中村陽子の都会にいても自給自足生活
このページは、認定NPO法人「メダカのがっこう」 理事長の
舩井幸雄は生前、中村陽子さんの活動を大変応援していました。
2001年にNPO法人 メダカのがっこうをみんなで始めて13年、薬を使わず、田んぼにできるだけ長い期間水を張ると、水辺の生きものが爆発的に増えることがわかり、消費者がこの田んぼのお米を食べることで、日本の自然環境が復活させようと始めた活動です。
しかし5年ほど前から、お米を中心にした日本の伝統食を支える基本食材の味噌、醤油、梅干し、沢庵なども、仲間の素晴らしい農家の原料と日本の醸造・発酵・塩蔵技術を使い、無農薬・無添加のものを原料から作り始めました。
自給自足という考え方が、生きる環境と安全な食料を次世代に残すために必要だと分かったからです。
さて、こうして現在、メダカのがっこうでは、農家と一緒に切り開いてきた道を整備し、都会にいてもできる自給自足生活を提案しています。
具体的には、我が家の1年分のお米を農家に作ってもらいながら、草取りなど農家が人手を必要とする時には手伝いに行き、農閑期には、味噌や醤油や沢庵を農家と一緒に作るという活動です。6月の梅干し作りだけはお米づくりの一番忙しいときですが、梅の収穫時期ですから、なんとか時間を作って頑張っています。
今回は、メダカのがっこうに出会って、180度考え方が変わって、自分で作れるものが増えることがうれしくて仕方がないというSさんのことを紹介します。
Sさんは、証券会社で部長にまでなったキャリアウーマン。家には炊飯器もなく、料理はせず、物も時間もすべてお金で買う生活。私と出会ったのも仕事上の出会いでした。しかし2〜3年付き合っているうちに、メダカのがっこうに興味を持つようになり、一度、田んぼ体験に誘ってみたら、自然豊かな棚田の稲刈りに行って、すっかり田んぼの魅力にはまってしまいました。そして、味噌造りや醤油仕込や醤油搾り、たくあん作りや、梅干し作りなどに来るようになりました。彼女がこれにはまった一番の理由は、たぶん彼女が本当の食いしん坊で、“本物”がよく分かる真のグルメだったからだと思います。
メダカのがっこうの活動には、いつもおいしい食事がついています。もちろん無農薬・無化学肥料で生きものいっぱいの田んぼで育ったお米を炊いて握ったおむすび、採れたての野菜と自家製味噌で作った具だくさんの味噌汁、本物の塩で漬けた漬物、農家のお母さんが作ってくれた野菜料理の数々。世間一般で評判になっている美味しいものを、お金の糸目も付けずに食べ尽くしてきたグルメの舌には、新鮮でたまらない美味しさだったと思います。
彼女は、メダカのがっこうに出会うまで、自給自足なんて言葉さえ浮かばない人で、その上、世の中にはちゃんとした食べ物がないということも、まったく知りませんでした。
それもそのはず、実家は食料品のスーパー。食べものに囲まれ、おやつも好きなものを好きなだけ食べていい家でした。当然、そこで使用されている化学物質や添加物を意識したこともありません。その上、バブルの時代を経験した証券ウーマン、目に極楽、腹に地獄と言われている世の中のご馳走を食べ尽くしていたようです。若いころは痩せ型で相当かわいかったと本人は言っていますが、今ではどこから見ても体格がよく、エネルギッシュに仕事をする頼もしい熟年女性です。
それでも60年間何の病気もせず、年1回の健康診断で高血圧だと言われるだけで済んでいたのは、ありがたいことに親が健康に産んでくれたことと、仕事が趣味で、ストレスを感じない明るい性格だったことが幸いしていたと彼女は分析しています。
「氣」は健康の最重要項目ですね。「氣」が元気なら病気にならないのですから。
そんな元気いっぱいの彼女が自分の健康について考えるようになったきっかけは、お母様が86歳でガンで亡くなった時でした。大腸ガンを治療して6年、次に子宮頸ガンが発症、それが悪化して亡くなったのですが、1度もガンの告知は受けず、亡くなる1週間前まで元気に働いていたそうです。彼女はその母親の生きざまや死にざまを尊敬していて、その母親の体型が痩せ型で身軽、体重は常に42〜43kgだったおかげで、病気も介護も楽だったことを思い、自分の体重を減らすことを初めて考えたのです。
思い立ったら即実行。それまでの投資金融のコンサルタントから、メダカのがっこうが関わる食の仕事に転身。食事も米中心の一汁三菜生活に切り替えました。
田植えを手始めに、梅干し作りでは完熟梅の甘い香りに感激、たくあん作りでは擦りたての糠のおいしさに感激、3泊4日の味噌造りでは米麹の生長する様子に感激、醤油のモロミ仕込と搾りでは手造り醤油のおいしさに感激。今まで追い求めていたグルメ的な美味しさではなく、身体が喜ぶ本当のおいしさに目覚めました。そして初体験ばかりの怒涛の1年を過ごしました。
