写真
2010年にんげんクラブ全国大会ステージ上にて
(写真撮影:泉浩樹)

「天律時代」の到来に向けて

このページは、(株)船井本社社長で「にんげんクラブ」を主催する船井勝仁によるコラムページです。船井勝仁は「これから“天律時代”が来る。そして一人ひとりが“うず”を作っていくことが大事になるだろう」という思いを持っています。それをベースにおいた日々の活動の様子や出会い、伝えたいことなどを語っていきます。

また、「船井幸雄の息子」ではなく、“船井勝仁”の独自性をさらに打ち出していくこともテーマに、これまで父に寄せてきた思いや、「二代目社長」としての方針も語っていきます。

左上 「うず」のイメージ(画:西口貴美)
2012.07.21(第58回)
金融なんて嫌いだよ

 拙著『失敗から学ぶ』(海竜社刊)が出版されて、積極的に書店巡りをするようになりました。正直に言いますと、本を出すのは大変うれしいものですが、大変怖いものでもあります。書店で自分の本を見つければ大喜びですし、結構目立つところに何冊も置いていただいている本屋さんではガッツポーズをしてしまいます。でも、逆に見つからなかったときは、とてもがっかりしてしまうのです。
 本来はそういうことを気にせずに、もっと泰然自若になりたいと思うのですが、あれだけ苦労をして書いたものですから、まるで子どもが生まれた時の様な気分です。おかげさまで、評判はいいようで、よくそこまで本音で書いたねと言っていただけるのですが、読んでいただいた方の人生を変えられるような本が書けるまで頑張りたいと思っていますので切磋琢磨を続けていきたいと思います。

 そんなわけで、最近はアマゾンという便利なものができて普段は余り行かない書店に足を運ぶ機会が増えました。やはり、書店で棚を見ていると、アマゾンでは気がつかない本との出会いがあり、そろそろ金融ネタも尽きてきたかなと思っていたのですが、ちょうどいい本に出会えたので、今回も金融の話を書きたいと思います。

 その本は澤上篤人著『金融の本領』(中央経済社)です。澤上氏は長期投資という戦略で1本だけのファンド(さわかみファンド)を、証券会社を通さずに売る直販にこだわっている、さわかみ投信の会長をされています。一度買った株は簡単に売らずにじっくりとホールドし、株価が下がったらいい機会だととらえ買い増していくという戦略を実行しているファンドです(逆に上がり過ぎだと思えば容赦なく売ります)。澤上会長はスイスのキャピタル会社を皮切りに、長期投資の世界で41年生きてこられました。
 それにも関わらず、澤上会長のインタビューが掲載されている第一章で、タイトルにさせていただいた「金融は嫌いだよ」という発言をしておられます。その趣旨の説明になっている部分を引用させていただきます。

(引用開始)

 たまたまこの世界で41年過ごしてきたけど、僕の長期投資は、製造業的な価値観に立っていて、そこから一歩も離れない。世間の人が思い浮かべる金融って、お金を右から左へ動かすだけ。無機質で薄っぺらな仕事だよね。そもそも富を生んでないでしょう。金融バブルの崩壊でもはっきりしたように、ひらすらお金を追いかける強欲さばかりで、人間性はどこかへ行ってしまっている。そんな世界は嫌いです。

(中略)

 だから僕はいわゆる金融の世界に身を置きながらも、実際に富を築いていく製造業のお手伝いをしようとしてきた。実体経済にプラス貢献できるお金の回し方だけを考えてきたんだ。金融によくある、ちゃらちゃらと浮ついたものではなく、どっしりと腰のすわった応援団としてね。

(引用終了)


 ずいぶん、昔のことですが、船井総研が経営者向けにやっていたコスモスクラブという勉強会に澤上会長をお呼びしてお話をうかがったことがあります。その時は、澤上会長のおっしゃる長期投資の意味がよく分からなかったのですが、利益の追求だけを目的にしていない社会に対しての責任を果たしている企業をきっちりと探しだしてきて、その会社に投資することが、世の中に貢献する製造業を応援することになり、その結果としてファンドの成績も良くなるという投資方針だということが本書を読んでよく分かりました。
 これなら、まるで坂本光司先生の『日本でいちばん大切にしたい会社』(あさ出版)で紹介されているような会社を上場会社の中から探しだして、じっくり投資をするということになり、やっぱり日本の将来は明るいという方向を応援している金融もあるのだということが分かり、ちょっと楽しい気分になりました。
 澤上会長は日本の株式市場は持ち合いが解消されて正常化しており、これから10年はとても明るいという見方をされています。そして、インフレが来る可能性があり、インフレに強いのは株式なので、じっくりと自分の好きな優良会社を選び、短期的にバタバタしない腰をすえた長期投資を目指すべきだと説いています。私はインフレが来るのかデフレが続くのか、五分五分とみていますので、借金をして無理をしてまで株式投資をするべきだとは思いませんが、資産の30%程度を上限に優良企業に投資をするのは悪くない戦略だと思います。
 さわかみファンドは個人向けのファンドですが少額から投資ができますので、自分で銘柄を選ぶ自信のない人にはさわかみファンドの購入を検討してみるのもいいかも知れません。どちらにせよ、金融の本質をある意味ではとても的確に教えてくれる良書ですので、金融に興味がある方にはご一読をおすすめします。


『失敗から学ぶ』表紙画像
『失敗から学ぶ』
★船井勝仁の最新刊『失敗から学ぶ』(2012年7月発売 海竜社刊、1,050円(税込))が好評発売中!!

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Profile:船井 勝仁(ふない かつひと)

1964年 大阪生まれ。1988年 (株)船井総合研究所 入社。1998年 同社 常務取締役。同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。2008年 (株)船井本社 代表取締役社長就任。父・船井幸雄の「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築くことが本来の自分の役割だ」という思いに共鳴して、持ち株会社である同社の代表取締役社長として父をサポートすることを決意した。 著書には、『中堅・中小企業のためのIT化時代の「儲け」の決め手』(船井幸雄らとの共著 2003年 ビジネス社)、『天律の時代が来た! 生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『いま明かされるコトダマの奥義』(2011年1月 新日本文芸協会) 、『未来から考える新しい生き方』(2011年9月 海竜社)、『失敗から学ぶ』(2012年7月海竜社)などがある。
『失敗から学ぶ』表紙画像
★にんげんクラブ:http://www.ningenclub.jp/
★船井勝仁.COM:http://www.ilir.co.jp/funai_katsuhito/

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