船井幸雄グループ社員の、日々もの思い、考へる

このページは、船井本社グループスタッフによるコラムページです。 「これからは“本音”で生きるのがよい。そのためには“本物の人間”になることが大事」という舩井幸雄の思想のもと、このページでは、社員が“本物の人間”になることを目指し、毎日の生活を送る中で感じていること、皆さまに伝えたいことなどを“本音ベース”で語っていきます。

書:佐野浩一
船井幸雄グループ社員の日々もの思ひ、考へる あの社員の一日を公開!
20代の仕事の思い出
2013.12.9(Mon)
社名:(株)船井メディア
名前:服部 真和

 皆さんこんにちは。今日からこの社員コラム「本音で生きよう」は21周目を迎えます。いつもお読みいただき、まことにありがとうございます。

 先月の25日、80年代セゾングループを率いて一斉を風靡した堤清二氏が永眠されました。私は社会人のスタートが西友でしたので堤氏の死には、雲の上の人であり接点もなかったのですが、少し感慨深いものがあります。
 京都に住んでいた学生時代、どこに就職しようかと考えた時、時代精神をうつした「不思議、大好き」「おいしい生活」の2つの西武百貨店の広告は、それこそ関西にまで届いており非常にイメージがよく、松田聖子が「スウィート・メモリー」をCMで歌ったサントリーとともに、当時、憧れの眼差しで見ていた企業でした。華やかな西武流通グループ=セゾングループの文化戦略、イメージに簡単に振り回される無知な若者は思うのでした。「文化事業をやってみたい!」と。例外にもれず私もそうでした。(セゾングループとは西武百貨店、西友、パルコ、西洋環境開発、クレディセゾン、西洋フードシステムズ、ファミリーマート、良品計画などの企業集団)

 できた学生ではなかったので就職活動は難航しましたが、入社したのがセゾングループの一つであるスーパーの西友、関西地区の店舗に配属されました。
 確か入社した1年目に阪神タイガースが優勝し、大阪は阪神フィーバーに湧きました。パ・リーグは西武ライオンズが優勝し、関西でも西友としてライオンズ・セールを実施。駅前でチラシを配布したりしたのですが、アウェー感もあり、あまり積極的に手にしていただけなかった記憶があります。当時は西武文化戦略などと称されマスコミを賑わしたセゾングループですが、入社した私はそれとは裏腹に泥臭いスーパーの現場。売場でマイクを使って家庭用品のタイム・セールをやったり、品出しの毎日でした。
 なんとか展開を変えたいと英語もろくにできないのに、会社が映画事業に進出布石として公募したアメリカの映画学校(サンダンス)への留学に応募。当然ですが、全く英語がわからず、あえなく玉砕!人事の人に関西から応募したのは君だけだよと物珍しげに言われました。ならばと休憩時間に店舗にテナントとして入っていたピアノ教室に楽譜も読めないのに通い、小さな子供とともに発表会を……と。しかし、そんな活動が目立ったのか発表会を前に東京に転勤の辞令がおり、西友が経営する西武百貨店の店舗に配属となりました。社会人2年目のこととです。

 会社の寮に入ったのですが、なんと6畳1間に男2人。これじゃ修行だよと思いつつ、やっぱり東京は違う!西友は東京が本社だからと思い直し、休日には西武美術館に足を運んだりし、セゾングループの文化活動に積極的に触れたりしました。憧れの文化事業に近づいているぞ、勝手にそんな気持ちを持ちながら。でもやっぱり配属されているのは販売の部署。ある時、店舗でセゾンカード開拓キャンペーンというのがあり、課長に呼び出され「何枚開拓できるんだ!」と叱咤されました。思わず私は「ご安心ください。お店でトップになりますから」とたんかをきってしまったことがあります。若いから頭に血が昇りやすかったのですね。それから私も必死でカードの開拓をしたのですが、やったこと以上に数字が伸びているので不思議に思うと、別のフロアの女の子が私の威勢のいい発言に共鳴してくれて、勝手に私の名前でカードを開拓してくれたということがわかりました。
 結果は2位で、報償は使えない去年のシステム手帳、なんじゃこれ? と思いました。

 あるいは、店舗オープン前に商品を粗雑に扱った人がいて、それを見た私は売り物になんてことするんだ!と大声で怒鳴ったことがあります。課長が慌てて飛んできて、相手が西武百貨店の役員だったことがわかり、ペーペーの私は一瞬顔面蒼白……。文化にはほど遠いのですが、それはそれで毎日仕事が楽しかったのでした。

 やがて自己申告制度で延々と文化事業への想いを書いて、販売促進として運営していた多目的ホールの担当となりました。本流の文化事業ではないものの、演劇、ダンス、お笑い、伝統芸能、ジャズ、邦楽、クラシック音楽、現代美術……と数多くのイベントをそこで開催しました。配属の辞令が出た帰り、思わず嬉しくて電車の中で涙が流れたことを覚えています。ですからそこでは、自分で言うのもなんですががんばったと思います。
 ホールでは年間で100本以上ものイベントを企画し、実施。スタッフも4人程度ですからてんやわんや。憧れたセゾングループの文化事業そのものではないものの、その端くれに私はいるんだと勝手に自負し、本流の文化事業に負けるものかと意気込んでいました。ただ、予算なるものは、ほとんどなくアイデア勝負でしたので、本流とくらべるとやっぱり見劣りしましたが。しかし、ある企画では先鋭さにおいて本流を超えた企画だねと専門家に言われたイベントがあったり、専門誌の方にこのイベントは歴史的な意味があるよと言われ、お客さまも北海道から沖縄からこられたイベントも企画できたりしてうれしかったこともあります。
 やがて、会社の業績がバブル崩壊とともに悪化し、そのホールも閉鎖することとなりました。会社でも早期退職制度を活用したリストラが始まり、お世辞でもいいムードであったとは言えませんでした。そんな空気の中、私自身も会社への帰属意識が薄くなり退職を決意し、まったく違う業界へと転職することを決めました。
 やがてセゾングループは解体していくことになります。今振り返ると、幻想であったのかもしれませんが、憧れのイメージがあって、なんとかそこに近づきたい。そのためには認められなければいけないと必死だったように思います。
 悔しい思いもたくさんしましたが、突っ張って過ごしていたように思います。それが今にとても役立っているように思えてなりません。憧れの企業体であったセゾングループ、その総師であったのが堤清二氏でした。そこで働いた20代はよき思い出として残っています。


2周目:「映画館へ行こう!」
3周目:「清々しいメロディに紡ぎだすハート」
4周目:「刺激的な人物がいた!」
5周目:「人の変化で時代を感じる」
6周目:「ひまわり大作戦」
7周目:「雑感」
8周目:「あらためて「プラス発想、素直、勉強好き」を・・・」
9周目:「想いは実現するということの私なりの解釈」
10周目:「宮沢賢治と手帳」
11周目:「防災の心得」
12周目:「書と陶の融合・・・私探しの旅に出て私になる」
13周目:「麻について」
14周目:「歩くことが楽しくなってきた」
15周目:「工夫をしよう!」
16周目:「アルゴ」
17周目:「私が過ごした本物研究所について」
18周目:「「笑いとばせ」という感性」
18周目:「「ありがとう」の言葉の力」
19周目:「美術館は妖怪ブーム」
20周目:「インフレ時代到来か?」

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