加治将一の精神スペース

このページは、作家でセラピストの加治将一さんによるコラムページです。加治さんは、『龍馬の黒幕』『幕末 維新の暗号』『舞い降りた天皇』『失われたミカドの秘紋』(すべて祥伝社)などの歴史4部作が大反響を呼ぶ一方で、『アルトリ岬』(PHP)や『大僧正とセラピストが人間の大難問に挑む』(ビジネス社)などのカウンセリング関連の著書も好評です。そんな加治さんが、日々の生活で感じること、皆さまにお伝えしたいことなどを書き綴っていきます。

2013.03.12(第26回)
予想不可能の世界(最終回)

 先日はスキー。
 毎年恒例になっているニセコではありません。
 今回は生まれて初めての本州でのスキー。東京駅から新幹線で80分の越後湯沢です。
 スキー板を脚に付ければ、忘れていた幼き日々のワクワク感がどっと一気によみがえってきます。
 山頂に立ち、遠く連なる白い山脈にしばし眼を休める。
 果てることのない青空は、無尽蔵の空間です。そこは絵にかいたような純粋思考の聖域で、疲れ切った熟男が思い出した言葉は、スキー場にはてんで似つかわしくないローマ皇帝アウグストスが、死の淵で口にした最後の言葉でした。
 「人生は喜劇だ。余は、その喜劇を上手く演じることができたろうか? そう思うなら、どうか盛大なる拍手をくれたまえ」
 そうなのです。人生は喜劇、さすがはローマ人、言うことがいちいち気取っています。
 勝海舟はあっさりと「これでお終い」と言ったんだけど、自分はどうだろうなどと思い、ふと我にかえって「人生最後の日々は、惨めでない方がいいなあ」と情けなくも思ったりもしたのでありました。
 しかしいったん滑り出すとたちまち豹変し、唯一の関心事、スピードに夢中になる。

 異常気象です。
 暑いのなんの、Tシャツ一枚にスキーウエアを上からはおっただけなのだが汗でぐしょり、おかげでスポーツやったぞ! という充実感は持てるのですが、予測不能の天変地異は不気味です。

 まあ、それにしても日本のいいところは温泉ですね。
 アフター・スキーの温泉。じっくりと身体を温めれば、筋肉の疲れはまたたくまに解消し、あとは上質のシャンペンを流し込めば、胃の中でシュンシュンと泡立つ体内バブ、血行がどんどんよくなってぐっすり眠れる仕掛けです。
 スキーと温泉、ゴルフと温泉、世界広しといえども、この組み合わせは日本にいてこそ味わえる贅沢です。
 忘れてならないのは安全。
 我々日本人は安全が当たり前と思っておりますが、世界基準は大違い。
 年末ニセコにスキーに行ったときです。たまたまゴンドラでオーストラリア家族と一緒になったので、なぜわざわざニセコくんだりまで来るのかを尋ねたところ、答え一発「安全!」でした。
 「子供たちをゲレンデで放ったらかしにしても、誘拐される心配がなく、こんなスキー場は日本だけじゃないですか」
 そうなんです。

 安全+スキー+温泉
 安全+ゴルフ+温泉

 夢の三セット。でも最近、悪夢の三点セットに置き換わりつつあるのが大変悲しい。

 放射能+巨大地震+チャイナ大気汚染

 ということで、春スキーを満喫し、東京に帰って来た加治を待っていたのは、新連載のミスティー小説『戦慄の絆』の執筆でありました。
 仕事モード突入!
 死ぬほど書きますが、もし死ななければ、単行本の発売は今年の末あたりになるはずです。

家族は自分でしか守れない。
 さて加治の予想通り円安です。
 株価が上がって、風が吹いていますが、これを吉兆と思い込み、規制緩和、行政改革、税制改革などをオロソカにすれば景気の風は一瞬で終ります。その後に来るのは暗い世相。円安のくせに株価下落、物価上昇のくせに給料は下落という最悪のパターンではないかとすでに何度もお伝えしております。
 国債が暴落し、金融危機、銀行倒産、預金封鎖まで予測する経済学者もいますが、今日なにが起こっても不思議ではありません。
 まかり間違えれば日中戦争だって起こりかねない情勢で、いかなる事態が勃発しても慌てぬよう対策はおさおさ抜かりなくとっていただきたい。
 むろん加治も備えております。
 しかし手の込んだ秘密のプランではありません。いたって単純、預金封鎖に備えて現金は金庫に仕舞っておく。円が紙屑になってもいいようにアンティーク・コインやドル通貨を買っておくなどであります。
 もっともそんなことをしたとろこで、核ミサイルがぶっ飛んできたら、屁の突っ張りにもならないのですが、それでもしぶとく、すぐ逃げられるようにと、身辺をなるべく小ざっぱりとし、いつ死んでもいいようにと、きれいごとだけを書いた遺書を残しております。
 その上で仕事をし、遊んでいるのです。

