“超プロ”K氏の金融講座

このページは、舩井幸雄が当サイトの『舩井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介していた経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2020.06
輝き増す金相場

「1年後金相場は2000ドルに達するだろう」
 6月19日、ゴールドマン・サックスは金相場の見通しを引き上げました。世界を席巻するコロナウイルスの拡散懸念による経済の先行き不安、並びに各国で行われた巨額の財政金融出動に対しての通貨安不安が金相場を更に押し上げる力となっていくということです。ゴールドマンは金相場がじりじり高くなっていくという見方をしています。3カ月後は1800ドル、6カ月後は1900ドル、1年後は2000ドルと予想しています。ゴールドマンの従来予想ですと、3カ月後は1600ドル、6カ月後は1650ドル、1年後は1800ドルとの見通しだったのですが、足元の金相場の上昇の勢いが予想以上となり、現実の価格の動きに予想を合わせにいったようです。

●金相場の上昇の要因と今後の予測
 6月26日現在の金相場が1トロイオンス1780ドルとなり、ついに新高値に躍り出てきました。2012年10月以来、7年半ぶりの値段となってきたわけです。もちろん日本での金価格も上昇しています。国内の小売価格は消費税を抜いた水準で1グラム6100円を超えてきました。金相場の上昇の要因と今後の展開を予想したいと思います。
 コロナの波は金相場にとって追い風でした。金相場は先行きが不透明な時に大きく動く傾向がありますが、今回のコロナの波は現在も続いていますし、かつてないほど世界全体の経済に大きな衝撃を与えていますので、「有事に強い金相場」に刺激を与えたのは当然でしょう。
 世界の金融の中心である米国の中央銀行のトップ、FRBのパウエル議長は「2022年末まで現状のゼロ金利政策を続ける」と公言しました。更にこの言葉を補完するかのように「利上げについては検討することすら考えていない」と金融引き締めへの見方に強い拒否感を示したのです。
 FRBのパウエル議長はじめ日銀やECB(欧州中央銀行)などの金融当局者は、コロナ禍でも経済の先行き不安を静めるには長期に渡って決して金利を引き上げることはない、と人々に最大限の安心感を与えようとしているわけです。金利が数年に渡って引き上げられないのが確実であるなら、コロナ禍での資金需要も最大限に引き上げることもできるでしょうし、結果、多くのお金が世の中に出回るようになるでしょう。金相場という観点から考えると、天敵は金利です。金を保有しても金利が付くことはありません。世の中の金利が上がって、預金をしていれば一定の金利が付くのであれば、金相場に対しての魅力は相対的に薄れていきます。ところが日本もユーロ圏も米国までもがゼロ金利状態となって、それを中央銀行が数年に渡って続けることを保証しているのですから、金利がつかない金投資であっても安心して続けられるというわけです。

 具体的に現在の金相場を押し上げているのは金のETF(上場投資信託)の人気です。今年に入ってから金のETFへの膨大な資金流入が続いています。今年1月から5月まで金のETFの保有する現物金の残高は623トンも増加しました。金額にすると約3.6兆円の資金流入があったのです。この623トンの現物金の増加量はリーマンショック時、2009年の年間の現物金の増加量591トンを上回る、記録的なものでした。これだけ短期で膨大な資金流入があれば、相場の上昇に弾みがついたのも当然でしょう。現在は金融取引が最盛期であって、金相場も金融取引を通して上昇していくわけです。ちなみに今年は、コロナの波で金の現物の移動が、航空機が飛ばない関係で滞る場面がありました。
 それがニューヨーク市場の金相場とロンドン市場の金相場で値段が大きく異なるという珍事も発生しました。もちろん現在はそのような不合理な事態は解消されています。
 朝倉は金相場については常にその動向を注視してきました。そして朝倉は金相場への見方を随時レポートや講演会、CDなどで披露してきました。朝倉は金相場についてはリーマンショック後、一貫して強気を堅持、2008年金相場が1トロイオンス800ドル台の時点から<金相場は大きく上昇していく>と再三に渡って金の買い推奨を行ってきました。その後、金相場は2011年9月1トロイオンス1923ドルの高値を付けました。この時天井を打ったか、否かははっきりわからなかったのですが、朝倉は2012年、金相場が1600ドルを割れた時点で、金相場の頭打ちが確認されたとみて、金相場に対しての見方を180度変え、「金相場から撤退すべき」とレポートしました。そして講演会やCDでもはっきり「金は売却すべき」と主張したわけです。そして2012年からは一転して株式への投資を推奨するようになりました。
 その後当分の間、金相場については強気な見方をすることはありませんでした。昨年再び金相場がチャート場の節目の1350ドルを突破した時点から、朝倉は「金相場の動きは変わった、買いに転換した」とレポートで指摘、その後は一貫して金相場の緩やかな上昇を予想してきました。
 今回、ゴールドマン・サックスが金相場の2000ドル乗せを予想していますが、朝倉の見方も概ね同じです。ただ金相場がその後も永続的に上がっていくとは思っていません。金相場の上昇にはある一定の限界があるとみています。投資という意味では金投資に比べて株式投資の方が俄然優位性があると思っています。
 このあたりの朝倉の株式市場についての強気な見方は、朝倉の言動やレポートを見続けている方はよくわかっていると思います。

