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みんなでひとつ命を生きていく〜宮ぷーこころの架橋プロジェクトから〜

このページは、特別支援学校教諭で、作家でもある「かっこちゃん」こと山元加津子さんによるコラムページです。
かっこちゃんは障害を持った子どもたちと、かけがえのない一人の友達として触れ合い続けています。その様子は『1/4の奇跡』という映画にもなりました。このコラムでは、かっこちゃんの同僚で、2009年2月に突然脳幹出血で倒れ、奇跡的に命をつないだ宮田俊也さん(通称・宮ぷー)との触れ合いの様子を中心にお届けします。

2011.3.20(第4回)
いきていこう

 昔一緒に勉強をした大ちゃんが、阪神淡路大震災からちょうど一年経った1月17日に絵本をつくりました。
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 一年たちました。神戸の人に僕が考えたこと
           1996年1月17日 原田大助

 あのときの5時46分から一年たったママ あそこでもあそこでも涙がいっぱい流れとる 雨が降っても晴れていても涙は地面にいっぱいいっぱい落ちました やさしい心がふるえていた 涙を流してふるえていました お日さまとやさしい心で いつかきっと 元気がなおる
  ・・・・・

大ちゃんの絵本の絵。 絵本には電信柱が折れ曲がって、テレビから人の顔が出て泣いている絵、人も犬もいっぱい泣いている絵 そして、ハートを両手が抱きしめている絵
 そしてお日さまの下でみんなが笑っている絵が書いてあります。今もたくさんの人のやさしい心がふるえています。東北の方だけでなく、日本中、世界中の人がいっぱい涙を流して、そして、やさしい心がふるえています。どうぞ、多くの人のいっぱいの愛と時間を味方にして、みなさんの元気がきっとなおりますように。
 宮ぷーも「とうほくのじしんひがいすごいね」とレッツチャットで言いました。そして、「つらいこと、かなしいことがあっても、いきていたらきっといつかいいことがあるってぼくはおもう」と言いました。そして「いきていこうね」と言いました。「生きていこうねって、宮ぷーは誰に言ったの?」と言ったら、「つらくて、生きていることがなんて大変なんだろうと思っている人に」と言いました。宮ぷーが、今までも本当に大変な中を生きてきて、そして、今もやっぱり大変なことがいっぱいあると思うけれど、でも、きっといつかいいことがあるって宮ぷーが思っていて、だから、「いきていこう」と思ってほしいと思ったのだと思います。