 日本人はおおらかすぎます。
 国防の議論がほとんどないばかりか、家族の自衛に関してもほぼ無関心でありまして、自宅の庭に核シェルターを掘ったなんて人は、まず見かけません。
 先日、資産3,000億円という某遊戯関係のオーナーとお会いしたので、聴いてみました。
 「そんなに貯めて、いざ核ミサイルが飛んできたらどうするんですか?」
 「その時はその時ですよ」
 「その時って、家族もろともパーになる時ですが」
 「しょうがないですよねえ」
 「ではなぜ、おカネを貯めているのですか?」
 「そりゃ子供たちのためですよ」
 この人の話し、どんなに考えても理解できません。ほんとうに子供たちのことを考えているなら、他に方法がいろいろあると思いますが、おそらくこの人は核ミサイルなんて飛んでこないのだとなんの根拠もなく信じているのですね。
 原発が爆発しないと根拠なく確信していたように、なんとなく大丈夫だ〜という気持ちが、いつしか確信に成りあがってしまうのが我が民族の特徴なのでしょうねえ。

 他国はどうなっているのか、核シェルター設置率をみてみます。
 スイス100%、イスラエル100%、ノルウエー98%、アメリカ80%、ロシア75%、イギリス67%……日本ほぼゼロ。
 世界は最悪を想定し手を打っているというのに、日本人はなにも考えてないというのか、いさぎよいというのか、とにかくリスク・マネッジメント能力はてんでございません。
 不測事態に対してあらゆる手を打っておくのがリスク・マネッジメントの基本ですが、我が民族は不測事態=金輪際起こらないと思いこんでるフシがありまして、どうしてこうも楽観的になれるのか不思議なくらいであります。
 不測の事態をどう切り抜けるか?

 異常気象とP2.5による不測の事態。
 原発が完璧にぶっ壊れて、放射能大噴出という不測の事態。
 頭のネジが飛んだ指導者が、核ミサイルのスイッチを押してしまうかもしれない不測の事態。
 日本の電気産業の業績が軒並み悪化し、どうにも止められないという不測の事態。
 国家財政巨額赤字で、これから押し寄せて来るであろう不測の事態。
 パソコンのプログラマーが極端に足りなくて、警視庁や防衛省のパソコン・ソフトでさえインド人に頼っている事実から起こる不測の事態。

 不測の事態は山ほどあるのに、テレビはあいも変わらず、なにが可笑しいのか馬鹿らしいお笑いとアイドルとモノマネにうつつを抜かし、知りたくもないグルメとクイズとあやしげな占いに一人悦に入ったかと思うと、本当に優れているのか分からないTVショッピングに夢中になる。謎の民族です。
 「良い国は、知的な国民が造る」
 まさに知的な国民が良い国を造るのです。
 はたして我々は、知的なのでしょうか?
 漫然と日々を流さないで、もう一度立ち止まって考えてみる必要があると思います。考えることは四つ。

 家族は安全か?
 職場は安全か?
 国家は安全か?
 地球は安全か?
 ノ―ならば、どうしたら安全になるのか、その対策を科学的に考えるべきだと思うのは、それこそ考え過ぎでしょうか。

 加治将一の『船井幸雄.com』での連載は今回が最終回、卒業です。

 駄文を我慢して毎回読んでくれたみなさん、そしてこの場を提供してくださった船井幸雄先生、原稿の締め切り破りを我慢していただいた担当の藤原さん、長い間ありがとうございました。
 深い感謝と共に、お別れします。

         幸せを祈りつつ……。


★オフィシャルサイト「加治将一の部屋」: http://kaji-room.com/
★加治将一 公式ツイッター: http://twitter.com/kaji1948


『ビジュアル版 幕末 維新の暗号』(祥伝社)が8月1日に発売されました。
『幕末 維新の暗号』『舞い降りた天皇』『失われたミカドの秘紋』『西郷の貌』(すべて祥伝社)を全部まとめた写真集です。
 この写真集は、支配者の日本史偽装を許さないぞ、今後とも真実を暴いてゆくぞという私の確固たる意思表示であります。
 各方面からの圧力がひどく、潰れそうです。どうか1冊でも10冊でも買って応援してください。よろしくお願いします。


『カネはアンティーク・コインにぶちこめ!』(東洋経済新報社)は、おかげさまで三刷りになりました。ありがとうございます。
 この本でコインが売れ、日本中のコイン・ディーラーはコイン品薄に陥ったとか。コイン関係者の嬉しい悲鳴が聞こえてくるようですが、その割にはこっちに足を向けて寝ているらしいのです(笑)。

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Profile:加治 将一(かじ まさかず)

作家・セラピスト。1948年札幌市生まれ。1978年より15年間、ロサンゼルスで不動産関係の業務に従事し、帰国後、執筆活動に入る。ベストセラー『企業再生屋が書いた 借りたカネは返すな!』(アスキー)、評伝『アントニオ猪木の謎』、サスペンス小説『借金狩り』、フリーメーソンの実像に迫った『石の扉』(以上三作は新潮社)など多数の著作を発表。『龍馬の黒幕』『幕末 維新の暗号』『舞い降りた天皇』『失われたミカドの秘紋』(すべて祥伝社)の歴史4部作は大反響を巻き起こし、シリーズ 50万部の売上げ更新中である。その他、カウンセリング小説『アルトリ岬』(2008年 PHP)や『大僧正とセラピストが人間の大難問に挑む』(2010年 ビジネス社)などがある。

西郷の貌(かお) 『カネはアンティーク・コインにぶちこめ!』(東洋経済新報社)

2011年4月に『陰謀の天皇金貨』(祥伝社刊)を、2012年1月に『倒幕の紋章』(PHP文芸文庫)を文庫版として発売。2012年2月に『西郷の貌(かお)』(祥伝社刊)を、2012年4月に新刊『カネはアンティーク・コインにぶちこめ!』(東洋経済新報社)を発売。

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