●金相場の魅力
 さて改めて金相場の魅力について考えてみます。リーマンショック後に金相場を強く推奨したのはドルとの関係もありました。
 リーマンショックは当時の金融の中心である米国の金融機関を直撃しました。現在のコロナショックは全世界に波及中ですが、リーマンショックは主に米国が引き起こした危機でした。当然米国の信用が失墜してドルに対しての不安感や信頼性に疑問が投げつけられたのです。そうなればドル安を引き起こすわけで、そのようなドルに対しての不信感がドル安となって、その反対側にある金相場への人気に波及していったわけです。
 通常金価格はドルで表示されますから、ドルが安くなれば金相場は高くなる傾向があります。逆にドルが高くなれば金相場は安くなる傾向があるわけです。
 ですから米国経済が時間と共に回復していった過程で、米国の復権、ドル人気の復活となって金の人気は低下していったわけです。
 金相場が2011年天井を打った時点では、米国経済の復活とドルの信頼性の回復は明らかとなっていたわけです。これが金相場の人気を凋落させていったわけです。そして米国はその後金融の正常化を図り、金利を引き上げるまでに米国経済は回復し続けました。そうなれば益々金相場が人気離散となっていったわけです。
 ところが一昨年から米中貿易戦争が勃発、経済の先行きが再び不透明感を増してきました。その流れと一緒に米国でも金利を引き下げる動きが再度鮮明化してきたわけです。この米国の金利引き下げの過程の中でじわじわ金相場の人気が波及し始めました。そして今年起こったコロナの波が世界中に波及することで金相場の人気が完全復活したわけです。この世界的な金利ゼロの世界は当分続くでしょうし、米中の貿易戦争も激しくなることはあっても収まることはないでしょう。世界は極めて不安定な時代に突入しているわけで、そういう意味では現在のような世界の先行きが不透明な時代の中で金が輝きは増すのは当然の帰結かもしれません。
 金の強みは世界で存在している金の総量の絶対的な少なさです。金の希少性はいつの時代でも変わることはありません。これまで産出された金の総量は19万トン超とオリンピックプール2.6杯分と言われています。金はその現物の量が限られているわけですが、それと違って世界中の中央銀行は際限もなく紙幣を印刷し続けているわけですから、金の希少性が更に輝くのも当然でしょう。また先進国よりもインドや中東、南米など通貨に問題がある国にとっては人々の通貨への代替手段として金投資は根強い人気があり、これが衰えることはないでしょう。
 また金投資はそのインフラが整っています。金は流動性が高く、世界のどこでも換金可能な実物資産です。ダイヤモンドや絵画などではその相場の値段がはっきりしませんし、緊急時の流動性もありません。金相場は毎日、世界中で1トロイオンスいくら、とはっきり値段が出ていますので、ごまかしようもないわけで、資産として保有するには極めて安心というわけです。金は現物でも保有できますし、金ETFといった金融資産としても投資することができます。昨今金融資産としてETFで金保有が可能になったことは金相場の人気の大きな要因でしょう。
 かように金相場の人気は当分続きそうな気配です。

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暴走する日銀相場『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/
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Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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