ヤスのちょっとスピリチュアルな世界情勢予測
このページは、社会分析アナリストで著述家のヤス先生こと高島康司さんによるコラムページです。
アメリカ在住経験もあることから、アメリカ文化を知り、英語を自由に使いこなせるのが強みでもあるヤス先生は、世界中の情報を積極的に収集し、バランスのとれた分析、予測をされています。
スピリチュアルなことも上手く取り入れる柔軟な感性で、ヤス先生が混迷する今後の日本、そして世界の情勢を予測していきます。
中間選挙で荒れ狂う可能性のある米国内の政治的暴力についてだ。
まず、なぜ共和党がここまで追い詰められているのかを押さえておこう。
アメリカを代表する調査ジャーナリスト、シーモア・ハーシュが最近の取材で得た感触は明快だ。世論調査の数字は、共和党にとって着実に悪化している。下院は民主党が支配権を奪う見通しで、これはもはやほぼ既定路線に近い。焦点は上院である。現在、五つの激戦州で民主党候補が共和党候補をリードしており、そのうち四州で勝てば、民主党は上院でも一議席差の過半数を握ることになる。冒頭のダラスで標的にされたエルサイード候補も、CNNの世論調査で47対44と共和党候補をリードしていた。実現すれば、民主党は今後二年間、国の政策課題の一部を主導する足がかりを得る。
トランプ大統領にとって、これは政治的な悪夢である。イランへの軍事作戦が、最高指導者ハメネイ師やその近親者の暗殺にまで踏み込みながら軍事的な成果を上げられず、むしろイランを中東で優位に立たせたという失態も、逆風に拍車をかけている。ハーシュによれば、それでも大統領は最後まで戦いを諦めるつもりはない。問題は、その「戦い」の中身である。
●「あらゆる手段を使って上院を守る」、投票抑制という第一の工作
ハーシュが伝える工作の第一段階は、投票そのものを抑え込むことだ。
彼が複数の情報源から聞いたところによれば、ホワイトハウスの政治工作員たちは、共和党候補の当選が危ぶまれる接戦州で、ラテン系住民が多数を占める投票所に移民・関税執行局(ICE)の捜査官を送り込む計画を立てているという。合法か否かを問わず、投票を萎縮させるための露骨な圧力である。かつては州兵や米軍の投入も検討されたが、現時点では見送られているとされる。その使命は、メイン州、オハイオ州、そして一九九三年以来共和党が議席を独占してきたテキサス州といった州で、あらゆる手段を講じて上院の議席を守り抜くことにある。
だが、より深く、より長期的な工作はその先にある。共和党はこの十年、州が運営する選挙監視機関の支配権を静かに掌握してきた。ハーシュが接した政治関係者によれば、2020年の大統領選でバイデンが勝ったことを今も認めない「選挙結果否定派」が、26の州で計96人、今年の選挙に立候補しているという。
彼らの狙いは目先の一議席にとどまらない。選挙結果を認定する役職を、恒久的に政治的な手先で埋めていくこと。全米を「争える選挙」に変えてしまうことである。本来、選挙の正当性と正確さは、その客観性と誠実さに疑いのない人物の手に委ねられなければならない。その大原則そのものが、内側から掘り崩されようとしているのだ。
●当選者を議席に着かせない、第二の、そして本命の工作
ここからが本題である。ハーシュとボストン・カレッジの歴史学者、リチャードソン教授の論考は、同じ一点に収斂していく。たとえ選挙で敗れても、共和党は当選した民主党議員を議席に着かせないことで、権力を手放さないかもしれない、という恐るべきシナリオだ。
仕組みはこうだ。接戦となった選挙結果には、各地で異議が申し立てられる。十分な数の州に配置された選挙否定派が異議を申し立て続ければ、憲法修正第二〇条が定める2027年1月3日の新上院議員の就任を、遅らせることができる。正当に選ばれた民主党議員のうち数名が、認定を受けられないまま新議会への参加を拒まれる。ハーシュはそう指摘する。この混乱を最終的にさばくのは、共和党の上院院内総務ジョン・スーンである。
争われる議席が多ければ多いほど、その作業は膨大なものになる。上院は、ある州の上院選の投票を無効にすれば、同じ投票用紙に記された下院選の投票も無効にせざるをえない。2008年、ミネソタ州で決着に239日を要し、総投票数のわずか0.0001%にあたる312票差で当落が決まったアル・フランケンの前例が、いやおうなく思い出される。
リチャードソン教授が紹介する保守派のマイケル・ルティグ判事の警告は、さらに踏み込んでいる。同じことが下院でも起こりうる、というのだ。マイク・ジョンソン下院議長には、現職の下院書記官を解任し、選出された民主党議員を議員名簿に記載することを拒み、「MAGA」の忠実な後任を、一時的に据える権限があるのだ。名簿から外された民主党議員は裁判所に訴えるほかないが、書記官が裁判所の命令に従うことを拒めば、そこに新たな危機が生まれる。