宮ぷー。  今日は宮ぷーの最初の言葉についてお話をさせてください。
 宮ぷーののどには穴があいています。気切と言って、そこにカニューレという管を入れてあって、そこから息をしています。のどの奥の痰を取ったりもするし、息も鼻や口からするより、ずっと楽なのです。でも、気切が開いていると声を出すことができません。そして、宮ぷーの場合は、脳幹出血だからだと思うのですが、いったいどうやったら声が出せるのかがわかりません。脳幹は脳で考えたところを体に伝える場所なのです。宮ぷーはいつか気切を閉じたいと思っています。先生にいつか閉じてほしいとお願いしたところ、気切を閉じることは難しいけれど、スピーチカニューレと言って、気切の穴に栓をして息をする練習をしましょうと言ってくださって、朝のスピーチカニューレをつけて鼻と口で息をする練習が続いています。
 私がリハビリのために、毎日出かけている夜にもときどき、「気切を指で閉じて」と言います。宮ぷーはおしゃべりをする練習をしたいのです。昨日の夜のことでした。私の顔をみて、じーっと見て、何度も口を「あ」の形のあと「お」の形にするのです。音はなかなか出ないのです。何を言いたいのかな?「なあに? あーお?」宮ぷーが首を振ります。「あーと?」違うと言います。「あー・・あー」と頭の中で言葉を作っていて「あーほ?」と言うと、宮ぷーの顔がぎゅーっとゆがんで首を振りました。「ごめんごめん、ごめんね。宮ぷー、あほなんて言わないよね」気がつくと宮ぷーののどの奥で、咳をしたり、痰を切ろうとするような音が小さくしていました。カ行?カ行の「あ」は「か?」 「かーこ」あ、私の名前。「かっこ?」宮ぷーがほっとしてうなずいてくれました。私の名前を練習? 私を呼んでくれてたの? 宮ぷーは目を大きく見開いて、にっこり笑ってくれました。声にはならないけれど、一生懸命何度も何度も私の名前を呼んでくれてる。宮ぷーがまた咳のような音をたてて「あ」「お」の形で少しのどから音を出して私を呼んでくれました。「はあい」「はあい」涙がとまりませんでした。一番最初に、文字を綴ってくれた日、眼球がようやく動いたときのことを思い出しました。
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6/21
 昨日で4ヵ月がたち、今日から5ヵ月。
 思ったようにいろんなことは進まないけれど、それでも、前へ前へと進んでいるよね。
 ベッドの柵をおろして、宮ぷーの目の前にすわったときに、宮ぷーが目の玉をあげたりさげたりした。「あいうえお表を使うの?」宮ぷーはそう言いたいのかな?と思った。そして宮ぷーはそうだと返事をしたよ。あいうえお表は、たった一文字を出すのにすごく時間がかかる。だって、目の玉が上か下かという手段しかない。まず「あ〜な」「は〜ん」までのどちらかを選ぶ。宮ぷーは目の玉をうえにして、「あ〜な」を選んだ。そして、次は。あ、か、さ、た、なと透明な表に縦に書いたものを用意する。(は、ま、や、ら、わを黒いもので隠す)宮ぷーの目の高さにさをおいて、宮ぷーに思っているところを見てと頼む。宮ぷーは、上を見た。ということは、「あ」か「か」その2つのとちらかを選んでもらう。宮ぷーは目を下にして、「か」を選んだ。その次は縦に「か、き、く、け、こ」宮ぷーの目の玉は上。それでは、「か」と「き」のどっち? と聞くと目の玉は上。それで、「か」だとわかった。目の玉を5回もうごかさないと、1つの文字にたどり着けない。そのつぎの言葉で宮ぷーは同じだけ目の玉を動かして、また、カ行を選んだ。もう疲れてきて、なかなかうまくいかない。こんなときに、目をぎゅっとして選べればいいのだけれど、意識して「うん」というのは、むずかしい。そうして、ようやく動いた目の玉で、今度は「け、こ」から下向きで「こ」を選んだ。「か。こ」何? 何のこと? そんな単語ある? 宮ぷーをじっと見る、何を言いたいのだろう? そのときに、「かこ」ってもしかして、もしかして、私の名前? 私のこと呼んでくれたの? 宮ぷーがそうだよと目をつぶった。「ああ、宮ぷー、私を呼んでくれたんだ」最初に選んでくれたのは、私の名前。「はあい、宮ぷー、そっか、私を呼んでくれたんだ。ありがとう、うれしいよお」私はまた宮ぷーの胸のところに顔を埋めていっぱい泣きました。わあわあ泣きました。初めて綴ってくれる言葉はどんなだろうといつも、思い描いていました。「つらい」とか「死にたい」とかだったらどうしよう。そんなことを思ったこともありました。今日、初めて宮ぷーが、文字を綴ってくれた。そして、綴った言葉は私の名前「かこ」だったんだよ。わーんわーん、泣いて泣いて、ありがとうと言うたびに宮ぷーは目でうなづいてくれた。

 まだ、本当にどこもほとんど自分の意思で動かせなくて、目を見開くようにすることと、ときどきまぶたをぎゅっとつぶることと、でもそれも、自分の閉じたいときに閉じれるのではなくて、無意識的にしかつぶれなかったころ、唯一できたのが、眼球の上げ下ろしだったのです。そんなときも、そして今も、私の名前を呼んでくれてありがとう。ただそばにいるだけで何もできない私なのに、それでも名前を呼んでくれてありがとう。今もなかなか声にはならないけれど、こうして、一生懸命声を出そう出そうとしてくれていることが、脳に必ず届いて、いつか必ずおしゃべりできる日がくるよ。きっと来ますね。


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・メルマガの生い立ちをこちらのページに書いていますので、ご参照ください。
http://ohanashi-daisuki.com/info/story.html

満月はきれいだと僕は言えるぞ
著書『満月をきれいだと僕は言えるぞ』
・宮ぷーの本が発売になりました。

『満月をきれいだと僕は言えるぞ・・GO!GO!意思伝達大作戦』三五館(税別1500円)宮田俊也・山元加津子著

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宮ぷーが倒れた

Profile:山元 加津子(やまもと かつこ 愛称:かっこちゃん) 

宮ぷー(右)と一緒に。

1957年 金沢市生まれ。エッセイスト。愛称かっこちゃん。石川県特別支援学校教諭。障害を持った子どもたちと、教師と生徒という関係ではなく、かけがえのない一人の友達としてふれあいを続けている。分け隔てなく、ありのままに受け入れる姿勢は、子どもたちの個性や長所を素晴らしく引き出している。そんな子どもたちの素敵さを多くの人に知ってもらおうと、教師をしながら国内外での講演・著作活動など多方面に活躍中。教師、主婦、作家、母親という4役を自然体でこなし、まわりの人に優しく慈しみをもって接する姿は、多くの人の感動を読んでいる。著書に『本当のことだから』『魔女・モナの物語』(両方とも三五館)、『きいちゃん』(アリス館)、『心の痛みを受けとめること』(PHPエディターズグループ)などがある。

宮ぷーこころの架橋プロジェクト メルマガ登録:  http://www.mag2.com/m/0001012961.html
同プロジェクトから生まれたHP:http://ohanashi-daisuki.com/index.html
山元加津子さんHP「たんぽぽの仲間たち」:http://www005.upp.so-net.ne.jp/kakko/

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