写真
2010年にんげんクラブ全国大会ステージ上にて
(写真撮影:泉浩樹)

「天律時代」の到来に向けて

このページは、(株)船井本社社長で「にんげんクラブ」を主催する船井勝仁によるコラムページです。船井勝仁は「これから“天律時代”が来る。そして一人ひとりが“うず”を作っていくことが大事になるだろう」という思いを持っています。それをベースにおいた日々の活動の様子や出会い、伝えたいことなどを語っていきます。

また、「船井幸雄の息子」ではなく、“船井勝仁”の独自性をさらに打ち出していくこともテーマに、これまで父に寄せてきた思いや、「二代目社長」としての方針も語っていきます。

左上 「うず」のイメージ(画:西口貴美)
2012.10.01(第65回)
地域通貨の未来

 本当に世の中、いよいよ行き詰ってきた感じがあります。ユーロの問題は小康状態を迎えているように見えますが、根本的な解決策は何も実行できていません。アメリカも結局はQE3(=Quantitative Easing 3 量的金融緩和第3弾)を実行しました。
 今回のQE3は景気が良くなるまで無期限に毎月400億ドルの債券をFRB(米連邦準備制度理事会)が買い続けるというのですから、あまり話題にはなっていませんが、FRBの並々ならぬ決意が見て取れます。
 日銀も追随するように量的緩和処置を発表しましたが、通貨をめぐる世の中の流れはアメリカとユーロのどちらの通貨を叩き落すかの戦いが繰り広げられていて、日本やスイスなども油断しているとその争いに巻き込まれてしまうので、それに対する対処を慎重にしているというところではないでしょうか。

 反論もあると思いますがそういう意味で言うと、私は日銀の白川総裁はよくやっていると思いますし、ついでに言うと野田総理も日本の国益を守るために、ぎりぎりの戦いをよくやっていると思っています。野田総理や白川総裁にこのまま日本という国の運営を任せておいて、私たちが幸せになるとは思えませんが、私たちの意識がそこまで高まっていない中では、できることはきちんとよくやっていると思うのです。
 ここしばらく書き続けている金融の仕組みで言えば、4月11日の当コラムで「お金とは何か」について触れた時に紹介した、安部芳裕さんと佐々木重人さんの『金融崩壊後の世界』(文芸社)に、未来の理想の社会における金融の運営方法の処方箋はみんな書かれていると思っています。
 そのまま読めば共産主義の主張のように思えてしまいますが、「利子の付かない(もっとハードには減価する)お金」「政府紙幣の発行」「ベーシックインカムの実現」ができれば、資本主義が行き詰まった後の世界の金融経済の運営は困らないというのが私の意見です。
 なかなか、一般に理解は得られないと思っていたのですが、最近読んだ浜矩子著『「通貨」はこれからどうなるのか』 (PHPビジネス新書)に地域通貨の話が出ていました。
 浜氏と言えば20万部のベストセラーになった『「通貨」を知れば世界が読める』(PHP(ビジネス新書)の著者ですし、テレビにも多数出演しているメジャーなエコノミストです。彼女が地域通貨のことについて詳しい説明をしているのに少し驚きましたが、時代はその方向に進まざるを得ないところまで自体は進展しているのだと思います。
 今年2月の朝日新聞に、ヨーロッパ各地で地域通貨の導入が勢いづいているという記事が掲載されていたそうです。そして、その数は1000種類以上にも登っており、浜氏の解説によればその背景には共通通貨「ユーロ」の挫折が大きく影響しているのはないかというのです。

(引用開始)
 このような話を伝え聞けば、まさしく、我が意を得たりの感が強まる。プラ議員(フランスのトゥールーズ市の市議会議員、同市のソラという地域通貨の構想を作った)の言葉(「国も欧州も、我々が暮らす生活圏を救ってはくれない。それならば自分たちで通貨をつくり、公平な経済を育てたい」)にくしくも表れているとおり、国々の「経世済民」力が低下した時、人々は独自の工夫を凝らして自らを救う道を模索する。国破れて地域あり、国民通貨交代して地域通貨台頭す。欧州の経済風景がこのような姿を呈し始めていることは、実に面白いと思う。
 欧州統合が進めば、それに伴って、通貨も次第に一つに集約されていく。かつて、人々はそのようにイメージしていた。ところが、どうか。一方において集約と均一化の論理が働けば働くほど、人々はそれに逆襲する。「国も欧州も、我々が暮らす生活圏を救ってはくれない」 ― 統合が進展すればするほど、人々はこの思いを強める。そして、自らの生活圏にピッタリサイズの通貨環境を模索する。
(引用終了)


 浜氏は、通貨が安定的に存続するためには、物価水準や失業率、賃金水準や金利がその通貨が通用しているどの地域に行っても同じである「経済実態の完全収斂(しゅうれん)」か、前者を実現するための「所得再分配の機能がうまくいっている」か、どちらかの条件が実現している必要があるという。
 現在のユーロはそのどちらの条件も満たしていないので、やがて消滅する運命にあるという論考になるのだが、返す刀で日本円が通用している日本という国でも上記の条件がだんだん満たせなくなってきているのではないかという考察もしている。
つまり、日本でも地域通貨の動きが活発化してきて、ヨーロッパのようになるのではないかというのである。
 つまり通貨としての円の力が弱まってくれば、日本でも地域通貨が台頭してくるし、それが一種の危機が起こったときの対応策になるというのである。
 私はいまのところ、国や日銀は地域通貨が広く普及することを認めない姿勢を持っていると思いますが、だからといって「ままごと通貨」とバカにするのではなく、いざという時のためにしっかりと研究を始める時が来ているのもしれません。

『未来から考える経営』表紙画像
『未来から考える経営』
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Profile:船井 勝仁(ふない かつひと)

1964年 大阪生まれ。1988年 (株)船井総合研究所 入社。1998年 同社 常務取締役。同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。2008年 (株)船井本社 代表取締役社長就任。父・船井幸雄の「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築くことが本来の自分の役割だ」という思いに共鳴して、持ち株会社である同社の代表取締役社長として父をサポートすることを決意した。 著書には、『中堅・中小企業のためのIT化時代の「儲け」の決め手』(船井幸雄らとの共著 2003年 ビジネス社)、『天律の時代が来た! 生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『いま明かされるコトダマの奥義』(2011年1月 新日本文芸協会) 、『未来から考える新しい生き方』(2011年9月 海竜社)、『失敗から学ぶ』(2012年7月海竜社) 、『未来から考える経営』(2012年10月 ザメディアジョン)などがある。
『未来から考える経営』表紙画像
★にんげんクラブ:http://www.ningenclub.jp/
★船井勝仁.COM:http://www.ilir.co.jp/funai_katsuhito/

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