最高裁を含む司法の審査には数週間から数カ月を要し、その間、アメリカは統治の空白に陥る。ルティグはこれを「アメリカ民主主義をめぐる最後の戦い」と呼んだ。そして、2021年1月にペンス副大統領がトランプの権力奪取を拒んで企てが潰えたときとは違い、今日の共和党議員の中に、トランプよりも国を優先するだけの誠実さと勇気を持つ者を一人でも見つけるのは難しい、と嘆いた。
その言葉を裏づけるように、ジョンソン下院議長はダラスの党大会でこう言い放った。「我々は、彼らが議会で過半数を握ることを許さないし、許すつもりもない。絶対にだ」と。
●すでに始まっている「地ならし」
これらは絵空事ではない。地ならしはすでに始まっている。
リチャードソン教授が挙げる兆候は生々しい。トランプ政権下の米国郵政公社は、フロリダ州レオン郡から送られた郵便投票用紙を、差出人住所と「返送依頼」の文言の間隔がわずか0.014インチ足りないという理由で拒否した。些細な形式的欠陥を口実に、票をはじく実験である。司法省は、少なくとも30人の州の選挙担当幹部に「あなたは捜査対象になっている」と警告する脅迫的な書簡を送りつけた。トランプ政権はこれまで30州を相手に有権者名簿の開示を求めて提訴し、23件で敗訴、勝訴は一件もない。
にもかかわらず、である。非市民の投票を口実にした選挙担当官への刑事訴追の脅しも、公然と行われている。ネバダ州の州務長官はこう語る。いつか私たちが屈服することを期待して、嫌がらせと威嚇と法的措置の脅しを絶え間なく浴びせかけてくるのだ、と。それでも私たちは法律を守り続ける、と彼は付け加えた。
そして、共和党が議会に送り込もうとしている顔ぶれも不気味だ。オハイオ州の共和党上院議員の主要スタッフだった25歳の青年は、白人少数派が黒人多数派を支配した旧ローデシアを称える楽曲のプレイリストを「もはや存在しない場所への郷愁」というキャプションつきで公開し、ナチスの軍服を着た過去まで報じられて、陣営を追われた。リチャードソン教授が指摘するように、白人ナショナリズムやナチスを称揚する若い共和党員が、静かに増殖しているのである。
●すべての土台にある、トランプの揺るがぬ「確信」
こうした企ての土台には、トランプ自身の揺るがぬ確信がある。九月、アイルランドの自らのゴルフクラブを訪れたトランプは、記者団にこう言い放った。「我々の選挙は不正操作されていた。完全に不正だった。だって、私は三回勝ったのだから。二回ではない。三回だ」と。2016年の予備選以来、選挙不正の証拠を一度も示せないまま、彼はこう言い続けている。この根拠なき確信こそが、26州の96人の選挙否定派を突き動かし、巨額の政治工作を道徳的に正当化する燃料なのだ。
事実がどうであれ「自分は勝った」と信じる、あるいは信じるふりをする。その一点から、すべての奪権シナリオは動きだしている。
●ロバート・ペイプの警告、「暴力の常態化」という滑り坂
ここで、冒頭のダラスの叫びに戻ろう。なぜ「撃ち殺せ」の声が、誰にもたしなめられずに会場を満たしたのか。
シカゴ大学のロバート・ペイプ教授は、その答えとなる診断を下している。いまアメリカでは政治的暴力が急増し、もはや社会の周縁の現象ではなくなった。破壊行為に発展する大規模な抗議から、政治指導者への襲撃や暗殺未遂まで、この五年間に噴き出した政治的暴力の広がりは、190年代以来のものだという。
皮肉なのは、ダラスの党大会そのものが、一年前に銃弾に倒れた保守派活動家チャーリー・カークを追悼する場だったことである。暴力の犠牲者を悼むために集まった群衆が、その同じ口で政敵の殺害を叫ぶ。この倒錯こそ、ペイプ教授の言う「常態化」が、もはや理屈の次元ではなく、感情のレベルにまで浸透してしまったことの証しだ。人は、自らが憎む相手への暴力を、もはや矛盾とすら感じなくなっている。
だが、ペイプ教授が本当に恐れているのは、暴力そのものではない。暴力が「常態化」していく危険な滑り坂である。最初は非難され、次に正当化され、やがて政治的敵対者に対する正当な手段として受け入れられていく。この段階的な麻痺こそが、本当の危険なのだ。
ダラスの一件は、まさにこの滑り坂のどこにアメリカが立っているかを示している。暴力の呼びかけが非難されず、演壇の政治家がそれを黙認する。それは、すでに「正当化」の段階に足を踏み入れている証拠にほかならない。
なぜ孤立した事件が、より広範な対立の波へと変わってしまうのか。政治的暴力がアメリカの政治生活の常態となる地点まで、あとどれほどの距離なのか。ペイプ教授の問いは、答えを待つまでもなく、ダラスの会場ですでに現実になりかけている。そして、ここまで見てきた制度的な奪権の企てと、この暴力の常態化とが結びついたとき、何が起こるのか。それが、次の予想の核心である。
●予想、11月と、その先に何が起こるか
以上を踏まえ、この先の展開を予想しよう。
