“本物主義”時代の幸せな生き方

このページは、(株)本物研究所と(株)船井メディア 社長の佐野浩一によるコラムページです。
佐野浩一の義理の父でもある舩井幸雄は、1980年代のバブルの真っただ中の頃からすでに、「競争主体で矛盾のありすぎる資本主義はもうもたない」、そして「資本主義にとってかわるのは『本物主義』ではないか」と考えており、2003年に(株)本物研究所をつくりました。
その(株)本物研究所の設立当初から社長として、佐野は常に、“本物”や、人々の“本当の幸せ”について真剣に考えてきました。
そんな佐野が、いよいよ間近に迫ってきたと思われる「本物主義」時代に向け、私たちはどう生きていけばいいのか、また「幸せに生きる」とはどういうことだろう? ということを先駆けて模索し、皆さまと一緒に考えていきたいと思います。

2016.03.01(第25回)
ゆっくり、ゆったり生きる

 人は、自分自身の存在意義をとても気にするようです。
 簡単に言えば、「自分がいなければ、(会社、部署)はうまくいかない……」と本気で考えているのは、経営者に限らず、多くの働き手がそうではないかと思うのです。
 かくいう私も、その一人……。
 以前、息子が大きな病気をしたとき、やはりこの感覚との向き合いといいますか、もう“闘い”に近いものがあったように記憶しています。
 入院が始まってすぐ、重要な検査がある日だったと思います。
 (採用説明会があって、社長挨拶をしないといけないから、必ず出席しなければならない……。だから、休めない……。)
 そう思い込んでいました。
 (優先順位はどっちだ?)
 悩みました。めちゃくちゃ悩みました。
 (やっぱり、説明会に出ないと……)
 葛藤に次ぐ葛藤でした。
 (代わりがいるのはどっちだ?)
 結果として、私は息子の検査を選びました。
 その日、副社長は、見事に私の代役をしてくれて、無事、何事もなく説明会は終わったのです。
 その後も、息子の病室で少しばかり仕事をしたり、夜にキャスト(社員)から電話で報告をもらったり、打合せをしたりする日々。
 でも、会社は普通に動いていました。

 以前、作家の本田健さんがプチリタイアをしていた数年間、徹底的に自分自身の「無価値感」を味わったというお話を聴いたことがあります。
 「自分が何もしなくても、世の中は何事もないように動いている……。」
 そういうことです。
 でも、その経験は、ご自身の人生にとっても、とてつもなく重要なものであったと痛感されたそうです。
 元株式会社船井総合研究所会長の小山政彦さんは、超一流経営者であり、超ハードワーカーとして知られています。その小山さんが、なんと“行方不明休暇”を勧めていらっしゃいます。社内の誰とも連絡をとらないで、行方不明の間、役員や社員たちに仕事をすべて任せきるということです。それも、数日というレベルではなく、一ヶ月、二ヶ月という期間を勧めていらっしゃるのです。
 これは、本当にとてつもない勇気がいるでしょうし、想像すらむずかしく思えてしまいます。でも、これこそ、後継者育成や、社員育成に大きな効果があると力説されるのです。
 そして、社長が会社にもどったとき、何事もなく会社が運営されているのを目の当たりにして、愕然とするものなんだと……。
 実際にこの体験をされた社長にお話を伺ったことがあります。
 やはり、同じようなことをおっしゃっていました。この方は、何ヶ月という単位ではなく、確か一年以上という長い期間だったと思います。でも、その間に、あらためて自分自身の役割や特性を徹底的にとらえなおすことができ、そのことがいま大きなプラスとなっていると断言されました。

 さて……、「だから、おやすみをたくさんとりましょう!」とお伝えしたいわけではありません。
 これから、私たちが迎える新しい時代は、きっと、もっとゆっくり、ゆったりしたものになるように思えてなりません。「大量生産&大量消費」から、欲しいものだけつくって、使ったり食べたりする「ミニマム生産&ミニマム消費」の時代。小山政彦さんの表現をお借りしますと、「地域コミュニティー主体の分散型経済」ということになります。
 経済的成長をあえて求めない選択をするということになりますが、これこそが本来の人間的な豊かさを熟していける“本物”の世の中、「ミロクの世」ということになるように思います。
 だから、ゆっくり、ゆったり……を、いまから少しでも意識していきたいと思うのです。そして、行動にも反映させられたらと感じています。
 まずは、ほんの少しだけ、ゆっくり、ゆったり。
 本当の豊かさを発見できるように思います。



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Profile:佐野 浩一(さの こういち)
佐野 浩一(さの こういち)

1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。
著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。

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