彼女は楽しいので何をやっても疲れません。農作業もふつうの人は腰が痛くなるのに、空手でつかんだ腰の折り方のおかげで、まったく腰に負担がかからないようです。
実はメダカのがっこうを始めて以来、私も自分のやりたい活動をしているので、何をやっても全然疲れないのですが、初めて同じレベルの人に会いました。気を使わずにどんどん活動できる仲間ができて本当にうれしいです。
彼女はこの1年の体験で、メダカのがっこうが農家と一緒に拓いてきた「都会にいても自給自足への道」は、一歩踏み出してみれば、意外と簡単だと思ったようです。
米づくり(田植え、草取り、稲刈り)に3日、醤油造りに3日、味噌造りに3日、梅干し作りに1日、たくあんづくりに1日、今年から始まったオイルプロジェクト(ヒマワリと菜種の2毛作)に最低6日で、年間最低17日、我が家の基本的な食料自給のために時間を割けば、農家を支えながら、環境を取り戻しながら、本当に体に安全な食料(米、味噌、醤油、梅干し、たくあん、ひまわり油、菜種油)を作ることができる。これに春・夏・秋の野草料理教室を加えれば完璧です。しかもイベントは土日が多いので、会社をそれほど休まなくてもできる。これは人に伝えたいと思いました。
また、実際にやってみると、いろいろなことに気づきます。
その中のトップは、塩の大切さ。世間一般のこだわりの味噌、醤油、漬物、梅干しなどには、塩以外の原材料にはこだわっていますが、塩の違いに気が付いている商品は少ないです。実は味噌も醤油も梅干しもたくあんも、自分たちで作ってみて分かったことは、日本の海塩の中でも苦汁(にがり)分が海のバランスで多く残っている塩を使うと、醸造の具合も味も出来がえらく違うのです。
そして塩の価格が商品の価格を決めることも分かりました。今ほとんどの加工品に使われている天日塩は1kg60円、メダカのがっこうが使用している塩は1kg3000円。
これを原材料に使えば、味噌も醤油も梅干しも価格の桁が違ってしまうのです。しかしこの塩の価格はまだフェアートレードではないのです。驚くなかれ、この塩を作っている人は塩だけでは生活できていません。大切なのは、値段の違いは中身の違いだということです。天日塩とは工業用に使われている輸入原塩のことで、この輸入原塩は原産地で苦汁分を飽和海水で洗い流してから輸送するので、天日塩の良さを失っているのです。
どうしてこんなに塩の内容が大切なのかと言えば、人間にとって塩とは、体液や血液の原料になるものだからです。人間の祖先は古代の海の水を体液に取り込んで陸地に上がってきました。これが内なる海です。この内なる海にとって一番いい塩は、体液のバランスに近いものなのです。
この塩の大切さに気が付いた彼女は、これもみんなに伝えたいと思っています。
都会にいても自給自足生活を目指したい方、どうぞメダカのがっこうと一緒に一歩、踏み出しましょう。興奮と感動の連続の1年になりますよ。
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首のタオルにシュレーゲル青ガエルが
いるので、とてもうれしそうな顔を
してい ます。
1953年東京生まれ。武蔵野市在住。母、夫の3人家族。3人の子どもはすべて独立、孫は3人。
長男の不登校を機に1994年「登校拒否の子供たちの進路を考える研究会」の事務局長。母の病気を機に1996年から海のミネラル研究会主宰、随時、講演会主催。2001年、瑞穂(みずほ)の国の自然再生を可能にする、“薬を使わず生きものに配慮した田んぼ=草も虫も人もみんなが元氣に生きられる田んぼ”に魅せられて「NPO法人 メダカのがっこう」設立。理事長に就任。2007年神田神保町に、食から日本人の心身を立て直すため、原料から無農薬・無添加で、肉、卵、乳製品、砂糖を使わないお米中心のお食事が食べられる「お米ダイニング」というメダカのがっこうのショールームを開く。自給自足くらぶ実践編で、米、味噌、醤油、梅干し、たくあん、オイル」を手造りし、「都会に居ても自給自足生活」の二重生活を提案。神田神保町のお米ダイニングでは毎週水曜と土曜に自給自足くらぶの教室を開催。生きる力アップを提供。2014年、NPO法人メダカのがっこうが東京都の認定NPO法人に承認される。「いのちを大切にする農家と手を結んで、生きる環境と食糧に困らない日本を子や孫に残せるような先祖になる」というのが目標である。尊敬する人は、風の谷のナウシカ。怒りで真っ赤になったオームの目が、一つの命を群れに返すことで怒りが消え、大地との絆を取り戻すシーンを胸に秘め、焦らず迷わずに1つ1つの命が生きていける環境を取り戻していく覚悟である。
★認定NPO法人メダカのがっこうHP: http://npomedaka.net/