第一に、11月3日の投票日そのものが、混乱の舞台になる。接戦州の、とりわけラテン系住民の多い投票所の周辺で、ICEの存在をちらつかせた威圧が現実になる可能性が高い。開票の初期結果が民主党優勢と出れば、そのほぼすべてに異議が申し立てられ、集計は長期の泥沼に入るだろう。夏よりも民主党に有利な情勢は続くが、勝利がそのまま議席に直結しない事態を、私たちは覚悟しておかねばならない。
第二に、真の危機は選挙後にやってくる。2027年1月3日、新議会の召集をめぐって、当選した民主党議員の一部が議席に着けないという事態が、上院でも下院でも起こりうる。ここで鍵を握るのが、党の方針としばしば対立してきたアラスカ州のリサ・マーコウスキー上院議員のような存在だ。彼女は一部の議題で民主党と歩調を合わせる意向を、少数党院内総務のチャック・シューマーに伝えているという。たとえ共和党が選挙を乗り切って僅差で上院を制しても、彼女一人の離反が、重要な人事や立法をめぐる採決を左右しかねない。それほどまでに、一議席の重みが増している。だからこそ共和党は、なりふり構わず議席の認定を遅らせようとするのである。
そして第三に、この制度的な奪権の企てと、ペイプ教授の言う暴力の常態化とが、共鳴し合う。議席を盗まれたと感じる側と、選挙を盗まれたと信じ込まされた側。双方の怒りが街頭で交わったとき、2021年1月6日の連邦議会襲撃は、単発の事件ではなく、はるかに大規模な何かの予行演習にすぎなかったことが、明らかになるだろう。
ここで言う「内戦の下地」とは、けっして誇張された比喩ではない。選挙という、勝敗を平和的に決着させるための最後の共通の土俵が失われれば、対立する陣営は、力によってしか決着をつけられなくなる。制度を通じて権力が奪われたと片方が確信し、もう片方が選挙を盗まれたと信じ込む。相容れない二つの物語が正面から衝突するその場所に、ペイプ教授の言う暴力の常態化という燃料が注がれる。これこそ、歴史上、内戦が始まるときの典型的な条件にほかならない。
冒頭に述べたように、2027年は、かろうじて管理されてきた危機が臨界点に達する最初の年になるかもしれない。その引き金の一つが、この11月なのである。
●結びに、これは「予言」ではなく「警告」である
誤解のないように言っておきたい。私はアメリカの内戦を予言しているのではない。むしろ逆だ。いまダラスの会場で、フロリダの郵便局で、司法省の脅迫状の中で起きていることは、アメリカの民主主義が自らに発している「警告」なのである。
制度が壊れるとき、それは一夜にしてではなく、0.014インチの余白をめぐる難癖のような、小さな踏み越えの積み重ねとして進む。保守派のルティグ判事が保守の立場から必死に警告し、ジャーナリストのハーシュが工作の内幕を暴き、ペイプ教授が暴力の滑り坂を測り続けているのは、まだ引き返せると信じているからにほかならない。ルティグは共和党員に向かって、トランプへの政治的・道徳的な隷属の鎖をようやく断ち切れ、と訴えた。それは、この国がまだ選択の余地を残していることの、裏返しの表現でもある。
内戦の下地は、確かに敷かれつつある。だが、その上に何を建てるかは、いまなおアメリカ国民の意思に委ねられている。そして、この一部始終から日本に住む私たちが学ぶべきは、民主主義とは選挙の勝敗そのものではなく、敗者が結果を受け入れ、勝者が権力の平和的な移譲を約束する、その一点にこそ宿るという、当たり前の、しかし忘れられかけた真実である。
11月3日、そしてその先の2027年1月に、アメリカがどちらの道を選ぶのか。私たちは固唾をのんで、その分岐点を見つめることになる。
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●「ヤスの勉強会」第151回のご案内●
やはり、どうも2027年は日本にとって大きな転換点の年になるようだ。高市政権のハンドリングの失敗によって、日本を取り巻く政治的・経済的危機が深化する可能性が高いように思う。今回の勉強会では危機の実態を徹底して細かく解説する。
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社会分析アナリスト、著述家、コンサルタント。
異言語コミュニケーションのセミナーを主宰。ビジネス書、ならびに語学書を多数発表。実践的英語力が身につく書籍として好評を得ている。現在ブログ「ヤスの備忘録 歴史と予知、哲学のあいだ」を運営。さまざまなシンクタンクの予測情報のみならず、予言などのイレギュラーな方法などにも注目し、社会変動のタイムスケジュールを解析。その分析力は他に類を見ない。
著書は、『「支配−被支配の従来型経済システム」の完全放棄で 日本はこう変わる』(2011年1月 ヒカルランド刊)、『コルマンインデックス後 私たちの運命を決める 近未来サイクル』
(2012年2月 徳間書店刊)、『日本、残された方向と選択』
(2013年3月 ヴォイス刊)他多数。
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