かおうとしていた人たちなのです。その数1300人余りというのですから驚きます。自らの預金をおろしたい一心で何とか対応しようとした人たちは全員、健康コードが緑から赤に変わってしまったのです。

 現在の中国で健康コードが赤になれば、それは何もできなくなることを意味します。一歩も動けなくなるわけです。この人々の健康コードを緑から赤に変える操作を行っているのは当局です。当局は住民一人ひとりの情報を詳細に知り抜いているわけです。今回当局が行おうとしたことは、取り付け騒ぎを収めるために、銀行に殺到すると考えられる預金者たちの行動を瞬時に一人ひとり洗い出し、その行動が預金引き出しの行動に向かいつつあると判定された場合、一気に健康コードを操作してコードを緑から赤に変えることによって彼らの行動を封印させることに成功したというわけです。
 しかしながらいくら中国においてもかような不当な行為が怒りを買わないわけはありません。SNSを使った情報の拡散でこのとんでもない当局の方針が暴露され、大問題となったわけです。
 しかし驚くのは、銀行に向かった人や電車に乗った人や、電車のチケットを購入した人などすべての人たちの行動が瞬時にわかってしまって、それに自動的に対応できる中国当局のすごさです。今回は銀行の取り付け騒ぎを封じ込めるための職権乱用ですが、仮にこれが共産党当局に不満を持つ人など政治的に利用されれば対抗しようがありません。監視社会もここまできたか、と驚きもしますが、健康コードという世間が認めたツールを巧みに使ってこれだけの人民の行動抑制がいとも簡単に可能になるもの驚きです。まるで中国当局は人民一人ひとりの詳細な思想なり行動パターンをすべて知り抜いているかのようです。

 かような激しい監視体制や行動規制は反政府の思想がまん延しているウイグルやチベットなど中国の一部の地域でだけ行われていることかと思っていましたが、現在のテクロノジーの発展は著しく、今や中国ではすべての人のほとんどの行動が自動的に当局に把握されてしまうシステムが出来上がっているようです。
 なにか事がおこるごとに世間は規制の強化を求め、それに乗じて当局が自由を規制して監視体制を強めてきたというのはどこの国においても起こる極めて普通の流れでもありました。例えば米国でも2001年のテロが発生した直後に、人々は身の安全を一番に考えるようになって、何としてもテロリストをあぶり出す必要性があると感じ、当局が電話の盗聴など人々のプライバシーに入り込んでいくことを許容するようになったわけです。
 今回はコロナウイルスのまん延という特殊な事象が発生したので、人々もこの感染を止めるためには各々の行動制限はやむを得ない、ある程度のプライバシーを犠牲にしても社会の安定を取り戻す必要があると痛感したわけです。
 そのような社会的な要請に基づいて中国では徹底したコロナ対策ということで健康コードという手法が取り入れられたわけです。
 しかしながらそれによって当局は人々の詳細な情報を漏れなく知ることができるようになったわけです。
 今回健康コードを使った、半ば当局の犯罪ともいえる行為が発覚して、中国全土で大騒ぎとなっています。しかしこの主犯と思える、健康コードを緑から赤に変えるように指示した真の黒幕は捕まるわけもないでしょう。この不祥事に関連した役人は何人か処分されたということですが、おそらく彼らは命令されたことを実行しただけの役人です。本当の黒幕は共産党の中枢部にいる高級幹部でしょう。
 いずれにしても今回の事件で明らかになったことは、中国当局は中国のほとんどの人たちの動向や行動など、その気になれば瞬時に知ることができ、また法律を駆使することなく巧みに規制すること、ないしは狙った人を失脚、あるいは破滅させることもできるということです。中国のAI技術は日進月歩で発展し続け、その監視社会は益々強固になりつつあるとは感じていましたが、ここまできたかと驚くばかりです。

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Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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